【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

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魔獣生徒

 

 ププビレッジには青空学校があります。

 先生はフーム様、生徒はブン様、ハニー、イロー、ホッへ、カービィの五人です。

 

 なんとか屋根をつけてあげたいのです。……できれば、ちゃんとした学校で学んでもらいたいと思っています。

 チャリティーを開いて資金を集めれば、学校を創れるでしょうか……?

 

 うんうん唸っていると、青空学校に到着しました。

 村外れ、草原に囲まれた一本の大きめの木の下で、授業は行われます。

 まずハニーがわたくしに気づいて、手を振ってくれました。わたくしは大きく手を振り返します。

 

「みなさーん!休憩しませんか?」

 

 子供たちの喜ぶ声が聞こえます。

 背中のリュックの中で、缶と缶がぶつかる音がしました。

 

 

 

 木陰にレジャーシートを広げます。

 パウンドケーキを一切れと缶ジュースを、それぞれ渡しました。

 男の子たちとカービィはペロリと平らげて、すぐにボール遊びを始めました。

 わたくしとフーム様とハニーはゆっくりとケーキを楽しみます。

 

「フーム様、先生役お疲れ様です。ハニー、今日も勉強お疲れ様でした」

「ありがとう、リーノ」

「ありがとう。……あのね、勉強うまくいってないんだ」

「そうなのですか?」

 

 ハニーは困っている様子でした。

 

「うん。みんなと一緒に途中で寝ちゃうの」

「天気が良くて、ここは涼しいですからね。寝てしまうのは無理もないかと」

「リーノも、勉強するとき寝てたの?」

「わたくしのころは、寝ていませんでした」

「どうやったら、寝ないで済むの?」

 

 わたくしは昔を思い出しました。

 閣下に勉強を教えてもらい、陛下に遊んでいただいた日々。今でこそ、優しく接してくださるお二方ですが、出会った当初は違いました。

 そのことをハニーとフーム様に説明します。

 

「勉強を教えていただいたのは、出会って数年間だけです。当初は今のように仲良くなかったので、勉強を教えている途中に寝たらもう教えない……と、言われました」

「そうだったの?今じゃ想像できないわね」

「……私もフームから寝たら教えないよって言われたら、目が覚めるかな?」

「どうでしょう……まずは環境を整えてから、様子を見ても良いと思いますが」

 

 子供たちがのびのびと楽しく、またしっかりと学ぶためにも学校は必要ですね。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 陛下が再び学校を創ってくださいました。

 今度は入学無料、すべてはフーム様が決めて良いとのことでした。

 わたくしはそのことを聞いて心から喜びました。

 今度こそ、子供たちのための学び舎が誕生したのだと。陛下は村のためにお金を使ってくださったのだと、興奮しました。

 

 ただ、残念なこともあります。

 城の仕事が忙しくて、あまり学校を手伝えないことです。

 給食を作る時間はあっても、教師となり子供たちに家庭科を教えることはできません。フーム様のお誘いを断ることは胸が痛みました。

 

 

 

 学校が始まりました。

 給食の配膳のため、教室に向かいます。一人では運べないので、先生に選ばれた村人たちに手伝っていただきました。

 ……フーム様が怒ってらっしゃいますわ。

 

「あの、フーム様?何かありましたか?」

「あったわ!あったけど……うう、私負けない!」

 

 わたくしは頭の中に疑問符を思い浮かべました。村の子供たちの中にフーム様を手こずらせるような、そんな……なんというか……元気が有り余っている子供はいたでしょうか?

 

 教室に到着します。

 扉を開けて中に入ると、元気な声が聞こえてきました。

 

「――この匂い、カレーだ!」

「わー!リーノのカレーライスよ!」

「皆さんお静かに。順番に並んでください。一緒に食べましょうね」

 

 教室の壇上に立つと、生徒たちの一番後ろの席を陣取る、いわゆる不良っぽい生徒たちを見つけました。村の子供たちではありません。

 あの子たちがフーム様の悩みの種かしら?

 

 壇上に机を横一列に並べて、さらに順番に給食を並べていきます。

 今日の順番は、出入口側から飲み物、サラダ、ご飯、カレーです。

 わたくしはカレーを、次々にやって来る生徒たちのお皿に乗せます。

 

 ――後ろで気配がしました。

 ガキン!と、凍らせちゃいます。振り返って確認すると、そこには紫の髪色をした男子生徒が驚いた顔でいました。

 凍った手には虫を掴んでいました。

 

「ぎ、ぎゃあああ!」

「おい!」

「あら失礼。虫を向けられたので、驚いて凍らせちゃいましたわ」

 

 男子生徒が給食から離れたところを確認してから、手を解凍してあげます。

 虫は教室の外に出ていきました。

 わたくしは腰を抜かした男子生徒に怒った顔で注意します。

 

「給食を配る途中に虫を持って近寄ってはいけませんよ。いいですね?」

「あ、ああ……」

「わかってくださって良かった。では、どうぞ。並んでください」

 

 ハプニングはありましたがその後は順調でした。

 最後に、一番体の大きな男子生徒がカレーを受け取ります。

 

「お皿、預かりますね」

「おう」

「……はい。どうぞ」

「どーも。アンタ、名前は?」

「リーノと申します」

「リーノ。覚えておくぜ」

「それはそれは、ありがとうございます」

 

 わたくしはにこり笑います。

 その男子生徒は不敵な笑みを浮かべ、去っていきました。

 彼が離れるとフーム様とブン様、カービィがやって来ました。

 

「リーノ、すごいわ!」

「さっすがだぜ!」

「ぽよぽーよ!」

「なんの事かわかりませんが、そう言っていただけることは嬉しいですわ」

 

 その後は何事もなく給食をいただきました。

 みなさん笑顔で食べてくださったので、嬉しいですわ。

 

 

 

 ――――――

 

 

 学校は順風満帆かと思われました。

 ですが、フーム様が暴力教師としてテレビで批判されたのです。フーム様は学校を去ることになりましたわ。

 フーム様は体罰に反対していた。なのに、生徒たちに暴力を振るうなんて考えられませんでした。

 

 これも、陛下と閣下のせいなのでしょうか?

 今回もまた、学校はうまくいかないのでしょうか?

 悲しい気持ちが胸の中に広がります。

 

 

 

 フーム様が学校を辞められた日の昼。

 フーム様になんてお声かけをすれば良いのか悩んでいました。声は向こうからかけられました。

 

 廊下のホコリを払っているときに、フーム様とメタナイト卿がいらっしゃいました。

 

「リーノ、お願い手伝って!私、強くなりたいの!」

「フーム様?それにメタナイト卿、一体なんの御用でしょうか?」

「フームが不良生徒に立ち向かうべく力を欲している。私はその特訓に付き合うつもりだ。……そなたの力も貸してほしい」

 

 なんということでしょうか。

 わたくしが悲しみ悩んでいる間にも、フーム様は前を向いてご自身にできることを探していらっしゃったのです。

 わたくしは、何かお手伝いがしたいと思いました。

 

「喜んで参加させていただきますわ!」

 

 早速、まとめて有給をもぎとります。陛下たちもわたくしに対して悪いと思っておられるのか、休暇の理由について質問されませんでした。

 

 

 翌日。

 早朝からフーム様の訓練が始まります。わたくしは訓練の補助をお願いされました。

 雪玉をフーム様に飛ばして回避訓練をしたり、氷のアスレチックを造ってはフーム様の体力の底上げをおこない、ストレッチのお相手をしたり。あとは、より筋肉がつく身体をつくるための食事を考えたりいたしました。

 

 フーム様はメキメキと力をつけました。

 そして二週間後、学校に戻る日が決まりました。

 

 メタナイト卿のお墨付きをもらい、フーム様は学校へ向かわれます。

 わたくしは無事を祈り、城から学校を見守りました。

 

 

 ――学校が燃えましたわ。

 

 

 きっと学校には魔獣がいて、カービィと戦いになったのでしょう。

 再び消えゆく学校の姿に、わたくしは“二度あることは三度ある“という言葉を思い出していました。

 そして生徒たちの無事を確認するために、急いで燃ゆる学校の方面へ走り出しました。

 

 

 

 

 学校がなくなり、また青空学校が始まりました。

 フーム様が仰るには、やはり生徒たちは授業の途中で寝てしまうそうです。そう語られるフーム様のお顔は優しくて、穏やかでした。

 一方ハニーは、授業の途中に眠ってしまう悩みは引き続きあるものの、学校に行くことは楽しいと教えてくれました。

 

「小学校に通っているときは、怖かったの。だから、今はすごく楽しいわ」

「それは良い変化ですね」

 

 わたくしはハニーと手を繋ぎながら、村の中を歩きます。

 

「ねえ、ハニー?もし、先生が優しくて、生徒たちも怖い人がいなかったら、学校に来てくれますか?」

「うーん、そうねえ……。リーノが給食を作ってくれるなら、行くわ」

「まあ、ハニーったら。ありがとうございます。もしもまた学校が創られて、給食を作るように言われたら、わたくし頑張りますね」

「うん!」

 

 ――やっぱり子供たちには学校が必要です。

 

 わたくしは、わたくしに何かできることはないのか、考えました。

 

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