アーニャとランタン、そしてわたくしと三人で夕飯を食べているときでした。場所は、わたくしの自室でした。
突然、空が明るく光ます。
驚いたわたくしたちは、食事の手を止めて窓を見ます。
あれは……何でしょうか?光の玉が森に落ちました。
わたくしは食事を中断して、窓の傍へ立ちます。
「あれは、何でしょうか……」
「隕石……かしらね?」
「なんだか怖いです」
「わたくしも胸騒ぎがします……二人は今日は地下にいてください。そこなら地上よりも安全です」
「リーノは、どうするのですか?」
「陛下の傍で仕えます。先日危険な目に遭われたばかりですから、傍でお守りしたいのです」
「あの巨大なカニのこと?あれは、自業自得って感じだけど……」
「それでも、心配ですから」
そう言いますと、ランタンとアーニャはお互いの顔を見合わせました。そして心配そうにわたくしを見ます。
「リーノ、危険があれば逃げてくださいね」
「はい。ありがとう、アーニャ」
夕食後。
アーニャとランタンを見送り、まずメイクを直します。それから部屋の外に出て、陛下を探しました。
もう夕食は終えられているはずです。食堂にはいらっしゃらないでしょう。いつも居られる場所といえば、玉座の間ですね。そこへ行ってみましょう。
陛下とは、廊下でばったり会いしました。
エスカルゴン閣下もご一緒ですわ。
「陛下、閣下。夜遅くにどちらへ?」
「エスカルゴンが、さっきの光の玉が落ちた場所に行こうと、せがんでくるんだゾイ」
「だって、エイリアンだったらマズイでしょーが!」
「ええい、そう叫ぶな……。リーノ、調査が終わったら寝る。風呂には入らん。準備だけしておくゾイ」
「かしこまりました。ホットミルクをご用意しておきます」
「あ〜私にはホットチョコレートを……」
「恐れながら閣下、虫歯になってしまいますのでホットチョコレートは明日にいたしましょう」
「確かに……じゃあホットミルク、私にもくれでゲス」
「かしこまりました」
陛下たちは車で出発されました。
わたくしはそれをバルコニーから見届けます。
さて、陛下のお部屋と同じ階にある厨房へ向いましょう。そこにあるミルクの残量を確かめないと。
――――――
陛下たちは一時間もたたないうちに、帰ってこられました。車と一緒にボロボロになって。目立つ怪我をされていないことは幸いですね。
そして緊急事態宣言をされます。戦いの準備をしろと、メタナイト卿たちにも働けと叫ばれました。
行かないでなんて言えません。彼らはお城の戦士ですから。
わたくしにできることは、遠くから祈ることでしょうか……。
陛下たちが、陛下のお部屋に戻られたころ。
わたくしは二人分のホットミルクをカートに乗せ、陛下のお部屋へ運びます。
「陛下、閣下。ホットミルクの準備が整いました」
「ちょっと待つゾイ」
「私は先にくれでゲス」
陛下は仕切りの向こうで着替えていらっしゃいます。
閣下は体の汚れを落とされた後みたいです。
わたくしはまず閣下にホットミルクをお渡ししました。はちみつ入りの甘いものです。
その匂いにつられてか、陛下もすぐに出てこられました。
陛下にも、閣下と同じホットミルクをお渡しします。
お二方は安心されたのか、森で何が起きたのか話されました。
陛下曰く、ご自身を狙う暗殺者だと。
閣下曰く、ホーリーナイトメア社が寄越した借金取り魔獣だと。
陛下は閣下のお話を信じたようでした。
「助かるにはどうしたらいいゾイ?」
「お金を払うでゲス」
「それは嫌ゾイ!」
「陛下、お金を少しでもお返しになられた方がよろしいかと……」
「嫌なものは嫌ゾイ!リーノ、おかわり!!」
「ご用意します」
陛下と閣下、それぞれホットミルクを二杯ずつ飲まれました。
その間に城の中では爆発音が何度か響きます。侵入者が来ているのですね。とても怖いですわ。メタナイト卿は無事でしょうか?
窓を見ていると、遠くの影が一瞬で大きくなりました。
「――陛下!閣下!」
氷で壁を作るのと、窓ガラスを割られるのは同時でした。
氷は陛下と閣下の前にしかありません。なので、窓ガラスを割った侵入者は、氷の壁を迂回して、わたくしたちの前に現れました。
――侵入者は女の子でした。
わたくしは驚きで硬直しました。ですが、彼女が武器を構えたので、わたくしも構えます。
放たれた小さなロケットを分厚い氷で止めます。小さなロケットはわたくしたちと女の子の間で爆発音しました。
わたくしは叫びます。
「陛下、閣下!お逃げくださ――」
がし!っと腕を掴まれました。
「逃げるゾイ!」
「お前だけ置いていくわけないでゲショうが!」
わたくしは陛下に引っ張られて、部屋を脱出しました。
わたくしたちの後ろでは何度も爆発音が聞こえました。ですが、それも直ぐに止みました。
――陛下を狙ったわけではないのでしょうか?
――――――
玉座の間に入ります。
最後に入った閣下が扉をきっちり閉めて、わたくしたちは床にへたりと座りました。
「もう、追ってこないかゾイ?」
「大丈夫みたいでゲス」
「というか、あの子は陛下に興味がないようでしたが……?」
「どういう事ゾイ」
「ここまで追ってこなかったので、そう思っただけですわ」
そう言うと、陛下は少々考えられました。そして「それでも侵入者に違いないゾイ」と仰られて、立ち上がります。
玉座に向かわれたので、わたくしと閣下もついて行きました。
陛下は玉座に座られ、デリバリーシステムを起動されます。
わたくしは離れました。カスタマーサービスに会いたくなかったのです。
画面にカスタマーサービスがうつし出されました。
陛下と閣下が侵入者が出たことを話されると、カスタマーサービスの眼鏡がキラリと光った気がしました。
魔獣を送る話はあっという間に決まりました。そして陛下三人分の身長がありそうな、大きく強そうな魔獣が送られてきました。
魔獣は咆哮すると、扉を壊して部屋から出ていきました。
あっという間でした。陛下と閣下はこれで大丈夫だと安心されましたが、わたくしはここで思い出しました。
あれはメタナイト卿と因縁がある魔獣、そして侵入者の女の子はシリカだったのだと……!
わたくしも、部屋から飛び出しました。
魔獣はすでにこの階から飛び降りて、地面を走っています。――その方向はカブーの谷を目指していました。
わたくしもひらりと飛び降ります。
そして巨大な氷の滑り台をつくり、地面との衝突を避けます。
滑る勢いをそのままに、わたくしはアイススケートの要領で魔獣を追います。地面を常に凍らせる必要があるので、少々骨が折れます。ですが、それも時間とともに慣れてきました。
もうすぐでカブーの谷に到着します。
その時、天に昇る光の柱がカブーの谷付近で起こりました。あれは一体……?
それを見た魔獣がスピードアップします。わたくしは考えるのを止めて、急ぎました。
先を走る魔獣付近で、突然爆発がおきます。おそらくシリカのロケットランチャーですわ。
わたくしは速度を落とし、戦いの邪魔にならないよう離れたところに隠れました。
シリカが吹っ飛ばされ、ソードナイトさんとブレイドナイトさんも歯が立ちません。
今度はソードカービィが戦いますが、決定打に欠けます。
そのとき、シリカが動きメタナイト卿の剣を手にしました。電撃と光が辺りに溢れ、昼のように明るくなります。
「受け取ってー!!!」
シリカがカービィの方へ剣を投げました!しかし近くには魔獣がいます。――魔獣の方が速い!
「させません!!」
わたくしは魔獣の足を凍らせました。続いて魔獣の顔付近が爆発します。メタナイト卿がロケットランチャーで攻撃したのです。
隙が生じました。カービィは剣を持ち替えて、渾身の力を振るいます。
――剣から凄まじいエネルギーのビームが発射されました。
それは魔獣を切り裂きました。
瞬きのあと、魔獣は爆発しました。
しばし魔獣が復活などしないことを見届けてから、わたくしはメタナイト卿のもとへ走りました。
「メタナイト卿!皆さん!!」
「リーノ、やはりそなただったのか」
メタナイト卿や、皆さんはボロボロでした。
ですが、大きな怪我はないようです。良かった。
「陛下が魔獣をデリバリーされて、嫌な予感がしたので追ってきました。魔獣を倒せてよかったですわ」
「あの氷は、あなたが……?」
シリカが話しかけてきました。
わたくしはちょっとだけ怖かったので、メタナイト卿の後ろに隠れます。
「氷はわたくしの力ですわ。その、あなたは侵入者さん……ですわね?」
「シリカよ。あ、ああ……その、襲ってごめんなさい」
「リーノ、彼女は私の戦友の娘だ。誤解があって襲撃してきたが、それも解けた。今は味方だ」
「そう、なのですか?かしこまりました。シリカさん、わたくしはリーノと申します。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね」
にこりと笑うと、彼女も笑ってれた。笑うと年相応の無邪気さが垣間見えるようだった。
――――――
シリカさんは、すぐに帰ることになりました。
留まっても、陛下に何かされるかもしれない。それに、ナイトメアがメタナイト卿の剣を扱えるものとして狙ってくる可能性もあるとのことです。
わたくしとしては、留まっていただき城の修復を手伝っていただきたかったわ。
シリカさんの乗ってきた宇宙船は、激しく地面に着陸したものの、少し調整すれば直る程度でした。
メタナイト卿、ソードナイトさん、ブレイドナイトさん、シリカさんの四人で直せばあっという間に修復完了です。
シリカさんは宇宙に帰っていきました。
わたくしたちも、城に帰ります。
今日は長い夜でした。