ハリー・ポッターと錬金術師の弟子   作:丸子

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18,マンドレイク

翌日の朝食のアリアのテンションは最低だった。普段は一日のうちで一番幸福と言っても過言ではないはずのその時間だったが、今朝に限っては隣のグリフィンドールの席からキンキンとした大声が聞こえてきていた。スーザンがくすくすと笑いながら食後の紅茶を嗜んでいる。

 

「あれって、吼えメールよね。私のいとこも4回目に杖を折った日に送られたことがあるって言ってたわ」

 

ハンナはスーザンの話に苦笑しながら、アリアの気を紛らわせようと時間割を見せた。

 

「ほら、アリア。最初の授業はあなたの好きな薬草学だわ」

 

アリアはそれを聞いて幾分か明るい表情を見せ、スーザンは二人のやり取りに「戻ってきたって感じがするわ」と呟いていた。

 

 

 

新学期最初の授業である「薬草学」は、グリフィンドールとの合同授業だった。なぜか少し苛立ちながら温室に入ってきたスプラウト先生が、何やら台と耳当てを並べ始めた。準備を終えると、授業を始めるべく声を上げた。

 

「今日はマンドレイクの植え換えをやります」

 

アリアはほう、と息をついた。去年の薬草学は植物について学ぶ座学が中心であり、実技があったとしても薬草を見分けるなど基本的なものばかりだった。アリアはあまり教育学には明るくないが、同級生たちが退屈そうに授業を受けていることは少し気になっていた。

それは杞憂だったようだ。察するに、一年生の時に基礎を身に着け、二年生以降実践していくというカリキュラムなのだろう。

 

アリアが感心している間にも授業は進行しており、スプラウト先生は耳当てを生徒に取らせてマンドレイクの植え換えを実践して見せた。教鞭をとるだけのことはある、鮮やかな植え換えにアリアは感嘆のため息を漏らす。そんなアリアとは違って、スーザン達はその叫び声にすっかり緊張してしまったようだった。

先生は耳当てをとり、決してマンドレイクの声を聞かないように注意をした。その後四人組を作るように指示をされ、アリアは当然のようにハンナ、スーザン、エロイーズと組んだ。

 

アリア達は一つの苗床を囲み、植え換えを始めた。アリアは全員が耳当てを付けていることを確認すると、躊躇なくマンドレイクを引き抜き、別の鉢に突っ込んだ。丁寧に堆肥をかけてやり、ハンナ達の様子を見やる。ハンナ達はマンドレイクたちを鉢に押し込むのに四苦八苦しているようで、目線でアリアに手間取っていることを訴えてくる。アリアは苦笑し、少しだけ手助けをしてやった。

 

結局すべての生徒が植え換えを終えるのには丸々一時間かかり、生徒たちは疲労困憊で次の授業に急いだ。

 

 

 

 

 

その後「妖精の呪文」や「魔法史」の授業を終えると、アリアは次の授業を確認しようと時間割を見た。その瞬間に少し眉を顰める。

 

「次は『闇の魔術に対する防衛術』か……」

 

アリアの一言にスーザンとエロイーズが目を輝かせた。

 

「早くいかなくっちゃ!」

 

アリアとハンナは顔を見合わせ、やれやれと二人の後に続いた。

 

 

 

闇の魔術に対する防衛術の教室につくと、なぜか教室はボロボロだった。カーテンは破れているし、ところどころ椅子はひっくり返っている。

アリア達が首を傾げながら席に着くと、授業開始のベルと共にロックハート教授が白い歯を見せつけながら教室に入ってきた。つかつかと歩き、最前列の生徒の教科書を取って表紙と自分の顔が並ぶように掲げた。

 

 

「ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の魔術に対する防衛術連盟名誉会員、そして『週刊魔女』五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞――もっとも、私はそんな話をするつもりはありませんよ。バンドンのなき妖怪バンシーをスマイルで追い払ったわけじゃありませんしね!」

 

すべての動作が仰々しい。ロックハート教授のジョークにアリアやハンナは冷たく、スーザンやエロイーズはぽうっとした視線を向けている。結果として教室は乾いた笑いに包まれていた。ロックハート教授はそれにめげることもなく、テストとやらを配り始めた。テストの言葉に皆の顔は強張るが、いざ問題文を見るとげんなりとした顔になった。

それもそのはず、ロックハート教授が配ったテストは自分についての設問ばかり。曰く、

 

「1 ギルデロイ・ロックハートの好きな色は何?

2 ギルデロイ・ロックハートのひそかな大望は何?……」

 

アリアは数問読んだところで考えることを諦め、読んだ著書に書かれていたところを適当に埋めていった。

 

テストが回収されると、ロックハート教授は首を振りながら皆の答案をチェックしていった。

 

「私の好きな色はライラック色であることは一部の人が覚えていたみたいですが……ひそかな大望は誰も覚えておられないようですね?」

 

ロックハート教授をきらきらした目で見つめているのは、もはやスーザンやエロイーズのような一部の生徒だけのようだ。アリアは白けた目でロックハート教授の演説を見つめていた。

 

 

結局その授業は、ロックハート教授のテストの答え合わせという名の自分語りで終わることとなった。アリアは初めての授業の時点で、今年度は闇の魔術に対する防衛術に関して教授から何も学ぶことはできないと悟ったのだった。

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