「リーノ!今日のおやつはチップスだゾイ!」
「すでにジュースはご用意しております」
「気がきくゾイ!デハハハハハ!!」
昼前のこと。
小腹がすいた時間でした。陛下は玉座に座り、チップスを食べています。わたくしは陛下専用のコップに、陛下が特に気に入っているジュースを注ぎ、渡します。
陛下は喉を鳴らして飲みました。
「これこれ、これゾイ!おかわり」
「ただいま」
平和な時間でした。
そこに閣下がやって来ました。「ニュースでゲスよ!」と慌てています。
陛下はちょっと面倒そうに応えられました。
「なんゾイ……騒がしい」
「村にコックカワサキの兄弟弟子、コックナゴヤ来たらしいでゲスよ!」
「カワサキの兄弟弟子?……デハハハ!ならばそやつも大した腕ではなさそうゾイ!」
「それが村人が言うには、ナゴヤが作る料理はうんみゃ〜らしいでゲスよ!それはもう!」
「なに!うんみゃ〜!?」
おいしいと聞いて、陛下は目の色を変えました。
空になったコップをわたくしに渡して、「食べたいゾイ!」と立ち上がりました。
「早速、村へ行くゾイ!」
「リーノ、昼は作らなくて良いでゲスよ」
「か、かしこまりました」
陛下と閣下は、玉座の間を走って出ていかれました。
……準備している昼食は、わたくしたちメイドがいただきましょうか。
――――――
コックナゴヤが陛下たちに連れられて、城に来ました。
メイド三人でお出迎えします。
コックナゴヤは、和服を着ていらっしゃいました。茶色のお召し物がよく似合っていますわ。
挨拶もそこそこに、陛下はコックナゴヤにお願いをしました。
「コックナゴヤ。村に宿はないから、泊めるかわりに……」
「私たちに料理をふるまってくれでゲス!」
「おやすい御用だぎゃ。それで、厨房はどこだがや?」
「リーノたちが案内するでゲス。私らは……」
「ナゴヤの料理を、食堂で待ってるゾイ!」
名前を呼ばれたので、わたくしは一歩前に出ました。
「ナゴヤ様、メイド長のリーノと申します。厨房にご案内させていただきますわ」
「様付けはよしてちょーよ!どうぞ、よろしく」
「かしこまりました。こちらこそ、よろしくお願いします。では、参りましょう」
コックナゴヤを厨房に案内します。
厨房に到着すると、コックナゴヤは鼻をすんすんと鳴らしました。
「うん?これは、ハンバーグの匂いだがや?」
「はい。わたくしたちが食べた、ランチの匂いですわ。ナゴヤさんはもうお昼は食べられましたか?」
「食事は済ませたけんど、こんなにうみゃそうな料理を放ってはおけんだがや。よかったら、分けてちょーよ」
「かしこまりました。ご用意します。その間にナゴヤさんは……」
「わかっちょる!陛下に食べさせるご飯、ちゃちゃっと作るでよ!」
――――――
コックナゴヤがすばやく、テキパキと作られたのは味噌煮込みうどんでした。
それは熱々のうちに食堂に運ばれ、陛下と閣下のもとに届きました。
お二人は待ってました、と言わんばかりに食べ始めます。うどんをすする音が部屋に響きました。
「――うんみゃー!!!これは!うんみゃ〜ゾイ!」
「本当、うんまいでゲスな!!」
はふはふ、と熱いうどんをどんどん食べ進めます。
その様子を見たワドルディたちも、わたくしたちも、食べてみたいと思いました。
「とってもおいしそうね」
「そうですね」
「私も食べてみたいです」
メイド三人、こっそりお喋りします。
さて、それは横に置いて、コックナゴヤに料理を出します。
「うん?それはなんゾイ?」
「ナゴヤさんが所望された、わたくしたちのお昼ですわ」
「今日は大人向けお子様ランチです。ナゴヤさん、どうぞ」
長いテーブル、陛下と閣下の間にコックナゴヤの席を用意します。
コックナゴヤが座ってから、料理を並べました。
お子様ランチは、おかずは子供向けと同じです。大人向け用に、少し味付けを変えて、量を多くしております。
「じゃ、いただきます」
一口、そして細い目をカッと開いて「うみゃーぜよ!!」と言いました。
プロの料理人に褒められて、わたくしたちは拳をぐっと握り、喜びを表します。
「このミニオムライス!ミニハンバーグ!それにパスタ!どれも個性が光っとる!だ、誰が作ったんだがや?シェフか?」
「デハハハ!料理担当はそこにいるメイド三人ゾイ」
「今日は誰が作ったんでゲスか?」
「三人がそれぞれ作りました。わたくしがミニオムライスを、ランタンがハンバーグを、アーニャがパスタを担当しております」
「三人にお願いがあるでよ!」
コックナゴヤは席を立ち上がり、わたくしたちの方へ向きました。
そして両手を広げて、お願いします。
「俺の、嫁さんになってほしいだぎゃ!俺は料理上手な嫁さんをもらって、一緒に店を盛り上げるのが夢の一つだがや!今は店を持ってないんだけど、必ず幸せに……」
「ごめんなさい」
「!?」
「私たち、もう恋人がいるのよ……」
「!!!お、遅かっただがや…………」
コックナゴヤは床と同化してしまいそうなほど、落ち込みました。
それも残りのお子様ランチを食べていただいたことで、持ち直してくださいました。
――――――
コックナゴヤとカワサキさんの料理対決は、次の日に行われました。
三本勝負で、お題に合った料理を作ります。
わたくしたちメイドは、料理対決が行われるスタジオの隅で、勝負を見守りました。
カワサキさんの動きが、ぎこちないです。まるで慣れない手順で料理をしているみたい。
「ちょっと、行ってきます」
「?どこに行くのよ、リーノ」
「少し、あちらまで。三人で行くと勘づかれますので、一人で行ってきます」
わたくしはそろり、とカワサキさんの背面が見える場所へ移動しました。
スタジオのセットに身を隠し、こっそりカワサキさんが奮闘するキッチンを覗き込みます。
――フーム様が、流し台の下に隠れていらっしゃいました。
わたくしは、またこっそりアーニャとランタンがいる場所へ戻ります。
二人はすぐにわたくしの様子に気がつきました。
「リーノ、何か見たの?」
「ええ……。カワサキさんはフーム様の指示で料理しています」
「それって…………」
「単純な腕の競い合いではないわね」
わたくしは俯きました。
カワサキさんには、子供の頃からお世話になっています。勝ってほしいです。
ですが、兄弟弟子との対決で正面から戦わないのは、間違っていると思います。
勝負の行方によっては、わたくしの口から皆さんに言わなければならないでしょう。
――重く、苦しいです。
「とにかく、勝負を見守りましょう」
アーニャの言葉に、わたくしとランタンは頷きました。
勝負は三本とも、おかしな結果でした。
カワサキさんの料理が、すべてたいへん辛かったのです。何度も城の消防が出動し、審査員たちに水をかけます。
一度のミスならばたまたまでしょう。しかしそれが三度も起きるとは……。
「陛下と閣下、何かしているんじゃない?」
「そんな……」
「たしかに、先ほどからおかしなことが起きています。カワサキの料理、三回も同じタイミングで停電、どれも変です」
「そういう細工ができるのは、主催者側よね」
「もう、めちゃくちゃですわ……!」
カワサキさんの問題すらも受け止めきれていないのに、その上に陛下たちの問題まで……!
心がくしゃくしゃですわ!
料理対決の勝者はコックナゴヤに決まりました。
カワサキは潔く村を去ろうとします。そこにコックナゴヤが待ったをかけました。
村を出ていくのは、高級食材を使った料理を陛下に食べてもらってから、だと。
あっという間に、コックナゴヤはエビフライを作りました。それはおいしそうな香りを、スタジオ中に充満させます。
陛下はエビフライを一口食べました。
すると、陛下は燃えました。
「おわー!!熱いゾーイ!!!」
「へ、陛下!?」
ここまで激しく燃えるのは初めてです。
わたくしは慌てて前に出て、吹雪を陛下にあてました。
陛下は首から下が雪に埋もれます。鎮火できました。
「陛下、ご無事ですか!?」
「ゔゔ〜、辛かったゾイ……」
「ああ、意識ははっきりされていますね。よかった」
「ええい!これは一体どういうことゾイ!コックナゴヤ!!」
「すべてはこのタバスコのせいだがや!」
コックナゴヤはネタバラシをしました。
閣下がカワサキさんの料理にタバスコをふりかけていたのだ、と。
そして、その悪事は映像に残っていました。
暴かれた悪事は、陛下も絡んでいたようです。
わたくしは頭が痛くなりました。
「陛下、閣下、真っ向勝負に水をさしてはいけませんわ!」
「黙らっしゃい!かくなるうえは、魔獣ゾイ!!」
その合図と共に、調理されたはずのエビフライがどんどん大きくなりました。
スタジオの天井に届くほど大きくなったその魔獣は、エビフレアというらしいです。
いつの間にか、ザリガニのようなハサミが生えています。挟まれたら真っ二つになりそうです。
フーム様がお玉を投げて、カービィは変身します。
コックカービィです!
エビフレアは火の光線を吐き、コックカービィはそれをフライパンで跳ね返します。
何度も魔獣と戦ってきたカービィの敵ではありません。
跳ね返した光線をエビフレアに当てます!
魔獣は熱に耐えられず爆発しました。
そして、ハサミがこちらに飛んできました。
「危ない!」
青い影が視界をさえぎります。
腹部をぐっと押されて、変な声が出ました。
「ぐわ」
「すまない」
改めて青い影を見ると、その方はメタナイト卿でした。
先ほどいた場所から離れています。どうやら、助けていただいたみたいです。
「メタナイト卿、ありがとうございます」
「無事ならそれでいい。それと……」
メタナイト卿の視線の先を、追いました。
陛下と閣下がハサミに挟まっていました。
陛下たちを助けるために、わたくしは慌ててワドルドゥ隊長を呼びました。