ハリー・ポッターと錬金術師の弟子   作:丸子

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15,障害の数々

アリアは透明になって廊下を駆けていた。ある程度のレベルの魔法使いには見破られてしまうような杜撰な透明術だったが、かけないよりはましだろう。

 

杞憂であってくれと願いながら、先ほどアルバスに守護霊を飛ばした。今朝ホグワーツを出発したのだから、そろそろ帰ってくるところだとは思う。けれど彼はハグリッドが三頭犬の秘密を漏らしたことを知らないはずだ。なるべく急いでもらう必要があった。

 

 

「遠すぎるぞ、全く……」

 

四階の廊下はグリフィンドールの寮に近い。それもアルバスの計略のうちなのだろうか、と勘繰ってしまうほどには寝起きのアリアは焦り、苛立ちを感じていた。

 

(あの三人組は大人しくしているんだろうな……)

 

 

 

 

ようやく四階の廊下につくと、ドアが開いている。

嫌な予感が的中したことを呪いながら、アリアは躊躇なく中に踏み込んだ。

 

話に聞くよりもずっと迫力のある三頭犬がそこには立っていた。目の前の小さな人間を見て、低く唸っている。

 

「音楽か……」

 

ハリーの言っていた弱点を思い出す。アリアは三頭犬の足元に転がっているハープを目ざとく見つけると、杖を一振りした。するとハープは浮き上がり、パッヘルベルのカノンを奏で始めた。アリアのお気に入りの曲である。

すぐに三頭犬の目はとろんとなり、数十秒後には床に丸まって安らかな寝息を立て始めた。アリアはそっと三頭犬の足元の扉から中に滑り込んだ。

 

 

 

中に入ったというより中に落ちた、と言った方が正しいだろうか。着地先はうねうねと動く植物だった。それが“悪魔の罠”と呼ばれる植物であると瞬時に看破したアリアは、すぐにその場を離れる。植物は追いすがるが、アリアが振り向きざまに杖先から炎を出してやれば、怯えたように壁際に縮こまった。

 

ここには既に誰もおらず、アリアは唯一の道である一本道の下り坂へと歩を進めた。

 

 

 

 

通路の出口には、広い部屋が広がっていた。天井は高く、羽の生えた鍵が無数に頭上で舞っている。箒が床に転がっていることからも、おそらく捕まえてみろということなのだろう。鳥たちの羽音は無慈悲に響き渡っている。アリアは正面にあった分厚い木の扉を開けようとしてみるが、当然のごとくびくともしない。

 

参ったな、とアリアは独りごちた。おそらく上空を飛んでいる鍵の中の一本が正解の鍵なのだろう。しかし一本ずつ試していては夜が明けてしまう。逡巡したが、アリアにはすぐに解決法が思い浮かんだ。

 

「おそらく本物の一本以外は鳥が鍵に変えられているだけのはず……」

 

術者が杖を向け続けることなく無機物に生命を与える魔法はかなり難しい。かなりの腕を持つ魔法使いが対象一つに集中しなければならないのだ。それに対して、鳥の羽以外の部分を鍵に変身させる魔法はさほど時間はかからない。これほどの数の飛び回る鍵を生み出すのには、前者だけではほぼ不可能に近い。

 

求めるものは鍵、ならば。杖を掲げてアリアは唱えた。

 

「フィニート・インカーターテム!」

 

本来この呪文は「フィニート」という簡略したものでも効くことが多い。しかし、さすがのアリアといえど、こうも大量の鳥(鍵)たちに魔法をかけるには万全を期す必要があった。他者のかけた呪文を終わらせることができるかどうかは、術者同士の技量にも左右されるのだ。

 

詠唱の直後、バサバサと響く羽音は変わらないように思えた。しかし、アリアの耳はチャリン、と金属が床に落ちた音を聞きつける。上空を見やれば、さきほどまで鍵だった生き物はすべて元の鳥の姿を取り戻している。そして床には一本の鍵が落ちていた。

 

アリアは駆け寄ってその鍵を拾うと、分厚い木の扉の鍵穴に差し込む。扉は抵抗なく開いた。次の部屋の中を見て、アリアは目を見開いた。

 

 

 

「ロン、ロン起きて!」

 

そこには意識を失っているらしいロン・ウィーズリー、そしてそのロンを揺さぶっているハーマイオニー・グレンジャーがいた。グレンジャーはアリアに気が付くとロンを庇うように立った。

 

「……どうしてあなたがここにっ!?」

 

アリアは頭に血が上るのを感じた。

 

「それはこっちの台詞だ馬鹿者!!」

 

グレンジャーを怒鳴りつけ、つかつかとウィーズリーに近づく。自分より背の低いアリアの怒気に満ちた異様な形相にグレンジャーは圧倒されたのか、気が付いた時にはアリアがウィーズリーの傍にしゃがみこんでいた。

 

「ロンになにするつもり!?」

「グレンジャーこそ何をするつもりだ。意識不明の人間を揺さぶれば脳機能に障害がおこることもあるんだぞ」

 

声を抑えてアリアがいうと、グレンジャーはアッと口を押えた。そういえば彼女はマグル出身だ。基本的な知識はあるのだろうが、パニックになりかけてウィーズリーを揺さぶってしまっていたのだろう。

 

「私……ここを出て、ダンブルドア先生にふくろう便を送らなくちゃ」

 

「もっと早くその結論に至ってくれていたらな。アルバスには私が伝言を送った。おそらく今頃こちらに向かっている」

 

そう告げると、グレンジャーは目に見えて安心したような表情を浮かべた。一先ず二人の子供の無事を確認したことに安堵したアリアだったが、あることに気づく。

 

 

「ちょっと待て、もう一人はどこだ?」

 

そう聞けば、グレンジャーはおずおずと次の扉を指さした。

 

「まさか一人で!?」

 

そう聞くとグレンジャーはまたも無言でこくりと頷く。

 

「××!!」

 

アリアは美少女の口から発されたと思えないほどの放送禁止ワードを口にすると、グレンジャーが指さした扉に向かった。途中で振り返り、ウィーズリーに杖を向ける。

 

「リナベイト!」

 

杖から発された閃光がウィーズリーに当たると、彼は「うぅん……」と声を上げた。

 

「ロン!」

「グレンジャー、二人で戻れ。おそらくダンブルドアはすぐ着く。自分の口で何があったのか説明しろ。私がここにきていることも」

 

そう言うと、グレンジャーは唇をかみしめて頷いた。

 

アリアは今度こそ、単身次の扉に向かっていった。




短い話を毎日あげてモチベを保っていましたが、読み応えないかな……2日に1話、長めの話を上げた方がいいかな……と思う日々です。秘密の部屋編はそうなるかもしれません。
賢者の石編はあと1、2話です。
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