新連載になるこの作品ですが、温かい目で見てもらえるとありがたいです。
では、この世界でただ一人の「スパイダーマン」の話を始めます。
ここは、龍門のスラム。そこで、子供たちがチンピラに囲まれていた。
「このガキ!やっと見つけたぜ。」
「まって、この子たちには手を出さないで。」
「あぁ、何だぁ。俺に指図するのかこの病気やろうが。」
一番年上であろうウルサスの少女は感染者の様だ。感染者とは鉱石病にかかってしまった人間全般のことを言うが、詳しくはここでは言わない。ただ、全体的に差別されているということは覚えていてほしい。龍門にも感染者差別がある。ウルサス帝国と比べるとまだましだろうが、それでもひどい事はあるのだ。もっとも、それ以外の子供たちは感染者ではないらしいが。
だからと言って、子供を虐げるのは許されることなのだろうか?いやない。この龍門でもそんなことをやれば、「奴」が来るからだ。
男たちは、子供を庇った少女を殴ろうとした。が、少女が殴られることはなかった。何故なら、男の手に白い何かが張り付きそのまま、男の手を固定したからだ。
「な、何が起こった。」
「いや、弱い者いじめをするのってどうなの?欲求不満なら、もっといい場所があるよ。」
「な、誰お前は!」
いきなり現れたのは、赤と青の網目模様のあるボディスーツのような服を着た上にマスクをした怪しい存在だった。服装だけでも怪しいが、こいつはなんと壁に張り付て現れたのだ。その存在、「奴」は自身をこう名乗った。
「親愛なる隣人!スパイダーマン!」
「す、スパイダーマンだと!なんでこんなところに。」
「どうだっていいでしょ、そんなこと。僕としてはその子たちから離れて欲しいんだけど。」
男たちのフラストレーションは、すでに限界になろうとしていた。せっかく、八つ当たりが出来ると思っていた矢先に邪魔が入ったのだ。こいつをぼこぼこにしなければ気がしまないのだろう。
「なんだとてめぇ!俺たちは病気野郎どもからこの街守ってんだ!」
「君たちが、この街を守る方法があるよ。
「て、てめぇ!」
チンピラの一人がスパイダーマンに殴ろうとする。だが、スパイダーマンには当たらなかった。
「おっと、いきなり殴ってくるなんて危ないなぁ。カルシウム足りてる?」
「ざけんじゃねぇ!」
チンピラの一人が棒で殴ろうとするが、その前にスパイダーマンの手首の装置から、白い糸のような物体、ウェブが射出された。それは、男の手、顔、足に命中し、そのまま男を拘束した。
「野郎!」
男は拘束した奴を含めて、五人いた。ただのチンピラだが、何をしでかすかは分からない。スパイダーマンは油断も隙もさらさなかった。
「おら!」
「よっと。」
「そら!」
「ほっと。」
「どら!」
「あらよっと。」
「くそ、当たらねぇ!なんだよこいつ!」
「これじゃ、僕を倒すどころか薬も売れないんじゃない?」
「な、何で知ってんだクソ!」
「僕はいろいろ知ってるんだ。」
チンピラどもは、スパイダーマンの言葉に動揺してしまった。
パシュ!
「うげ!」
「いっちょ上がり、これで後二人。」
「お、おいこれヤバいんじゃないか?」
「そうだぜ、トンずらしちまお」
「とんかつは美味しいよね。」
「うわ!」
いつの間にか回り込んだ、スパイダーマンがチンピラの一人をぶん殴り、気絶させた。
「うげ!」
「こうなりゃ、やけだ!俺のアーツを喰らいな!」
そう言うとチンピラは、杖のような物を取り出した。俗に言うアーツユニットである。男が、何やら詠唱のような物を言い出した。すると、アーツユニットから炎が出て、スパイダーマンに一直線に飛んできた!
「おっと、火遊びもできるわけ?」
「ほざけ!」
チンピラは正確にスパイダーマンを狙い、炎を飛ばしていく。しかし、スパイダーマンは、それを紙一重に避けていく。近くのドラム缶が炎に直撃し、ドロドロに解け始めた。
スパイダーマンが、チンピラたちの攻撃を躱し続けられるのには理由がある。まず、チンピラたちの練度がそんなに高くないというのも理由だが、もう一つの理由としては、スパイダーマンには、危機を察知できる「スパイダーセンス」がある。ゆえに、どこまで攻撃しようとも、スパイダーマンには避けられるということである。
「くそ、なんであたんねえんだ!」
「理由は簡単だよ。」
スパイダーマンがそう言うと、チンピラがアーツを使う前にウェブを連射した。ウェブはすべてチンピラに直撃し、身動きが取れなくなってしまった。
「うご、うごご。」
「
「さてと、ええとたしか、「この者、薬物売買」と。」
スパイダーマンは、カードに呟いたことを書き、拘束したチンピラに投げつけた。
「大丈夫かい?」
「え…あ、ありがとうございます。」
「いや、僕は当然のことをしただけだよ。朝に歯を磨かなきゃいけない程にね。それじゃあね、龍門のおまわりさんたちが来るから離れたほうが良いよ。」
そう言うと、スパイダーマンはウェブを発射し空中を移動した。
「…スパイダーマン。」
少女は、そう呟くと他の子を連れその場から離れることにした。
「…スパイダーマン。また奴に先を越されましたね。」
「ああ、本当に何者なんだ。」
それから、数十分後。二人の女性が先ほどぼこぼこにされた、チンピラたちを見てそう言い放った。片方の女性は緑の髪とかなり高い背丈が特徴であり、もう片方の女性は青い髪と頭から生えている二本の角が特徴だった。彼女たちは、龍門近衛局の特別督察隊であり、髪が青い方が隊長のチェン、髪が緑の方がチェンの部下であるホシグマである。
「チェン隊長。これを。」
「ああ、すまない。「この者、薬物売買」か。確かに、最近、薬を売っているギャングの特徴にかなり似ている上に、懐から薬が出てきた。」
「奴は、私たちよりも先に事件を解決してしまうことが多いですね。」
「このままじゃあ、龍門近衛局のメンツが丸つぶれだ。ホシグマ、奴の調査を続けるぞ。」
「了解。」
チェンはカードの後ろに何か書かれていることに気が付いた。そこに書かれてあったのは…
『P.S少し休んだらどう、お巡りさん。』
「…お前のせいで休めないんだ。」
チェンはそう呟くと鑑識にカードを渡し、現場を調査するのであった。
ここは、スラム街の裏路地。誰いないようなところでスパイダーマンは休憩していた。
「疲れちゃうよ、銀行強盗はあったし、鼠王から聞いた薬の売人に出会うし、なんか売人が子供いじめてたし。」
「だが、そのおかげで龍門の均衡は保ててるわい。」
「…ああ、鼠王さんか。」
スパイダーマンが鼠王と呼んだ男は、ぱっと見は老いぼれたザラックのように見えるが、実はこの龍門の大物マフィアである。しかし、マフィアでも基本的にはいい人なのでスパイダーマンとは敵対はしていない。むしろ、情報をスパイダーマンに提供している。
「あの、うっとうしい売人が消えて精々したわい。まあ、それはいいか。ありがとう。お前のおかげで儂は動かずに済む。」
「いえいえ、こちらこそ。あ、飴を一つください。」
「はい、そういえばウェイの奴がお前さんのことを探しとるぞ。」
「僕をマスコットにしたいのかな?」
「多分、違うと思うぞ。」
裏路地に男二人の笑い声が響く。今日も龍門は平和である。
「わ、分かりましたから、お願いです。許してください!」
チンピラらしき男が、フードを被った男に命乞いをしていた。フードの被った男は、考えるようなそぶりをしてこう言い放った。
「よし、スパイダーマンを始末しろ。そうすれば命だけは助けてやる。」
「す、スパイダーマンを!」
「出来ないか?」
「で、できます。やって見せます!」
フードの男は少し笑って言った。
「奴さえいなければ、俺の計画も進む…」
To Be Continued
スパイダーマン
種族:不明
龍門に現れた謎の覆面男。犯罪者を捕まえたり、事故現場で救助活動をしているが、誰もその正体を知らないとされている。現在、近衛局はスパイダーマンについて調べているらしいが、今のところ成果は出ていない。
ということで、第一話でした。こっから先、様々な出来事が起こりますがこれからも、これからもよろしくお願いします。
良ければ、感想を書いていただくとありがたいです。