ハリー・ポッターと錬金術師の弟子   作:丸子

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11,疑念と井戸端会議

「それで、今日は何を話しに来たのかね?休暇前に話した、ドラゴンの生息地と鱗の強度の関係の論文についてではなさそうじゃが」

 

不死鳥のフォークスを撫でながら、アルバスは校長室のソファに深く腰掛けているアリアにそう聞いた。

アリアは二、三週間に一度校長室にやってきては紅茶を飲みながらアルバスと話していた。魔法についての内容がほとんどである。最新の研究からアルバスの過去の業績に至るまで、二人は時を忘れて話すことが多かった。

アルバスが驚いたのは、アリアの魔法に対する深い知識と経験であった。アルバスと同年代だと考えてもアリアは優れた魔法使いであるといえた。

アルバス・ダンブルドアは非常に優秀な魔法使いであり、彼と対等に魔法の議論ができる存在は魔法界に少ない。そんな存在のほとんどがアルバスより老齢の魔法使いで、闇の魔法使いゲラート・グリンデルバルドや、アリアの師であるニコラス・フラメル等もその内の人物である。彼らのような人物と話す機会は少なく、アリアとの高度な議論はアルバスを楽しませた。

 

 

 

しかし、今日校長室を訪れたアリアはどうやらいつものような議論をしに来た訳ではなさそうだ。アルバスを見つめる橙の瞳には炎が宿っているかのようだ。アリアは小さく息をつくと口火を切った。

 

「今年はホグワーツで賢者の石を保管しているようだな」

「……誰から聞いたのかね」

「ニコラス・フラメルだ」

 

当然のように答えるアリアだが、ニコラス・フラメルには厳重な警備がついている。ホグワーツの一生徒が会えるはずもなく、おそらく非公式に会いに行ったのだろうと推測できる。

 

「そこまではまだ、何とか、理解できる」

 

アリアは眉を顰めて一語一語を強調しながらそう言った。ここまでは穏やかな口調だったが、それが限界だったようだ。

 

 

「だが!なぜ!!廊下などに道を置くんだ、あんなもの生徒が見つけたらどうなると思っている!?」

声量は小さいが、アリアの声は鋭い。パリン、と紅茶を入れていたカップが割れた。

 

「っ、すまない」

 

アリアは小声で詫びて杖をふるった。割れたカップは元通りになる。アルバスは静かにそれを見つめていた。立ったままのアルバスは自然とアリアを見下ろす形になっている。

 

「そうすることが最も安全だと判断したからじゃ」

「安全だと?学校の廊下がか?」

「四階の廊下が一番絵画が少なく、情報が洩れる心配が少ないのじゃよ。それに、あそこにはマクゴナガル先生、スプラウト先生など教師が沢山の守りを施している」

 

アリアは納得していない様子で呟いた。

 

「しかし、ハリー・ポッターは気づいた」

「ハリーが?」

 

 

アルバスの目がきらりと光った。アリアはその反応に面食らいつつも、一部始終をアルバスに話す。

 

「どうするんだ?生徒に知られた以上、場所は移すんだろうな」

 

アルバスは髭を撫でながら考え込んでいた。

 

「いや……アリア、しばらく様子を見よう」

「何だと?あの子はこれからも首を突っ込むつもりだ。そんな危険な真似をする子供は放ってはおけない。私に言わせれば、ハリーに情報を流した森番のハグリッドとかいう男も外した方がいいと思うがね」

「儂は、ハグリッドを外すつもりも、場所を変えるつもりもない」

「それでは何か?あの子たちが危険に首を突っ込んで嗅ぎまわるのを指を咥えてみていろと?」

 

冗談じゃないとばかりにアリアは立ち上がる。アルバスの沈黙はイエスと告げていた。アリアは言葉が見つからず口をぱくぱくとさせていたが、やがて何かに思い当たった。

 

 

「アルバス……ハリーを泳がせて様子を見ようというのか。犯人も知っているんだな」

「証拠はないが、見当はついておる。そして行動に移すとすれば学年末テストの後じゃ」

 

アリアはぽすんと音を立てて再びソファに座った。

 

「……そうか、そういえば君は、目的のためにはあまり手段を厭わないタイプだった」

「儂は儂なりに考えているだけじゃよ」

 

髭を撫でつけながらアルバスは笑った。アリアは深いため息をつき、ソファから立ち上がった。

 

「邪魔したな。また来る」

「おや、この間話していた論文の話はいいのかね」

「興が削がれた。その話はまた今度にしよう」

 

 

校長室から出ようとするアリアの背にアルバスが言葉を投げかける。

 

「そうじゃ、アリア。できればハリーの話もまた聞かせてくれると嬉しいのう」

「アルバス、君は食えない爺さんだよ……なら、私からも交換条件だ」

 

アリアは扉付近でくるりと振り返った。アルバスをしっかりと見据える。

 

「賢者の石を他人に渡してみろ、私が犯人もろとも殺してやる」

 

返答はいつもの笑い声だった。アリアは今度こそ校長室を出て行った。

 

「子供の機嫌取りだって楽じゃないんだぞ、全く……」

そう呟きを残して。

 

孤児院で多くの子供たちと生活していたアリアは子供の相手が上手かった。例えば先日のマルフォイ家の子供。彼もまた、アリアがその耳に心地いい言葉を吐いたに過ぎない。彼がハリーに何かと突っかかるのは羨望、嫉妬、そして競争心。友達になりたかったのが何かの形で挫折したのか、ハリーの姿を見る度にちょっかいをかけている。ならばアリアは圧倒的な力を見せつけ、そのうえで彼を認めてやるのみだった。

 

 

一方、校長室でアルバスは一人首を傾げた。

 

「儂、『目的のためにはあまり手段を厭わないタイプ』に見えるかのう……?」

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