ある朝。
洗濯物を、アーニャとランタンとわたくしの三人で干しているときです。ブン様が遊びに来られました。
村へ遊びに行く途中だそうです。
「リーノたちはさ、チャンネルDDDで始まったメーベルの占いはもう見た?」
「いいえ。まだですわ」
「私たち、日中は働き詰めだから、テレビ見られないのよね」
「ブン様、それはどのような番組でしたか?」
「メーベルが六枚のカードを表示するから、その中の一枚を選ぶんだ。一番運勢が悪いカードが発表されるってやつ。昨日パパが占い当たってたんだよね。それで二人とも占いの事すっげー気にしててさ。今日も見るんだって言ってた」
やれやれ、という感じでブン様は呆れていらっしゃいました。
わたくしはパーム様とメーム様の気持ちが、少しわかる気がします。
「占いといえば、わたくしたちの子供のころも流行りましたね」
「そうですね。懐かしいです」
「へえ、どんな感じのやつ?」
「女の子向けの雑誌に掲載されていた占いコーナーなんだけど。星座ごとに占われていたのよ。順位があってさ、一番悪い運勢のときはショックだったわ」
「運勢が良いときは、ずっと嬉しかったです」
「あの雑誌、今も販売されているんですよね。まだ占いコーナーはあるのかしら?」
「……女の子向けなら、ハニーだよな。ハニーに聞いておこうか?」
ブン様がご自身を指さします。
わたくしは首を横に振りました。
「いえ、直接聞きたいので、わたくしがハニーに質問しますわ」
「なら、一緒に村に行こうよ!」
「……そうですね。砂糖とか、調味料を注文したいので村に行きましょうか」
「うん!アーニャとランタンは?」
「私たちは残って仕事を進めておきます」
「リーノ……いえ、メイド長。お土産、お願いしますね」
「ふふ、いいですよ。何かお茶菓子を買ってきますね」
――――――
村へおります。
ハニーを探すと、コンビニにいました。どうやらお母さんにお使いを頼まれたようです。
挨拶をすませて、早速質問します。
「ハニー、あなたは雑誌を買いますか?」
「……買わないわ。だってあんまりお小遣いもらえないし」
「そうでしたか」
わたくしは困ったように頬に手を当てていると、ハニーが首を傾げます。
「どうしてそんなことを聞くの?」
「実は、女の子たち向けの雑誌に今も占いコーナーがあるのか、知りたかったんです」
「なんだ、そうだったの。あるよ、占いコーナー」
「まだあるのですね!」
「うん。私は読んだ事ないけれど、他の女の子たちが話しているの聞いたことがあるの」
「ありがとうございます、ハニー。お礼にお菓子をプレゼントしますわ。どうぞ、選んでください」
「やったー!」
ハニーは、コンビニの中でもおいしいと評判のチョコを選びました。
その日の夜。
久しぶりに三戦士たちと食事会を開きます。メニューはグラタン、コーンスープ、サラダにパンです。
グラタンは最近食べましたが、メタナイト卿たちとはまだ食べていませんでした。なので、今日食べますわ。
グラタンは好評でした。
ソードナイトさんとブレイドナイトさんが言います。
「以前、食事会で食べたグラタンもおいしかったが、これはまた違うおいしさだな。……うまい」
「うむ。おいしい」
「ありがとうございます。あの、メタナイト卿はいかがですか?」
「……む?ああ、おいしいよ」
メタナイト卿は黙々とスプーンを動かします。グラタンに夢中のようです。
わたくしはひとまず、喜びました。
「夢中になっていただけて、嬉しいですわ」
「ああ、おいしい」
おいしいと、何度も繰り返す様子がいつもと違っていて、珍しかったです。
「気に入ってもらえたみたいですね。良かったですね。リーノ」
「ありがとう、アーニャ。作ったかいがありますわ」
メタナイト卿はその日、またまた珍しくグラタンをおかわりされました。
わたくしはとても嬉しくて、気持ち多めにさらに盛りつけました。
――――――
ここ最近、村や城ではメーベルの占いコーナーの話題で持ち切りです。
まずパーム様が占いに当たり、村長さん、キュリーさん、ボルン署長、カワサキさんと毎日誰かが当たっているようです。
そして、今日は閣下が占いに当たりました。
こうも当たり続けると、不思議で仕方ありません。
メーベルはどうやって占いを当てているのでしょうか?
そんなある日、メーベルはワドルドゥ隊長率いるワドルディたちに運ばれて来ました。城の豪華な部屋に、閉じ込められます。
陛下は命令されます。
「よいか、リーノ。メーベル様を見張って……いや、お世話をするゾイ。ワドルディたち!この部屋を見張れい!」
「かしこまりました」
陛下が廊下の奥に消えてから、わたくしは中に入りメーベルと話します。
「メーベル、大丈夫ですか?怪我とか、されていませんか?」
「大丈夫よ。そんなヤワじゃないわ。それよりどうしましょ……こんなことになるなんて、みんな占いにのめり込み過ぎよ」
「それだけ、皆さん悩みを抱えているのでしょうね……。それでどうされますか?このままでは本当に、メーベルは城のお抱え占い師に……」
「よしてよ!私は村の占い師が気に入っているんだから……うーん、ちょっと考えるわ」
「かしこまりました。ご用ができましたら、お呼びください」
「……ふふ、城に呼ばれてよかったかも」
「なぜですか?」
「リーノにそんなに丁寧に扱われたら、気分はお城の女王様よ。いい経験になるわ。……ま、デデデの嫁さんは勘弁だけどね」
「まあ、メーベルったら」
わたくしたちは和やかに笑い合いました。
メーベルはその日の夜、良い作戦が浮かんだようでした。
明朝、陛下たちがまだ寝ている間にカービィのところへ連れて行ってほしいと、わたくしに頼まれました。
わたくしはそれを了承しました。見張りのワドルディたちにお菓子を渡して、部屋から抜け出します。
そして城を出て、カービィの家に行きます。
メーベルはカービィになにやら頼みました。
カービィは「ぽよ!」と言ってメーベルから渡された竹とんぼを持って走っていきました。
「メーベル、カービィに何を頼んだんですか?」
「内緒よ。さあ、デデデたちに見つかる前に帰りましょう」
メーベルの横顔はどこか楽しそうです。まるでいたずらっ子みたいでした。
今日も朝から掃除と洗濯をします。
昼前の休憩をしようと三人で移動していると、陛下と閣下に捕まりました。お二人共、他所に行くような格好をしています。
陛下に手首を掴まれて引っ張られます。
「へ、陛下、閣下?一体どうされましたか?」
「メーベルが予言したゾイ!プププランドはもうすぐ海に沈む!逃げるゾイ!」
「は、はあ……」
「三人とも急ぐでゲスよ!」
わたくしとアーニャとランタンは陛下たち、後から合流した大臣夫婦と共に、メーベルについて行きました。
ふと、振り返ると城壁の上から兵士たちと、メタナイト卿たちがこちらを見ていました。
無性に、メタナイト卿の傍へ行きたくなりました。けれど、陛下に引っ張られているため、それも叶いません。
すごく悲しい気持ちになりました。
メーベルについて行く人々は膨らんでいきます。
村中の人がメーベルを追って、海岸まで着いてきました。
そしてメーベルは「海を渡る」と言うのです。
彼女は、巨大な竜巻を起こし、海を割りました。
誰もが、メーベルを崇めます。私はただ唖然としていました。するとメーベルが呆れたような、困った調子で言います。
「みんな、本当にバカね〜」
「メーベル……?」
メーベルはそこでネタばらしをしました。
竜巻の正体はトルネードカービィでした。今朝、カービィに頼み事をしていたのは、これだったんですね。
メーベルは言います。
「占いは当たらなくて結構。悩みや心配事を聞いて相談者の心を軽くする事が、私の仕事なのよ。サモが言ってたわ。私はカウンセラーだって」
それに村人たちは少々動揺しながらも聞きます。
しかし、素直に受け入れられない方が二人、いらっしゃいました。
閣下がメーベルに質問します。
「それじゃ、ロイヤルカントリークラブは!?」
「止めておいた方がいいわね」
「ぬうう!ワシを誑かしよって!」
ハンマーをかまえる陛下の前にわたくしは飛び出しました。
「陛下お止めください!」
「どくゾイ!」
「嫌です!」
陛下はさらに怒りました。
その隙をついて、カービィがトルネードの帽子で陛下たちをすくい上げます。
ぐわんぐわん、ぎゅるぎゅると陛下たちを回します。
村人たちは笑いだしました。
わたくしはオロオロと、カービィの周りを行ったり来たりするのでした。