ハリー・ポッターと錬金術師の弟子   作:丸子

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タイトルとは裏腹に日常回です。最近教授ばかり出てきます。


23,第二の事件

クィディッチの試合の日の夜、グリフィンドールの一年生が石になって発見されたらしい。その噂は二日後の月曜日には既に全校に広まっていた。

 

月曜の朝、同級生のジャスティンは石になった一年生はハリー・ポッターから迷惑がられていたことを熱く主張していた。アリアと一緒に大広間に向かおうとしていたハンナは顔をしかめてジャスティンを眺める。

 

そして小声でアリアにこう聞くのだった。

 

 

「……ねえアリア、あなたはどう思う?」

 

「そうだな……迷惑だという理由だけでハリーが生徒を石にできたなら、ドラコ・マルフォイ辺りはとっくに石になっていると思うが」

 

ドラコ・マルフォイとハリー・ポッターの不仲は誰もが知るところである。アリアがそう言うと、ハンナはそうよね、と呟いた。ハッフルパフ生の中でもハンナはハリー寄りのようで、アリアのその言葉にほっとした様子だ。

 

 

実のところアリアにとっては誰が犯人かは重要ではなかった。人間を石にしてしまうという高度な魔法の正体が気になっていたのだ。

 

アリアに言わせれば、石化の方法を突き止めることができれば、それを扱える人物を絞り込むことで犯人は判明したも同然である。このところアリアは暇さえあれば図書室に寄って、マンドレイク蘇生薬や石化魔法に関する本を読み漁っていた。

 

 

 

 

 

第二の事件から数週間が経った土曜日、アリアはいつものように地下室に向かった。現在は、幼年期のマンドレイクでも効果の出るような材料に目星はついているものの、調合の順序や分量を手探りで考えている段階だ。生徒にまで危害が加わったとなればなおさら研究に力を入れなければならない。

 

魔法薬学の教室に到着すると、スネイプ教授にしては珍しくまだ調合の準備はできていないようだ。心なしかいつもより教授の眉間のしわが深いような気もする。

 

「こんにちは、スネイプ教授」

 

そう声をかけるとスネイプ教授はああ、と返事をした。数カ月の付き合いで少しは教授の機嫌をくみ取れるようになった(と思いたい)アリアは、何とはなしに教授に声をかけた。

 

「何かあったんですか?」

 

アリアが聞くと、教授は眉間にしわを寄せたまま顎をしゃくった。そのまま魔法薬の教室の奥に向かう。ついて来いということだろうか。

 

 

アリアの覚え違いでなければ、教室の奥はスネイプ教授の個人スペースのはずだ。アリアは少しドキドキしながらその部屋に足を踏み入れた。

 

 

 

そこはどうやら貯蔵室の様だった。壁の一面には同じ種類の魔法薬の材料が大量に所狭しと並べられている。おそらく授業で使うためのものなのだろう。丁寧にラベリングされ管理されている材料は管理者の性格が表れていた。

 

スネイプ教授は授業用の材料の棚とは別の棚を示した。比較的珍しい材料が並べられたその棚は、授業用の棚とは違い、ところどころ空いているところがある。

 

「ここには数日前まで二角獣の角と毒ツルヘビの皮が入っていた」

 

「……何者かに盗まれた?」

 

アリアの問いに教授は首肯した。アリアはしばし考えこむ。

 

「ポリジュース薬でも作りたかったのか……?」

 

「材料から考えるにポリジュース薬、もしくは突然変異薬でも作りたかったのだろうな」

 

スネイプ教授は顔をしかめて呟いた。

アリアはスネイプ教授に同情しつつ、いったい誰がスネイプ教授の貯蔵棚から物を盗むなどという愚行に走ったのか推測しようと、棚に目を向けて腕を組んだ。

 

「誰にも気づかれずにこんなところに忍び込むなんて……教授、心当たりはないんですか?二角獣の角はぎりぎり残っている分で足りそうですが」

 

スネイプ教授は剣呑な表情を見せる。

「心当たりならある。先日のグリフィンドールとスリザリンの二年生の……」

 

 

 

「こんにちはスネイプ教授!!!」

 

 

 

スネイプ教授の言葉は突然の明るい声に中断された。

どことなく聞き覚えのある声にアリアは嫌な予感がしたが、スネイプ教授の客人を無視するわけにもいかない。二人は顔を見合わせて仕方なく魔法薬学の教室へ戻った。

 

「おやおや、誰かと言えばアルカー嬢もいるではないですか!君にはまだ授業で私の冒険を再現してもらったことがありませんでしたね」

 

きらりと歯を見せて微笑んだのは誰あろう、ロックハート教授である。ギリ、と歯を食いしばるような音が隣からしたのはきっと気のせいだろう。アリアもできることならばこの場から逃げ出したい。

 

「……何の用ですかな」

 

ねっとりとした声でスネイプ教授が言った。生徒の魔法薬にケチをつけるときの声と全く同じ低い声だが、ロックハート教授は意にも介していない様子だ。

 

「よくぞ聞いてくださいました!私はつい先ほど、校長に『決闘クラブ』の開催許可を頂いてきたところなのですよ!」

 

自慢げに取り出した羊皮紙には確かに『掲示用 決闘クラブ開催要項』とある。

 

 

「……『決闘クラブ』?」

 

アリアの言葉に、ロックハート教授は我が意を得たりとばかりに輝かしい笑顔で頷いた。

 

「その通り!闇の魔術に対する防衛術連盟名誉会員であるこの私が、生徒の皆さんのために決闘の作法等を教えて差し上げようという訳です。今日はスネイプ教授にそのお手伝いをしていただこうとお願いに来たのです」

 

「吾輩が?」

 

元々深かった眉間のしわをスネイプ教授はさらに深くした。

 

「ええ、ええ!ダンブルドア校長に伺ったところ、スネイプ教授がこうした作法に()()()()()お詳しいとのことでしたので」

 

 

「……アルバス……」

 

教授たちの前でなければ天を仰ぎたいところだった。

真横でスネイプ教授は僅かに震えている。いつもは土気色の頬に心なしか赤みがさしている。間違ってもロックハート教授からの指名を喜んでいるわけではないだろう。アリアは、次にアルバスに会うときには夜道に気を付けるように忠告しようと心に決めた。

 

 

「それでは、よろしくお願いしますね!来週大広間でお待ちしています!!」

 

爆発寸前のスネイプ教授の空気を知ってか知らずか、ロックハート教授は颯爽と去っていった。こういうところは素早い教授である。

 

残されたアリアはスネイプ教授をそっと伺った。今日は研究の進捗は生まれなさそうだった。

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