夜。
陛下も閣下もお休みになられているでしょう。そんな深夜のことでした。
わたくしはまだ起きていました。フーム様からお借りした本が、たいへん面白かったのです。
ベッドにもぐりこみつつ、夢中になって本を読んでいました。
ところが、遠くで大きな音がしました。
それからドスンドスンと、小さくなっていく足音も聞こえます。
「何かしら……」
わたくしは本にしおりをはさみ、閉じます。
ベッドから出て、カーディガンをはおりました。
できるだけ音を立てずカギを回し、部屋の扉を開きます。
カチャリ。
廊下を覗き込みました。
――誰もいません。
わたくしはまた扉を閉じて、カギを回しました。
それから、ほっと息を吐き出します。
「こんなとき、メタナイト卿がいてくださったら、心強いのに……」
隣にいてくださるだけで、勇気がわいてきます。
どんな困難にも、立ち向かえる気さえするのです。
今はもう、お休みになられているかしら。
わたくしの方から…………。
そこまで考えて、頭を横に振りました。
顔が熱いです。
「ね、熱だったらいけません!早く寝ましょう!」
そう自分に言い聞かせて、わたくしはあたふたと、ベッドにもぐりこみました。
――――――
次の日。
昼に近くなり、わたくしとアーニャとランタンは厨房で昼食を作ります。
今日はハンバーガーセットです。たまにしか作らないメニューなので、種類は多く豪華です。
チーズバーガー、ポテト、ジュース、ナゲット、サラダ、デザートがついてきます。
いくつか味見しましたが、おいしくできています。よかった、これなら陛下と閣下に喜んでいただけますね。
そこに、ある人がやって来ました。
ブレイドナイトさんです。
アーニャに会いに来たのでしょうか?
「ブレイドさん」
「アーニャ」
恋人たちは手を取り合います。
アーニャはたいへん嬉しそうに笑い、ブレイドさんはどこか緊張感がありました。
「どうしたのですか?私に会いに来てくれたのですか?」
「三人を探していたんだ。――魔獣がダウンロードされた。しばらくここにいてくれ」
「魔獣ですか……」
不安そうなアーニャの声に、ブレイドナイトさんの力強い声が発せられます。
「大丈夫だ。みんなを守るために、ご主人様もソードも動いている。魔獣が城を出るまでの辛抱だ」
「――魔獣は村に向かったですか?」
「……順をおって説明する。先に、魔獣が村に逃げてきていたんだ。その魔獣を追って、さらに別の魔獣がダウンロードされたんだ」
「そんな……!」
わたくしたちは顔を見合せます。
お互いに心配と不安を感じているようでした。
メタナイト卿のことが、そして村も心配でした。
厨房で待っている間。
お腹が減っては動けないので、軽く昼食を食べます。
ブレイドナイトさんにもすすめましたが、トイレに行きたくなると困るから、と遠慮されました。
たしかにそうだと思い、わたくしたちも少量の食事にしておきました。
ブレイドナイトさんが来てから三十分後。
厨房のドアが叩かれました。そして、聞き覚えのある声が、聞こえてきます。
ソードナイトさんです。今度はランタンが笑みを見せました。
ブレイドナイトさんが扉を開き、ソードナイトさんが部屋の中に入ります。
お二人は手短に、それでいて密やかに言葉を交わしたあと、互いに頷かれました。
そしてわたくしたちに言います。
「魔獣は城を去った」
「もう大丈夫だ」
「じゃあ動いても大丈夫ね」
ランタンの言葉に、わたくしとアーニャは頷きました。
ソードナイトさんは付け加えるように言います。
「一応、護衛は続ける」
「あら、どうしてなの?」
二人の戦士は一瞬、静かになります。
それから「念の為だ」と仰られました。
できるならば、村に行きたいと思いました。
ですが、わたくしが村に行くことによって、ご迷惑をかけるかもしれません。
だから、大人しく城で仕事をしていました。
夕方。
空が暗がり始めた頃、城にメタナイト卿が帰られました。フーム様、ブン様、カービィも一緒です。
わたくしたち三人と二人の戦士は、橋の上で四人を迎えました。
「みなさま、おかえりなさいませ!ご無事でよかったです」
「ただいま。リーノ」
「ただいま〜。お腹ペコペコだよ」
「ぽよい」
「ご飯でしたら、メーム様がすでに作り始めてますよ」
「もうすぐご飯なのね!」
「やったー!」
元気になった子供たちのようすに、わたくしはニコニコと笑います。
メタナイト卿も、ケガがなく元気なようなので、嬉しさに拍車がかかります。
「リーノ。陛下たちは村の外れで、気絶している。ワドルドゥ隊長に伝えてくれ」
「かしこまりました。陛下と閣下を回収していただけるよう、隊長に伝えます」
メタナイト卿は、その金色の瞳を輝かせて、さらに言いました。
「今すぐ、頼む」
「?かしこまりました。では、行ってきます。みなさま、ごきげんよう」
「またね。リーノ」
「またな〜」
「ぽーよ!」
わたくしは手を振って、その場から離れました。
メタナイト卿が、なぜ陛下と閣下の回収を急がせたのか不思議でした。
その答えは出ないまま、わたくしは廊下を早歩きします。
兵士たちが使う厨房に向かうと、ワドルドゥ隊長を見つけます。夕ご飯の準備中でした。
陛下たちのことを話すと、ワドルドゥ隊長はすぐに出発されます。
わたくしは、そのお礼に夕ご飯の準備を手伝いました。