ハリー・ポッターと錬金術師の弟子   作:丸子

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24,決闘クラブ

一週間後、ロックハート教授の言っていた通り決闘クラブの開催が発表された。

朝食後、玄関ホールに貼られた掲示に人だかりができている。

 

「アリア、今夜は決闘クラブがあるみたい!最近土曜日はいつも忙しそうだけど、今日は来られるわよね?」

 

ハンナは珍しいイベントに興奮しているのかアリアを小突いた。苦笑して答える。

 

「そうだな。今日は決闘クラブに行こう」

 

スネイプ教授からは『今日の調合は中止だ』とだけ書かれたメモが送られてきていた。まさかとは思うが……。いや、スネイプ教授のあの様子を見るに断っていることだろう。

 

 

「僕、3つ上の従兄弟と決闘したことある。ぎりぎりで杖を取られたけど、僕の『足縛りの呪い』があと3ミリ上だったら僕が勝ってたんだ」

「俺は堂々と『イモビラス』を使ってやるさ」

 

ジャスティンやザカリアスが興奮気味に話している。男子たちは『決闘クラブ』という言葉の響きに既にわくわくしているようだ。

 

ハンナは「男子ってほんとバカ」と呟き、スーザンとエロイーズはくすくすと笑う。アリア達四人は荷物を持って次の授業へと向かった。

 

 

 

 

 

その日の夜、アリア達は連れ立って大広間へと向かった。

 

広間の食事用の机は取り払われており、壁の一面に舞台が設置してある。アリアは先日のこともあり誰が登壇するのかを知っていたが、掲示だけ見た生徒はいったい誰が教えてくれるのだろうかとざわざわしていた。

アリア達はハッフルパフの2年生の集団と共に講師の登場を待った。

 

「いったい誰が決闘クラブなんて企画したのかしら」

「きっとフリットウィック先生だわ」

 

そうハンナとスーザンが話していたときだった。大広間の扉が開き、二人の人物が入ってきて舞台へと上がった。

 

深紫のローブを着て注目を浴びている状況に満面の笑みを見せるのはロックハート教授。ロックハート教授の表情の輝かしさと比べ、対局の険しい顔をしているのはいつものローブを着たスネイプ教授だ。

この予想外の対戦カードに、生徒たちは驚き半面期待半面といった調子だ。アリアの周りもざわついている。

 

結局、スネイプ教授は断れなかったのだろう。アリアはスネイプ教授がうっかりロックハート教授を病院送りにしないように祈った。アリアもまた、共同研究を通してスネイプ教授の魔法使いとしての実力に一目置いていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セブルスは現在自分が置かれている状況に甚だ嫌気がさしていた。同僚と認めるのも不快なロックハートが校長命令を盾に『決闘クラブ』なるものの講師助手役を押し付けてきたからだ。

 

他の教授はうまく逃げおおせたようだが、ダンブルドア校長にセブルスは()()弱みを握られている。強くは拒絶できないのが現実であった。

 

 

ほとんど全校生徒が集まっているように見える大広間を見渡しながら、セブルスはロックハートの演説を右から左に聞き流した。途中失礼なことを言われた気もしたが、この後は決闘を実演して見せる予定だ。その時に叩きのめしてやればよいのだ。

 

そんな想像をしていると、ロックハートがやっとご高尚なスピーチを終えて実演を促してきた。

指図されることに不快感を覚えながらも決闘の作法にのっとって軽く礼をし、杖を構える。

 

「ご覧のように、私たちは作法に従って杖を構えています。三つ数えて、最初の術をかけます。もちろん、どちらも相手を殺すつもりはありません」

 

 

生徒たちはロックハートの言葉をあまり信じていないようだが、セブルスも教師である。対人戦の基本の呪文、武装解除呪文辺りを実演して見せるのが適当であろう。

 

「一――二――三――」

 

合図と同時に、セブルスは杖を振り上げた。

 

「エクスペリアームス!武器よ去れ!」

 

ロックハートは驚くほど簡単に吹っ飛び、壁に激突した。何人かの生徒が慌てて駆け寄る。一部の生徒はセブルスに非難のこもった視線を向けていたが、セブルスとてロックハートのあまりの弱さに拍子抜けしていた。こんな人間が闇の防衛術連盟名誉会員であることも、経歴詐称なのではないかという気さえしてくる。

 

やがて介抱されたロックハートが立ち上がってきた。

 

「あれが、『武装解除の術』です。スネイプ先生、たしかに、生徒にあの術を見せようとしたのは、すばらしいお考えです。しかし、遠慮なく一言申し上げれば、先生が何をなさろうとしたかが、あまりにも見え透いていましたね。それを止めようと思えば、いとも簡単だったでしょう。しかし、生徒に見せたほうが、教育的によいと思いましてね……」

 

もう一度、今度は「許されざる呪文」でも打ってしまうところだったが、その後ロックハートはダメージを感じさせず進行し、生徒同士で練習させることになった。セブルスはこの苛立ちを発散させるべく、目についたポッターの方へ向かった。

ポッターはグリフィンドール生と組みたがっているが、そこは適当に分裂させてドラコをポッターと組ませる。ポッター相手ならドラコも全力で戦ってくれるだろうという期待も込めて。

 

 

その後も生徒を二人組にしていく。途中には共同研究者のアリア・アルカーもいたが、彼女ならだれと組ませても問題ないだろう。いっそのこと問題児のネビル・ロングボトムの面倒を見てもらおうかとも思ったが、ハッフルパフの女子四人で固まっていたため二人ずつ組ませてやる。

 

彼女とひとたび論議してみると、何食わぬ顔で二年生に紛れているアリア・アルカーには中々に違和感を感じる。12歳の子供と話が合うのだろうかとも考えるが、彼女の様子を見るに同級生とは仲良くやれているようだ。人望という奴だろうか。

 

 

 

その後、すべての生徒が二人組を作るとロックハートが号令をかけ始めた。

 

「相手と向き合って!そして礼!杖を構えて!私が三つ数えたら、相手の武器を取り上げる術をかけなさい。――武器を取り上げるだけですよ――皆さんが事故を起こすのは嫌ですからね」

 

一応校長からの「生徒に大きな怪我がないように」という注意は覚えているらしい。しかし、ドラコとポッターのように早くも敵意がむき出しのペアもいる。セブルスは何かあった時にいつでも対応できるようにローブのポケットの杖に手を添えた。

 

 

「一――二――三――」

 

二の合図の時点ですでに大広間のあちこちで閃光が迸っていた。三の合図で一斉に生徒たちが呪文をかけ始める。先ほど教えた呪文の赤い閃光だけでなく、紫や青と言った閃光も飛び交っている。ドラコとポッターが互角にやり合っているのを確認し、セブルスは二人は最後に止めることにした。そして勝負が泥沼化している生徒たちの仲裁に入る。仲裁と言っても、無理やり呪文を終わらせるだけだが。

 

 

なぜか暴力に訴え出たスリザリン生に苦労しつつ、セブルスとロックハートは何とか大広間を静かにさせた。

大広間の惨状を見て、ロックハートはやっと生徒たちに一斉に練習させることが無謀だと悟ったらしい。モデルになるペアを募り始めた。

 

そしてあろうことかロングボトムにペアを誘おうとしたので、呆れつつもセブルスは制止した。

 

「マルフォイとポッターはどうかね?」

 

「それは名案!」

 

ポッターがお気に入りらしいロックハートはすぐに乗ってきた。

ポッターは父親の血を引いて目立ちたがりだ。そのポッターに生徒たちの前で恥をかかせればどんなに痛快だろうか。

 

多少の職権乱用を理解しつつも、セブルスは笑みが抑えきれなかった。

 

 

 

二人が決闘の実演をするということで、大広間の生徒たちは場所を開けた。セブルスの視界にオレンジの髪が映った。その持ち主であるアルカーは、少し不安げにドラコとポッターを見つめている。

 

自分のこの暗い感情で二人の決闘を仕組んだことを彼女が知ったら、どう思うだろうか。セブルスは柄にもなくそう考えている自分を心の奥に押し込めた。

 

 

十分なスペースができると、ロックハートはポッターに何事か指導し始めた。杖を振り上げて、何やらくねくねとした動きをしながら取り落とす。セブルスはこんな人間と同じ教授という地位にいることが少し恥ずかしく思えてきた。しかし、困惑しているポッターを見て少し溜飲を下げる。

 

セブルスはドラコに囁いた。

 

「武装解除呪文を実演しろとは言われていない。怖がらせてしまえば相手は恥をかくはずだ」

 

ドラコはこちらの意図を組んだようでにやりと笑った。我が強い父親の元で育ったが故か、ドラコは察しが良くて助かる。

 

 

「一――二――三――それ!」

 

号令でドラコは素早く杖を振り上げ呪文を唱えた。

 

「サーペンソーティア!蛇出でよ!」

 

ドラコの杖の先から黒蛇が出てきた。よっぽど自寮に誇りがあるのか、はたまた先ほどのロックハートのくねくねとした謎の動きから蛇を想起したのか。いずれにせよポッターを怖がらせるのには十分だ。

ポッターより早く呪文を唱えたドラコに感心しつつ、万が一にも蛇を刺激して生徒に危害が及ばないようにセブルスは杖を構えた。

 

 

しかし、性懲りもなくロックハートが出しゃばってきた。

 

「私にお任せあれ!」

 

止める間もなくロックハートは蛇に向かって杖を振る。明らかに消失呪文ではない。

 

セブルスの予想は当たっており、蛇は大きな音と共に空中に打ち上げられ、落ちてきた。当然そんなことをされた蛇は怒り狂って近場の生徒に牙を向けた。

 

 

――まずい。

 

蛇が見つめる先にはハッフルパフの二年生、フレッチリーがいる。セブルスが消失呪文を唱えようとしたその時、ポッターが動いた。

 

なぜか蛇に歩み寄り、シューシューと奇妙な音を口から発している。セブルスはその光景に肌が粟立つのを感じた。

その声……いや、その言葉は嫌というほど聞き覚えがある。セブルスがかつて仕えた闇の魔法使いがペットの蛇によくその言葉で話しかけていた。

 

 

ポッターは蛇語を話している。

 

 

その事実を理解した瞬間、セブルスの頭は一瞬真っ白になった。

そうしている間にも、蛇はとぐろを巻き、ポッターに従うような姿勢を見せている。これでいいですか、とでもいうように。

 

 

見かねたのか、近くにいたアルカーがジャスティンに並び立ち、杖をふるって蛇を消し去った。気遣うようにこちらを一瞥するその視線で、セブルスは自分を取り戻す。

 

蛇に睨まれていたフレッチリーは怒って大広間を出て行き、ポッターもウィーズリーやグレンジャーに連れ出されていく。

 

 

 

ざわめく生徒たちをなだめて寮に帰しつつも、セブルスの耳には今でもあのシューシューという音がこびりついて離れなかった。




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決闘クラブではハリーのパーセルマウスCOがかなり衝撃的ですが、久しぶりにパーセルタングを聞いたスネイプ教授はどう思ったのか想像してしまいました。
ポッター×パーセルマウスは彼のトラウマ欲張りセットな気がします。
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