よく晴れた昼間。
玉座の間にて、陛下とお話します。
「感謝の日……で、ございますか?」
「そうゾイ!わしもプレゼント欲しいゾイ!」
なんでも、村では村長感謝の日を行っていたとか。
綺麗なリボンに鮮やかな包装紙、心のこもった贈り物。
陛下はそれが欲しいと仰られます。
「……プレゼントしましょうか?わたくしで良ければ」
陛下が喜ばれるなら……そう思っての発言でした。
ですが、陛下は浮かない顔のままです。
「リーノからではなくて、他のものから贈られたいゾイ!」
「そうですか?」
「そういうものゾイ」
そこで、部屋の扉が開きました。
閣下とワドルドゥ隊長、それにワドルディが二人も入ってきました。
「ディヒヒ!陛下にプレゼントする奴なんていないでゲスよ」
「まあ!閣下、いじわるを仰らないでください!」
「そうゾイ!」
「じゃあ、聞いてみるでゲス。おう、ワドルドゥ。陛下に贈り物をしたいでゲスか?」
「ご勘弁を……たとえ命令でも……その、できません」
ワドルドゥ隊長とワドルディたちは、困った顔になりました。
本当に嫌そうですわ。
陛下と、ワドルドゥ隊長率いる兵士たちは、この前いざこざがあったばかり。
仲良くはできませんね……。と、納得しました。
しかし、陛下は納得できないようで。
すごく悔しそうなお顔をされるのです。
「ぐぬぬ……そういうお前も!プレゼントをもらえんゾーイ!!」
「はあ!?もらえるでゲスよ!」
「陛下!いじわるを返してはいけません!」
「うるさいゾイ!ふーんだ!」
そこに、陛下と閣下の争いに終止符を打つ出来事がおこります。
部屋の扉が開きました。
「閣下にプレゼントですじゃ」
「モサさん」
郵便局長のモサじいさんです。
綺麗に包装されたプレゼント箱を持っています。それを閣下に渡されました。
閣下は受け取り、すぐに中を開けられます。
わたくしはモサさんにお礼を言って、頭を下げます。
「いつも遠いのに、ありがとうございます」
「ほっほっ、ええんじゃよ。その分、料金は上乗せしとるからな」
モサさんはゆるりと帰られました。
「ううう……リーノ!」
「はい。陛下」
直後、陛下からお声がかかります。
振り返ると、やっぱり悔しそうに口元をゆがませる陛下のお顔がありました。
閣下は、プレゼントの中身であるお菓子を、おいしそうに食べています。
「わしは決めたゾイ!本日よりデデデ感謝の日を始める!」
「――始める、でございますか?」
「そう!期限は永遠、毎日午後11時まで受け付けるゾイ!」
「それは……プレゼントを贈るチャンスが、たくさんありますね」
「その通りゾイ!わしは感謝をいつでも受け取るゾイ!デハハハハハ!!」
そういうわけで、陛下感謝の日が今日より始まりました。
チャンネルDDDにて、陛下感謝の日を告知。そして周知します。
加えて城を華やかに飾ります。
それだけではありません。村から城への道も、赤い絨毯で飾ります。
ワドルディ総出で掃除が行われ、城はかつてないほどピカピカですわ。
陛下はずっと待っていらっしゃいました。
ずっと、ずっと、飾られた村へ続く道を、眺めていらっしゃいました。
ですが、何時間たっても誰も来てくれません。
わたくしはとうとう動き出しました。
場所は変わって大臣一家の部屋。
ダイニングに通されて、フーム様、ブン様、カービィとお話します。
「フーム様、知恵をお貸しください。どうか、陛下にプレゼントを……」
「まって。リーノはデデデにプレゼントしていないの?」
「はい。陛下に断られてしまって」
「なんでデデデのやつ、プレゼントを断ったんだ?」
「わかりません。おそらく、わたくし以外の人からプレゼントが欲しかったんだと思います」
「ぽよ……」
わたくしの言葉を聞くと、フーム様は指をパッチンと鳴らしました。
「それなら!カービィに任せましょう!」
――――――
夕方、カービィはプレゼントを持って、城にやって来ました。
綺麗なリボンに鮮やかな包装紙に包まれたそれは、とってもステキな贈り物です。
陛下は、カービィを玉座の間で迎えました。
たくさんのカメラと、ワドルディたちの音楽もついてきます。それは豪華なお祝いでした。
陛下はたいへん喜ばれています。わたくしも嬉しくなって、なりゆきを見守りました。
陛下とカービィとプレゼントを、カメラが囲います。
陛下は優しく包装紙を開けて、中を確認しました。
――スイカです。
箱の中身はスイカでした。
陛下はスイカを持ち上げます。
「スイカゾイ!やったゾーイゾイ!」
「陛下、やりましたね!……半分、でゲスな?」
「なんか軽いゾイ?」
持ち上げられたスイカは、半分しかありません。
よくよく確認してみると、スイカはかじられており、中身がありませんでした。
「カービィ?」
「ぽよ〜!」
わたくしがカービィを呼ぶと、カービィは口の周りをペロリとなめました。
つまり、中身を食べてしまったようです……。
わたくしと、隠れてなりゆきを見守るフーム様とブン様が「あちゃー」と頭に手を当てます。
カービィからのプレゼントは食べられたスイカでしたので、陛下はたいそう怒られました。
「カービィ!許すまじ!!」
ハンマーを振り上げる陛下を、フーム様たちが止めます。
「待って!デデデ、カービィの気持ちだけでも受け取れない?」
「悪気はなかったんだ!」
「うるさーい!」
ハンマーはどしん!と、音を立てて床に当たります。
フーム様とブン様はカービィを連れて、一目散に退避されました。
肩で息をする陛下は、カメラに向かって言い放ちます。
これから感謝の日は、憎悪の日に変わると。
今度はわたくしが止めに入りました。
「お待ちください!いくらなんでも、あんまりでございます!」
「うるさいうるさい!憎悪の日は必ず決行ゾイ!エスカルゴン、明日は誰ゾイ?!」
「たしか、カワサキでゲス……」
「ならば、カワサキ憎悪の日ゾイ!愚かなる人民共、明日はいくらカワサキを憎んでもかまわんゾイ!!」
陛下は、そうカメラに向かって叫びました。
わたくしは、陛下は怒っているというよりも、悲しんでおられる気がして、とても辛いです。
――――――
翌日。早朝。
ワドルドゥ隊長から、カワサキさんのレストランに憎悪の旗を立ててきた、と聞きました。
急いで大臣一家へ向かいます。そしてフーム様に報せました。
「デデデのやつ、本当にするなんて!」
「姉ちゃん、どうする?」
「様子を見に行きましょう。リーノ、ありがとう!」
「いいえ。わたくしは、これぐらいしかできませんから」
そういうと、大臣一家は顔を見合せました。
メーム様が言います。
「最近のあなたは、氷の制御も一段と良くなっているんでしょ?もう、ただのメイドだなんて、言えないわ」
「そう、ですか?」
「ええ……。これからは、素敵なメイドさんじゃなくて、素敵でかっこいいメイドさんね」
メーム様が優しく微笑み、パーム様が「そうだね」と仰いました。
「でも、力があると言っても、君は兵士や戦士ではないのだから、戦いの場に出てはいけないよ?」
「はい。気をつけます」
「うん。自分を大事にするように」
わたくしはメーム様とパーム様のお気持ちに応えるように、深く頭を下げました。
昼頃。アーニャとランタンとわたくしで、玉座の間を掃除していたときです。
陛下と閣下が大笑いして帰ってきました。とても上機嫌です。
「おう、リーノ!すぐにアーニャとランタンを連れてオヤツを作るゾイ!」
「この記念すべき瞬間に、ピッタリなヤツでゲスぞ!」
勢いに押されたわたくしは、とにかく頷いてアーニャ立ちを連れて厨房へ走りました。
「一体、何を作りましょうか?」
「パフェでいいんじゃない?」
「そうですね。フルーツがたくさんのカラフルなパフェにしませんか?」
わたくしはパァッと笑いました。
「良いですね!決まりです!」
パタパタと走る途中で、モサさんに会いました。
わたくしたちは立ち止まり、モサさんに挨拶をします。
「あら、こんにちは。モサじいさん、どうしたの?手紙かしら?」
「そうじゃ。陛下と閣下に手紙じゃ」
「まあ、一体何のお手紙でしょうか?」
「カービィが陛下のイタズラで死んだらしい。お葬式の案内状じゃの」
ぐにゃあと、頭の中がゆがみます。
――それからのことは、よく覚えておりません。
――次に気がついたときは、自室の天井を見ていました。
どうやら、ベッドに寝かされていたみたいです。
何度か瞬きをしてから、起き上がりました。
「――起きたか」
ベッドから少し離れたソファに、メタナイト卿は座っていらっしゃいました。
青い戦士はソファから立ち上がり、わたくしの傍に来てくれました。
「メタナイト卿……わたくし……」
「気を失ったのだ。覚えているか?」
目を真っ直ぐ見つめられます。
わたくしは、少し考えてから言いました。
「いえ、まったく……」
「そうか」
「ただ、カービィが、その……」
「それならば、タチの悪い嘘だ」
わたくしは、パチクリと目を瞬かせます。
「――へ?」
「陛下にお灸をすえるため、フームと村人たちが考えたものらしい。……陛下とエスカルゴン殿は、すでに涙を流すほど後悔されたあとだ」
「…………よ、」
「?」
「よかった…………」
カービィが生きていてくれて、よかった。
すべて嘘でよかった。
わたくしはボロボロと涙を流しました。
「陛下と、閣下が……取り返しのつかないことをしてしまったら、どうすれば良いのかと……わたくし…………」
「――今日は休め。ランタンとアーニャが帰ってくるまで、私がそなたの傍にいる」
そう仰って、メタナイト卿はわたくしの背中をさすってくださいます。
涙は止まらず、あふれるばかりでした。
――恐ろしいことがおきなくて、本当に良かった。
心から、そう思うのです。