星のカービィで「ドリンク」と言われたら、何を思い浮かべますか?
わたくしはカービィの体力を回復させてくれる、あのドリンクを思い浮かべますわ。
「ドリンクを飲んで元気百倍……いや、千倍ゾーイ!!!」
「ひえ〜〜〜っ!!!お助けを……ぐえっ!」
それは昼頃を過ぎた時間帯でした。
玉座の間で、陛下と閣下がお話しているようです。
ドダダダダと走る音が聞こえて、バンッ!と扉が開きます。
「リーノ!トライアスロンに行ってくるゾイ!」
「かしこまりました。お気をつけて」
「リーノ、助けるでゲスよ〜!!ぎゃー!!!」
「すみません、閣下。行ってらっしゃいませ」
閣下には申し訳ないのですが、元気千倍の陛下を止められるとは思えません。
なので見送らせていただきますわ。
その間に、わたくしはメタナイト卿のところへ行きました。
いつものことです。陛下に関する報告ですわ。
――――――
一時間後に、閣下は帰城しました。
よろよろと歩いていらっしゃいます。そのお姿は海水でベトベト、加えて砂埃で汚れています。すごく疲れていて、不機嫌そうです。
わたくしは玉座の間で閣下を迎えました。
「閣下、お帰りなさいませ。……すぐに体を拭くための湯を、お持ちしますね」
「あと、ココアも持ってくるでゲスよ!あったかいやつ!」
「かしこまりました」
わたくしは早足で、玉座の間から出ていきます。
二十分ほどで、玉座の間に戻ります。
ちょうど、閣下はカスタマーサービスと話し終えた直後のようです。出ていた画面は引っ込み、閣下はわたくしに気づきました。
「湯と、温かいココアをお持ちしました」
「待っていたでゲスよ」
先ほどとは変わって、機嫌が良いように見えました。
ニコニコと笑って体中をキレイにすると、ココアを口に運ばれます。
ずずず、と一口飲まれました。
「は〜、温まるでゲス。おいしいでゲスな」
「あの……ところで閣下、なにか良いことでもございましたか?」
「うん?ああ、これからあるでゲスよ」
「?」
ニコニコといたずらっ子のように笑う閣下に対して、嫌な予感を覚えました。
わたくしはなにかないかと、室内を見渡します。
ある物が、目につきました。玉座の間、真ん中で存在感を放つ大きなドリンクです。底には蛇口が取り付けられ、そこから原液が出てきます。
それが、変わっていました。
赤色のラベルから青色のラベルに変化しているのです。
「あの、もしや……」
「リーノ、しっ!」
閣下に口止めされました。やはりドリンクが変わっていたようです。
たしか前のドリンクは、村に販売されていたはず。
「あの……」
「陛下には内緒でゲス!」
「かしこまりました。……ところで、新しくなったこちらのドリンクは、村で販売していますか?」
「ワドルディたちがちゃーんと働いているなら、もう並んでいるころでゲスよ」
「そうなのですね。教えてくださってありがとうございます」
「いいでゲスよ」
「それから閣下、わたくし用事を思い出したのでしばらく出かけてきますね」
「了解でゲス。――くれぐれも陛下には……」
「内緒ですよね。心得ておりますわ」
陛下と閣下の仲に挟まる気はございません。
陛下たちと子供たちの間にお邪魔しますわ。
――――――
村に到着すると、あちこちで横になっている村人たちを見つけました。
みなさん、お疲れなのようです。やはり、あのドリンクが原因のようですね。
子供たちは無事だといいのですが……。
村の広場に到着すると、普段は置かれていない自販機が視界に入りました。
傍にはフーム様、ブン様、カービィがいます。自販機に手を伸ばされていました。
わたくしは呼び止めました。
「お待ちください!フーム様!」
「わ!びっくりした……リーノ、一体どうしたの?」
声は届き、フーム様たちはわたくしに体を向けます。
わたくしは走って、三人の傍に寄りました。
用件を簡潔に伝えます。
「それは、そのドリンクは前に売られていた物と違うドリンクです」
「なんですって!?」
「どういうことだ?」
「閣下がドリンクを取り替えられたんです。その……陛下に振り回されたせいで……」
そこまで言うと、フーム様は手を顎に当てて考え始めました。
「――はじめは異常に元気になるドリンクが自販機で販売された」
「それをデデデが飲んで、エスカルゴンを振り回した。エスカルゴン、懲りただろうな」
「その通りです。なので、お返しに別のドリンクをダウンロードされました。効能までは聞けませんでしたが……」
「まあ、まず元気が出るものじゃねーよな。だってそれで痛い目見たんだし」
「――私なら、反対のものを用意するわ」
「元気がなくなるドリンク、ということですか?」
フーム様は自販機を見上げます。
「そうよ。そうすれば、あのデデデもしばらくは大人しくなるでしょ?」
「エスカルゴンはそれを狙ったんだ」
「だとしたら、このドリンクをカービィに飲ませちゃダメね。でもどうしよう!カービィに元気がないままだと、魔獣に襲われたとき抵抗できない!」
そこで初めて、わたくしはカービィを見ました。
カービィは疲れた顔で、ぐったりと仰向けになっています。元気がない、というよりも元気を使い果たしたような感じでした。
ブン様は仰られました。
「だれか、まだ元気が出るドリンクを持っているやついねーのかな?」
「探してみましょう!リーノも探してくれる?」
「もちろんですわ!」
フーム様、ブン様、カービィの三人とは別行動します。
わたくしは考えました。流行りに敏感で、取り入れる人。または行動に移す人。
「――コックカワサキ!」
すぐに村のレストランへ走りました。
「カワサキさん!」
お店の引き戸をガラッと開けて、中へ入ります。
カワサキさんは店中のテーブルにカレーライスを並べていました。
スパイシーな香りがしました。
「リーノ!いいところに来たねえ!今、期間限定の特別なカレーライスがあるんだよ。お一ついかが〜?」
「特別なカレーライスですか?それはどんなものでしょう?」
「ふふーん!巷で話題のドリンクを入れたんだ!どう?一口で元気百倍だよ?」
「!見つかって良かったです!お一ついただきますわ」
「まいどあり〜!リーノも、あのドリンク知ってたんだね!」
「はい!探しておりました。カービィに必要なのです」
「そっか〜」
代金を渡し、お皿ごと受け取ります。店を出て、わたくしはフーム様たちを探しました。
カワサキさんの店から近い場所で、ドゴン!と、物が壊れる音がしました。
そちらへ走ると、蛇に似た魔獣がカービィを攻撃していました!
村の中で魔獣が暴れるなんて!!
「リーノ!」
魔獣の動きを止めようと冷気をまとったところで、フーム様たちと合流しました。
「フーム様、ブン様!見つけました!」
「ありがとう!よし、来て!ワープスター!」
ワープスターは瞬く間に現れました。
わたくしはカービィを助けるべく、氷を操って魔獣にぶつけます。
――魔獣の意識がカービィではなく、こちらに向きました。
とても怖かったですけれど、フーム様たちを、村を守りたい一心で前に出ます。
「村を破壊されて……わたくし……怒っていますわ!」
わたくしの身長と同じくらいの氷をいくつも作り出し、魔獣にぶつけます。魔獣は怯みました。
その隙に、カービィはワープスターに乗ります。
そして、あのカレーライスを飲み込みました!
元気を取り戻したカービィは、魔獣をブンブンと振り回し、投げ飛ばしました。
……魔獣が飛んでいった先で、陛下たちの声が聞こえた気がしました。気のせいでしょうか?
カービィはさらに魔獣を追いかけて、捕まえます。そして空高く飛んでいき――姿が見えなくなって――遠くで影が見えた気がしました。
それから数分後、カービィは無事に戻ってきます。
無事に魔獣を倒せたことに、わたくしたちは手を取り合って喜びました。