【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

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決闘

 メタナイト卿を晩御飯に誘った翌日。

 午前中に洗濯物と掃除を済ませてから、村に向かった。

 村の本屋さんへ顔を覗かせると、休憩に入ったアーニャに合流した。そのまま二人でランタンの家を訪ねる。幸いなことに、ランタンは家にいた。

 リビングでお茶をご馳走になりつつ、二人を探していた事情を説明する。

 

「メタナイト卿たちを晩御飯に招待したんですけれど、二人も来ませんか?」

「は!?」

「ええ!?」

 

 驚くや否や、二人は素早い身のこなしで、部屋のカーテンやドアの鍵を閉め始めた。

 

「ど、どうしたんですか?」

「人目を避けているのよ!あの戦士さんたちと一緒に食事する、なんてバレたら大変なことになっちゃう」

「お三方の人気は根強いですからね。恨みをかってしまうかもしれません」

「ええ……大事になっちゃうのね。外で話さなくてよかった」

「ナイス判断よ」

 

 親指を立てて向けられる。私は笑顔を返した。

 

「それで、二人は来てくれる?もしよかったら、六人分の食事を作る手伝いをしてもらえたら嬉しんだけど」

「手伝いくらいやってあげるわよ。それでいつ、どこでやるの?」

「日時は私たちの都合に合わせるって。場所は地下の食堂です」

「それでは……」

 

 私の手帳を取り出し、膝をつきあわせて話した。

 そして次の日、仕事がない日を選んで決めさせてもらった。

 いくつか候補があるので、彼らの都合のいい日と被っていればいいな。

 話し合いの後は三人でサンドウィッチを作り、食べた。やっぱりピーナッツバターはペーストよね。

 

 

 

 友人たちと別れた後は、ヤブイ先生の病院へ向かう。

 体に異常がないか診てもらう間に、先生に応急処置のやり方を教えてもらえないかと交渉した。

 はじめは渋っていた先生だが、村人が二十名以上集まり、お金が入るならやってもいいと言ってもらえた。

 

「条件はわかりました。後日、結果を報告に来ますわ」

「うん、頼んだぞ」

 

 病院を出て、城に帰る道中で考える。

 人を集めたい。しかし仕事があり、城に住む自分には、村人たちに参加の旨を聞いて回る時間が充分にとれない。ならば他の人にお願いしてみようか。例えばフーム様やブン様といった子供たちに。一つの仕事につき、一回ずつお菓子を配るのだ。それならば仕事の報酬になるだろう。

 場所は村長さんに話して広場を貸してもらおう。あそこならば場所代はタダだ。

 参加費は、人数が多くなるほど下がっていくシステムでいこう。二十名なら一人あたり千デデン、四十名から五百デデンといった具合に。

 その他の細かい部分はフーム様に相談させてもらおう。

 

 

 

 城に帰ったので、まず戦士たちの休憩室に向かう。

 扉をノックして、出てきてくださったのはブレイドナイトだった。

 

「ごきげんよう、ブレイドナイトさん。お誘いした晩御飯の件で、お伝えしたいことがあります」

「卿からから伺っています。日にちが決まったんですね」

「その通りですわ。一応、いくつか候補があります。どこがいいですか」

 

 手帳に書いた日付を見せる。彼はそれを素早く確認した後、ある日を指差した。

 

「ではこの日に、お願いします」

「わかりました。印をつけておきますね」

 

 今日から数えて数日後の日付だ。ならば明日にでも、もう一度アーニャとランタンに会って、何を作るか決めなくてはならない。

 忙しい、けれど楽しいと感じつつ、リーノはブレイドナイトと別れた。

 

 ヤブイ先生の勉強会に関しては、フーム様が乗り気になってくれた。

 相談した案はほとんど採用されて良かった。他の細かい部分は夜にでも決めようということで、その場は解散になった。

 

 

 

 

 

 その二日後。

 陛下に突然買い出しを言い渡された私は、急いで村へ向かった。

 途中、城の廊下でばったりとメタナイト卿に出会う。

 

「おはようございます、メタナイト卿」

「おはよう。村へ行くのか?」

「ええ、陛下の急な頼み事ですわ。メタナイト卿はどちらへ?」

「村へ、郵便局に行く」

 

 そう言って彼は、マントの下から一つの手紙を取り出した。

 

「でしたら、わたくしが持って行きましょうか?郵便局に寄るぐらいの時間はあります」

「……そなたになら預けられる」

「?大事な手紙なのですか?」

「そうだ」

「でしたら、間違いなく出さないといけませんね。心してかかりますわ」

 

 リーノはメタナイト卿から手紙を、力を入れすぎて握りつぶさないようにしつつしっかりと受け取った。

 宛名を見るのは失礼だと思い、素早く買い物かごの中に入れる。

 

「それでは、行ってきます」

「気をつけて」

 

 青い戦士の視線を背に感じつつ、リーノはエレベーターへ急いだ。

 

 

 

 手紙を出し終えた日からさらに二日後、メタナイト卿とカービィが戦ったと聞かされた。

 

 ヤブイ先生の勉強会は、成功した。

 大樹がある村の広場では、四十名以上の村人が集まり賑わっている。私はヤブイ先生の腕を借りて、包帯を何度も巻く練習をしていた。

 集中して学ばなければならない時間なのに、耳は周りの声を拾い上げてしまう。

 

「カービィかっこよかったわ。あんなに大きな魔獣を倒してしまうなんて」

「その前にメタナイト卿との戦いがあったんでしょう?見たかった~」

 

 私も、もう一度メタナイト卿が戦う姿を見たかった。

 蝶のように軽やかに舞い、鋭く剣を振るうあの雄姿を。

 

「リーノ、痛いんじゃが……」

「はっ!すみません、ヤブイ先生。すぐにほどきますね」

 

 よそ見をして、つい力み過ぎてしまった。すぐに先生の腕に巻いた包帯をとく。

 よかった、痣にはなっていないみたい。

 

「リーノも、昨日の戦いが気になるのか?」

「え?ええ……そうですわね」

「なら、フーム様に聞いてみるといい。トッコリの情報によれば、最初から見ていたのはフーム様とブンのようじゃからな」

「わかりました。お二方に聞いてみますわ。ご指導ありがとうございました。ヤブイ先生」

「うむ。リーノは丁寧に包帯が巻けておるからな、あとは素早く巻けるように練習すればええじゃろう」

「次の目標にさせていただきますわ」

 

 ヤブイ先生から離れてフーム様を探す。広場を半周すると、隅の方で子供たちにのグループの中に見つけた。近寄って声をかける。

 

「フーム様、何かお手伝いすることはございますか?」

「リーノ!よかった。ちょうど巻き方がわからなくなってたところなの。教えてくれる?」

「わたくしでよければ、承ります」

 

 先ほど習得した包帯の巻き方を、ブン様の腕を借りて、やって見せる。

 時間をかけずに巻き終えた様子に、子供たちから驚きの声が上がった。

 

「まあ、上手ね!」

 

 フーム様が手を叩いて褒めてくださり。

 

「リーノさん上手。やっぱりメイドさんって凄いのね」

 

 ハニーはメイドである私に憧れの眼差しを向けてくれる。

 私は微笑んで言う。

 

「ヤブイ先生の教え方が素晴らしいからですわ。……ところで、昨日のお話について皆さん知っていますか?」

 

 フーム様とブン様が顔を見合わせて、クスリと笑われた。

 

「意外だな~。リーノも興味あるんだ?」

「そりゃあ、ございますとも。メタナイト卿の戦い方はとても鮮やかですから」

「彼の戦い方を見たことがあるの?」

「前に一度だけ……。フーム様とブン様はあの方の戦いを見られたんですよね?どうでしたか」

「強かったわ。凄く強かった」

「カービィが手も足も出せなかったもんな」

 

 やはり、と頷く。能力をコピーしていない、ましてや戦い方をまだ習っていない赤子など、彼の相手ではないだろう。

 それから話題はすっかりメタナイト卿とカービィの戦いの様子になった。

 フーム様とブン様がお話になられる度に、記憶の奥底から、前世の知識がぼんやりと浮かび上がってくる。

 その知識を活かせる能力は、今の自分にない。あまりにも記憶が曖昧なせいもある。

 だけど、それ以上に立ち向かう勇気がないのだ。その事を考え出すと、どうしても卑屈になってしまう。頭を振って気持ちを切り替える。できないことをうじうじ悩んでも仕方がない、できることを頑張るんだと。

 何度も何度も、勉強会で習ったことを反復練習した。

 

 次の日の夕方、デデデ城の地下室。調理場。

 窓の外からは、あのワドルドゥ隊長とワドルディたちが造られた地下の庭が見える。

 

 私とアーニャとランタンが忙しく動き回って、料理を作っていた。

 サラダに、スープ、メインのお肉と、きっと滅多に食べないだろう炊き立てご飯。それとデザートのアイス。

 飲み物は戦士たちが用意してくれる。「アルコールは無しで」と、伝えているから飲み会にはならないだろう。

 

約束の時間になった。

私たちは木製のテーブルに、白いテーブルクロスをかける。そして料理を盛ったお皿を並べていく。これで気分は立食パーティだ。

 用意が終わり、達成感を味わっていると三人が調理場に入ってきた。

 できあがった料理を見て感嘆の声を上げる。

 

「おお、これは……!」

「う、うまそうだ……!」

「ふむ」

 

 メタナイト卿のちょっと気分が高揚している声を聞いて、私は心の中でガッツポーズを決めた。

 ランタンがグラスを持ち上げる。

 

「冷めないうちにいただきましょう。全部おいしいわよ」

「ああ!そうだな。いただこう」

 

 三人が買ってきてくれた甘くないソーダを全員分のグラスに注ぐ。乾杯の音頭はメタナイト卿にお願いした。

 

「素晴らしい料理を用意してくれたリーノ、ランタン、アーニャに感謝する。乾杯」

「「「「「乾杯」」」」」

 

 ソーダを飲むと、舌の上で炭酸がはじけて躍った。いつでも買える特別じゃないソーダも、今だけはとってもおいしく感じる。

 メタナイト卿はまずサラダに手をつけた。サラダボウルから少量を取り出し、次に部下達にトングを渡す。二人もメタナイト卿に続いた。

 三人は食前の挨拶を済ませると、一口食べた。シャクッと、野菜を噛む音が聞こえた。私たちはその姿を、固唾を飲み込んで見守る。

 真っ先に咀嚼し、飲み込んだブレイドナイトが興奮した様子で言った。

 

「うまい!特にサラダにかかっているソースがいい!酸味があってまろやかで舌触りがいい!」

 

 それを聞いたアーニャが喜んだ。

 

「それは母に教えてもらった特製のサラダ用のソースなんです。お口に合ってよかった」

「そうなのか?お母上は料理上手なのだな」

「はい。村で一番のサトさんには敵いませんけれど、とても上手なんですよ。褒めていただけて嬉しいです」

「ああ、うまい」

 

 ブレイドナイトは一口ずつ、噛みしめるように食べる。そんなに喜んでもらえたら作ったかいがあるというものだ。

 

「私たちの分は分けていますから、そちらのボウル分は、すべて食べていただいて結構ですよ」

「わかった」

 

 ソードナイトさんもメタナイト卿も「おいしい」と言って、まずはサラダを平らげてしまった。

 あっというまに一品なくなってしまい、驚いた。でも食べてもらえた喜びの方が大きい。

 ランタンはスープの入ったお鍋を指差した。

 

「メインの前にスープはいかが?私の自信作よ」

 

 間髪入れずに、メタナイト卿は言う。

 

「もらおう」

 

 

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

 ほとんどのお皿はからっぽになった。戦士たちは満足そうにお腹を擦り、私たちはハイタッチした。

 

「成功、ですわね」

「満足していただけたみたいで嬉しいです」

「ま、私たちの腕によりをかけた料理なら、この結果は当然よね」

 

 ソードナイトとブレイドナイトは残ったお皿を見つめる。

 

「本当においしかった」

「また食べたいな」

 

 ランタンは髪をかき上げながら言った。

 

「レシピ教えてあげるわよ。そうしたらいつでも食べられるわ」

「その申し出はありがたいのだが……」

「俺たちは料理そのものが苦手でな。うまく作れるかどうか……」

「今までやってこなかったからな」

 

 哀愁漂うその姿に同情する。

 私は彼らの過酷な旅に思いをはせた。ナイトメアともう一度戦うためハルバードを作る彼らは、自炊を楽しむ時間などないのだろう。

そんな事情を知らないアーニャとランタンは、ただ城の仕事が忙しいのだと結論づけた。

 

「城の仕事って忙しそうよね」

「大王様はワガママで有名ですものね。……あの、また今日みたいな食事会を開きませんか?次はお三方にも手伝ってもらって、やりながら作り方を覚えるんです」

「それはいいですね、アーニャ。そうしたら、わたくしたちの手間も減りますし、皆様は料理を覚えることができます」

「それは……」

 

 二人の部下が見つめる先に青色の戦士がいる。彼は静かに佇んでいた。

 たっぷりと間を開けて告げる。

 

「構わないぞ。だが、そんなに多くの時間は割けない」

「でしたら、月一回の開催にしませんか?それならばお互いに負担にはならないでしょう」

「作りたい、食べたい料理があったら互いに言うこと。案が出揃ったら、次は投票してその時作る料理を決めましょう。次回は何にしますか?」

 

 途端に二人の戦士は真剣に考えだした。

 まるで、真剣にお菓子を選ぶ子供と同じだ。

 

 その姿に笑いをこらえられず、吹き出してしまった。

 

 

 

 後片付けは皆で行う。

 私とメタナイト卿が皿洗い。

 アーニャとブレイドナイトが掃除。

 ランタンとソードナイトが片付けだ。

 

 少々賑やかになった室内で、私はあの話題を持ち出した。

 

「フーム様や村の皆から、決闘について聞きましたわ。お二人が無事でよかったです」

 

 メタナイト卿は横目で私を窺う。

 

「私を酷いと思うか?」

 

 非難されることを覚悟しているようだった。

 私は頭を振る。非難などする気はない。

 

「いいえ。ですが、相手に対しても自分にも厳しい方だなと思いました」

「厳しい、か」

「カービィに必要だからなさったのでしょう?」

「そうだ。彼は強くならねばならない」

「……カービィは、戦いを避けることはできないんですね」

「無理だろう。彼は、戦う運命にある」

「そう、ですか」

 

 それからは沈黙が続いた。

 どう言葉を紡げばいいのかわからなかったし、何を言うのが正解なのかも分からなかった。

 

 六人もいれば片付けなどあっという間に終わる。

 

「じゃあ、今日はこれでお終いですね」

「村まで送るか?」

 

 すっかり仲が良くなったらしいブレイドナイトとアーニャ。いつの間にか、ブレイドナイトの話し方が崩れていた。

 アーニャの方も気にしていないようだ。むしろフレンドリーに会話している。

 

「いいえ、結構です。今日はお城の地下に泊まるつもりで来ましたから」

「そうか」

「では、行くぞ。リーノ、ランタン、アーニャ。世話になった。またよろしく頼む」

「はい。お粗末様でした」

 

 ドアから出て行く戦士たちに、ランタンが手を振った。

 

「次もおいしいもの食べましょう」

 

 最後に部屋に残ったソードナイトが手を振り返す。

 

「楽しみにしている」

 

 そして、扉がバタンと閉められた。

 三人の足音が遠ざかってから、アーニャは机に突っ伏した。

 

「つ、疲れました。あんな量の料理を作ったのははじめてです」

「アーニャに同じく。疲れた」

 

 ランタンも椅子にぐったりと座っている。

 私は仕事で慣れている分量だったけど、二人からしてみれば大変だったみたい。

 

「大変でしたけれど、大人数で食べるとやっぱり楽しいですよね?」

「そりゃあもちろんです」

「こんな日があってもいいわね」

 

 なんだかんだ言って楽しかったようだ。

 

「次回も、楽しくなるといいな」

 

 その言葉に、友人たちは笑みをこぼした。

 

 

 

 一方その頃、戦士たち。

地下から自室へと戻る。その間、彼らを取り囲む空気はたいへん良かった。

 ブレイドナイトが鼻歌でもしそうな調子で、切り出した。

 

「アーニャたちの食事は、どれも素晴らしかったですね。メタナイト卿」

「そうだな。おいしかった」

「野菜中心のメニューなのに、しっかり肉も食べられて嬉しかったです」

「ああいう家庭的な手料理は久しぶりでしたから、柄にもなくがっついてしまいました……」

「良いではないか。私たちが食べ終わった後の彼女たちを見ただろう?食べきった方が、作ってくれた者にとっては喜ばしいのだ」

 

 メタナイト卿の言葉に二人は強く頷いた。主人の言う通りだった。

 ソードナイトは、顎に手を当てて考える。

 

「次は何にしましょうか。俺たちでも作れる料理となると、難しい料理は無理です」

「……鍋はどうだ?あれならば材料を切るだけでいい」

「まずはそこから始めるといいかもしれんな」

「では、こちらの案は鍋で決まりですね」

「うむ。では、リーノに伝えておこう」

 

 二人の部下はリーノの名前が出たことで、質問が頭の中に生じた。

 元はと言えば、主人がリーノを誘ったゆえに、今回の食事会へ発展したのだ。

 お互いに小突き合って、「切り出せ」と催促する。リーノとはどうだったのか?話はできたのか?質問はいくつもある。

 その様子にメタナイト卿は気づいた。

 

「どうしたのだ?」

「え!えーと、その……」

「な、なんでもありません」

「?そうか?」

 

 結局切り出せないまま、自室に着いてしまった。

 

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