ハリー・ポッターと錬金術師の弟子   作:丸子

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幕間 帰省

時は1991年12月。

 

ホグワーツに入学して最初のクリスマス休暇に、アリアはこじんまりとした民家に訪れていた。ごく普通の家に見えるが、その実周りには厳重な警戒魔法が施されている。

迂闊に足を踏み入れればすぐさま魔法省の役人が飛んでくるであろうその警備の網に、アリアは躊躇わずに足を踏み入れた。

 

 

音もなくその民家に入り、ノックをしてアリアはとあるドアを開けた。そこには老人が安楽椅子に腰かけていて、アリアを見ると破顔一笑した。突然の訪問にも動じていない。

 

「久しぶりじゃの、アリア。二十年ほど前にあったのが最後だったか」

 

「十年の間違いさ」

 

冷静に訂正しながらアリアは目の前の老人――ニコラス・フラメルに向けて、スカートの裾を持って軽く膝を折った。

 

「お久しぶりです、()()

 

少し古風な挨拶に戸惑うこともなく、ニコラスは片手をあげて応える。

ニコラスはここ数年は立ち上がることは少なく、緩やかにその余生を過ごしていた。しかし今のニコラスはそういった調子を感じさせることなく声を弾ませる。

 

「アリア、体調はどうかね?命の水をやめたら背が伸びたのではないか?血を採ってもいいかね?ホグワーツに入学することにしたと聞いた時は驚いたぞ、やはりあの若造に興味があるのか?」

 

質問攻めにされうんざりとした顔でアリアは自身の体調面のことを主とした質問に答えていった。ニコラスの目は少し狂気を帯びていて、それには気づかないふりをする。

 

 

(この質問攻めは私を心配しているからではない……それに気づくことにすら百年の時間がかかった)

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在、年は明けてホグワーツのとある部屋。賢者の石を盗もうとしたクィレルを看取り、ハリーを医務室に運び終え、校長室でアルバスとアリアが話し合っていた。アリアは石の守りについて憤っている様子だ。

 

「クリスマスにニコラスの家にお邪魔してね。賢者の石がホグワーツに保管されていると聞いたんだ。調べてみたら何だあれは、あれじゃあまるでアトラクションだ」

苛立ちが隠し切れない様子でアリアがダンブルドアに詰め寄る。

 

「そう怒らないでくれ、アリアよ。結局『みぞの鏡』が石の守りの核だったのじゃ」

 

「フン、それ以外は罠というわけだな」

 

アルバスは何も言わずに微笑んだ。ブルーの瞳はきらきらと光を反射していて、その真意は読めない。

アリアはため息をついて呟いた。

 

「石はこれからどうやって守るというんだ……」

 

「それについてニコラスと話したのじゃが、ニコラスは一言『アリアに任せる』と」

 

アリアは飲んでいる紅茶を吹き出しそうになった。

 

 

「はっ……?あれは国際魔法連盟指定の最重要品だぞ?」

 

呆気に取られて二の句もつげない様子である。アルバスは追い打ちをかけるように微笑んだ。

 

「やはり弟子としてアリアは信用されているようじゃの」

 

 

アリアは咄嗟に閉心術を使った。窓もない部屋で魔法を習い始めた頃、初めの方に習ったのがこの魔法だった。アルバスがアリアの素性について探っていることはわかっていたが、開心術まで使ってくるほど疑われるかはわからなかった。それでも事あるごとに咄嗟に閉心術を使うほどには、アリアの警戒心は強かった。

 

結局アルバスは開心術は使わなかったようで、アリアはほっと息をついた。同時にじくじくと己の心の内で疼く罪悪感も感じていた。自分が禁忌を犯した存在だとは理解していた。けれどどうしても、このままこの学校に通っていたかった。

 

「アルバス」

 

意を決したアリアはアルバスに呼びかけ、こう続ける。

 

「本来ならばあんなものは壊した方が良いのは知っている。だが長年の研究の成果を壊すことは私達研究者にとって苦行そのものだ、心の準備ができるまで賢者の石は隠す。私しか知らない場所に。そして私の心臓が僅かでも動いている間、その場所を明かすことはない」

 

 

アルバスはにこりと微笑んだ。自分の答えが彼のお眼鏡にかなったことに安堵しながら、アリアはすっかり冷めてしまった紅茶を飲み、夜明け前にハッフルパフ寮に戻っていった。

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