それはある日の夜でした。
夕食を作り終わり、さあ休もうとしたときです。フーム様に呼ばれて、大臣一家にお邪魔することになりました。アーニャとランタンも一緒です。
フーム様の部屋に通されました。
部屋の中には、フーム様、ブン様、カービィ、そしてわたくしたちメイドが三人……計六人います。
部屋の扉が閉まると、フーム様は目をつり上げて言いました。
「リーノたちは、ゴミの不法投棄について知ってる?」
「いえ、わたくしは何も知りません」
「私は聞いたことがあります」
「私もよ。たしか、最近村で問題になっているのよね」
フーム様が頷きます。
「誰かが森の川にゴミを捨てているの。それも一度にたくさん!」
「俺たちその犯人の目星はついているんだ」
「ぽよ」
「一体、どこのどなたですか?」
じっと、フーム様とブン様とカービィはこちらを見てきます。
嫌な予感がしました。
「もしかして、陛下たちですか……?」
「――森に入っていくデデデたちを深夜に見たって言う村人がいるの」
「でも、ゴミを捨てている場面を見たわけじゃない」
ランタンがそう言うと、フーム様は肩を落とします。
「残念だけどそうなの。だから、あなたたちにも犯人探しに協力してほしくて」
「……リーノ、どうしますか?」
「陛下たちが怪しいと言うならば、陛下たちの潔白を証明するために、協力したいです」
それを聞いたフーム様たちは喜びました。
「ありがとう!リーノ!!」
「これでデデデの行動は筒抜けだ!……ランタンとアーニャはどうする?」
「リーノが手伝うなら、するわ」
「そうですね。ここまで聞いたのです。協力させてください」
「やったわ!」
「これでデデデも終わりだな!」
「ぽよぽよ!」
今度は大きな喜びとなって、部屋に響きました。
わたくしは人差し指をピンと上に向かせます。
「まだ、陛下が悪いとは決まっていませんわ」
――――――
それから二日後の夜。
いつもの夕食の風景でした。陛下と閣下は、今日も食事に満足されてニコニコと笑っています。
「おお、そうだった。忘れるところだったゾイ」
「はい。何でしょうか?」
「今日の夜、出かけてくる。軽食を作っておくゾイ」
「あ〜陛下……?」
おずおずと声をかける閣下に気づかないフリをして、わたくしは笑顔で応えます。
「かしこまりました。閣下もご一緒ですか?」
「え!?あ!?そ、そうでゲスね!」
「でしたら、二人分のサンドイッチを作っておきますね」
「助かるでゲスよ〜……えへへ」
「デハハハハハ!褒めてつかわすゾイ!」
笑うお二人に気づかれないように、わたくしとアーニャとランタンは、こっそりアイコンタクトをとりました。
食器を下げて、厨房で洗い物をしているうちに、ランタンがフーム様に報告に行きました。
フーム様たちは村におりて村人たちと共に、いつもゴミが捨てられる川に向かったようです。
アーニャとランタンは先に寝てもらって、わたくしは陛下たちが帰ってくるのを待ちました。
陛下と閣下とワドルドゥ隊長、兵士たちは濡れたゴミ袋を持って帰ってきました。
それを迎え入れます。
「陛下、閣下、皆様、お帰りなさいませ。暖かいココアをご用意しております。よろしければ、一階の食堂へどうぞ」
「気がきくゾイ!」
「あったかい飲み物、寝る前に欲しかったんでゲスよ!」
「リーノ殿、助かります!!」
「わにゃ」
「わたくしにできることを、したまでですわ」
陛下たちが犯人だったことをちょっとだけ悲しく思いながら、わたくしたちは一階の兵士たちが使う食堂に移動しました。
――――――
それから数日。
陛下にも閣下にも、おかしなところはなくて、平和な日々が過ぎました。
そう思っていたのは、わたくしだけかもしれません。
陛下と閣下は、中庭をゴミ処理場にすると言い出したのです。
中庭にどんどんゴミを捨てていく兵士たちの姿を見て、わたくしは陛下にお願いします。
「陛下、お止めください。中庭の臭いが洗濯場まで届いています。これでは、洗濯物に臭いがうつりますわ」
「部屋干しすれば良いゾイ!」
「そんな……」
今の陛下には、何を言っても届きそうにありません。
そこに、大臣一家とカービィが現れました。この異臭を辿ってここまで来られたようです。
フーム様が陛下に怒ります。
それも聞く耳を持っていただけません。
途方に暮れていたとき、空から黒い影の大群が降りてきました。
――カラスです。
たくさんのカラスが中庭に降りてきて、ゴミの袋を破ります。そして漁り始めました。
どうやら陛下のアイディアのようです。
ゴミをカラスに処理させるなんて……。わたくしは頭を抱えました。
異臭がさらに酷くなります。とても中庭に居られません。
「へ、陛下……」
「あとはカラス共に任せるゾイ!」
「私らは退却でゲス!」
陛下たちは城の奥へ走っていかれました。
それから大臣一家も、カービィも、わたくしも中庭を離れます。
「カラスと手を組んで、大丈夫とは思えません」
「私もそう思うわ」
「俺もー」
「ぽよ」
わたくしの言葉に、フーム様とブン様とカービィが応えてくれます。
そうですよね……。嫌な予感、しちゃいますよね。
――――――
あれから数日、カラスは毎日ご飯を求めてやって来ます。
カラスは食事が少ない、と訴えました。
カラスって話せるのですね……。そういえば、トッコリもクーも話せましたね。
「エサの穴場はここだけでは無いゾイ」
「なに?」
ごにょごにょと内緒話が、目の前で行われます。
話が終わると、陛下もカラスも笑っていて。カラスたちは村の方へ飛んでいきました。
もしや……。
「陛下、まさか……」
「村の残飯処理にはちょうど良いゾイ!」
「生ゴミが出なくなって、問題解決でゲス!」
「さあて、お昼の邪魔者はいなくなった!お昼の準備でもするゾイ」
「今日は何にするでゲスか?」
「BBQゾイ!リーノ、用意せい!」
「……また、カラスたちが来るのではありませんか?そうしたら、BBQの食材が取られます」
「問題ない。対処する方法はあるから、そちは安心してとりかかるが良いゾイ」
「かしこまりました……」
カラスたちを帰す方法、穏便に済めばいいなと思います。――心配ですわ。
わたくしは陛下のご命令通り、昼食の準備を進めました。わたくしは食材を切り、兵士のみなさんには網や炭などを用意してもらいます。
BBQを始めてまもなく、カラスたちが帰ってきました。
陛下はそれを空砲で退けます。
カラスたちは森へ帰っていきました。
わたくしは思わず、呟いてしまいます。
「これでは、カラスが可哀想ですわ……」
「たまにでも、確実にエサにありつける。お礼を言われたいくらいだゾイ!」
「でゲスな!」
高らかに笑う陛下たち。
わたくしは、カラスたちが飛び去ったあとの空をずっと見ていました。
――――――
次の日。
人が、鳥たちに襲われるようになりました。
わたくしも何度頭をつつかれてしまい、通りがかったメタナイト卿に助けていただきました。
二人で廊下を走り、秘密のエレベーターに乗って地下に降ります。
メタナイト卿はいつもの地下の厨房に、わたくしを連れてきました。
「そなたは、ここで待て。すぐにソードとブレイドがランタンとアーニャを連れてくる」
「かしこまりました。あの、村へは行かれますか?」
「ああ」
「お願いです。手が空いていれば、陛下と閣下を……」
「……探しておこう。助かるかは、二人次第だ」
「はい!ありがとうございます!!メタナイト卿、どうか気をつけて……」
「行ってくる」
立ち去る青い戦士の後ろ姿を見つめて、わたくしは無事を祈りました。
それから厨房の中に入ります。
一人で待っていると不安でした。
だから、不安を和らげるために動こうと思ったのです。厨房の中でできること。
「軽食でも作りましょうか……」
幸いここには、食材もできた料理を持たせるためのバスケットもあります。
お願いを聞いてくださったお礼に、メタナイト卿に渡せたらいいですね。
アーニャとランタンは三十分ほどたった頃に、地下の厨房に来ました。
てっきりソードナイトさんとブレイドナイトさんに連れられて来ると思ったのに、違いました。二人だけです。
「二人とも、無事でよかったです。でも、二人だけなのですか?」
「私たち城の中にいて、鳥には襲われていないのよ」
「ブレイドさんたちには、地下の入口までは送っていただいたんです。地下に入ってしまえば、あとは大丈夫ですから」
「ソードたちに、私たちはいいから行ってきてって言ったのよ。事件解決には、きっとあの人たちの力が必要だわ」
その言葉にわたくしは強く頷きました。
「ところで、リーノは何をしているの?」
「カツを揚げていますわ」
「なぜ、今なのですか?」
「カツサンドや玉子サンドを作って、三戦士たちに渡そうと思いまして」
「それはいい考えだわ」
「手伝います」
「お願いしますわ」
わたくしたちはサンドイッチを作ります。
自分たちの分も合わせて作ったため、サンドイッチにしてはたくさんの量ができました。
まずは三戦士の分を取り分けようと、地下の厨房にあったバスケットに入れていきます。
そこにソードナイトさんとブレイドナイトさんがやって来ました。
アーニャとランタンは喜んで、駆け寄ります。
「ブレイドさん、無事で良かったです」
「ソードもよ!お疲れ様!」
二人の戦士は労いの言葉を受けつつ、大したことはしていないと言います。
「我々は卿に言われて……」
「カラスの巣から魔獣になるアンプルを回収してきただけだ」
「それでも、相手の本拠地に行ってきた訳でしょ?」
「大きな怪我もなくて、良かったです」
わたくしはおずおずと声をかけます。
「あの、メタナイト卿は……?」
「卿はワドルドゥ隊長のところに」
「陛下とエスカルゴン殿を回収するため、呼びに行かれました」
「そうですか……無事ならいいのです」
わたくしたちメイド三人は、ほっとしました。
……サンドイッチをじっと見つめる目がありました。
二人の戦士です。
「なあ……」
「あのサンドイッチは、すべて食べてもいいのか……?」
「え?」
「食べたいのですか?」
コクンと、頷かれる姿が愛らしくて。
わたくしたちは思わず、笑顔になりました。