【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

73 / 81
バイクレース

 

 それは夜でした。

 蛍を見に行くという大臣一家を見送って。

 自室でのんびりと読書を楽しんでいた時間でした。

 

 コンコン。

 

「私だ。リーノ、いるか?」

「すぐに開けますわ!」

 

 メタナイト卿が、久しぶりに尋ねて来てくれました。

 まずは、部屋に招き入れます。

 

「どうしたのですか?用事は?今日はお休みなのでしょうか?」

 

 嬉しさで興奮するわたくしをなだめつつ、メタナイト卿は答えてくださいます。

 

「そうだ。今日の夜から、明日の昼まで休みにした。ソードもブレイドも、それぞれランタンとアーニャに会いに行っている」

「二人も会えているのですね。良かった」

 

 親友たちも、恋人たちに会えていることが嬉しいです。

 メタナイト卿の手が頬に触れます。わたくしは手を重ねました。

 

「……今、とても幸せですわ」

「それは、良かった」

 

 仮面がずらされます。

 口元が見えたので、わたくしは目を閉じました。

 

 

 

 メタナイト卿がお風呂に入っている間に、部屋中のカーテンを閉めておきます。

 わくわくする気持ちが、期待が高まります。

 

 彼がお風呂から出たら、二人でベッドに潜り込んで、抱きしめ合います。

 このまま寝落ちしてしまいそうなほど、幸せで温かくなって、それから……。

 

 

 バイク音が聞こえてきました。

 

 

「なんですの……」

「廊下から聞こえてくるな」

 

 思わずトゲトゲしい声色になっちゃいます。

 先ほどまでの甘い空気とやらは、どこかへ行ってしまいました。

 

 メタナイト卿が、ベッドから出て支度を始められたので、そのお手伝いをします。

 

「すまない」

「メタナイト卿のせいではありませんわ」

「行ってくる」

 

 そう仰って、両手を広げられたので、腕の中に飛び込みました。

 

「また来る」

「いつでも、お待ちしております」

 

 ぎゅっと力を込めてから、離れます。

 彼はひらりとマントをひるがえし、部屋から出ていきました。

 

 彼が残していった香りと冷めていく体温が、わたくしを孤独にしました。

 そして、怒るのです。

 

「バイク、許しませんわ……」

 

 せめて、今日でなければよかったのに!

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 次の日の早朝。

 ワドルドゥ隊長に聞いた話では、昨日の夜から大変だったようです。

 

 三台の暴走バイクが、城に侵入したり。

 陛下も暴走行為に手を染めたり。

 暴走バイクのせいで村がめちゃくちゃになったり。

 

 わたくしとアーニャとランタンは、暴走バイクに対して、さらに怒りました。

 

「――凍らせて、地下牢に閉じ込めておきませんか?」

「バイクを取り上げるべきね」

「それより、村から追放しましょう。――素敵な夜を、邪魔されたくないです」

「確かに」

「そうですわね」

 

 ワドルドゥ隊長が引いていました。

 

「一体何をそんなに怒っているのだ?――まさか、何かされたのか!?」

「いえ、直接的には何もされていませんわ」

「昨日の夜、城内でおこした暴走行為のせいで、ちょっとありまして」

「何があったのだ?」

「それは秘密です。でも、私たち怒っています」

 

 三人同時に頷きます。

 いつになく、わたくしたちの心は一つでした。

 

 打倒!暴走バイクですわ!!

 

 

 

 それから二時間ほどたつと、陛下と閣下が起きました。

 朝食のサンドイッチを食べて、また車に乗って出かけます。

 

 そして、帰城されたときには、暴走バイクを連れていました。

 名前をビートさんというらしいです。

 ビートさんは、数日後に村でレースをするみたいです。ビートさんが勝った場合は、ここに永住するとか。

 

 わたくしたちはストライキしました。

 

「なんでゾイ!??」

「言うこときかないと、減給でゲスよ!!」

「そちらの方には、わたくしたちも、村人たちも迷惑しております。お世話はできません。ワドルディを頼ってください」

「嫌ゾイ!ワドルディの飯はマズイから食べたくないゾイ!!!」

「我慢なさってください。それでは」

 

 わたくしたちはささっと早足で立ち去りました。

 減給なんて、どんとこいですわ!

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 レース当日。快晴。

 貴賓席にて。わたくしたちメイドは、給仕をしていました。陛下と閣下のお世話の横で、レースを見ます。

 

 ……ガスさんが出場すると聞いていたのに、代わりにガングさんがレースに出場しています。

 陛下と閣下が悪い顔をして言いました。

 

「ガスは出場できない」

「よって、ガス欠……デハハハハハ!!」

「陛下、一体何をされたのですか?」

「お前には教えてやらんゾイ!」

「ストライキのお返しでゲスよ!」

 

 うーん。このままだと話し合いは平行線ですね。

 とりあえず得た情報だけでも、メタナイト卿にお渡ししましょう……。

 

「すみません。ちょっとお花をつみに行ってきますわ」

「させんゾイ」

 

 わたくしの前を兵士のみなさんが塞ぎます。

 槍がぶつかり合い「ギャリン!」と耳障りな音がしました。

 アーニャとランタンが怯えます。

 

「きゃ!」

「リーノ、下がって」

「二人とも、落ち着いてください。――陛下、これは一体何事でしょうか?」

「いつもいつもメタナイトに会いに行きよって!仕事中にイチャつくなゾイ!」

「陛下……多分違うでゲスよ……」

「なに?」

「――恋人に少し会うだけですわ。健全だと思うのですが」

 

 そう言うと、陛下はブンブンと頭を横に振りました。

 

「とにかくならんゾイ!」

「そういう訳だから、ここにいるでゲスよ!」

 

 ビシッと言われては逆らえません。

 それに、兵士のみなさんを凍らせることもできません。

 わたくしたちは貴賓席に閉じ込められたのです。

 

 わたくしはレース場を見ました。

 ガスさんのことは、きっとフーム様たちがなんとかしてくださるでしょう。

 こちらは、陛下たちを見張るとしましょう。レースを妨害するようでしたら、止めないといけませんね。

 

 

 

 そして、レースが始まります。

 

 

 

 ビート……の、運転技術は素晴らしいものでした。

 わざわざ相手を攻撃するような反則行為をしなくても、レースに勝てるでしょう。

 

 しかし、ビートは反則行為をやめません。

 まずボルンさんが、ビートのせいでクラッシュします。次いでサモさんが、レン村長もクラッシュします。

 

 すぐにワドルドゥ隊長率いる兵士たちが、クラッシュしたメンバーを助けてくださいました。

 わたくしは体から力を抜きます。

 

 ワドルディたちに任せておけば、すぐにヤブイ先生のところまで運んでくれるでしょう。

 

「いいゾイ!」

「どんどんやるでゲスよ!」

「陛下、閣下……」

 

 空気をパキリと凍らせます。

 お二人は震えました。

 

「それやめっちゅうねん!!」

「寒いでゲスよ!!!」

「ビートへの応援、お止めください」

「断るゾイ!」

「では、首から下を凍らせて……」

「それはやりすぎでゲショ!」

 

 双方が傷つかない良い案だと思ったのですが……。

 レースは始まったばかり。これから何が起こるかわかりません。手足は動けた方がいいですよね。

 なので、凍らせるのは止めておきます。

 

 やがてガングさんもビートにやられます。

 バイクはクラッシュしていないので、すぐに復帰すると思うのですが……?

 

 わああああ!!

 

 歓声が上がりました!

 ガスさんです!ガングさんの代わりにバイクに乗っています!

 わたくしたちも歓声を上げました。

 

「ガスさん、ファイトです!」

「ビートなんてやっつけちゃえ〜!!」

「村に平和を取り戻してください!」

 

 陛下は怒りました。

 

「お前たちも静かにするゾイ!!!」

 

 そんなやりとりをしている間にも、ビートは反則行為をします。

 ガスさんに向かって鎖を振り下ろしました。このままでは、ボルンさんたちと同じ結末になります。

 

 そこに一台のバイクが現れました。

 初めて見るバイクです。あれは……誰かに似ているような?

 

 誰かが言いました。

 

「ステッペンウルフだ!」

 

 あの、伝説のライダーがどうしてここに?

 

 ステッペンウルフはすぐに、ガスさんとビートに追いつきます。

 そしてガスさんの腕を縛る鎖を、バイクのタイヤで引きちぎりました。

 

 ビートは次にステッペンウルフに向かって鎖を放ちます。その鎖をステッペンウルフは握り返し、ビートに反撃しました。

 ビートのバイクのタイヤは鎖と絡まります。そしてクラッシュしました。

 

 これでガスさんの勝ちが決まりました!

 わたくしたちは喜びを分かち合いました。

 

「これで!」

「素敵な夜が!」

「戻ってきますね!」

 

 閣下が声を荒らげます。

 

「お前たち!陛下の前ではしたないでゲスよ!」

「なんゾイ?」

「いや!その〜……あの〜……」

「ええい!とにかく!ビート!!!」

「で、出番でゲスよ!!」

 

 陛下たちの合図で、ビートが雄叫びを上げます。

 巨大な魔獣に変身しました!

 

「あれは……!?」

「魔獣ウィリー、カービィを倒すゾイ!」

 

 カービィも負けていません。

 クラッシュしたマシンのタイヤを吸い込みます!

 ホイールカービィに変身しました。

 

「ぐふふ!これでもくらうゾイ!」

「いけない!」

 

 レースを邪魔する陛下を止めようと、ランタンとアーニャが動きます。

 それを、わたくしは止めました。

 

「リーノ!?」

「どうして……?」

「よく見てください」

 

 レース場にまかれた油と、まきびしは、どれもホイールカービィとガスさんには当たりません。

 ウィリーだけが、困っています。

 

「なんでゾイ!」

「あちゃー」

 

 アーニャとランタンは顔を綻ばせました。

 

「リーノは気づいていたのですね」

「やるじゃない」

「カービィとガスさんなら、大丈夫だと思ったんです!」

 

 ウィリーはガツン!と壁にぶつかり、山のように大きなデデデ像の上に乗ってしまいました。

 そしてホイールカービィとガスさんが同時にゴールします!

 

 わたくしたちは身を寄せあって、喜びを分かち合いましたわ。

 

 ですが、それも束の間。

 すぐにレース場が崩壊し始めます。わたくしは氷の階段を作り、レース場の外へみんなを誘導しました。

 

 氷の階段は、レース場と共に砕けました。

 

 ですが、陛下も閣下も、アーニャとランタンも無事です。

 元気に「お〜いおい!!」と泣く陛下と閣下を置いて、わたくしたちメイドは恋人たちの安否を確かめに行くのでした。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。