【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

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デリバリー

 

 それは昼すぎの出来事でした。

 城の電話が鳴りました。ワドルディが黒電話ならぬ金ピカ電話を、わたくしのところに持ってきます。

 普段なら陛下に持っていきますが、今は閣下と共に昼食後のデザートを食べていらっしゃいます。なので、わたくしのところに持ってきたのでしょう。

 わたくしはワドルディにお礼を言ってから、電話に出ました。

 

「ありがとうございます。――はい、こちらデデデ城」

『あ、リーノ?おれ、カワサキだけど〜』

「カワサキさん?珍しいですね。何か陛下に御用でしょうか?」

『あのね〜今日から出前を始めたんだ!これからジャンジャン注文してよね〜』

「出前サービスの開始、おめでとうございます。注文があれば、こちらから電話いたしますので、一度切りますね」

『あいよ〜。待ってるよ。それじゃあ』

「はい。それでは」

 

 ガチャリと受話器を置きます。ワドルディが金ピカ電話を元の位置へ戻しに行きました。

 傍で会話を聞いていた陛下、アーニャ、ランタンは出前に興味津々といった様子です。

 わたくしは陛下に報告します。

 

「陛下。カワサキの店が出前サービスを始めたようですわ」

「ほう、出前か……」

「店に行かなくても電話で注文すれば、熱々の食事が城に届くわけでゲスな」

 

 デザートの杏仁豆腐を上品にスプーンですくい上げつつ、閣下が仰います。

 わたくしは頷きました。

 

「その通りかと」

「でも、味はそのままだゾイ?誰が頼むのかゾイ?」

「リーノの食事を食べられない村の連中が頼むでゲス」

「デハハハハハ!」

 

 その会話を聞いて、お二方を諌めようとしました。けれど、肩を軽く叩かれます。振り返ると、アーニャとランタンがワクワクしたように目を輝かせていました。

 

「その出前、試してみませんか?」

「オヤツの時間は楽しちゃいましょうよ」

「それは、良いアイディアですね」

 

 カワサキさんの新しいサービスの応援になります。わたくしたちは出前を頼むことにしました。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 陛下と閣下は村へ出かけられました。

 わたくしたちは昼の三時、オヤツの時間に出前でプリンを頼みました。

 プリンはハニーが届けてくれました。

 

 城の橋前でハニーを迎えて、一階の厨房でプリン三個を渡してもらいます。お金は多めに渡しました。いわゆるチップですわね。

 

「?多いわ、リーノ」

「代金を引いて余るお金は、ハニーに贈るチップですわ。受け取ってくださいな」

「いいの?」

「ええ、どうぞ」

「えへへ!ありがとう!」

 

 熱中症にならないようスポーツドリンクを、ハニーに飲んでもらいます。休んでもらっている間にプリンを食べ終えたので、持ってきてくれた皿をまた運んでもらうことにしました。

 

「ありがとう、ハニー。カワサキに美味しかったって伝えてちょうだい」

「わかったわ、ランタン。またね、みんな」

 

 わたくしたちは手を振って別れました。

 

「さて、昼休憩もできましたし、また仕事頑張りましょうか」

 

 アーニャの言葉にわたくしたちは気合いを入れます。

 

 

 

 玉座の間を掃除しているときでした。

 バタン!と、荒々しく扉が開かれます。

 

「リーノ!リーノはおるか!?」

「ランタンか、アーニャでもいいでゲスよ!」

 

 陛下と、閣下です。戻られたのですね。わたくしたち三人は急いで、陛下の前に整列しました。

 

「陛下、ここにおります。何か問題でも……?」

「夕飯は出前をとるゾイ!」

「夕方の仕事が終わったら直帰してもいいでゲスよ」

「は、はい。かしこまりました」

 

 急にどうされたのでしょうか?

 早めに帰れることは嬉しいのですが、気になります。

 

「あの、一体どうして出前をとることになったのでしょうか?」

「村の連中に出前をとっていないことを“遅れている“って言われたでゲスよ」

「まあ……それで……」

「今思い出しても腹立つゾイ!ワドルディ!!電話を持てい!!」

 

 数秒で金ピカ電話を持ったワドルディが現れます。

 陛下はカワサキさんの店に電話しました。

 

「……チャーシューメン、大至急一丁!」

 

 ガチャンと受話器を切られました。

 ……名乗らなくて良かったのでしょうか?

 

「あんの〜、陛下?私の分は……?」

「ないゾイ!」

「そんな!?」

「今度は閣下が連絡してはいかがでしょうか?」

「なるほど!では……」

 

 受話器をとり、ボタンを押します。

 

「……もしもし?フームでゲスか?エスカルゴンでゲス。陛下と同じように、城にチャーシューメンを一丁頼むでゲスよ」

 

 ガチャリと受話器を置かれました。

 お二人はワクワクした様子です。

 

「これで待てばチャーシューメンが届くでゲスな!」

「楽しみだゾイ!ワハハハハハ!!」

「良かったですね。陛下、閣下」

 

 楽しそうなお二方を見て、わたくしも楽しい気持ちになりました。

 

 

 

 

 その日の夜。

 早めに仕事を切り上げたわたくしたちは、メタナイト卿たちを夕食に誘いました。

 メタナイト卿のお部屋で、三組の恋人たちが向かい合います。

 

「夕食はかまわないが……何を食べるのだ?」

 

 少しだけ弾んだ調子で質問されるメタナイト卿。

 わたくしはニコッと笑って提案しました。

 

「BBQにしようかと。皆さんいかがでしょうか?」

「BBQか、懐かしいな」

「昔を思い出す」

 

 しみじみと過去を懐かしむソードナイトさんとブレイドナイトさん。盗賊時代のことを懐かしんでいるのでしょうか?

 

 とにかく、全員の賛同を得たので各自動きます。

 三戦士たちは城の庭、BBQができる一角で火起こしなどの準備をしてもらいます。

 メイド組は、部屋からBBQの食材や紙皿などを持ち寄ります。

 調理器具は、庭から最も近い厨房から借りてきます。

 

 二十分後、すべてが揃いました。

 食材を切ろうと、メイド組が動いたときです。三戦士が「任せてほしい」と仰られました。

 

「切って焼くだけならば問題はない。我々にやらせてくれ」

「かしこまりました。では、よろしくお願いします」

 

 調理は三戦士にお願いして、メイド組は調理スペースの後ろに広げたレジャーシートに座りました。

 離れたところから三戦士の様子をこっそり窺うと、彼らの手際は良く慣れた手つきでした。連携もしっかりと、とれています。ソードナイトさんとブレイドナイトさんは食材をカットします。メタナイト卿は火の番です。

 メイド組はこそこそとお話します。

 

「お三方とも、上手ですわ」

「元から食材をカットすることは上手だったのよね。今じゃ他のこともうまくできてるわ」

「味付けも上手にできています。飲み込みが早くて凄いです」

 

 幼なじみたちと「すごいね」と、言葉を交わしました。

 そこに一人の影が近寄ります。

 振り返ると、エスカルゴン閣下がいらっしゃいました。目を閉じて、くんくんと辺りの香りを嗅いでいます。

 

「まあ、閣下。どうされたのですか?」

 

 わたくしの言葉に他の五人が振り返りました。閣下に視線が集まります。

 閣下は口の端からよだれを少し垂らして言います。

 

「実は頼んだチャーシューメンが来ないんでゲスよ……。だからお腹が減って仕方がないんでゲス……。リーノ、私も仲間に入れてほしいでゲスよ」

「それは大変でしたね。わたくしは良いですよ」

「やった!!」

「他のみなさんの許可も取ってくださいね」

 

 閣下は直ぐにメタナイト卿の方へ走り出しました。

 アーニャとランタンが顔を寄せて小声で話します。

 

「良いのですか、リーノ。無理していませんか?」

「無理はしていません。このまま空腹の閣下を放置する方が、わたくしはできません」

「でしょうね……。あーあ、せっかくのトリプルデートなのに」

「……!これがダブルデートならぬ、トリプルデートだったのですね」

「他に何だと思っていたの?」

「てっきりいつもの食事会かと。アーニャはどうでしょうか?」

「私も、食事会かと思っていました」

「とにかく、いい雰囲気が流れちゃったわ。どうするの?」

「参加なさるなら、閣下にも料理を作っていただきます」

 

 アーニャとランタンの目が大きく開かれました。その瞳は「できるの?」とわたくしに問いかけているようです。

 わたくしは微笑みます。

 

「おいしいですよ。閣下のポトフ」

「リーノ!三人から許可は貰ったでゲスよ!ランタン、アーニャ!一緒に食べようでゲス!」

「どうしますか?二人とも」

「みんなが許可したのなら、断る理由はありません。ランタン?」

「……あーもう!いいわよ!一緒に食べましょう!その代わり作るのは任せるわよ」

「任せるでゲス!!」

 

 閣下はさっそく食材を切り始めました。

 閣下のポトフはお母様譲りだと聞いたことがあります。それはとても優しい味で、とてもおいしいのです。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 翌朝。

 朝早くから買い出しに行こうと、城の橋に向かったときです。

 橋の上で、陛下が村の方を凝視していました。

 わたくしは陛下の背中に声をかけます。

 

「陛下、おはようございます」

 

 ぬるりと、振り返られた陛下の瞳は真っ赤でした。

 わたくしは驚きました。

 

「まあ!徹夜されたのですか?一体どうして」

「来ないゾイ……」

「来ない?」

「ワシが注文したチャーシューメンが来ないゾイ!!昨日のオヤツから何も食べとらん!あー、腹立つ!」

「それはそれは……おいたわしや、陛下。すぐに何か作りますわ」

「ワシは出前が食べたいゾイ!」

 

 そう仰ってバタバタと手を動かされます。

 どうしたものかと考えていますと、ブン様が村の方から現れました。出前用の箱――おかもち――を持っています。

 

「おはよう、リーノ。……どうしたんだ?」

「おはようございます、ブン様。陛下が昨日、注文したチャーシューメンがまだ届いてないみたいです」

「えっ!カービィ、やっぱりダメだったんだ……」

 

 何か事情を知っておられる様子。詳しく話を聞かせていただこうと思いました。

 ですが、その前に陛下がおかもちに近づかれて声を上げました。

 

「くんくん……この中はチャーシューメンかゾイ?ワシの……」

「それは私のでゲスよ!」

 

 今度は城の方から閣下が現れました。

 手には小銭入れを持っていらっしゃいます。

 

「ブン、ご苦労でゲスな」

「毎度あり〜」

 

 会計を手早く済ませて、閣下はその場でチャーシューメンを一気に食べます。

 わたくしは「そういえば」と昨夜の出来事を思い出しました。

 

「たしか昨夜、閣下の分のチャーシューメンも届かなかったんですよね?」

「そうでゲスよ。だからこうして、朝に再注文したでゲス……ズズズ……イケるなこりゃ」

「なるほど。ブン様。もしかしてカービィが運んだ注文は、陛下と閣下の分ではありませんか?」

「そうだぜ」

「食べる事が大好きなカービィが、チャーシューメン二丁を食べずにカワサキの店からこの城まで運べるでしょうか?」

「難しい……と思う」

 

 あちゃーと、ブン様は片手を顔に当てられました。

 わたくしは陛下に向き直ります。

 

「陛下、もう一度注文しましょう?」

「…………」

「陛下?」

「コケにしおって!!!かくなる上は……ダウンロードゾイ!!」

 

 陛下は突然走り出しました。城の方へ向かっています。

 

「あーもう!ホコリが立つでゲス!」

 

 閣下はチャーシューメンの汁も飲んでいました。

 

 

 

 

 陛下のことも気がかりですが、仕事も大事です。

 閣下とブン様と別れて、わたくしは市場へ向かいました。仕事が終わる頃には、昼前になりましたので昼食を買いにコンビニへ寄ります。

 副菜が多い、見ても楽しめるお弁当を選んで会計をします。

 店主であるタゴさんは、なにやら怒っていらっしゃるようでした。

 

「どうしたんですか?何か、喧嘩でもあったのでしょうか?」

「違うよ!カワサキの店が出前の注文を間違えたのさ!俺一人で四十人前も食べるわけないのに」

「まあ、そんなことが?困りましたね」

「そうなんだよ。俺だけじゃない、メーベル、モサじいさんや他の皆も同じ被害にあったって」

「それは、事件ですわ……」

「本当だよ!だから出前はもうしないことにしたんだ。リーノも出前は取らない方がいいよ」

「ありがとうございます。気をつけます」

 

 買い上げたお弁当を受け取り、わたくしはもう一度店主にお礼を言ってコンビニを出ました。

 

 道に出ようとしたそのときです。

 突然、バイク音が聞こえてきました。わたくしは足を止めます。目の前をバイクが爆走していきました。あっという間に姿が見えなくなります。

 あれは一体なんでしょうか?村で、初めて見るバイクです。運転している人も初めて見ました。村人ではありません。

 数秒後、バイクは再び前を通りました。やっぱり、あっという間に姿が見えなくなります。

 

「はやく帰りましょう」

 

 その方が良い気がして、わたくしは帰路につきました。

 

 

 

 

 城に帰りました。

 陛下と閣下は、玉座前のベランダにいらっしゃいました。わたくしは村で注文した品を、お二人に報告します。

 

 するとそこに、カービィがやって来ました。

 彼はジェットがついたヘルメットを被り、空を飛んで来ます。

 ベランダに降り立つと、持っていたおかもちをおろしました。そして、おかもちの中から麺が伸びたラーメンを二丁出します。

 

「なんゾイ、これは?」

「知らないでゲス。さっぱりでゲス」

「ワケがわからんゾイ。カービィ、食べてよいゾイ」

「ぽよ!ぽよ!」

 

 カービィは嬉しそうに、ラーメンを食べました。

 ……それって、もしかして昨日届かなかったチャーシューメンでは?

 そう思いましたが、陛下たちが怒る未来が見えました。わざわざ不快な気持ちになっていただく必要はないと思い、わたくしは口を固く閉ざしました。

 

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