【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

48 / 81
学校

 

 

 それは朝食のときに発表されました。

 いつもより早い時間の朝食でした。

 

「今日から学校が始まるゾイ」

 

 自慢するように陛下が仰いました。

 わたくしは自分の耳が信じられませんでした。

 

「陛下、今……なんと?」

「だから、学校を創ったんでゲスよ。今日から始まるというか……もぐもぐ……ごく。生徒を募集するでゲス」

「そんな……陛下……!」

「な、なんゾイ!」

 

 わたくしはよろよろと力なく座り込みます。

 アーニャとランタンが気づいて、わたくしの隣りにやってきて支えてくれました。

 

「リーノ!大丈夫ですか?」

「一体どうしちゃったの!?……泣いてるの?」

「うう……嬉しくて……。陛下が村のみんなのために、こんなに素敵なことをしてくださるなんて……」

「デハハハハハ!お前にも手伝ってもらうゾイ」

「!なんなりと、ご命令ください!」

「給食を作ってくれでゲス」

「全力で作らせていただきます!」

 

 わたくしはとっても気合いをこめて言いました。

 

 

 

 朝食後。

 学校の名前はデデデ帝国大学付属小学校というらしいです。大学も行くことができるなんて、素晴らしいですわ。

 校内で教材を販売するお手伝いをします。わたくしからお手伝いを申し出ました。アーニャとランタンは城でお仕事です。

 

 長蛇の列の先頭、とある親子が目の前に来ました。

 わたくしは何度もしたとおり、教材を後ろのダンボールから集めて親子に渡します。

 

「はい。こちらが学校で使う教材ですわ。千デデンです」

「はいよ。ありがとう、リーノ」

「ありがとう!」

 

 親御さんからお金を受け取り、お釣りを手渡します。

 あとは気をつけてほしいことを伝えるだけです。

 

「入学式の日に改めて持ってきてくださいね。それまでは大切に保管してください。……次の方、どうぞ」

 

 次の親子がやって来ます。

 ハニーとハニーのお母さんです。

 ハニーがわたくしに気づいて、笑顔になりました。

 

「こんにちは!リーノいたのね!」

「こんにちは、ハニー。それにハニーのお母さんも。今日はワドルディたちのお手伝いに来ました。教材は千デデンですわ」

 

 ハニーのお母さんは優しく「はいはい」と言いました。

 持っていたカゴからお財布を取り出し、開いて千デデンを渡してくれます。

 その千デデンを両手で受け取ります。

 

「はい、確かに。ちょっとお待ちくださいね……こちらが教材ですわ。入学式の日に持ってきてください。それまでは大切に保管してくださいね」

「ありがとう、リーノ。ママ、帰ったらちょっとだけ開けていい?」

「ちょっとだけよ?ありがとう。リーノ、またね」

「はい。また」

 

 軽く手を振ってハニー親子とはお別れしました。

 

 それから何時間たったでしょうか。

 お昼休憩を挟みつつ、長蛇の列をさばきます。

 とても大変で疲れましたが、みなさん笑顔で帰っていきます。それが嬉しくて、疲れがとれるようでした。

 

 

 

 ほとんど作業と化した教材の受け渡しにも、終わりが見えてきたころでした。

 大臣一家がお見えになりました。

 

「パーム様、メーム様、フーム様にブン様も。みな様お揃いで」

「やあ、リーノ。教材はまだ残っているかな?」

 

 パーム様がお財布を手にしつつ仰います。

 わたくしは頷きました。

 

「ございます。すぐにご用意しますね」

 

 手早く教材を集めます。それを二つ、受付の机に並べました。

 

「一つ千デデンなので、二つで二千デデンですわ」

「はい」

 

 パーム様は千デデン紙幣を二枚、わたくしに渡されました。二千デデンを、手元に置いてある小さな金庫の中に入れます。

 教材を一つ取って、フーム様に渡しました。二つ目はブン様に渡しました。

 

「どうぞ。フーム様、ブン様。入学式の日まで大切に保管してくださいね」

「ほーい」

 

 軽い返事をされたのはブン様です。

 フーム様は難しそうな顔でわたくしを見つめています。

 

「リーノ。あなたまで、デデデの気まぐれに付き合うの?」

「フーム様……そうですわね。今回も、陛下の気まぐれかもしれません。始まりは良いものではなくても、これから素晴らしいものに変えていけるはずですわ」

 

 わたくしは自分の手をぎゅっと、信じたいと思う心を込めて握りました。

 

「わたくしは小学校をより良いものにしたいと考えています。だから、自分にできることを精一杯いたします」

 

 そう言ってにこりと微笑みました。

 パーム様、メーム様、ブン様は応援してくださいました。

 フーム様は最後まで心配そうです。

 その心配が晴れることを、わたくしは願うのでした。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 入学式の日。

 早朝。校庭に子供たちと大人が並びます。

 学校の制服は、魔法学校のときに用意した制服を再利用するようです。

 デデデ校長にエスカルゴン教頭と挨拶があり、次に校歌斉唱です。

 

 どれも陛下を称えるものでした。敬う気持ちを強制することは望ましくないのですが……。これから変えていけばいいですよね。

 後で改善点をメモに書いて、まとめて陛下と閣下に報告しましょう!

 

 

 

 わたくしは授業の様子を見ることはできません。

 先生として呼ばれていないからです。

 その代わり、子供たちや一緒に授業をうける大人たちのために給食を作ります。

 みなさんのために、なにかできるのは嬉しいですね。

 

 お昼。

 給食を教室に持っていきました。

 その教室はフーム様たちがいらっしゃいました。

 フーム様と目が合ったので軽く微笑むと、じっと見つめ返されました。

 

 一体どうされたのでしょうか?

 それだけではありません。教室中がわたくしの動きを注視しているようでした。

 わたくしはとにかく、普段通りに振る舞いました。

 

 まず子供たちに給食を配ります。

 フーム様の番になったとき、少しだけお話ししました。

 

「……リーノは何も変わってないわね」

「?はい。わたくしは朝から元気ですよ?」

「なにも変化がないならいいの……」

 

 心なしか疲れていらっしゃるフーム様を、心配します。……よく観察すれば、陛下と閣下以外の方はなんだか元気がありませんわ。

 授業が厳しいのでしょうか?

 学校が終わったら、フーム様に聞いてみましょう。

 

 給食がみなさんにいきわたったので、両手を合わせて声を揃えます。

 

「いただきます」

 

 わたくしの後に続いて、何十人もの声が重なります。

 わたくしは「召し上がれ」と言いました。

 子供も大人も一口食べると笑顔になります。

 

「おいしい!」

「うめーよ!リーノ!」

「ふふ、ありがとうございます。フーム様、ブン様」

 

 お二人をきっかけに、あちこちから料理を褒める言葉が聞こえてきます。わたくしは一人ずつ、お礼を言いました。

 みなさんに元気が戻ったようです。よかった。

 学校にいる間は、できるだけ笑顔でいてほしいですからね。

 

 

 

 給食の片付けもすませて、帰城します。

 その間に陛下と閣下にお会いしました。なんでも玉座の間を片付けてほしいそうです。

 わたくしはそれを了承しました。まっすぐ次の仕事場に向かいます。

 

 玉座の間を開けて中に入ると、メタナイト卿とフーム様、それにカービィがいました。

 玉座の間は資材や教材らしきもので散らかっていました。その中から、カタログらしきものをフーム様がお持ちでした。

 

「こんにちは、みな様。お揃いで」

「こんにちは。よかった、リーノだったのね。デデデたちかと思っちゃった」

「陛下と閣下だと、良くないのですか?」

 

 メタナイト卿に質問すると、彼は頷きます。

 

「今は、な……」

「ぽよ」

「あら、まあ。では、わたくしはなにも見なかったことにいたしますね。そうだ。あの、フーム様?」

「なにかしら?」

「一つ聞きたいことがありまして……学校はどうでしたか?」

「うっ」

「う?」

 

 フーム様は複雑そうなお顔をされました。

 しばし目を閉じられて、そして決意した表情で話し始めます。

 

「あまり、良くなかったわ……」

「それは、一体どういうことでしょうか?みなさん、緊張されて授業が上手く進みませんでしか?」

「ううん。もっと別よ……」

「?」

 

 そのとき、メタナイト卿がわたくしの肩を優しく叩かれました。

 振り向いて彼の方を見ます。

 

「リーノ。この学校はホーリーナイトメア社のものだ」

「……そんな、まさか」

 

 頭が鈍器で殴られたかのようでした。

 教材を買いに来てくれたみなさんの笑顔が浮かんで、崩れます。

 わたくしは顔を両手でおおいました。

 

「陛下……閣下……」

「リーノ……」

「学校が、ナイトメア社のものなら……どこかに魔獣が潜んでいるかもしれません。探さないと……」

「それはこちらでしておこう。そなたは普段通り、陛下たちの傍にいてくれ。できればでいい。情報収集を頼む」

「わかりました。そちらは任せてください……」

「リーノ、大丈夫?」

 

 わたくしは微笑んでみせました。

 たとえ虚勢でも、今は張りたかったのです。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 次の日。

 魔獣は、教師となる方がかぶる帽子に化けていたようです。カービィがファイターとなって倒してくれました。

 魔獣と共に、学校は爆発しました。

 学校の中にいたみなさんは外に避難したので、誰もケガをしませんでした。

 

 わたくしはとっても、怒りました。

 それと同じくらい悲しくて、こっそり泣きました。

 

 陛下と閣下のご飯は、しばらく作って差し上げませんでした。

 陛下はそれに大層怒りました。

 

「お前がそうなら、ワシにも考えがあるゾイ!」

「陛下?一体何を……?」

「うるさいゾイ!ふんだ!!」

 

 それっきり、しばらくは口を聞いていただけませんでした。

 

 

 

 学校の方はというと……。

 建て直すと費用がかかるので、青空の下で授業が再開されました。

 村のみんなが入れ替わり先生をします。子供たちは気まぐれにやって来ます。

 

 生徒たちが全員揃う日は少ないです。なので、やはりみんなが通いたくなる学校は必要なのだと、そう思うのです。

 

 たしか学校に関する事件は、あと二回ほどあったはずです。

 少しずつ、より良いものに変わっていけばいいのですが……。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。