ハリー・ポッターと錬金術師の弟子   作:丸子

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25,ホグワーツの冬

決闘クラブの翌日の朝は大雪だった。

 

急に気温が下がったので、スプラウト教授はマンドレイクに寒さ対策をしてやらなければならなくなり、その影響で『薬草学』は休講になった。ハッフルパフの2年生はほぼ皆、勉強の遅れを取り返すために図書室に向かうらしい。

 

 

アリアはというと、現在の研究対象であるマンドレイクの心配もあり、スプラウト教授を手伝おうと温室に向かっていた。しかし当のスプラウト教授からは

 

「アルカーさんがマンドレイクの世話で失敗するとは思えないのですが……やはり自分の温室は自分でお世話したいのよ、ごめんなさいね」

 

とすげなく門前払いを食らってしまった。

 

たしかにアリアも自分の薬草などを他人に管理されたくはない。考えなしに温室に突撃してしまったことを反省した。

 

アリアが少し凹みながら吹雪の中校庭をとぼとぼと歩いていると、なぜか焦った様子のマクゴナガル教授が玄関ホールにいるのが見えた。

 

 

「どうかされましたか、マクゴナガル教授」

 

玄関ホールについたアリアがそう問えば、マクゴナガル教授は酷く焦った様子でアリアに聞いてきた。

 

「アルカー、ダンブルドア先生を見かけてはいませんか。伝えなければならないことが」

「守護霊は放ちましたか?守護霊でさえ伝言が届かないとなると……」

 

アリアが答えると、マクゴナガル教授はあっと声を上げて杖を一振りした。杖先からは銀色の猫が飛び出し、どこかへ消えていく。

 

どうやらマクゴナガル教授は焦るがあまり守護霊の呪文の存在を失念していたようだ。

アリアはマクゴナガル教授がそれほどまでに焦っている理由が分からず問いかけた。

 

「一体何があったんですか」

「……いずれすぐに広まることでしょう。先程、グリフィンドール寮のゴースト“ほとんど首なしニック”とハッフルパフの2年生のフレッチリーが石になって発見されました」

 

頭を何かで殴られたような衝撃が走った。ついにアリアの知人までもが石になってしまった。

 

「……そんな」

 

 

呆然とするアリアを見て逆に平静を取り戻したのか、マクゴナガル教授は毅然とした態度で言った。

 

「とにかく、今一人で行動するのは危険です。寮に戻りなさい」

 

アリアは言われるがままにハッフルパフ寮に戻った。既にジャスティンのことは知れ渡っているようで、談話室はまるで通夜のような雰囲気だ。

アーニーが暗い口調で呟いた。

 

「僕がジャスティンを一人にしなければ……まさかポッターと出くわすなんて」

 

「どういうことだ?そこにハリーがいたのか?」

 

思わずアリアはアーニーに問いただす。

アーニーが言うには、ハリーが石になったニックとジャスティンの横で立ち尽くすところをピーブズが発見して、騒ぎになったらしい。

 

アリアは思わず呻いた。状況証拠だけで見ればハリーが犯人の最有力候補である。

ハリーは人をこそこそ襲うような性格には見えない。しかしほとんどの人は、ここまで現場にいるなら少なくとも無関係ではないだろうと推測してしまう。

アリアもまた、ハリーを少し疑ってしまう自分がいることに気づいていた。

 

結局その日のハッフルパフ寮は重苦しい空気のまま、生徒皆が眠りについた。

 

 

 

 

それから1週間が過ぎた。

 

表立って疑いはかけられていないものの、今やほとんどの生徒がハリーが犯人だと思っていた。

 

ハリーがクリスマスにホグワーツに残ることは周知の事実だったので、ハッフルパフではほとんどの生徒がホグワーツ特急の予約を入れた。

 

「アリアは残らないの?孤児院の子供たちもあなたのこと待ってるんでしょう」

 

心配そうに聞いてきたのはスーザンだ。スーザンはすっかりホグワーツでの事件に怯えており、先陣を切って特急を予約していた。

 

「今年くらい帰らなくても問題ないさ」

 

軽く受け流したアリアにスーザンはあまり納得がいっていない顔だ。

もちろん、ホグワーツに残る一番の理由はマンドレイク蘇生薬の研究である。しかしスネイプ教授と共同研究をしていることは今のところは教職員しか知らない事実なので、誤魔化すようにアリアはさらに付け加えた。

 

「それに、ジャスティンが目を覚ましたときに同級生が誰もいないんじゃ可哀想だろう」

 

それを聞くと、スーザンは何かに気づいたようにハッと手を口に当てた。

「アリアったら……そういうこと?それなら私は止めないわ!」

 

あらあら、と呟きながらにこやかな顔でスーザンは去っていった。

 

「絶対何か誤解している気がするな……」

 

訂正する気もおきず、アリアは呆れながらスーザンを見送ったのだった。

 

 

 

 

クリスマス休暇中、アリアは思う存分共同研究に打ち込んだ。休暇中の宿題は朝食を食べながら片付け(それを見た見知らぬ5年生が軽く引いていた)、すぐに地下室に向かう生活が続いていた。

 

スネイプ教授はそこまではしなくていいとは言っていたが、彼もまた寝食を惜しんで大鍋とにらめっこしていた。最も、アリアは食事の時間はきっちりと取るため仕方なく昼食はきちんと摂ってはいるが。

 

 

予想外だったのは、セドリックもホグワーツに残っていたことだった。アリアが夕食後に談話室に帰ると、必ずと言っても良いほどセドリックがいる。

 

 

ある日はチェス盤を広げていた。

 

「一局どうだい」

 

人好きのする笑顔でにこにこと言われてしまえば、アリアも断れずに結局付き合ってしまう。

 

 

またある日は教科書を広げている。見ればそれは、去年の四年生が使っていた闇の魔術に対する防衛術の教科書だ。

 

「ロックハート先生はこの部分については全く教えてくれていないんだ……この記述、どういう意味か分かるかい?」

 

ロックハート教授はアリアも苦手とする教授であり、同情心からつい丁寧に説明してしまう。

 

 

そんな彼にどうしてホグワーツに残っているのか聞くと、セドリックの父は魔法省の仕事で海外出張中らしい。自分はホグワーツに残ることで父と母の水入らずの海外旅行をプレゼントしたとのことだった。

 

「こうしてアリアに色々聞いたりできるんだから、残ってよかったよ」

 

茶目っ気たっぷりに微笑まれてアリアも苦笑する。

 

その言葉をまともに受け取るアリアではなかったが、それでも悪い気はしなかった。

 

 

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