今日も快晴でしたわ。
その日の夕食後。
わたくしは自室の中で、ウーンと悩んでおりました。
あちらにこちらにと、うろうろ歩きます。
メタナイト卿の部屋を尋ねても良いものか。否か。
たいへん悩ましいです。
尋ねる理由は、その、メタナイト卿と恋人らしくすごすためですわ。
手を繋ぎ、キスをして、身を寄せ合う。
その先まで、できればしたいです。しかし……。
「もしもメタナイト卿がいなくて、他の方がいたら、気まずいですわ!」
頭を抱えてうなります。
そうこうしているうちに、時間ばかりがすぎていきました。夜の十時を回ったので、わたくしはがくりと肩を落とします。
今日はやめておきましょう。
深夜におしかけては、ご迷惑になりますもの。
ベッドに入ろうとしたら、扉がノックされました。
誰でしょうか?こんな夜更けに。
「はい。どなたですか?」
「私だ。メタナイトだ」
「す、すぐに開けます!」
扉を開けました。
そして、メタナイト卿を部屋の中にまねきます。彼はするりと扉の隙間から中に入りました。それから扉を閉めます。
「メタナイト卿……」
「そなたに会いたくて来た……。同じ気持ちだったらよいが」
「同じ気持ちです!」
思わず大きな声が出てしまいました。
メタナイト卿は少し驚きつつも、両手を広げます。
わたくしは、その中に飛び込みました。
メタナイト卿の手が、背中にまわされます。
ほのかにせっけんの香りがしますわ。
「……この後予定がなければ、ここで一晩すごしたいのだが、いいだろうか」
「はい。その、一緒にいてほしいです……」
「わかった」
ぬくもりが離れました。
どうしたのだろうと思っていると、メタナイト卿は扉のカギを回しました。それに灯りも消します。
室内は薄暗くなりました。ベッド隣の丸いルームランプだけが光り、足元を照らしています。
「これでいい」
「はい」
わたくしたちは手をつなぎ、ベッドへ向かいました。
――――――
ことが終わり、部屋で眠っているときでした。
あの、光弾がふってくる音がして。
わたくしとメタナイト卿は飛び起きました。
また、城が攻撃されています。
「着替えろ!窓の近くには行くな!」
「はい!」
寝間着の上にカーディガンをはおり、窓から離れます。
メタナイト卿はすでに準備を終えていました。
「私は出る。敵はすぐにカービィが倒すだろう。リーノはここに……」
「いえ、大臣一家の部屋に向かいます。フーム様たちが心配なので」
「わかった。目的地は同じだ。共に行こう」
わたくしたちは揺れる城の中を、走り出します。
親友たちのことも心配でした。
会いたいと思っていた途中で、廊下に出ていたアーニャとランタンに会います。
二人は、わたくしの部屋に向かう途中だったようです。
すれ違いにならなくてよかった。
「一緒に大臣一家の部屋へ行きませんか?みな様の安全を確認したいですし」
「そうね。行きましょう」
「では、先導する。行くぞ」
今度は四人で走り出します。
城の揺れは、すぐにおさまりました。
同時にわたくしたちは、大臣一家の部屋に到着します。
遠慮なく室内に入られるメタナイト卿を追いかけます。彼はベランダに向かいました。
そのベランダには、大臣一家が集まっていました。
「フーム」
「メタナイト卿!それにリーノ!」
「ランタンにアーニャもいるじゃん!」
「こんな夜分に……」
「一体どうしたんですの?」
パーム様やメーム様の言葉に、わたくしはにこりと微笑み、手を振るだけにとどめておきます。
今はまだ、メタナイト卿のお話の途中です。
「――決戦のときは近い。その気さえあれば、反撃も可能だ。……村人を噴水まで集めてくれ」
「決戦ですって!?――すぐにみんなを呼んでくる!ブン行くわよ。カービィ、こっちにいらっしゃい!」
ワープスターに乗って、カービィがおりてきます。
三人は慌ただしく、部屋を出ていきました。
メタナイト卿がわたくしに目を向けます。
「リーノ。それにランタンとアーニャ。……気をしっかり持つように」
「?かしこまりました」
「私は準備をしてくる。のちほど噴水で落ち合おう」
「はい」
メタナイト卿も出ていかれました。
わたくしたちメイドは、メタナイト卿の言葉を考えます。一体、何のことを話しておられたのか……。
「リーノ……ランタン、アーニャ」
「パーム様?どうかされたのですか?」
「いずれわかることだから、今言うよ。――今回は村にも被害が出た」
何を言われたのか、わかりませんでした。
パーム様が指さす方向へ……ベランダへ足を進ませ、村を見ました。
――赤い。
「――村が、燃えてる?」
「お父さん、お母さん、おじいちゃん!」
「アーニャ、ランタン待って!」
アーニャとランタンは走り出しました。
わたくしは二人を追いかけます。
村が心配でした。けれど、今は気が動転している二人のことが心配です。
わたくしの方が足が速かったので、二人に追いつきます。
そして回りこみ、二人の前に立ちふさがりました。
「リーノどいて!」
「フーム様がみんなを連れて来ます。入れ違いになってはいけません。城で待ちましょう?」
「そんな悠長なこと、言ってられません!」
「ならば、せめて救急箱を持っていきましょう。ケガ人を治療できるように、ね?」
アーニャとランタンは頷いてくれました。
わたくしたちは、一度自室に戻ります。そこでカバンに救急箱をつめこみ、もう一度合流してから、城の橋へと向かいました。
城の橋を渡って、ほんの少したったころ。
フーム様たちと村のみんなに、出くわしました。
みんな無事です。
アーニャとランタンは、それぞれの家族のもとへ走り出します。みなさん元気そうでした。
サトさんやハナさんも無事です。少し、泣いておられますが、生きていて良かった。
わたくしはサトさんとハナさんに近づきました。
「サトさん、ハナさん……」
「リーノ……家が……」
「私たち、どこにも行くところがないの」
わたくしは力強く頷きました。
「大丈夫です。しばらく城に住めるよう、陛下の許可をもぎ取ってきます。その間、みなさん噴水へ。――メタナイト卿が待っていますわ」
――――――
みなさんを噴水に案内したあとは、わたくしは城内を走り回りました。
陛下と閣下は、玉座の間にいらっしゃいました。なにやら、カスタマーサービスと話しています。
デリバリーシステムが作動したあとのようです。
よく聞こうと、耳をすませます。ですが、会話はすぐに終わってしまって、何も情報を得られませんでした。
陛下と閣下が、こちらにやってきます。
わたくしは慌てて、その場から逃げ出しました。
村人たちを城に泊める件は、あとで許可を貰いましょう。
逃げ出したあとは、噴水へ向かいます。
ですが、道中でまたデスタライヤーの攻撃にあいました。
今度は四機も、ププビレッジを襲います。
また村が焼かれます。
悔しくて、唇を噛み締めました。
――悲しくて、怒って、やっつけてやりたいと思いました。
とにかくメタナイト卿と合流しようと、足を動かします。
噴水までくると、今度は村人たちとすれ違いました。
彼らは噴水の中に隠れていた階段から現れ、一目散に逃げ出しています。どうやら村へ向かっているようです。
最後尾には、アーニャとランタンがいました。
「待ってください!みんな!」
「今、村に戻っても危ないだけよ!」
「アーニャ、ランタン!どうしたのですか?」
「メタナイト卿が村のみんなに、志願してくれって……」
「ええ!?」
その間にも、光弾の攻撃はふり続けます。
「とにかく中へ!リーノも見てください」
アーニャが先導し、わたくしは噴水の中に隠された階段をおりました。
階段をおり、大きなエレベーターに乗って、下へおり続けます。
深い階層へ到着しました。エレベーターを出ると、巨大な塊が目に入りました。
ぐるりと頭を動かして、やっと巨大な塊の正体がわかります。
戦艦です。初めて見ました。
「これは……これが、メタナイト卿たちの秘密ですか?」
「そうよ。私もアーニャもびっくりしたわ」
「たった三人でこんな凄いものを造れるなんて、素晴らしいですよね」
「そうですね」
途方もない、そう思いました。
そして三戦士の中では戦争が終わっていないことを、改めて知らされたようで、胸が締めつけられます。
戦艦のエレベーターに乗り、ブリッジに上がります。
そこにはメタナイト卿をはじめ、ソードナイトさん、ブレイドナイトさん。そしてフーム様、ブン様、カービィ、ロロロ、ラララがいました。
「リーノ!ねえ、あなたも戦ってくれる?」
フーム様の言葉を聞いて、わたくしは力強く頷きます。
それから、メタナイト卿をまっすぐ見つめました。
「――お傍に」
「……こちらへ」
メタナイト卿の近くへ寄りました。
彼は手を広げて、さらに近くへ来るよう促します。
少し恥ずかしかったですけれど、わたくしは進みました。
連れて行ってくれるのか、その答えを聞くためです。
ぎゅっとハグをしてくれました。
優しく背中に手を回されます。緊張がほぐれていくようでした。
「すまない」
聞き返すよりも前に、意識が暗転しました。
――――――
「リーノ、起きました?」
「……ええ」
「お水、飲める?」
「いただきます」
目を覚ますと、わたくしは自室にいました。
体をおこし、辺りを見回します。
すでに夜で、わたくしはいつの間にか自室にいて、アーニャとランタンは傍にいてくれて。
でも、あの人はいなくて……。
わたくしはすごく、悲しくなりました。
両手で顔をおおいます。
「……置いて、いかれたのですね」
ランタンがわたくしの隣に座り、背中をさすってくれました。
「連れて行かないでくれたのよ」
「私たちも断られたのですよ。……連れては行けないと。信じて待っていて欲しいと……」
「私たちが安全な場所にいてくれるから、死力を尽くして戦えるって言われたわ」
「……理由は、それだけでしょうか?」
「どういうこと?」
わたくしは顔から両手を離します。
「メタナイト卿は、三戦士のみなさんは冷静に物事を考えられる方々です。負けられない戦いなのに、力のあるわたくしを連れて行かないのは、なぜでしょうか?」
村人たちは連れて行けて、わたくしにはできない理由。
「――帰ってきたら、聞き出してみせます」
祈るように、胸の前で手を組み合わせて。
無事に帰還される日を待ちました。