ハリー・ポッターと錬金術師の弟子   作:丸子

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秘密の部屋編
17,困惑の新学期


「久しぶり、アリア!背が伸びたんじゃない?また一段と可愛くなってるわね!」

 

開口一番、漏れ鍋でまくしたてたのは同寮で同級生のハンナだ。

アリア達は、新学期前のある木曜日、示し合わせてダイアゴン横丁に買い物に来ていた。ハンナはどうもアリアのこととなると過剰に反応する傾向がある、と常々アリアは思っていた。しかしそれに慣れかけている自分がいることもまた気づいていた。

 

「まあな。そのせいで通販でなくてここに来る羽目になった」

 

アリアの身長は今だ平均以下ではあるものの、ハンナの言う通り夏休みの間に5cmほどは伸びている。そのため、元々背が伸びることを見越しておらず、動きやすいようにローブの丈が短めだったアリアはローブの新調をする必要があった。通販だけでも学用品は揃えられるのだが、ローブとなるとそうはいかない。

 

「あら、そうなの?でも私はあなたと買い物できて嬉しいわ!こっちよ、母さんを紹介するわ。向こうにスーザンとエロイーズももう来てるの」

 

アリアの手をぐいぐいと引っ張るハンナに、アリアも思わず笑顔があふれていた。

 

 

手を引かれて歩いて行った先にはハンナによく似た母親が立っており、スーザンとエロイーズも待っていた。二人はアリアを見て口々に挨拶した後、とっておきの話を聞かせるように声を潜めてアリアに囁いた。

 

「アリア、新しい『闇の魔術に対する防衛術』の先生が誰だか知ってる?……あのギルデロイ・ロックハートよ!」

「しかも昨日はダイアゴン横丁でサイン会をやってたんですって!私たちも昨日行けていたら会えたのに」

「何言ってるのスーザン、これからは学校で会えるのよ!!!」

 

くすくす笑う二人にアリアは何とも言えない表情を浮かべた。

ロックハートの本はベストセラーになっていたこともあり二冊ほど読んだことはあるが、少し誇張されているように感じていたからだ。彼に文才があるのは確かだが、出版した本の自己主張の激しさからもかなり癖のある人物であると伺い知れる。

 

(去年はクィレル先生、今年はロックハート先生か……)

 

『闇の魔術に対する防衛術』は毎年先生が変わると噂に聞く。今年こそは続いてくれるようアリアは願っていた。

アリア達はワイワイと必要な品をそろえ、9と3/4番線での再会を約束してその日は解散した。

 

 

 

 

 

 

そしていよいよ新学期である。今年は後輩が入ってくるということで、大広間で各寮のテーブルに座った二年生たちは他学年より少しざわついていた。

アリアはそれよりも夕食のことで頭がいっぱいのようで、目の前の空の皿をじっと見つめている。ハンナはそれに気づくと、少し呆れながらアリアを小突いた。

 

「アリア、組み分け後じゃないと夕食は出ないわよ」

 

絶望した顔をするアリアに、それよりも、と声を潜めて続けた。

 

「ハリー・ポッターが来てないのよ!」

 

グリフィンドールのテーブルの方を見てみると、確かにハリーらしき人影は見当たらない。代わりに真っ青な顔でソワソワしているグレンジャーが見えた。ハンナの声を聞きつけたザカリアス・スミスは、机の反対側からこちらに身を乗り出した。

 

「僕の父親さ、魔法省に勤めているんだけど、ポッターは夏休み中に魔法を使って警告を送られたらしいぜ」

 

そんな、とスーザンが口を覆った。スーザンは昨年度末のハリー・ポッターの冒険譚となっている噂を聞いてからどうにも彼を英雄視している節がある。新入生がやっと入ってきたが、ハッフルパフのみならず他の寮にもこのうわさは広がり、大広間のざわめきは増した。

アリアはちらりとアルバスを伺った。彼はいつも通りにこにこと優しげな瞳で新入生たちを見つめている。彼のお気に入りのハリーに何かあったようには見えない。ならば噂は杞憂だろうと決めつけ、アリアは組み分けの終了を今か今かと待ちわびるのだった。

 

 

 

組み分けの儀式が終わると、アリアは存分に夕食を楽しんだ。隣の新入生はアリアに話しかけたそうにしていたが、アリアは薄く切られたローストビーフを塊からはがすのに夢中なようだった。見かねたハンナがあれこれと新入生の世話を焼き、質問に答えてやっている。世話焼きはここでも健在のようだ。

 

「休暇明けって、アリアは特に沢山食べるわよね……」

「うちの孤児院にはちびが多いからな」

 

合間に話しかければ、そんな返事が返ってくる。ハンナは少しうろたえた。

 

「あの、私、不躾だったわ……」

「いいさ、食べられる時に食べているというだけだ」

 

アリアは本当にまったく気にしていない様子で、ソーセージをふーふーと冷ましている。この友人は仕草は子供のように見える。それでいて泰然自若であり、見た目と中身がちぐはぐだ。ハンナは休暇前ぶりのその感覚に苦笑を漏らした。

 

 

「ごほん」

 

全員が粗方食べ終わった辺りでアルバスが咳払いをすると、大広間は一瞬で静かになった。アルバスは立ち上がり、朗らかに言った。

 

「新学期おめでとう!新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある」

 

そしてダンブルドアは昨年とほぼ同じ注意事項を告げた。禁じられた森への立ち入り厳禁。廊下での魔法の使用禁止。去年のような特別な注意事項はないみたいね、とハンナが呟いた。

 

「そして今学期から、新任の先生をお迎えしておる」

 

大広間を先ほどよりもそわそわとした静寂が支配した。

正直なところ、皆既にその人の存在には気が付いていた。キラキラと輝く白い歯を見せつけるように笑ったその人はアルバスの言葉を受けて仰々しく立ち上がる。

 

「『闇の魔術に対する防衛術』を担当してくださる、ギルデロイ・ロックハート先生じゃ」

 

キャッとどこかで女子生徒が悲鳴を上げ、クスクス笑いが広がった。ロックハート先生はそのざわめきを楽しむように両手を広げ、見事なお辞儀を見せる。ロックハート先生の脇で他の人よりも数倍高い椅子に座ったフリットウィック先生が何事か囁くと、彼は生徒たちに向けてウインクしてから席に着いた。アリアの周りだけでなく、大広間のあちこちから惚けたようなため息が聞こえた。

 

(ちょっと癖が強いだけだよな、うん……)

 

アリアは少し頬を引きつらせながら皆と一緒になって新任の先生に向けて拍手を送った。

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