「ねえ、リーノ。いつも開いている集会では、ヤブイ先生に教わっているじゃない?今回は別のことをしてみたらどうかしら?」
「と、言いますと……何をいたしましょうか?」
とある日の午後、おやつ時。
城の厨房で、わたくしたちはおやつを食べていました。今日はロールケーキです。生クリームたっぷりでおいしいですわ。
厨房にいるメンバーは、わたくしとフーム様、それにアーニャとランタンです。ブン様とカービィは村に遊びに行っているそうです。
フーム様は質問を待っていたと、言わんばかりに笑顔で仰られました。
「芸術の秋だもの!絵を描くのよ!そして展覧会を開くの!」
「それは素敵ですね。わたくしも何か、お手伝いができれば良いのですが」
「絵を描いてくれないの?」
「絵を描くことよりも、参加者を増やすお手伝いができればと思っています」
それを聞いたアーニャが言いました。
「でしたら、フーム様主催の展覧会に参加された人にはお菓子を安く売る、というとはどうでしょうか?」
「……それじゃ、お菓子のためにみんな絵を描くわ」
「そうよね。リーノのお菓子って、人気だもの」
「ですね」
フーム様、アーニャ、ランタンが頷きます。
わたくしは照れました。
「うふふ、ありがとうございます。お菓子のことは、何か差し入れをしたいと思って考えたことなんですけれども、やめておきましょう」
「そうしてくれると嬉しいわ。みんなには損得勘定なく芸術と向き合ってほしいの」
フーム様の真剣な表情がまぶしいです。
わたくしは目を細めました。そして提案します。
「では、さっそくパーム大臣と村長さんに連絡して、開催日を決めましょうか。それに、陛下にもお知らせして……」
「デデデはいいわ……」
「ですが、ちゃんと伝えておかないと以前のように反政府活動と間違われますよ?」
「うう……リーノから伝えてくれる?」
「かしこまりました」
フーム様は疲れたようにため息をこぼされました。
その日の夕食。
食堂にて、陛下と閣下に展覧会のことをお伝えしました。
「展覧会〜?それはどんな反政府活動ゾイ?」
「違いますわ、陛下。展覧会とは、美術品などを並べてみんなに公開することですわ。今回は村のみんなで絵を持ち寄って、開催するようです」
「ふーむ?」
陛下も閣下もピンときていない様子でした。
念を押すように、わたくしは提案いたしました。
「陛下、閣下も展覧会に参加してみませんか?審査員側として、みなさんの絵を審査するのです。陛下と閣下に選ばれるなんて栄誉なことですわ」
そういうと、陛下と閣下は満更でもないようすで、ニコニコと笑いました。
「わしに審査させるなら、それ相応の場所が必要だゾイ」
「ならば、美術館を建ててはいかがですか?都市部には必ずあるものだと聞いております」
「それは名案だゾイ!!」
陛下の笑い声が、高らかに響き渡りました。
――――――
展覧会は、できたての美術館にて行われる予定でした。
ですが、絵を預かる当日になって問題がおきます。陛下が「村人たちの下手な作品はいらない!」と仰ったのです。
一体どうして、心変わりされたのでしょうか。
陛下は気まぐれなので、心変わりする何かがあったのだと思います。
それが何かは、見当がつきません。
村のみんなの作品は返却されました。
代わりに美術館に飾られることになった作品は、どれも素晴らしいものでしたわ。
「陛下、これらの作品は一体どこから持ってきたのですか?」
「秘密ゾイ!」
「そうですか……」
いつか、これらを常設する美術館に行きたいと思いました。できるなら、メタナイト卿と一緒に行きたいです。ですが、どこから持ってきたのかわからなくては、出かけることも叶いませんわね。
展示物のガイドはフーム様に任されることになりました。
わたくしは美術館に人を呼び込むため、美術館の外でカフェを開くことになりました。
「フーム様のガイド、楽しみですわ。わたくしはカフェの仕事で行けませんけれど……残念です」
「なら、仕事が終わったらちょっとだけガイドしましょうか?多くの時間はとれないけれど、それでも良ければどうぞ!」
「まあ、よろしいのですか?ありがとうございます。ぜひ聞かせてくださいませ。あの、アーニャとランタンも誘ってもよろしいですか?」
「いいわよ」
「ありがとうございます。フーム様」
普段の仕事に加えて、カフェの仕事……メニューを考えることになりました。
その日の夜。
夕食の後片付けを終わらせたら、その足で図書室に向かいます。体はすでにへろへろですが、残業代が出るようなので頑張ります。
図書室にて、カフェのメニューを決めます。
わたくしたちの得意なものを作ることにしました。
わたくしはコーヒー、ランタンはお菓子、アーニャは最近ハマっているらしいアイス作りを担当します。
「カフェをするにあたって、ワドルディたちを貸してくれるそうなので、人手は足りると思います」
「それを聞いて安心したわ」
「ホールとキッチンの両方を担当することは大変ですから、ワドルディたちがいてくれて助かります」
わたくしたちは頷きあいました。
メニューが決まれば、実際に食材を用意して作ります。
図書室にあった料理本の情報を頼りつつ、おいしい料理に仕上げます。
一番楽しく作ったのはアイスですね。どんな飾り付けにするのか、考えるだけでも楽しいです。できあがったアイスを食べるときも、仕事ということを忘れて盛り上がりましたわ。
結果的に、お菓子は前日に作れるだけの分量を人数制限をもうけて、販売することに決まりました。
アイスは常設を三種類、日替わりを一種類用意します。
コーヒーは多めに確保したので、みなさんに行き渡ると思いますわ。
フーム様がガイドをなされる当日。
ガイドが始まってから、カフェを開店させます。
カフェ目当てに来てくださった村人たちの対応をしていると、陛下と閣下がバタバタと慌ただしく美術館から出てこられました。
そのまま車に乗って城に向かわれます。
「何でしょうか……?」
その答えはすぐに現れました。
それは魔獣には見えない可愛らしい見た目で、ペンキとハケを持った方でした。
城から美術館へまっすぐ滑るように突撃し、美術館の中に入ります。彼が中に入った途端、フーム様や村人たちの悲鳴が響き渡りました。
「今の方は、魔獣でしょうか……」
「かもね。どうする?メイド長?」
「カフェ、閉じた方が良いかもしれません」
「二人の言う通りです。今日はここまでにしましょう」
村人たちに閉店を告げて、片付けを始めます。
アイスもお菓子も、コーヒーに必要な機材も今日だけは城へ移動します。
その途中、メタナイト卿と出会いました。
慌てている様子でしたわ。
「リーノ!火をおこせる物を持っていないか?!」
「ま、マッチならございます」
「貸してくれ、後で返す」
「すべて使っていただいて結構ですよ。お気をつけて」
「ありがとう。ではな」
ひらりとマントをひるがえし、メタナイト卿は走って美術館へ向かわれました。
メタナイト卿のことが心配でしたが、まだ危険があるとは決まったわけではありません。とにかく、アーニャとランタンの二人を安全な場所に送ってから、考えることにいたしました。
わたくしたちは再び、城の方へ歩き始めます。
城に到着したところで、遠くで爆発音が聞こえました。
振り返ると、美術館が吹っ飛んでいましたわ。
わたくしは、というかわたくしたち三人は言葉を失いました。
「……アーニャ、ランタン。後は任せてもよろしいでしょうか?わたくしは村に向かいます。メタナイト卿が美術館にいたのなら、みんな無事でしょうから」
「こちらは任せてください」
「後でね。リーノ」
「ええ。では、頼みます」
わたくしはアイススケートの要領で、地面を滑ります。走るよりも速く、村へ向かいました。
――――――
村では、みんながいました。
メタナイト卿も、陛下も閣下も、フーム様たちも、村人たちもみんな無事です。
わたくしは心から安堵しました。
メタナイト卿とフーム様たちがいる方へ近寄ります。
「メタナイト卿、フーム様、ブン様、カービィ……みなさん無事で良かったです」
「リーノ!急いできてくれたのね、ありがとう」
わたくしが作った氷の道を見てフーム様が言いました。わたくしはにっこり笑いかけます。
「すぐにでもみなさんの無事を確かめたかったので……陛下たちもご無事のようで良かった」
「エスカルゴンが賠償金のことで頭痛めてるけどな」
と、ブン様がからかうように仰います。
「そうですか……ちょっと行ってきますね」
メタナイト卿と目が合います。
言葉にせずとも、気持ちが通じあった気がしました。
「リーノ、先程は助かった。ありがとう」
「役に立てたのならば嬉しい限りですわ。……では、わたくしは陛下のところに行ってきますね」
「ああ……またな」
「はい。後ほど」
陛下のところに行くと、閣下が陛下に対して怒っていました。
わたくしはおずおずと声をかけます。
「あの、陛下……閣下……」
「ん?おお、リーノでゲスか。なんの用でゲスか?」
「賠償金のことでお話があります。今すぐお金が必要なのですよね?でしたら……」
わたくしは村で、期間限定のカフェを開店することを提案しました。
アイスやお菓子などは揃っています。カフェに必要なイスとテーブル、パラソルも。
「いかがでしょうか?少しは足しになると思ったのですが」
「うむ。よかろう。カフェの開店を許すゾイ」
「ありがとうございます。陛下。では、明日から始めますね」
「よかったでゲスね!これでちょっとは楽になるでゲスよ」
「デハハハハハ!リーノ、褒めてつかわすゾイ!」
陛下のご機嫌がなおってよかったです。
カフェはワドルディたちにも手伝ってもらって、開店しました。
村の広場で開店したためか、美術館のときよりも大勢の村人たちが来てくれました。
カフェが成功してくれて、嬉しいですわ。