ようこそみーちゃん至上主義の教室に   作:無久

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全体的にキャラの口調が違う気がする…
中途半端なところで終わったような感じが否めません


自己紹介に失敗はつきもの

「みんな談笑中のところすまない。少しいいだろうか?」

 

声のする方へと振り返ると教室に入ってきたときに見たハゲでガタイの良い生徒がいた。

改めて見ると貫禄のある顔をしている。

 

「これから三年間共に過ごすことになる。お互い出会ったばかりで名も知らぬ生徒が多いと思う。そこでこの時間を使って簡単な自己紹介をしたいと思ったのだがどうだろうか?大勢の前で話すのが苦手な者もいるだろうから無理強いはしない」

 

自己紹介、確かに三年間共にするのならやっておいて損はないね。

彼の発言を聞き、殆どの生徒が賛成の声を上げる。勿論、僕も賛成だ。

 

しかし彼は凄いな、自分からこういったことを進言するのはなかなか勇気のいることだ。

これは僕だけの感想でなく他の生徒同様に思ったであろう。

生徒の殆どが彼に感心の目を向けていた。

 

 

「賛同してくれる意見が多そうなので自己紹介をさせてもらう。俺は葛城康平だ。勉強は得意な方なので何か分からないことがあったら力になれると思うので聞いてくれ。あと、頭に目が行ってしまうだろうが、前頭無毛症によるものだ。俺自身特に気にしてる訳ではない。これから三年間よろしく頼む」

 

葛城君が紹介を終えると拍手が起こる。

お手本のような自己紹介だったな。

それに、葛城のツルツルな頭には前頭無毛症によるものらしい。本人が気にしていないなら他人がとやかく言う必要はないがきっと何かしらの苦労はあったのではないかと思う。

心の中だとしてもハゲでガタイの良い人なんて言ってしまい申し訳なかったな。後で謝りに行こう。

 

自己紹介は葛城君の意見で端の人からしていくことになった。

自分の好きなものや部活、趣味、変わり種として自分を動物に例える自己紹介をする人もいた。

動物の例えはあまりウケていたようには見えなかったが僕結構好きだ。

 

僕もそろそろどんな自己紹介をするか考えておこう。

笑いを取れるようなセンスは残念ながら僕にはない。

自己紹介の定番である好きなものを答えるのが無難だが僕の好きなものと言ったらみーちゃん一択になる。流石に自己紹介で好きなものは妹です!!なんて言えるはずもない。

部活は入る気はないし、趣味も特にない。

…あれ?僕にはみーちゃんしかないのでは?

考えるんだ僕。一個ぐらいあるだろう!何か自己を紹介できるものが。

 

 

「…………君」

 

 

……そうだ!読書なんてどうだろうか。偶にだが本を読む。

好きな本は……ない。

いや、別に正直に言わなくてもいいじゃないか。今まで読んだことのある本を適当に抜粋して言えばいい。でも同じ本が好きな人がいて話しかけられたらどうしよう。

僕の浅い知識じゃ語り合うことは出来ない。

 

 

「……………ン君」

 

 

焦るな、王美陽。

お前は出来る奴だ。

自己紹介ぐらい簡単だろう。

 

 

「王君!!」

 

自分には何があるか考えていると突如横から僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。

少し大きな声で呼ばれ僕はびくりとする。

 

「!?どうしたの坂柳さん?」

 

「どうしたのって、次は王君の番ですよ。皆さん、お待ちしているので自己紹介をお願いします」

 

「…えっ?」

 

坂柳さんに言われ周りを見渡すとクラス全員が僕の方を見ていることに気づく。

なんて言おうか考えるのに必死で気づかなかった。

 

この空気を早くどうにかしたかった僕は立ち上がり勢いだけで自己紹介を始める。

 

「僕の名前は王美陽です。自己紹介の内容を考えるのに集中していました。すみません。名前から分かると思いますが中国からの留学生です。一応、日本語はある程度話せるので中国語で話しかけなくても大丈夫です。特に趣味や特技とかはありません。あと、()()()()()()()()()。………………あっ。……これから3年間よろしくお願いします」

 

……………………終わった。

二つの意味で。

焦って自己紹介をして要らないことを言ってしまった。

妹のことは言わないはずだったのに

 

一応、拍手は貰ったが、どことなく変な奴を見る目だった気がする。

男子はともかく女子からの目が怖かった気がするのは僕の気のせいだと嬉しいな。

 

自身の失態に落ち込む僕をよそに自己紹介は進む。

僕のような失敗をする人はおらずみんな完璧に自己紹介をしていく。

 

自己紹介はさらに進み坂柳さんの番が回ってくる。

坂柳さんは僕と違いゆっくりと立ち上がり落ち着いて話し始める。

 

「私の名前は坂柳有栖です。葛城君と同じく私も勉強は得意な方なので聞いていただけたらお力になれると思います。私が歩いている姿を見た人は分かると思いますが私は生まれつき先天性疾患を患っており、杖を使用しなければまともに歩けません。迷惑をかけてしまうことが多いかもしれませんが3年間よろしくお願いします」

 

素晴らしい自己紹介だった。

流石は坂柳さんだ。

 

やっぱり足が悪かったようだ。

何不自由ない僕が同情するのは失礼にあたるかもしれないが気の毒で仕方ない。

これからの学校生活で不自由なく過ごせるように僕は坂柳さんに協力しようと心の中で決心をした。

 

 

 

 

 

 

クラス全員の自己紹介が終わるころには1時間たっており、入学式の時間となっていた。

生徒は一斉に体育館へと移動しクラスごとに整列をする。

 

入学式は基本退屈なものだが、この学校も例外ではないらしい。

偉い人のありがたい話を聞き、入学式は幕を閉じる。

 

入学式後は敷地内の説明を聞きお昼前には解散となった。

 

放課後になったので僕はみーちゃんの連絡先を貰いにDクラスへと向かう。

坂柳さんに一言言ってから向かった方がいいかと思ったがクラスの女子と話をしていたので邪魔をしては悪いと思い何も言わず教室を出た。

 

AクラスからDクラス一番教室の距離が離れてるが移動するのに1分もかからない。

廊下には既に多くの生徒が出てきており、放課後の予定を話している声が聞こえる。

 

「(初日から遊びに行ける友達が出来るなんて羨ましいな。僕なんて自己紹介で失敗してこれからの学校生活が不安だというのに)」

 

僕は少しの嫉妬をしながら、早くみーちゃんに会うためDクラスへと急ぐ。

 

Dクラスの教室前まで行くとみーちゃんも僕のことを待っていたのか教室のを外で学生証端末をいじっている姿が見えた。

 

「みーちゃん!連絡先を交換しに来たよ」

 

声を掛けるとみーちゃんも直ぐに気が付いたようでこちらへ向かってくる。

 

「お兄ちゃん、待ってたよ。早速連絡先交換しよう」

 

すぐさまみーちゃんと連絡先を交換をする。

みーちゃんの連絡先を手に入れ僕は満足げに自分の端末を見る。

 

「お兄ちゃん。放課後クラスの子にカラオケに行こうって誘われたんだけど行ってきてもいいかな」

 

流石は天使みーちゃん。僕は話す友達すら出来ていないのに既に遊びに行く友達がいるなんて。

ただ、男子もいるのかな?

みーちゃんに変な虫がついたらお兄ちゃんショックで寝込んじゃうよ。

 

「全然行ってきていいんだけど、もしかして男子も一緒にカラオケ行くのかな?」

 

「男子はいないよ。女の子だけで行くんだ。お兄ちゃんも知ってるでしょ私が男子と話すの苦手なの」

 

確かにみーちゃんは男子と話すときに口下手になる。

 

「そうだったね。楽しんでいっておいで」

 

「お兄ちゃんも一緒に来る?多分、みんな了承してくれると思うよ」

 

みーちゃんから誘われた!行きたい!…けど今日は予定があるから無理だよな。

 

「誘ってくれてありがとう。でも、ごめんね。今日は放課後に友達と施設を見て回る約束してるから行けないかな」

 

待てよ、さっき友達すら出来てないって思ったけど坂柳さんって友達に入るんじゃないか?

入るよね?

だって、一緒に放課後出掛けるんだし。

みーちゃん、お兄ちゃんにも立派な友達がいたよ。

 

「そっか、じゃあ仕方ないね。因みになんだけど男子と女子どっちかな?」

 

みーちゃんが食い気味に聞いてくる。

そんなにお兄ちゃんの友好関係が気になるのだろうか?

 

「えーと、女子だよ。誘って貰ったから断るのも失礼かなと思って」

 

「……そっか。うん、楽しんできてね。でも、あんまりデレデレしちゃダメだよ」

 

みーちゃんの声のトーンが少し下がったような気がした。

もしかして僕ってみーちゃんに女の子にデレデレしてると思われてるのか?

大丈夫だよ。僕はみーちゃん一筋だから。

 

「心配しなくてもデレデレなんかしないよ。お兄ちゃん今まで一度も女の子にデレデレしたことないからさ、多分」

 

「もう、冗談だよ。私、お兄ちゃんのこと信じてるから。それよりお兄ちゃん明日は暇?」

 

明日は特に予定は無いので暇と伝える。

 

「何か買い物でも行くの?」

 

「うん。今日は日用品とか買えないと思うから明日買いに行きたいと思って」

 

「了解だよ。荷物持ちでも何でもするからね」

 

「お兄ちゃんありがとう。友達が教室で待ってるから私そろそろ行くね」

 

そう言ってみーちゃんは教室に向かって戻っていった。

僕も坂柳さんを待たせるわけには行かないので早く教室に戻るとしよう。

 

 

 

教室に戻るとさっきまで話してた人たちは帰ったようで坂柳さんの周りには誰もいなかった。

 

 

「坂柳さん、待たせちゃってごめんね。もう、妹とは連絡先交換してきてからすぐにでも行けるよ」

 

「おかえりなさい王君。声を掛けずに出て行かれたので忘れられてしまったのかと思いました。戻ってきてくれてよかったです」

 

「僕が坂柳さんとの約束を忘れるわけないよ」

 

こんな美少女の約束を忘れるなんてあり得ない。

 

「それでは行きましょうか」

 

坂柳さんは立ち上がり杖を突きながらテクテクと歩いていく。

杖を突きながら歩く姿を見ると坂柳さんの足が悪いことを改めて認識する。

僕は彼女の横に付き、ゆっくりと歩く。

 

「施設内全部を回ると結構時間かかかるけどどうする?」

 

「カラオケやカフェなどの娯楽関連の施設は後回しにして、まずは三年間で一番過ごすことになる学校内の施設、食堂や特別棟などを見に行こうと思います」

 

確かに娯楽関連にはSシステムのヒントは少なそうだ。日常生活の監視をするために監視カメラぐらいはありそうだが娯楽という羽目を外せる場所で学校についてのヒントはあまり期待できない。

 

「そうだね。僕もその回り方でいいと思うよ」

 

「では、まずは食堂から見に行ってみましょうか」

 

意見が一致した僕らは食堂へ向けて歩き出した。

 

 

 

歩いてから数分で食堂に着く。

国が運営しているだけあって食堂はなかなかお洒落な造りとなっている。

もっと賑わいがあると思ったが学校初日ということもありチラホラと生徒がいるだけだった。

 

食堂から香るいい匂いにつられ僕のお腹が小さくなる。……恥ずかしい。

食堂の時計に目を向けると時刻は12時10分を指していた。

ご飯を食べるにはちょうどいい時刻だ。

 

「ねぇ坂柳さん。僕、お腹すいちゃったんだけど時間も丁度いいしお昼食べて行かない?」

 

「そうですね。丁度、お昼時ですし何か食べていきましょうか」

 

坂柳さんの了承も得れたので注文をしに向かう。

 

メニューを見るとカレーやハンバーグ定食、ラーメンなど学食にしては種類が多いように感じる。

どれを食べるか迷っていると気になるメニューを見つける。

 

「王君。この0円の山菜定食って何でしょうか?」

 

どうやら坂柳さんも気づいたようだ。

 

「今、僕も気になったところだよ。どんな味なんだろうね」

 

少しボケてみると坂柳さんはジト目で僕のこと見てくる。

注目すべきところはそこじゃないだろと言いたげだった。

…やっぱり僕にはギャグセンスはないようだ。

 

「冗談だよ。注目すべきは0円ってことだよね。この情報でさっきの仮説がより正確になりそうだね。詳しくはご飯を食べながらでも話そう」

 

「そうですね。食べながらにしましょう」

 

僕はハンバーグ定食を坂柳さんはドリアとサラダを食べることにした。

お膳を受け取って、会計を済ます。

放課後、誘って貰ったお礼に坂柳さんのドリアとサラダも一緒に払い合計1050ポイント使った。

この学校でポイントを使うのは初めてだったがやっぱり電子決済は楽だと感じた。

 

空いてる席に座り食事を始める。

ハンバーグを一口サイズに切り口に運ぶ。

口に入れて広がる肉汁、デミグラスソースの酸味と甘みが丁度良くマッチしている。

正直、学食のレベルを超えていると思う。

 

「王君は0円に山菜定食についてどう思いましたか?」

 

日本の学食はここまでレベルが高いのかと感心していると坂柳さんが山菜定食についての話を切り出してくる。

 

「まぁ、僕たちの立てた仮説が正しいのなら価値が無くなった生徒がいて、その生徒のための救済措置ってところじゃないかな」

 

普通に考えてそうとしか考えられない。

この学校に倹約家向けのメニューがあるなら話が変わるがそれは有り得ないだろう。

 

「やはりそう考えるのが自然ですね。仮説の証明にまた一つ繋がりました」

 

坂柳さんはそう言うとドリアを食べ始める。

ドリアが美味しかったのか少しだけ表情が緩んだような気がした。

 

 

余談だが坂柳さんの一口が小さく子供の食事風景を見ているようで可愛かった。

 

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