【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

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巨鳥と古代文明

 ダイナブレイドを見たのは、青空高く舞い上がった後の、米粒ほどの小さな影だった。

 

 村に嵐を巻き起こした張本人はカービィを追っているらしい。そのカービィが村に逃げて来てしまったので、ダイナブレイドが村までやってきた。おかげで村の建物のいくつかは吹き飛ばされてしまった。

 私も空へ飛ばされそうになったが、メタナイト卿が体を支えてくれた為、なんとか地面とくっついている。

 ダイナブレイドが去っていった後、ようやく私たちは話ができた。

 

「怪我はないな?」

「はい。ありがとうございます。メタナイト卿」

「無事でなによりだ」

 

 バサリとマントを体に巻きつける。そんな何気ない仕草までカッコイイなんて、反則のように思えた。

 彼はカービィがワープスターに乗って海の方へ行くのを見届けてから、お城の方に戻って行った。

 

 

 

 村の修復作業を手伝っているときに、トッコリから事件の経緯を聞いた。

 彼によると。ダイナブレイドがカービィを追いかけていたのは、またまた陛下たちの仕業らしい。

 村にまで被害を出すような悪巧みは、腹がたった。だから今夜も食事を質素なものに変更する。

 

 その日の夕飯は具入りのお粥にした。

 夜中にお腹が減らないように、考えた末だ。

 夕飯を見た陛下は「またか」と言わんばかりに声を上げた。

 

「またお粥かゾイ?!今度は何に怒っているゾイ!!!」

「村に被害が出るような悪巧みをされました」

「だからって連続でお粥を出されたら、飽きるし栄養が足らんくなるゾイ!ハンバーグが食べたいゾイ!!!」

「明日はそうめんです。栄養に関しては問題ありません。材料はすべて煮て溶かしこんでいますから」

「質素ゾイ!!!!手間がかかったカレーみたいだゾイ!」

「はあ、お前を怒らせたらこうなるから嫌でゲス……。おっ、このお粥けっこうイケるなこりゃ」

「なんだと?……もぐもぐ。……んまあい!おかわり!!」

「ただいま」

 

 鬼になりきれないあたり、私は陛下たちに甘いと思う。

 

「あ、そうだ。陛下、家が壊れてしまった村人たちを、お城に案内しておきましたので」

「なに!?誰がそんな許可を出した!??」

「わたくしが勝手に案内しました。だって、元はと言えば、陛下たちのせいで彼らの家は壊れたんですよ?そのくらいは当然かと」

「ぐぬぬ……勝手に決めるなゾイ!!」

「次回は許可をとります」

「次回なんてないゾイ!!!」

 

 それから村は修復作業に大忙しだ。私も時間を見つけては、フーム様やブン様たちに混じりお手伝いをさせていただいた。幸いなことに、村人たちの家はすぐに建設された。

 城に泊まっていた村人たちは、荷物をまとめて村に帰っていく。

 その内の子供の一人が、私に言った。

 

「お城のベッド、おうちのベッドよりふかふかで気持ちがよかったわ。私、お城に住みたい」

「では、たくさん勉強してください。それから、たくさんお母様のお手伝いを、家事をなさってください。それができなければメイドの仕事は務まりませんよ」

「リーノさんのベッドもふかふかしてるの?」

「はい。していますよ」

「じゃあ、私もいつか、お城のメイドさんになる!お勉強もお手伝いも、たくさん頑張るわ!」

「わかりました。あなたがいつか、このデデデ城に相応しい方になったら。わたくしの方から陛下に推薦いたします。頑張ってくださいね」

「ありがとう。リーノさん」

 

 私たちは手を振り合って別れた。

 彼女が大きくなって、いつか本当にメイドをついでくれたら、嬉しい。

 そうしたら私はお役御免になっちゃうかもしれない。けれど、陛下たちのお世話をする若い人がいてくれる事は心強い。

 

 できれば、すぐにでも後輩が入ってくれたらいいのに。後輩がいてくれたら、少しは私の仕事に余裕ができるから、結婚も考えられるようになるはず。

 そうしたら、もっとあの人とお近づきになりたいわ。

 

 物思いにふけながら、私は城の廊下を歩いた。

 

 

 

 

 それから一週間と数日、お城は大忙しだった。陛下の即位記念式典の準備で、目が回るほど体と頭を動かす。

 いつもののんびりとした時間はどこへやら。毎日毎日、夕方には帰れたのに、最近はとっぷり夜がふけるまで帰れない。

 私は、招待する村人たちの分の料理について考えている。

 

「豪華でみんなが味わったことのない料理か……。だったら、ビーフシチューとか、手間がかかる料理をだそう。小難しい料理よりも、こっちの方が親しみがあるわ。それにお城の食材を使えばとっても美味しいものができるはず。うん、それなら"みんなが味わったことのない"仕上がりになるはずよ」

 

 毎日式典のメニューを作ってはカービィに食べてもらう。同じメニューばかり食べさせてしまい、彼には悪いと思う。当の本人は楽しそうに食べてくれるので、それは救いだった。

 

 この期間、まともにメタナイト卿に会えていなかった。用がないし、なにより忙しいから仕方がない。陛下の魔獣遊びだって、今は大人しい。おかげで、彼に伝えに行くことも、彼が私の方に来ることもない。

 

「一目会えたら、こんな疲れなんて吹っ飛ぶ……気がしますわ」

「ぽーよぅ?」

「なんでもありませんわ。カービィ」

 

 止まっていた手を動かすと、持っていたお玉が動きだし、ビーフシチューがゆっくり回った。

 

 

 

 式典当日。

 まだ暗い早朝から身支度を整える。そして日が登りだした頃に、お城の調理室に向かって、すでに準備しているワドルディたちと共に食事を作る。それから陛下のお部屋へ伺う。

 まず、陛下は歯を磨いたら、お食事をお部屋で食べてもらう。今日は渾身の出来の、タマゴサンドイッチである。

 それを食べたら、次はお風呂へ。ここからはワドルディたちのみ、陛下のお手伝いをする。私はその間ちょっとだけ暇である。服など用意し終えた後は、特に暇。

 お風呂から上られた陛下には、普段と同じガウンに、特別な王冠、特別な日にしか身につけない数々の飾りを身につけていただく。

 鏡でお姿をチェックしていただき、合格がもらえれば、お部屋から出発だ。

 

 長い廊下を歩き、いくつかの階段を下った先。そこに会場となるバルコニーがある。

 それが見えてきた所で、私は立ち止まった。

 

「それでは、デデデ陛下。いってらっしゃいませ」

「うむ。行ってくるゾイ」

 

 ファンファーレが鳴り響く。

 陛下は堂々と、優雅に歩いて国民の前に出た。マイクを通して長々とスピーチする。

 ここからでは、はっきりと聞こえない。だが、疲れ切った私はちゃんと聞く気持ちがなかった。

 

 ようやく一息つける。

 陛下が離れてから、大きな息を吐いた。激務から解放される喜びだった。

 今日を乗り越えられれば、明日はお休み。何をしようか、何もしないでおこうか。頭の中をそればかりだ。

 

 あくびをしつつ、ぼんやり陛下を待っていると、突然怒鳴り声が耳を通過した。

 

『ぬぬぬ〜!ワシはこのプププランドの、由緒正しき王様じゃゾ〜イ!!!』

 

 眠気がすっかり覚めてしまった。驚いてバルコニー側を見ると、すでに陛下がこちらにお戻りになっている。

 ずんずんと荒々しく足を運ぶ姿は、まさしく怒りを表していた。

 

「陛下。お早いお戻りですね。何かございましたか?」

「あいつらには、ワシを祝う気持ちがなかった!だから今日はお終い!!解散ゾイ!!!」

「お終い?解散ですか。えっ、では式典の後のお食事パーティーは……」

「なしなしなしなしなしゾーイ!!!まったくもう」

「そ、そんな」

 

 今までの苦労が水の泡となり、消えてしまった。その事実が受け入れられず、立ち止まってしまう。

 陛下はお一人で先に行かれてしまった。

 

 風に吹かれて消えてしまいそうな私に、声をかけてくださったのはパーム大臣一家だ。

 

「リーノ、あまり気を落とさずに」

「パーム様……お気遣いありがとうございます。あの、一体何があったのでしょうか?」

「デデデの奴が、村のみんなに怒ったのよ!今日来てくれた人たちは全員、リーノが作ったご飯が目当てだったの」

「陛下は、誰も自分を祝う気がない事に腹を立てたの。それで式典はお開き、この後の食事会もなくなった……という訳よ」

「なるほど……。陛下らしいご判断ですね」

「そんなに落ち込むなよ。ご飯なら、俺たちが食べるからさ」

「はい、ブン様。お部屋を整えてから、お昼にしましょう。その時は皆様をお呼びします」

「我らは遠慮しよう」

 

 大臣一家の後ろから現れたメタナイト卿。そして部下のソードナイトとブレイドナイトだ。

 彼を眩しく感じるのは、背後から光が差し込んでいるからだ、そう思う事にした。

 フーム様が一歩前に進み出る。

 

「あら、どうして?せっかくリーノが、腕によりをかけて作ってくれたのよ」

「急ぎの用事がある。とっておきの食事は、いつかいただくとしよう」

「……メタナイト卿には、いつもお世話になっております。あなたの為なら、張り切って調理いたしますわ」

「感謝する。では」

 

 メタナイト卿は部下を連れて、廊下の奥を進んだ。

 その背中を名残惜しく眺める。もう少し話したかったけれど、互いに仕事があるならばゆっくりはできないか。

 そっとため息をつく。

 俯いた時に、ブン様と目が合った。なにやら笑みを浮かべている。

 

「残念だったね。メタナイト卿も一緒じゃなくて」

「?そうですわね」

「……あーもう!リーノをからかってもつまんない!」

「え、あの、申し訳ありません」

「ブンやめなさい!リーノも、謝らなくていいのよ」

「かしこまりました」

 

 大臣一家は、ひとまず一家のお部屋に戻る。私は陛下たちがいつもお使いになる食堂へ向かった。

 

 ワドルドゥ隊長から数人のワドルディを借りて、食事を整えた。次は調理室へ行って食事を温め直す。サラダなども一人用に盛り付け直していると、時間は昼前になった。ちょうどいい時間だ。みんなに席についてもらおう。

 ワドルディの一人を、大臣一家の方へ使いにやる。私は、残りの調理をワドルディたちに任せて、陛下と閣下のもとへ向かった。

 

 

 

 ーデデデ大王の部屋。

 大層な両扉の、片側にノックする。

 

「陛下、リーノです。入ってもよろしいでしょうか?」

「入ってもいいでゲスよ」

 

 こんなふうに、陛下の代わりにエスカルゴン閣下が返事をすることは、珍しくない。

 私は「失礼します」と言ってから中に入った。

 エスカルゴン閣下の姿はすぐに見つけたが、肝心の陛下が見えない。どこだろう?

 

「閣下、陛下は何処に?」

「ん」

 

 指差す方向には、人一人分よりも大きめに膨らんだベッドがあった。

 まさか……。

 

「ふて寝、していらっしゃるのですか?」

「そうみたいでゲス」

「よほど腹が立ったんですね」

「本当に、こういうときは子供でゲス」

「うるさいゾイ!全部聞こえているゾイ!」

「ああ、起きていらっしゃいましたか。陛下、昼食のご用意ができました」

「すぐに行くゾイ」

 

 ベッドからのそりと起き上がり、鏡の前で軽くチェックしてから部屋の外へ出た。

 私たちはその後に続く。

 

 

 

 皆様に食べていただいた昼食は、かなりの高評価を得た。

 陛下と閣下は満腹になるまで、何度もおかわりをしてくれた。

 大臣一家も、おいしいと顔を綻ばせて箸を進めた。普段はおかわりしないメーム様も、今日ばかりは特別だと、もう一度お皿に料理を盛る。

 

 それでも料理が余ってしまったので、ワドルディたちにも分けられる事になった。

 これから昼食を食べるワドルディだけなので、少し不公平だが仕方がない。

 

 陛下たちの食器を下げてから、一階の兵士食堂へ向かう。

 

 兵士たちが使う食堂の隣に調理室が設けられいるので、そこで料理を温め直す。

 今食堂にいる全兵士に配るには、どの料理も量が足りない。なので、一品ずつ少量盛り付けて配ることにした。

 本当に少しだけで、味見する量ぐらいしかないが、全員に行き渡る。

 

 さっそく食堂に運び込み、兵士たちが持ってきたトレーに乗せていく。

 なぜ一品が多いのか、説明はワドルドゥ隊長がしてくれたのだろう。配膳はスムーズに行われた。

 配膳が終わった。なので部屋に戻り遅めの昼食にするかと、食堂から出て行こうとした。しかしワドルドゥ隊長に呼び止められる。

 

「今日は配膳を手伝ってくれてありがとう。お礼に、ここで食べていくといい」

「では、お言葉に甘えさせていただきますわ。正直に言うと、もうお腹がぺこぺこなんです」

 

 今にも鳴りそうなお腹をさすった。

 私もワドルディたちと同じ料理が乗ったトレーをいただいて、隅っこの席についた。

 ワドルドゥ隊長が号令をかける。

 

「いただきます!」

「いただきます」

 

 野菜から手をつける。特に私が作った料理の野菜を。うん、味がしっかり染みていて、おいしい。

 今回作った料理のレシピはちゃんとまとめてある。次回の、アーニャとランタン、そしてメタナイト卿たちが集まる……料理パーティーで出そう。

 喜んでくれたらいいわね。

 

 

 

 陛下たちが、またこそこそと動いていた。懲りない方々だなと思いつつ、詳細をまとめた手紙を書いて、メタナイト卿に渡した。

 次は、お粥じゃなくてうどんにしてやろうかと、企画する。

 その二日後、フーム様から歴史的な発見をしたと、聞かされる。

 

 私の部屋で、紅茶を飲みながらその話を聞いた。

 

「でもおかしいのよ!デデデがこの国の王様だっていう証拠は、今まで全然出てこなかったのに!なんで今になって急に発掘されるようになったのかしら」

「もしかして……陛下がまた何かなさっているのでしょうか?」

「心あたりでもあるの?!」

 

 私はしばし考え込んで、首を横に振った。

 

「夜、陛下が出歩いたという報告は受けておりません。陛下自身が何かした訳ではないかと」

「デデデの仕業じゃないなら、一体誰が?」

「閣下か、もしくは村に陛下の協力者がいるかもしれません」

「村に?……あっ」

「フーム様?」

「ありがとう、リーノ!」

 

 そう言うとフーム様は紅茶を一気に流し込み、部屋を出て行った。

 

 次の日。事態は急展開する。

 メーム様とパーム様が、土埃まみれで城に戻られたので、お風呂の用意を手伝わせていただいた。

 その時に発掘場所で起きた事件を聞かされた。キュリオ氏や村人たちが発掘した古代の品々は、すべて偽物だった。陛下たちが自分たちを正当な国王だと認めさせる為、キュリオ氏の弱みを握って行った事件だった。

 私のこめかみはぴくりと動いた。

 

 

 どうやら夕食は素うどんで決定のようですね。

 

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