ハリー・ポッターと錬金術師の弟子   作:丸子

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14,守り、あるいは

「終わったーー!!」

 

魔法史の試験を行っていた教室で両手を突き上げて快哉したのはザカリアスだ。女の子たちはそんな彼を見て苦笑していたが、皆もまた彼と同じ心境であることは事実だった。

 

 

今日は学年末試験の最終日であり、最後の試験である魔法史を終えたところだった。

アリアは筆記試験は問題なくこなしていた。そもそもが十一歳の子供向けの試験である。魔法に関する一般知識のような問題だ。高学年になってそれぞれの教科の専門的な知識を問われるようになると、流石のアリアといえど全ての授業を完璧にこなすのは難しいだろう。

 

むしろ大変だったのは実技試験だった。

呪文学ではパイナップルをタップダンスさせる課題が出たが、タップ音までつけた完璧なダンスをさせるところだった。聴覚にまで作用する魔法は一年生では習えないレベルなので、かろうじて普通のダンスをさせることに成功した。

 

変身術ではネズミを嗅ぎたばこ入れに変身させる課題が出たが、アリアの作る嗅ぎ煙草入れは意匠が古すぎてマクゴナガル教授は首を傾げていた。アリアは嗅ぎたばこ入れを八方からじろじろと眺めるマクゴナガル教授を冷や汗をかきながら見ていた。

 

大変だったのはそのくらいで、アリアはそれ以外は特に試験に苦戦などはしていなかった。しかし学校全体を包む試験前独特の緊張感から解放されたことは喜ばしいことだった。魔法史の試験教室で、アリアも皆にまじって笑顔を浮かべていた。

 

 

 

昨日までは試験が終わったらその足で久しく話せていないアルバスの元に行こうと思っていたのだが、今朝方届いたメモによると緊急の用事で魔法省に行かなければならなくなったらしい。

アリアは仕方なくハンナたちと湖畔でイカと戯れていた。折角教えたのだ、ハンナ達同級生に試験の出来を聞こうと思ったが、彼女らは“試験”の“し”の字すら耳に入れたくないようだった。

 

 

しばらく湖畔にいると、禁じられた森がある方から見覚えのある生徒が三人駆けてきた。そのうちの一人、ハリーがアリアを見とめ、こちらに向きを変える。

 

それに気づいたスーザンがフンと鼻を鳴らした。何の用だとも言いたげである。大幅なグリフィンドールの減点の件での怒りは根深いようだ。

 

「アリア、ちょっといいかな。聞きたいことがあるんだ」

それを知ってか知らずか、構わずハリーはアリアにそう言った。アリアはハンナ達に断りを入れて、他の生徒に話が聞かれないくらい距離をとってからハリー達の話を聞くことにした。

 

 

 

「アリア、前に孤児院の支援者がダンブルドア先生と知り合いだったって言ってたよね、ダンブルドア先生と話したことがあったりしない?」

「ま、まぁ……あるにはあるが」

アリアはどもりながら答える。

 

「そしたら校長室を知らない?」

「何か校長に用事でもあるのか?生憎だが、ダンブルドア校長は今ホグワーツにはいないぞ」

「ダンブルドアがいないだって???この肝心な時に???」

 

ハリーはうろたえた。

 

「そう聞いているが……そんなに緊急の用事でもあるのか?」

 

「実は……」

 

ハリーは声を落とし話し出す。ハグリッドが三頭犬を大人しくさせる方法を怪しい人間に教えてしまっていたというのだ。アリアはそれを聞くと深くため息をついた。

 

「だからあの森番を外せといったんだ……」

 

 

ハグリッドの口の軽さまで計算に入れて賢者の石の守りを固めていたというなら大したものである。いや、その場合はむしろ賢者の石を守っているとはいえない――賢者の石を囮にし、罠を張っている。

ならばアリアがすべきことは賢者の石を奪われぬようにしながら被害を最小限にとどめることだけだ。

 

「いいか、ハリー。あの石の守りは万全だから、君が心配することはない。忠告しておこう……私は君に以前詮索するなといったな」

アリアははっきりと、念押しするように伝えた。

 

「訂正しよう。()()()()()()

 

 

ハリーは今度ははっきりとアリアに不満を持ったようだった。あぁ、まぁ、と要領を得ない答えを返してその場を去る。ロン、ハーマイオニーも慌ててついてくる。残されたアリアが低い声で呟いたことは誰も気づかなかった。

 

「……張るなら皆の寝静まった今夜か」

 

 

 

 

「ハリー、どうしよう」

一方で、校舎に向かいながらロンが不安げに呟いた。ハーマイオニーはその横で不思議そうに首を傾げる。

「あの子、どうしてダンブルドア先生が学校にいらっしゃらないことを知っているのかしら……」

 

それを聞いたハリーの頭の中に最悪の想像が浮かんだ。

 

「もし、手紙を出したのがアリアだったとしたら……??」

 

いや、これはあり得ない。ニコラス・フラメルについて教えてくれたのはアリアだし、三頭犬の弱点だって知らない様子だった。

けれど一生徒のはずの彼女がダンブルドア校長の不在を知っているのはなぜだ?なぜハリー達が石について詮索するのを止めようとする?石について……そうだ、アリアは“石の守り”と言った!石の守りについて知っている!!

 

ハリーは、アリアももはや信用できないと悟った。

 

思えば、ニコラス・フラメルについて聞いたときや、先程ダンブルドアについて聞いたときもどこか挙動不審だった。

 

その後スネイプを見張ることにも失敗し、マクゴナガル先生にもダンブルドア校長が学校にいないことを告げられ、四階の廊下付近にいることを散々怒られたハリー達は這う這うの体でグリフィンドールの談話室に戻ってきていた。

ハリーは覚悟を決めてロンとハーマイオニーに宣言する。

 

「僕らで石を守るんだ」

 

 

 

 

その晩ハリー達はこっそり寮を抜け出した。ネビルが立ち向かってきたことには驚いたが、苦し紛れにネビルを動けなくしてから談話室を出る。ネビルには申し訳なかったが、石を守るためだ。

 

 

その数十分後、アリアがハッフルパフ寮で一人こう叫んだ。

 

「しまった寝過ごした!!!!!」

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