ハリー・ポッターと錬金術師の弟子   作:丸子

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6,ハロウィーン

それからしばらくは何とか授業に慣れるべく奮闘する日々が始まった。

初めての授業の翌週にはレイブンクローと合同で飛行訓練を行った。初週ではなんでも上手くこなすと思われていたアリアは、ここでは期待を裏切った。アリアは人並みに箒に跨って飛び、慎重に戻ってきた。それでも少し危なっかしくて、同級生は皆少し心配そうにアリアを見ていた。

 

アリアはハッフルパフの生徒のみならず、他寮からも上級生を主とした人気があった。注目度としてはハリー・ポッターには遠く及ばないものの、アリアとすれ違うと多くの上級生がアリアに声をかけたし、親切に道を教えてくれた。ハンナはアリアと二人で行動することが多かったが、そんなアリアの世話を一番焼いているのが自分だと思うと少し誇らしくもあった。

 

 

 

アリアの人気の理由は、もちろんその可愛らしい容姿が一つ。しかしそれだけではなかった。口調が古めかしくぶっきらぼうに聞こえるが、その実とても親切であるからだった。

10月の最後の週末の図書館でのことだ。アリアたちハッフルパフの一年生は毎週出される沢山の宿題をこなしていた。

 

「アリア、この呪文がどうしてもうまくいかないの」

「それなら『魔法論』をよく読んで試してみるといい。それでもできなかったら杖の振り方を私が見よう」

「おーい、アリア。この魔法史のレポートの資料、どこから探せばいいか見当もつかないんだ」

「それなら呪文学の棚にある『忘れ去られた古い魔法と呪文』を見てみてはどうだろう。あれは呪文史としても名著だと思うぞ」

 

今やアリアが図書館に行くとなれば、課題が手詰まりになった同級生はどうにか時間を合わせてアリアに手伝ってもらうようになった。アリアときたら、いつの間に図書館の本を読みつくしてしまったのかと思うほどだった。アリアに聞けば、宿題は見せてくれないものの、役に立つ本や資料を的確に教えてくれるのである。

 

「なら、『アクシオ』のコツとかが載っている本はないかな」

「それなら『基本呪文集』の四学年用だが……あれは表題の通り四年生用だ、私たちにはまだ早いさ」

 

背後からの声にあきれたように答えたアリアは、そのばかげた質問を誰がしたのか見ようと振り返った。どうせふざけることの多いザカリアスだろうと思ったその予想は、しかし裏切られた。そこにいたのは見知らぬ生徒だった。この二か月でハッフルパフの一年生は何とか顔を覚えたが、そのどれにも該当しないのでおそらく上級生だろう。

 

「あー……すまない、先輩だと思わなくて」

「いいんだ、勝手に声をかけた僕が悪いから。それじゃ、君がアリア・アルカーなんだね」

「そうだ。えーと……」

「三年のセドリック・ディゴリー。セドリックでいいよ」

 

二人は軽く握手を交わす。

「噂の新入生と会ってみたくてさ。とんでもなく優秀なのに、あまり認められていないとか。よっぽど態度が悪いのかと思ったんだけど、そうでもなさそうだね」

 

にっこりと笑うセドリックは、少年ながらもすっと通った鼻筋の整った顔立ちをしている。確実に女の子たちに騒がれているだろうなと、アリアは思った。事実、アリアに質問をしに来たスーザンはセドリックを見て口をパクパクさせている。

 

「会えてよかったよ。邪魔したね」

 

それを知ってか知らずか、セドリックはするりと目的の本を探し出し、図書館を出て行った。ご丁寧に『基本呪文集(四学年用)』である。三年生でその呪文を学ぼうとするなんて、誇張でなければ優秀な生徒らしい。アリアは舌を巻いた。

 

「アリア、ディゴリー先輩に声を掛けられるなんて羨ましい……」

珍しくハンナも頬を上気させている。そんな女子の姿に男子は引いているかと思いきや、こちらも興奮して囁きあっていた。

 

「あの人ってディゴリー先輩だよな」

「ああ、三年生にしてハッフルパフのクィディッチチームの補欠入りだぜ。サインもらえばよかった……」

 

ピンス女史が睨みに来るまで、その場にいたハッフルパフの生徒たちはひそひそ話に興じていた。

これがアリア・アルカーとセドリック・ディゴリーのファーストコンタクトだった。

 

 

 

 

その日もハンナはいつものようにアリアをたたき起こした。

 

「アリア!!遅刻するわよ。今日を逃したら絶対に後悔するんだから!」

 

寝ぼけ眼で布団から顔を覗かせたアリアはもごもごと聞いてきた。

 

「なぜだ、今日は何かあったか……」

「今日はハロウィーンよ!夜にはご馳走だわ」

「ハロウィーンのご馳走?」

 

アリアの目がきらりと光ったように見えた。この友人は美味しいものに目がない。ごそごそと起きだしてローブを着込むアリアに、ハンナはため息をついた。いつもこうだったらいいんだけど……。

 

 

日中の授業をいつも通りこなしたアリアは夕食の時間になると大広間に急いだ。後からあきれ気味のハンナが続く。そんなハンナもハロウィーンの飾りつけにはテンションが上がったようだった。

数多のコウモリが空中を飛び回っている。テーブルには沢山の顔の形がくりぬかれたカボチャがおいてあり、その中ではゆらゆらとろうそくの炎が揺らめいていた。

 

アリアがコウモリが変身する前は何だったのかを考えているうちに、目の前の金色の皿から突然ご馳走が現れた。腹ペコの生徒たちは歓声を上げてご馳走に取り掛かる。アリアも目を輝かせながら目の前のミートパイを頬張り始めた。

 

しかし、そんな楽しい時間も長くは続かなかった。アリアが三切れ目のパイを取り分けている時、クィレル教授が大広間に駆け込んできた。そのまま教授たちの席まで走っていき、バッタリと倒れこむ。

 

「トロールが、地下室に……お知らせしなくてはと思って」

 

周りの生徒たちが悲鳴を上げかけた。たまたまアリア達は教職員の席に近く、クィレル教授の衝撃的な知らせを一番に聞くことができた。しかし、聞き取れなかった生徒ももちろんいるようで、その生徒たちは何事かと席を立ちあがってこちらを見ている。数秒後には伝言ゲームのように大広間全体に状況が知らされることだろう。

 

誰よりも早くアリアが動いた。

 

教授の声が聞こえた生徒が悲鳴を上げるのと、アリアが杖を高く上げて破裂音を響かせたのは同時だった。甲高い悲鳴を破裂音がかき消す。アリアの周囲2mの生徒だけは、アリアに耳ふさぎの呪文を掛けられたことも気づかず、突然静寂に包まれた大広間を見て目を白黒させていた。教職員は半分腰を浮かせたままだった。大広間は静寂に包まれた。

 

ここまで僅か数秒の出来事である。アルバスは状況を呑み込めたようで、既にクィレル教授の治療をしていた。アリアが目くばせをすると、心得たようにアルバスが杖を喉に当てた。

「監督生よ。すぐさま自分の寮を引率して寮にかえるように」

 

アリアは座ったまま紅茶を一口飲んだ。アリアの悠然とした態度に、周りの生徒も幾分か落ち着きを取り戻したようだった。フィービーは慌てて、ハッフルパフ生を引率すべく立ち上がった。

 

 

 

「アリア、急に驚かさないでよね……!」

 

帰寮後、ハンナはアリアにそう申し立てた。ハンナはアリアの隣りに座っていて、耳塞ぎの呪文をかけられたうちの一人である。

 

「2次被害を防ぐためだ、悪かったな」

「2次被害?」

「大広間が人で一杯の状態で騒ぎになってみろ、怪我人が出るだろう」

 

ハンナは言われてその可能性に気づいたようだ。それと同時に素早くその対応をしたアリアを畏怖を込めた目で見る。しかし、アリアの

「孤児院での避難訓練が役立ったようだな」

との何とも気の抜けた呟きを得て、結局掘り下げることはやめた。

 

当のアリアも孤児院で子供たちの騒ぎを鎮めることはお手の物になっており、

 

(今度アルバスに避難訓練でも進言してみるか……)

 

と思いながら眠りについたのみだった。その頃、ハリーやロン、そして蘇生されたクィレル教授がどうしているかなど知る由もなかった。




反射神経の優れたロリババアってどうなんでしょうね。
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