旅を終えて、わたくしたちはプププランドに帰ってきました。朝食後から昼前の時間でした。
前と同じように、村に入ると知り合いが出迎えてくれました。わたくしは軽い挨拶を交わして、帰城します。
城に到着したら、メタナイト卿とは別れてそれぞれの部屋に帰ります。
去り際にお礼を言いました。
「ありがとうございました。一緒に行けて楽しかったですわ」
「私もだ。次は、観光しないか?」
「ぜひ!お願いします」
次の約束も決まって、嬉しいですね。わたくしは上機嫌で自室に帰りました。
普段のメイド服に着替えて、コンパクトと星形の懐中時計を大切にポケットに入れます。
陛下と閣下のお土産を抱えて、厨房に向かいます。
思った通り、厨房にはアーニャたちが昼食の準備をしていました。
先に気づいてくれたのは、ランタンでした。
「あら!お帰り。帰ってきてたのね」
「お帰りなさい、リーノ」
二人とも、緊張が解けた顔をしています。
不安にさせてしまって、申し訳ないですね。無事に帰ってこられたので、元気な姿を見せようと思います。
わたくしは普段よりも笑顔を意識して作りました。
「ただいま!昼食作り手伝いますね」
「疲れてませんか?休んでいてもらっても、いいんですよ」
「そうよ。帰ってきたばっかり……ですから」
ランタンの口調が丁寧なものに切り替わりました。その間がなんだかおかしくて、アーニャと二人笑います。
つられてランタンも笑いました。
昼食作りは手伝いました。わたくしたちとワドルディたちとで、いつものように食事を食堂に運びます。
わたくしを見たお二方は驚かれました。目をまん丸くさせて。
「リーノ!?いつ帰ったゾイ?」
「先ほど戻りました。今日のデザートは急遽変更しまして、旅のお土産にさせていただきました」
「ほほー!それは楽しみでゲスなあ」
「陛下、閣下」
二つの視線がこちらを向きます。
わたくしはにこりと笑いました。
「ただいま戻りました」
「よく帰ったゾイ!デハハハハハ」
「おかえりでゲス」
ああ、ようやく帰ってきたと、一息ついた気持ちになりました。
昼食はざるそばです。
つるりと食べていただいたあとは、デザートを出しました。
カステラです。それもお一人につき、一本丸々。
陛下はたいへん喜び、閣下も満更ではないご様子でした。
「うーむ、うまい!苦さと甘さのハーモニーがたまらんゾイ!」
「こりゃ何個でもいけるでゲスなあ。コーヒーくれでゲス」
「ただいま」とランタンがコーヒーを注ぎます。
昼食後は大臣一家の部屋へ向かいました。
メーム様に通されて、中に入ります。カービィを含めたみな様がいました。
フーム様とブン様、カービィがわたくしの方に駆け寄ります。
「リーノ、お帰りなさい!」
「心配してたんだぜ」
「ぽーよい!」
「ご心配おかけしました。こちら、お土産です」
一つの紙袋を、フーム様に渡しました。
ブン様が喜び、嬉しそうに飛び跳ねます。
「いいの?」
「いつもお世話になっておりますから」
「やったー!」
「ブン、騒ぎすぎよ!ごめんなさいね。ありがとう、リーノ」
「喜んでいただけて嬉しいですわ」
次は村に降りました。
モサさん、サトさん、ハナさんの三箇所に周りお土産を渡します。大臣一家と同じお菓子を渡しました。
サトさんと、ハナさんにはいつもお世話になっているのでそのお礼に。
モサさんは、時計屋さんのことを教えてくださったお礼です。
みなさん、村にはないお菓子屋さんのお菓子が食べられると知って、喜んでくれました。
持って帰ってくることは大変でした。ですが、こうして喜んでもらえると疲れが吹き飛びますわ。
簡単に旅の土産話をして、帰城する頃には夕方でした。
それから仕事に参加して、全てが終わるころには夜の九時を迎えます。
九時、わたくしの部屋にアーニャたちを招待しました。
そして、それぞれ飲み物を注いでから、カステラとクッキーを入れたトレイをテーブルの真ん中に置きました。
アーニャとランタンは興奮気味に言います。
「これが陛下が食べてらっしゃったカステラね!」
「こちらはみなさんに配ったクッキーですね。カラフルでおいしそうです」
「どうぞ、食べてみてください」
「ありがとう。いただきます」
「いただきます」
まったりと三人で過ごすと、本当に旅の疲れが癒やされますわ。
それからは旅の話をしました。編み物の本を購入した話になると、二人が見せてほしいと言うので、すぐに持ってきます。
ミルクティーを飲んだランタンが「それにしても」と、話を始めました。
「三戦士って秘密が多いわよね」
「そうですね。確かに」
「ですねえ」
「この前、城で働く前はどこにいたのか聞いたのよ。そしたら、まだ言えないって言われちゃってさ」
「ブレイドさんも同じです。いつか話すからって言われてしまって……」
「大体、仕事中も中々会えないし。どこを見張っているのかしらね」
「そうなんですよね。リーノのところも同じですか?」
「…………質問したら秘密だと、言われることもありますね」
「リーノのところも同じ感じなのね。はあ。ソードのことは信じてるけれど、不安になるわ。今度、気分転換を兼ねてメーベルのところで占いでもしてもらおうかな」
二人がため息を吐き出しました。
わたくしは目を伏せます。
ソードナイトとブレイドナイトって、昔は盗賊やってたんですよね?それは確かに、恋人に伝えづらいでしょうね……。
******
時間は遡り、昼ごろ。
デデデ城の地下どこかで。
「今帰った」
「お帰りなさい、卿」
「お帰りなさいませ」
三人の戦士は巨大な空間の隅に集まっていた。
そこには棚や電気ポッド、テーブルなどがあり簡易に食事ができる場所となっていた。
三人はそこに集まり、各々の定位置に座る。
メタナイト卿が持っていた紙袋をテーブルの上に置いた。
「旅行の土産だ。三人で食べよう」
「おお、ありがとうございます」
「今から休憩しようと思うので、いただいても?」
「ああ。私も食べよう」
三人はインスタントコーヒーを注いで、食べる準備をした。
紙皿に、土産のカステラを二つずつ乗せて、それを配る。
一口食べると、元気が湧いてくる。おいしいお菓子に、ソードナイトもブレイドナイトも喜んでフォークを進めた。
カステラをあっという間に食べ終えて。三人は談笑する。
ブレイドナイトが言った。
「今回はナイトメアは襲ってこなかったんですね。お二人がご無事で良かったです」
「ああ。何もなくて私としても安心している」
「今頃、ランタンも安心しているだろうな」
ソードナイトが上の階にいるだろう、恋人のことを考えた。
メタナイト卿たちが出かけていた数日間、ランタンに元気がなかったのだ。食事はあまり食べないし、声にも覇気がなかった。何よりも心配していたのだろう。
彼女の力になれなかったことが、歯痒くて。悔しかった。
まだ自分たちを繋ぐ絆は、あまり強くはない。
これから、これから力になればいい。
ソードナイトはそう考えた。
ブレイドナイトは頷いた。
「アーニャも安心していると思う。ランタンと同じように、元気がなかったからな」
「今日から、また元気が戻るだろう。良かったな」
「はい!……ところで、卿。折り入って相談があります」
「私からも」
「なんだ?」
空気は一変して、緊張したものに変わる。
メタナイトは、二人の忠実な部下の強ばった雰囲気に、魔獣と対峙するかのような気持ちになる。
ソードナイトとブレイドナイトはお互いにアイコンタクトで、先に話すかどうか譲り合った。
ブレイドナイトが口を開く。
「実はアーニャに、盗賊時代のことをいつ話すか悩んでいまして……」
続いて、ソードナイトも言った。
「それ、私もです!ランタンになんて話せばいいのかわからなくて……」
「ふむ」
メタナイトは体から力を抜いた。
そのことなら、考えてある。
「秘密ならば、私たちは共通のものを抱えている」
「戦艦ハルバードのことですね」
「そうだ。私も秘密をリーノに話せないでいる。つまり、私たちは同じ立場にいるわけだ。……私は、この秘密を打ち明けるときは、ナイトメアと戦う日だと思っている」
「つまり、話すのにもうしばらくかかるんですね」
「そなたたちはどうする?ナイトメアと戦う日に話すか?帰還してから話すか?」
ソードナイトとブレイドナイトは互いの顔を見合わせた。
そして主人の顔の方を向く。
「我等は帰還してから話そうかと」
「すべて終わってから、何もかも打ち明けます」
「わかった。二人の成功を祈る」
******
数日後。
ええ、あれは昼前のことでした。
晴天でしたわ。わたくしとアーニャとランタンは、一階の洗濯場で仕事をしていました。
いきなり空が光ったのです。
空に目を向けると、一筋の流れ星が目に入りました。それは村のはずれに落ちました。
アーニャが言います。
「なんでしょうか、あれ」
ランタンが閃いたと言わんばかりに指を鳴らします。
「宇宙船だったりして」
「そうかもしれません。後で村の方に降りるので、みんなに何があったのか聞いてみますね」
「気をつけて行ってきてくださいね」
「ええ、わかりました」
昼食後、村におりてみると騎士の話題で持ち切りでした。
「自称騎士、ですか」
カワサキさんのお店にて。
カワサキさん、サモさん、ボルンさん、村長さんが集まっています。
自称騎士にやられたサモさんが話してくれます。
「俺たちのこと、難民とか呼んでいたな。それにメーベルをお姫様だって言ってた」
「おかしいですね。メーベルは生まれも育ちも、このプププビレッジなのに」
「そうだろ?メーベルが嫌がっていたから、止めに入ったんだけど、この通りさ」
「サモさん勇敢ですわ」
「ありがとう。リーノ」
村長さんが首を傾げます。
「それにしても、あの人は何者何じゃろうな?デデデ陛下のことを魔獣呼ばわりしておったし」
「……え?」
「あーそれね。ブンが原因だよ。ブンが陛下のこと魔獣だって教えたんだ」
「……まあ、そうなんですの。それは良いことを聞きました。帰ったらブン様に聞いてみますわ」
城の橋の上で待ち伏せをすれば、必ず会えるはず。
わたくしは冷気をまといました。
アーニャとランタンに仕事を任せて、わたくしは城の橋の上で待ちます。
やがて空が赤くなっていくころ、大勢の人影が見えました。
三戦士たちとフーム様、ブン様、カービィたちです。
わたくしはみなさんに声をかけました。
「お帰りなさいませ。みなさんお揃いなのですね」
フーム様が笑顔を見せてくれます。そしてため息を吐きました。
「ただいま。今日は自称騎士が来ててね」
メタナイト卿が次の言葉を続けます。
「先ほど、宇宙に帰ってもらった次第だ」
「そうなのですね。お疲れ様でした。ところで、ブン様」
「ひっ」
抜き足差し足忍び足で横を抜けようとしたブン様を、目の前に陛下の等身大の氷像を出すことで、止めました。
わたくしは振り返り、ゆっくりと少年に近づきます。
そして、手を握りました。
「挨拶もなく行かれるのは、寂しいですわ」
「ただいま!」
「それとお話がございますの。……陛下を魔獣と言った件について」
「ぐ……やっぱり耳に入ってたんだ」
「ぽよ」
「ブン、諦めて素直に謝りなさい」
「うん……。ごめん!リーノ」
わたくしは頭を振りました。
「謝罪は陛下にお願いします。よろしいですか?」
「わかった……」
「フーム様、ブン様をお借りしますわ」
「私たちも行く!いいでしょう?」
「もちろん、構いませんわ」
三戦士たちは地下へと進み、私たちは陛下たちがいる食堂へ向かいました。
食事の前に、ブン様は陛下に謝りました。わたくしも一緒に頭を下げました。
陛下は怒りました。そしてブン様に罰を与えました。
「一週間、リーノたちの手伝いをするゾイ!!!遊びに行くのを禁止する!」
「えー!!!」
「魔獣でない方を、魔獣だと言いふらしたのです。この程度の罰は当然かと。ブン様、明日からよろしくお願いしますね」
「そんな〜」
がっくりと肩を下げるブン様でした。