夕食の時間。
空が群青色へと変わりゆく中、わたくしたち六人は城の中庭が見えるベランダに集まっていました。メイド三人が持ち寄ったお弁当を、食べるためです。
ブレイドナイトさんが言います。
「……うん?なんだかいい匂いがするな」
「たしかに、香りますね」
アーニャも同意します。
みんながどこから香るのか、そう考えました。
わたくしはレジャーシートから立ち上がり、中庭を見ました。
「ああ、パーム様がフーム様たちのために料理をされていますわ」
「パーム殿が?」
「料理ができるのだな」
それは純粋な驚きを含んだ声でした。
続けてランタンが言います。
「ププビレッジじゃ珍しいわね」
「そうですわね。城だと、料理ができる男性は閣下だけだと思っていましたわ」
「ほお。エスカルゴン殿は料理が作れるのか」
今度はメタナイト卿が驚かれました。
わたくしはメタナイト卿の隣に戻り、座ります。
「子供のころ、風邪をひいたときにおかゆを作っていただきましたわ。優しい味付けで、たいへんおいしかったです」
「……改めて思うんだけど、閣下ってリーノに甘いわよね」
「家族のようなものですからね。仲が良いんですよ」
お喋りもほどほどに、わたくしたちはお弁当を広げます。
今日は三戦士たちのリクエストでからあげ弁当です。
ほんのり温かいお弁当を、三人はペロリと平らげてくれました。
――――――
数日後。
城の会議室にて。陛下、閣下、ワドルドゥ隊長、メイド三人が集まっています。
わたくしたちは、ワドルディが配った資料に目を通します。
「――男の料理大会、ですか?」
「その通りゾイ!」
「今、村の男連中に空前の料理ブームがきてるでゲス!これを利用して……」
「利用して?」
「――ひ、一儲けするでゲスよ!!」
「いつものように、観客席は有料ということでしょうか?……それだけですと、一般的な料理大会と変わりません。今回は何が目玉なのでしょうか?」
「うむ。今回の目玉でもある参加資格があるものは……先日チャンネルDDDで紹介したフードプロセッサーを購入したものに限るゾイ!」
その番組を見ていなかったわたくしはピンときていませんでしたが、アーニャとランタンは「ああ」と声をこぼしました。
「あの高い機械ですね」
「しかも置き場所に困るやつ」
それを聞いた陛下が声を荒らげました。
「黙らっしゃい!男のロマンがわからんか!」
「あれは良いもんでゲス!」
「あの、ところでわたくしたちは、いつものようにワドルディたちの手伝いをすればいいのですね?」
陛下は深く、背もたれに体を預けます。
「違う。お前たちも審査員となって、参加者の料理を食すゾイ!」
「まあ……初めての試みですね」
「特にリーノは料理上手で有名でゲスからな。審査員としては申し分ないでゲス」
「ありがとうございます」
「アーニャとランタンも、近頃はわしの好みを良く理解しておる。しかもうまい。審査員には持ってこいだゾイ」
「ありがとうございます。陛下」
「お褒めの言葉を賜り、光栄ですわ」
「では、それぞれ資料を確認しておけい。料理大会は二日後だゾイ」
「発表はこれからチャンネルDDDでしてくるでゲス。大会出場者から電話がかかってくるから、その対応を頼むでゲスよ」
「かしこまりました。どこで電話受付をいたしましょう?」
「それなら、発表するスタジオの中に作ったでゲス」
閣下は「さっさと行くでゲスよ」と陛下と共に歩き出します。
わたくしは閣下の腕をがしりと掴みました。
「お待ちください!もしかして、わたくしたちもテレビに出るのですか!?」
「はあ?そう言っているでゲショ?」
「しょ、少々お待ちください!メイクを直してきますので!」
「うるさいゾイ!すべてはスタジオに揃っておる。さっさとついてくるゾイ!」
閣下の腕を掴む手を外されて、今度は陛下と手を繋ぎます。
そしてスタジオにつれて行かれました。アーニャとランタンは大人しく、わたくしたちの後ろからついてきていましたわ。
スタジオに到着後、すぐにメイクを直しました。
今回は、三人で作ったアクセサリーを身につける時間がありませんでした。良い宣伝になりますのに残念ですわ。
スタジオ中央に、陛下と閣下が座る舞台が作られています。
わたくしたちメイドは、左側の舞台に向かいました。天井近くには電話番号が書かれた大きな看板があり、その下に三人分の電話受付をする場所が作られていました。
わたくし、ランタン、アーニャの順番で座ります。
ニュース番組が始まり、男の料理大会が発表されます。参加資格について説明があり、閣下が「今から電話を受け付けるでゲスよ!」と仰った途端に電話が鳴りました。
受話器を手に取ります。
緊張して声が少し上ずってしまい、少し恥ずかしいですわ。
「はい。こちらデデデ城、男の料理大会、受付です。参加者の方ですか?」
『こちら、ソードナイトだ。ブレイドナイトと参加する』
「――!?お二人もフードプロセッサーを購入されたのですか?」
『そうだ。優勝して、ランタンに……――ああ、そうだな。アーニャにも喜んでもらいたい』
「か、かしこまりました。――はい、参加を受付ました。当日は、早めに会場へお越しください」
『わかった。では、失礼する』
「はい。お電話ありがとうございました」
ガチャリ、と受話器を置きます。驚いている暇もなく、次のコールが鳴りました。
――――――
男の料理大会当日。
料理の腕を競うステージ場では、食材を山のごとく積み上げていました。
それ、下の食材が上に乗っている食材の重みで痛みませんか?と、思うのです。
大会参加者がステージ場に集まります。
そして奥様方、メイド三人、審査員長としてパーム大臣が、審査員の席に着きます。陛下はわたくしたちの中央に座られています。そして閣下は司会をされますわ。
わたくし、アーニャ、ランタンの順番で端に集まり座っていました。
眼下のステージ場で、フードプロセッサーの調子を確認する戦士二人を見つめます。
「ブレイドさん、楽しそうです」
「ソードもね。あの二人が、フードプロセッサーを買うぐらい料理が好きだとは思わなかったわ」
「お二人が、料理好きかはわかりませんが、ソードナイトさんは“アーニャとランタンに喜んでもらいたい”と、電話で言っておられましたよ」
それを聞いた二人は、頬を赤くさせながら言いました。
「嬉しいです。たくさん、応援しないといけませんね」
「そうね。二人が優勝するぐらい、ね」
わたくしはその言葉を聞いて頬が緩みました。
眼下には、フーム様たちと一緒にメタナイト卿がいらっしゃいます。
一緒に応援できたら良かったのに。そう思いました。
大会が始まりました。
参加者たちは食材を取り、フードプロセッサーを使って調理していきます。なんだか、フードプロセッサーが主役なのではないかと思ってしまうぐらい、参加者たちはお互いのフードプロセッサーを自慢しています。
フードプロセッサーのせいで、料理にかかる手間がさらに増えているように見えました。
奥様方、大臣夫婦、メイド三人を含めた審査員が困惑していました。
そこにフーム様が声を張り上げます。閣下のマイクを借りたのです。
「みなさん!何か勘違いしていませんか?」
フーム様いわく、料理で肝心なのは心を込めて作ること。
そして、パーム様が料理を一つしか作れないことを正直に話されました。
それを聞いたパーム様が、審査員長を降りることを発表されます。
審査員席から降りていくパーム様の姿を見たフーム様は、さらに言葉を続けました。
「でも!私はパパを立派だと思う!――だって料理を面倒がらなかったから……ママの自由時間のために!」
それを聞いたメーム様が、審査員席を降りてパーム様のところへ走ります。
そして、お互いに手を取りました。
「ありがとう、あなた」
「お前……」
会場全体から拍手がおこりました。
わたくしも、もちろん精一杯拍手させていただきましたわ。
そこで大会は終わりませんでした。
遅れて到着したカービィとトッコリが、最後のフードプロセッサーを持って来たのです。
フードプロセッサーは陛下の号令のもと、一つのロボットに合体しました。その名をリョウリガーZと言います。
ソードナイトさんとブレイドナイトさんが突撃しました。
ですが、あっという間にやられてしまって、突き飛ばされました。
「ソード!」
「ブレイドさん!」
「動かないで!ここなら陛下たちの攻撃は届きません!」
「でも……!」
「今だけですわ。わたくしが陛下たちの動きを止めますので、待っていてください!」
わたくしは陛下たちに安定して氷が届く、大臣夫婦とフーム様がいらっしゃる階段まで降りました。
「リーノ、行っちゃダメ!今、カービィが戦っているわ」
いつものカービィならば勝ちます。
ですが、今回は違いました!
リョウリガーZは食材を取り込み、瞬く間に料理として吐き出します。それを囮にしてカービィをおびき寄せ、攻撃します。
攻撃はすべて当たりました。
わたくしは頭を振ります。
「わたくしが陛下たちを足止めします。フーム様はメタナイト卿のところに行ってください。どうか、あのロボを倒す方法を探してください!」
「わかったわ!」
わたくしはフーム様の走る背を見送ってから、ロボの関節を狙って凍らせました。
ロボの動きが鈍くなります。
陛下たちの声が響きました。
「こりゃあ!リーノ、邪魔するでないゾイ!!」
「給料減らされたいでゲスか!」
「お給金よりも大切なことがあります!例えば――親友の恋人に危害を加えられたとき、怒るとか、です!!」
ロボご無理やり動く度に氷が割れて、また凍らせます。
そこに剣を抜いたメタナイト卿が現れました。ロボの下部の関節部分に剣を突き立てて、素早く飛び退きます。
火花が散りました。
カービィは火花を吸い込み、スパークカービィに変身しました!
カービィはロボの中に入り、スパークします。
ロボは赤くなります。やがてチンと音が鳴り、陛下たちと取り込んでいた食材を一緒に吐き出しました。
まるでサラダのように調理された食材に囲まれた陛下は、たいへんホカホカでした。
「へ、陛下!閣下!」
話す元気もないお二人を慌てて、氷で冷やします。氷はあっという間にジュワッと溶けてしまいました。
わたくしはさらに慌ててワドルディたちを呼び、お二人を水で冷やすべく、お風呂へ運びました。