仮面ライダーテテュス   作:黒井福

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どうも、黒井です。

今回は海羽誘拐編の後半になります。

さぁ乙女を誘拐した、海賊達の明日はどっちだ?


第12話:フィッシュ、誘拐の流儀

 海羽が学校に向かってから数十分後――――

 

「――――はふぅ」

 

 ネイトと共に今夜の開店に向けて店内の掃除などをしていた瑠璃は、モップを掛ける手を止め溜め息を吐いた。考えてしまうのは海羽の事。どうにも海羽と溝が出来た様な気になり、瑠璃は何だか調子が出なかった。

 

「どうした瑠璃? 今日は元気が無いな?」

 

 何時もに比べて明らかに覇気のない瑠璃の様子に、ネイトも気付きグラスなどの食器を磨く手を止め問い掛ける。問い掛けられ、瑠璃はハッとなるとネイトに向け曖昧な笑みを向けた。

 

「え? あ、あ~……うん。まぁ、ね」

「海羽ちゃんの事か?」

「そうね、気にならないと言えば噓になるわ」

 

 思い返せば、この2年間瑠璃と海羽は喧嘩らしい喧嘩をしたことが無かった。今回を除いて溝を感じるような気持になったのは、瑠璃が鉄平に拾われた直後位だ。

 あの頃は記憶もなく、他人とどう接すればいいのか分からず瑠璃の方が海羽と精神的に距離を取っていたが今回はその逆だ。

 

 こんな時、どうすればいいのか分からず悩んでしまっていたのである。

 

「ねぇ? ネイトは誰かと喧嘩して関係に溝が出来た事って、ある?」

「ん? ん~、どうだろうな? 喧嘩したことくらいならあるけど、溝を感じた事はなかったと思うぞ」

「そ、っか……」

「頼りにならなくて悪いな」

 

 申し訳なさそうにするネイトに、瑠璃は慌てて手を振る。別に失望したりした訳ではないのだ。

 

「き、気にしないで! 良い事だと思うわ。喧嘩してもすぐ仲直り出来るなんて」

 

 瑠璃はそう言うが、その顔から憂いが晴れない。何だかんだ言って、海羽と溝が出来るのは瑠璃にとって精神的なダメージが大きいようだ。それだけ瑠璃が海羽の事を大事に思っているという事。

 

 海羽がどうして瑠璃から距離を取る様な態度を取るのかは分からない。だがもしかすると、海羽の方も瑠璃との距離を何処か図りかねているのかもしれない。

 であるなら、何かの切っ掛けに腹を割って話す事が出来れば、2人の関係が元通りになる可能性はあった。

 

「ま、今は様子を見ようぜ。辛くなったらまた胸位は貸してやるし、相談にも乗るからよ」

「うん……ありがと」

 

 支えてくれる相手が居ると改めて確認でき、精神的に余裕が出来たのか瑠璃の顔にちょっぴりとだが何時もの覇気が戻って来た。

 瑠璃は気合を入れる為、頬を両手でパンと叩き背伸びした。

 

「ん~~! よし! そうと決まれば、今はとりあえずお店の準備を――」

 

 心機一転し気合を入れ直した瑠璃が掃除を再開しようとしたその時、鉄平がどこか慌てた様子で2人の前に顔を出した。

 

「おい瑠璃、大変だ!?」

「大変って、どうしたのマスター?」

「今学校から連絡が入って、海羽の奴まだ学校に行っていないらしい」

「え!?」

「おいおい、もう結構時間経ってるぞ?」

 

 時計を見れば時刻は9時を過ぎている。普段であればとっくの昔に学校についている筈だ。

 

 まさか、海羽の身に何かあったのか? もしやディーパーに襲われたのかと瑠璃はリールドライバーを取り出し反応を見るが、羅針盤はピクリとも動かない。

 視線で問い掛けてくるネイトに、瑠璃は首を横に振って答えた。

 

「ど、どうしよう? もしかして最近噂になってる怪物に襲われたりしたんじゃ……」

「落ち着いてマスター。まだそうとは決まってないわ。とりあえず警察に連絡して。私も海羽ちゃん探しに行くから」

「そ、そうだな、分かった」

 

 瑠璃に宥められ、鉄平は奥へと引っ込んでいった。言われた通り警察に連絡しに向かったのだろう。

 

 鉄平の姿が無くなると、瑠璃とネイトは掃除道具を手早く片付け店の外に出た。

 

「それで、本当にディーパーは関わってないんだな?」

「多分、ううん。きっとね。海羽ちゃんが居なくなったのは、ディーパーとは無関係よ」

「それなら何だ?」

「分かんないわよ。でも探さない訳にはいかないわ」

 

 瑠璃がバイクに跨り、その後ろにネイトが乗る。今2人に出来る事は、海羽の通学路上に何か異変が無いかを探す事だけであった。

 

 バイクを走らせ、海羽の通学路をつぶさに観察する。

 

 ここで力を発揮したのは、タンデムしているネイトであった。彼は冒険家であり、同時に学者でもある。故に観察眼に優れ、異変を見つける力はそこらの人間より数倍優れていた。

 

「……ん? 瑠璃止めろ!」

 

 突然叫んだネイトに従い、バイクを停めた瑠璃は彼が何を見つけたのかと周囲を見渡す。

 

「何? どうしたの?」

 

 瑠璃の問いに直ぐには答えず、ネイトはバイクを降りると足早に何処かへと向かった。瑠璃も慌てて近くの停められそうなところにバイクを停めると、ネイトの後を追いかけた。

 

「ねぇどうしたのよ?」

「……これ見ろ」

 

 再度問い掛けた瑠璃に、ネイトは何かを拾って彼女に見せた。

 差し出してきたネイトの手を見て、瑠璃は目を見開く。それは汚れの少ないローファー、海羽が登校する時に履いている学校指定の靴だったのだ。

 

 海羽の通学路にこんなものが片方だけ落ちているなど、不自然にもほどがある。海羽はここで何かあったと考えるのが普通だった。

 

 他に何か手掛かりはないかと周囲を見渡す。すると案の定、ネイトがもう一つの手掛かり……もう片方のローファーが落ちているのに気付いた。最初に見つけた奴に比べ、店からは更に遠くに残りが落ちている。

 

「なるほど……」

「何がなるほどなの?」

「多分犯人はこっちの方に逃げた」

「どうしてそう言い切れるのよ?」

 

 もしかすると順番が逆の可能性もある。先に店から遠くで浚われ、店に近付く方向で犯人が逃げていったかもしれない。

 ではネイトが犯人の逃げた方向を、断言する理由は何なのか?

 

「俺達はここに来るまで、海羽ちゃんが普段辿るのと同じ道を通って来た。その間に何の異変も無くて、ここで並ぶように異変がある。って事は、海羽ちゃんは後ろから襲われてそのまま向こうに連れていかれたって事だ」

 

 話しながらネイトはもう片方のローファーを回収し、更に周囲を見渡した。これだけ証拠を残していくような間抜けな相手だ。恐らく他にも何か手掛かりになりそうなものが…………

 

「――――あった」

 

 思った通り、道の先には不自然にひっくり返ったゴミ箱があった。

 

「多分犯人は何かしら通った後を残してる。これを追いかけていくぞ!」

「うん!」

 

 ネイトの後に続き、瑠璃は海羽を助ける為街の中を駆けていく。

 

(海羽ちゃん……お願い、無事でいて!)

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「う、うぅ……ん?」

 

 連れ去られた海羽は、気怠さと違和感にゆっくりと意識を覚醒させた。瞼をゆっくりと開き、重い頭を持ち上げ身動ぎしようとした。

 

 が、腕を上げようとしてガチャリと言う音と共に腕が何かに引っ張られる感覚に一気に意識を覚醒させた。

 

「んッ!?!?」

 

 顔を上げて目を開き、そして自身の状態を確認して海羽は愕然となった。

 

 今海羽は椅子に座らされた状態だが、両手は背凭れの後ろに回され手錠を掛けられている。両脚は一応自由だが、こんな状態では意味がないだろう。

 そして今気づいたが、口にはテープか何かが貼られて塞がれていた。こんな状態では助け何て呼べない。

 

(何!? 何がどうなって……あ!)

 

 思い出した。自分は浚われたのだ。いきなり後ろから口を押えられ、複数人に抱えられて連れていかれた。

 その道中、あまりにも騒ぐからと薬か何かを嗅がされて眠らされた。意識を失った状態で運ばれ、そして気が付いたらこうなっていた。

 

 これから自分は一体どうなるのだろう。それどころか、何故自分がこんな目に遭わねばならないのかと困惑と理不尽に対する怒りがごちゃ混ぜになった。

 

「お、目が覚めたかい?」

 

 不意に声が聞こえてきたのでそちらを見ると、筋肉質で眼帯をした厳つい顔の男が居た。見るからに海賊と言った風体の男の出現に、海羽の中に沸いていた怒りが一気に静まる。流石の彼女もこんな奴相手に噛み付くほど愚かではない。

 

 海羽が思っていたよりも大人しくしている事に気を良くしたのか、男――フランシスは椅子を引っ張ってきて前後逆に座り背凭れの部分に両腕を乗せその上に顎を置いた。

 

「そうそう、大人しくしててくれよ。別にお嬢ちゃんをどうこうしようって訳じゃねえんだ。ただ大事な物を返してもらえりゃそれでいい」

(大事な物? 何? 何の事?)

「お~い、あったか~?」

 

 フランシスが何のことを言っているのか分からず困惑する海羽だったが、口を塞がれているので問い掛ける事が出来ない。その間にフランシスは、少し離れた所に居る子分達に声を掛けた。

 

「無いっす親分!」

「中身は筆記用具と教科書とお弁当だけです」

「美味そうで~す」

「ぬぅ……もしかして普段は持ち歩かないのか? いやいや、前にバーツ達は街中でも変身したって言ってたから……」

 

(そうか……こいつ私を瑠璃姉ぇと間違えてるんだ)

 

 フランシスの言葉の内容から、彼の目的がリールドライバーであることに気付いた。そして同時に、自分は瑠璃と間違われて浚われたのだという事を知る。

 だがなぜ自分と瑠璃を間違えたのかが海羽は分からない。言ってて悲しくなるが、自分と瑠璃では何もかもが違う。スタイルは負けているし、雰囲気だって瑠璃は艶やかで色っぽい。時折見せる色香は、女である海羽でもドキリとするほどだった。

 

 そんな何もかもが違う瑠璃と海羽を、フランシスは何故間違えたのか?

 

「お~い、フランシス兄貴~?」

「女を捕まえたって聞いたけど本当か兄貴?」

「おぅ! バーツ、エド! 見ろ、俺に掛かればザっとこんなもんよ!」

 

 そこにやって来たバーツとエド。2人の姿にフランシスは椅子から立ち上がると、胸を張って椅子に座らせた海羽を見せた。

 

 得意げな顔でふふんと鼻を鳴らすフランシスだったが、対する2人は海羽の姿に揃って顔を強張らせる。それをフランシスは驚きのあまり思考停止しているのかと思いさらに気を良くしたのだが…………

 

「「――――はぁ~~……」」

「ん? 何だ2人揃って、その大きな溜め息は?」

 

 予想に反して、落胆を感じさせる大きな溜め息にフランシスは首を傾げる。

 何も分かっていない様子のフランシスに業を煮やして、2人は彼のやらかした致命的な間違いを指摘してやることにした。

 

「フランシス兄貴、違うよ。俺が言った女はこっちじゃねぇ」

「青髪の女だって言ったの、忘れたのか?」

「…………ぬおぅっ!?」

 

 つまりは完全な勘違い。フランシスが一番大事な特徴を忘れて、ただ店から出てきた女と言うだけで海羽は瑠璃と間違われて連れ去られたのだ。

 何だかすっごく惨めな気持ちになって来た。

 

「うぐぉぁぁぁぁぁ、何てこった……」

「全く、相変わらずフランシス兄貴は変なところで抜けてんだから」

「まぁ兄貴だからな」

 

 漸く自分の間違いに気付き、その場に両手両膝をつき項垂れるフランシスをバーツとエドの2人が溜め息と共に見る。

 その向こうからは更に子分達も心配そうに見ていた。

 

「「「どうします?」」」

「あ~……この子どうしよう?」

「こういう時、定石は人質にする事だが……」

「かっちょ悪いからヤダ」

「恰好云々は別として、間違えで攫われたなんて気の毒な子にあんまり酷い仕打ちもなぁ……」

 

 フランシス達は3人で顔を寄せ合い、海羽をどうするか話し合う。が、結局話の要点にあるのは、海羽は間違いで最早お荷物に近いと言う点であった。

 漏れ聞こえてくる話の内容は、海羽を解放するという事で纏まりつつあるようだがその方向に話が進むにつれて、海羽は自分の中で苛立ちが高まっていくのを感じた。

 

 そんな事には気付かず、バーツは海羽に近付き拘束を解き始めた。

 

「とりあえずお前は返す事になったから。まぁ、途中までは目隠しとかさせて――」

 

 話しながら海羽の拘束を解いたバーツだったが、口元のテープを剥がされ手錠を外された瞬間怒りの形相をした海羽に思いっきりぶん殴られて押し倒された。

 

「ふざけんなッ!!」

「いだっ?!」

「「えっ?」」

 

 ただの少女だと思っていた海羽が殴り掛かって来るとは思っていなかったので、バーツはされるがままに押し倒されフランシスとエドの2人は目を点にして固まっていた。

 

「ッ、何すんだテメェッ!?」

「うっさい、馬鹿ぁ!! 勝手に勘違いして勝手に攫って、挙句の果てに間違いだからほっぽり出すですって? ふざけんのも大概にしなさいよ! 私の事なんだと思ってるの!!」

「だから悪かったって言ってるだろうが!! 悪いと思ったから帰してやろうとしたんだろ!!」

「悪いと思ってるなら責任の一つも取りなさいよ! 最後まで人質として使って私が攫われた事に対する意味持たせればいいじゃない!!」

「おまっ!? 自分で何言ってるのか分かってるのか!」

「うるさいうるさいうるさーい!!」

 

 瑠璃に対する想いとコンプレックスとかが色々あって、海羽も精神的に不安定だった。そこに来て誘拐からの間違いだったで、海羽の中で何かが壊れたらしい。もう何か言ってる事が滅茶苦茶で、バーツの方が困惑してしまっていた。

 

 取っ組み合いを始めた挙句、最終的にはお互いの頬っぺたを引っ張り合う2人。その様子をフランシスとエドの2人がどうしたものかと見つめていた。

 

「なぁ、どうする兄貴?」

「放っておけばぁ? 下手に手を出すととばっちりきそうだし」

 

 触らぬ神に祟りなしとばかりに、2人は放置を決め込んだ。これが男同士の喧嘩であればあるいは両成敗とばかりにぶん殴ってでも止めるのだが、片方が女なのでそんな事をする訳にもいかない。しかも基本、分は向こうにある。

 ここで下手に手を出せば、火に油を注ぐ結果となり逆に痛い目に遭う事は容易に想像できた。

 

 なので2人は、海羽の怒りが静まるまで彼女の相手をバーツに任せることにした。バーツは強い子、あの程度なら大丈夫。

 

「しかし、あれだな……」

「何だ兄貴?」

「案外あの2人相性良いのかもしれないな」

「何でだ!?」

 

 いきなりとんでもない事を言うフランシスに、エドは怪訝な顔で兄貴分の顔を見る。

 

「だって見てみろエド。バーツの奴、何時もに比べて生き生きしてるように見えないか?」

「えぇ?」

 

 言われてエドは今一度、取っ組み合っているバーツと海羽を見た。

 

「ふぎぎぎぎ――!」

「ふにゅぅぅ――!」

 

 お互い一歩も退かず、涙目になりながら互いの頬を引っ張り合う。子供っぽい様子である事は間違いないが、あれが生き生きしているかと言われると…………

 

「……駄目だ、分からない」

「やれやれ、そんなんじゃこの先苦労するぞエド? もっと人間観察力を身に付けろ」

 

 それを言うなら重要人物の特徴を忘れるな。そんな言葉が喉元まで出そうになったが、何だか何を言っても無駄な気がしてその言葉を飲み込むことにした。

 

 それに、何時までもこうして遊んでいる訳にもいかない。

 

「んん、それより兄貴? そろそろ本気でバーツの奴を止めた方が良いんじゃないか?」

「そうか?」

「あのお嬢ちゃんの身近にいるのが誰なのかをもう忘れたのか? あの仮面ライダーの嬢ちゃんだぞ? 今頃泡食ってお嬢ちゃんの事を探してる筈だ。そんな嬢ちゃんがこの状況を見てみろ。どんな事になるか――――」

 

 その時出し抜けに部屋の扉が蹴破られ、瑠璃とネイトが飛び込んできた。

 

「居た、海羽ちゃん!」

「お前ら何してんだ!」

 

 2人の登場に、その場に居た者達は全員目を見開いた。あんな事を言ったエドも、まさか本当に来るとは思っていなかったのだ。

 

「瑠璃姉ぇ!」

「はぁっ!? ちょ、待て何でお前らここが分かった!?」

 

 海羽が瑠璃の姿に安堵し目を輝かせる一方、バーツ達は動揺を隠せない。今彼らが居る場所は倉庫街の一画、その奥も奥の方なのだ。こんな早くに見つかる訳がない。

 

 エドが冷静さを失い、瑠璃達に何をしたんだと問う。するとネイトが得意げな顔で胸を張り答えた。

 

「はっ! お前ら、海羽ちゃんを連れていく時随分と慌ただしく連れてったみたいじゃないか。ここに来るまでの道中で不自然に倒れたゴミ箱やらなんやらがあってどこを通ったか丸分かりだったぞ」

 

 フランシスと子分達は海羽を連れ去る際、かなり大急ぎで移動していた。時間が時間だったので、直ぐに街は人で溢れる。その前にここへ海羽を連れて行こうとして、彼は途中にあるごみ箱や看板、植木鉢などをひっくり返す事を気にせず移動したのだ。

 それが道標となって、瑠璃達をここまで連れて来てしまった。

 

 つまり原因はフランシスにあった。

 

「「……兄貴!?」」

「ご、ごめんなさい」

 

 エドとバーツの2人に怒られ、フランシスが肩を竦めて小さくなる。ガタイは良い筈なのに、今の彼はバーツよりも小さく見えた。

 

 そんな彼らのやり取りなど何処吹く風で、瑠璃とネイトは海羽を助けるべく彼らに近付いていく。

 

「さて、海羽ちゃんは返してもらうわよ」

「お前ら、覚悟は出来てるんだろうな?」

「たかが2人で何が出来るんすか!」

「親分、ここは俺らが!」

 

 迫る2人の前に、子分達3人が立ち塞がろうとした。しかしそれはバーツにより止められる。

 

「待て、お前らじゃ無理だ」

「そんなバーソロミュー兄貴!?」

「バーツの言う通りだ。あの女は仮面ライダー、お前らの手に余る」

「つー訳だから、ここは俺らに任せな」

 

 子分達の代わりに瑠璃とネイトの前に立ち塞がるエドとバーツ。その手には既にベクターリーダーとカートリッジが握られている。

 

 それを迎え撃つべく、瑠璃とネイトもリールドライバーとスピンドライバーを取り出した。瑠璃が仮面ライダーに変身する事は知っていたが、まさかネイトまで変身するとは思った居らずバーツは狼狽えた。

 

「はっ!? お前も仮面ライダーかよ!? つかお前誰だ!!」

「俺か? 俺はネイサン・ジョーンズ、仮面ライダーオケアノスだ」

「ネイト、早く海羽ちゃん助けるわよ」

「あぁ」

 

 瑠璃とネイトがドライバーを装着し、瑠璃がライフコイン、ネイトがドロップチップを挿入しレバーを下ろした。

 

〈Bet your life〉

〈Catch your fate〉

 

「「変身!」」

 

〈〈Fever!〉〉

 

 瑠璃がテテュスに、ネイトがオケアノスに同時変身する。

 2人が変身したのを見て、上等と言わんばかりにエドとバーツもターコイズスウィールとコバルトウェーブに変身した。

 

「今日こそ白黒はっきりつけて、お宝返してもらうぞ!」

「油断するなよバーツ」

「誰に言ってるんだい、エド兄貴!」

 

 2人は一気に駆け出し、テテュスとオケアノスに攻撃を仕掛ける。左手に持ったベクターリーダーで銃撃しながら、右手に持ったホルスター剣で斬りかかった。

 

 それに対して身構えるテテュスだったが、オケアノスは早速チップを1枚ベットしてレバーを下ろした。

 

〈Bet〉

「こいつでどうだ?」

 

 オケアノスが合わせたのは2。2が三つ並ぶと、ファンファーレがドライバーから響き渡る。

 

〈BINGO! Weapon release. TEMPEST WHIP〉

 

 ドライバーの絵柄が変化しながら現れ、オケアノスの手に一本の鞭が握られる。柄が金で出来た以外は見た目シンプルな鞭だ。

 オケアノスは召喚した鞭を振るい、迫るコバルトウェーブ達を迎え撃つ。攻撃範囲の広い鞭は、一撃で2人を纏めて弾き飛ばした。

 

「うぉっ!?」

「どぁっ!?」

 

「うわ、すご……」

「な~るほど。こいつは良い!」

 

 敵を2人纏めて吹き飛ばす威力を見せた、オケアノスにテテュスは素直に感心した。一方のオケアノスも、召喚した鞭――テンペスト・ウィップに満足そうな顔をしている。

 そう言えば、変身する前のネイトの持ち物の中にも鞭が入っていたような気がする。彼の荷物整理をしている時、出てきたそれについて聞いた事があった。

 

 するとネイト曰く、鞭はただ武器としてだけでなく色々と使いようがあるとの事だ。例えば高所から落ちそうになった時にぶら下がったり、遠くにあるものを引っ張ったり。

 現代の冒険と言うには少し内容が映画染みているのでその時は適当に聞き流していたが、ああして鞭を手足の様に扱いこなしている姿を見ると、なるほどただファッション目的で持っていたのではないのだろ言う事が分かった。

 

「こいつらは俺に任せな! 瑠璃は海羽ちゃんを!」

「分かったわ!」

 

 鞭を巧みに操り、オケアノスはコバルトウェーブとターコイズスウィールを完全に釘づけにしている。嵐の様な鞭の乱打に、2人は一歩も動けないでいた。

 

「くそっ、いって!?」

「鞭一本で、俺とバーツを足止めするとはな!?」

 

 海羽に近付くテテュスを止めたいコバルトウェーブ達だったが、オケアノスの鞭を前には防御に専念せざるを得ないでいた。

 

 そうしている間に、テテュスは海羽に近付いていき――――

 

「ちょぉっと待ちな!」

 

 その眼前で、横から出てきたフランシスにより足止めされた。

 

「っとと! もぅ、邪魔しないでよ!」

「そうはいかねえ。これでもアイツらの兄貴分、へましてばかりじゃ収まりがつかねえ! ここは一つ、俺がお宝を取り返す事で汚名返上させてもらうぜ!」

 

 気付けばフランシスの手には、ベクターリーダーとカートリッジが握られている。そう、彼も当然と言うべきか変身できたのだ。

 

〈LIVYATAN leading〉

「行くぞ!」

〈Transcription〉

 

 フランシスが引き金を引くと、銃口から放たれた光弾がテテュスを押し返し跳ね返る様にしてフランシスの体を貫き変身させる。

 

 太古の海、まだ恐竜が地球の支配者だった時代に、海の覇権を史上最大の鮫メガロドンと争ったクジラが居た。そのクジラの名は『リヴィアタン・メルビレイ』、旧約聖書でその名を知られるリヴァイアサンの名を基にした海の怪物だ。

 フランシスが変身した戦士『インディゴサイクロン』はそのリヴィアタンの力を反映した姿だった。全身に強固な鎧を持ち、両腕にはマッコウクジラの頭部のような形状のガントレットを装着している。

 

 インディゴサイクロンは、両手に装着されたガントレットをぶつけ合わせた。戦闘開始だ。

 

「さぁ、来い!」

「オーケー!」

 

 テテュスとインディゴサイクロンは互いに相手に向け駆けていき、互いに攻撃圏内に入った瞬間テテュスはローリングソバットを放ちインディゴサイクロンは右のガントレットで殴り掛かる。

 

「ハァッ!」

「ヌゥンッ!」

 

 ぶつかり合う足と拳。本来であれば脚力は腕力の倍、なのでこの開幕はテテュスに軍配が上がるかに思われた。

 だが実際に軍配が上がったのはインディゴサイクロンの方だった。

 

「どりゃぁっ!」

「あぁぁっ?!」

 

 蹴りごと殴り飛ばされ壁に叩き付けられるテテュス。今の一撃はただ攻撃を弾いただけでなく、事実上テテュスの足を潰す効果があった。痛みでテテュスは機動力と主だった武器を潰される事となる。

 

「瑠璃姉ぇ!?」

「うぐ、いつつ……」

 

 海羽の悲鳴のような声を聞きながら、壁に手を突き立ち上がるテテュスだったが、立ち上がったかと思ったらすぐに脱力したようにその場に蹲った。手はインディゴサイクロンの拳とぶつかり合った足に添えられている。

 

(折れては……いないよね? でも、この足じゃ……)

 

 事実上この戦闘ではもう足を使った戦いは出来ない。ヒーリングを使えばこの足も元通りになるだろうが……

 

「おぉぉっ!」

「くっ!?」

 

 案の定、インディゴサイクロンはベットをする余裕すら与えてはくれなかった。テテュスが腰のケースに手を伸ばす素振りを見せた瞬間、彼は拳を握りガントレットを振り下ろしてくる。

 テテュスはそれを転がる事で回避し、攻撃の相手を失った拳はテテュスの代わりに地面を粉砕した。

 

 砕けた床の礫がテテュスの体に散弾の様に打ち付けられ更にダメージを与える。飛び散る瓦礫で全身を殴られ、またしてもテテュスが地面に倒れた。

 インディゴサイクロンはたった二回しか攻撃していない上に、直撃を喰らった訳ではないのにテテュスは既にボロボロだ。彼のパワーがそれだけ凄まじいという事。あれを胴体に諸に食らったらどうなってしまうかなど、想像したくもない。

 

「くそ、瑠璃!?」

「おっと!」

「お前は俺達の相手をしてもらおうか?」

「チィッ! 邪魔だ!!」

 

 視界の端でテテュスが窮地に陥っているのを見て、彼女を援護しようとしたオケアノスだがそれはコバルトウェーブ達に阻まれる。援軍は望めない。

 その間にインディゴサイクロンがテテュスに近付いていく。まるで威圧する様に両手のガントレットをぶつけ合わせている。

 

「さぁて、そろそろ終わりにするか」

「う、くぅ……」

 

 迫るインディゴサイクロンに対し、テテュスは立ち上がる事すらできていない。その様子に海羽が顔を青褪めさせる。

 

「駄目、駄目!? 瑠璃姉ぇ立って!!」

 

 海羽の声援も空しく、テテュスは立ち上がることなくインディゴサイクロンの接近を許してしまった。

 

 動かないテテュスを前に、インディゴサイクロンは勝利を確信し右腕を大きく振り上げた。

 

 その瞬間をテテュスは待っていた。相手が勝利を確信した瞬間にこそ、最大の隙は生まれる。戦いでもギャンブルでも同じだ。自身の勝利に目が眩み、相手は自分のミスを見落とすのだ。

 

「貰い!」

「ッ!?」

 

 インディゴサイクロンが手を振り上げた事で、下への対応が間に合わなくなったのを見てテテュスは彼の腰に手を伸ばした。その先にあるのは、ベクターリーダーを収めたホルスター剣。銃剣モードのままベクターリーダーを奪い取ったテテュスは、そのまま下から切り上げる様にしてベクターリーダーを振るった。

 

「セイッ!」

「うぐぉぁっ!?」

 

「ッ! フランシス兄貴!?」

「何ぃっ!?」

「油断大敵だぜ!」

〈Bet〉

 

 テテュスの反撃でコバルトウェーブとターコイズスウィールの意識がそちらに逸れた。その瞬間、オケアノスはチップを1枚取り出しドライバーに挿入しレバーを下ろした。

 

〈Good luck〉

「やべっ!?」

 

 オケアノスがスロットを回し始めたのに気付いたコバルトウェーブが妨害しようとホルスター剣を振り下ろすが、スロットを破壊する事は出来ずオケアノスが絵柄を揃えるのを見ているしかできない。

 

「もう一回これ合わせてみればどうだ?」

 

 先程は2を合わせることで武器が出てきた。ならば同じ絵柄を揃えることで、何らかの恩恵を得られるのではとオケアノスはスイッチを押して絵柄を揃えた。

 

〈BINGO! Activate weapon ability. WHIP EXTREME.〉

 

 読みは正しく、武器を召喚した時と同じ絵柄を揃えた事でその武器固有の技である『ウィップエクストリーム』が発動。オケアノスが鞭を振るうと暴風を纏った鞭によりコバルトウェーブとターコイズスウィールは纏めて吹き飛ばされた。

 

「うぉぉぉぉっ!?」

「どあぁぁぁぁぁっ!?」

 

「わぁぁぁっ!?」

「兄貴達ぃ!?」

「しっかりぃっ!?」

 

 オケアノスの必殺技に吹き飛ばされ、壁を突き破り外へ放り出される2人。それを子分たちが慌てて追いかけていく。

 

 一方テテュスも、インディゴサイクロンを引き離すとベクターリーダーを杖代わりに立ち上がりチップをベット。即座にヒーリングを発動し足を回復させた。

 

「ふぅ~、危なかった。さ~てと、覚悟は良いかしら?」

「いつつつ……ん? えっ!? あ、や、待って――」

 

 海羽を攫われた事と痛い目に遭わされた事に対するフラストレーションが溜まっているテテュスは、許しを請うインディゴサイクロンの言葉を無視してケースをドライバーに装着した。

 

〈All in〉

 

 テテュスがレバーを下ろすと、ルーレットが回り出す。本気で許すつもりが無い事を見て、インディゴサイクロンは顔を青くした。

 

「赤の30、オールイン!」

「うぉっ!? ちょ、ま、タンマタンマ!?」

〈Fever!〉

 

 必死に懇願するインディゴサイクロンに、テテュスのジャックポットフィニッシュが炸裂する。放たれたテテュスの飛び蹴りが、エネルギーのチップ毎インディゴサイクロンを蹴り飛ばした。

 

「だぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 テテュスの蹴りが炸裂した瞬間エネルギーが解放され、インディゴサイクロンは爆発と共に吹き飛ばされる。先の2人と同様壁を突き破り倉庫の外へ吹き飛ばされたインディゴサイクロンは、そのまま別の壁に上半身だけ突き刺さった。

 

「わわわわっ!? 親分!?」

「抜け! 抜けぇ!?」

「大丈夫ですかぁっ!?」

 

 吹き飛ばされた衝撃で変身が解けたバーツとエドの介抱をしていた子分達だったが、インディゴサイクロンが壁に突き刺さったのを見て慌てて彼を引き抜きに掛かった。3人が力を合わせて引っ張る事で、インディゴサイクロンは何とか壁から抜け出ることに成功する。壁から抜けると、そこで彼の変身も解け元の姿に戻った。

 

「うごっ!? いてててて……助かった」

「くそぉ、兄貴? 大丈夫か?」

「あぁ、何とか……」

「アイツら、ここまで――!?」

 

 改めて彼らはテテュスと、そして新たな仮面ライダーであるオケアノスの強さを痛感した。このまま引き下がるのはものすごく癪だが、手負いの今あの2人には勝てる気がしない。

 

「フランシス兄貴、ここは……」

「皆まで言うなバーツ、ここは逃げるぞ」

「もうヘリ呼んでます!」

「でかした」

 

 テテュスがオケアノスと共に倉庫の外へ出ると、どこからかヘリのローター音が聞こえてきた。2人が上空に目を向けると、彼らの頭上に一機のヘリが滞空し縄梯子を下ろしていた。

 

『親分! 早く登ってくださ~い!』

「分かってる! エド、バーツ、お前ら先行け」

「兄貴も早くな」

「オラお前らも早くしろ」

 

 彼らはいそいそと縄梯子をよじ登っていき、最後に残されたフランシスが縄梯子に手と足を掛ける。そこでヘリが上昇し始め、彼らは倉庫街から離れていく。

 

 その最中、フランシスは上空からテテュス達に向けて叫んだ。

 

「今回は負けちまったが、次はこうはいかないからな! 今度こそお宝返してもらうから、覚悟してろよぉっ!!」

 

 上空から大声を響かせながらフランシスが空に消えていく。

 

 彼らを見送ったテテュスとオケアノスは、互いに顔を見合わせ肩を竦めると変身を解除した。

 

〈〈Drop out〉〉

「変なのに目を付けられたな」

「ちょっと前からね。でもま、何とかなるでしょ?」

「だな。それより今は……」

 

 2人が振り返ると、そこには遅れて倉庫の外に出てきた海羽の姿があった。海羽は瑠璃の姿を見て、緊張の糸が切れたのか目から涙を流しながら彼女に抱き着いた。

 

「る、瑠璃姉ぇ!!」

「あ~、よしよし。怖かったよね、もう大丈夫」

「うん、うん――!!」

 

 海羽はそのまま暫く瑠璃の胸の中でわんわん泣き、その間にネイトが鉄平に連絡して警察と共にやってこさせる。

 

 そうして鉄平がやって来るまで海羽は泣き、鉄平が警察と共にやって来たころには海羽は緊張が解けた事と泣きつかれた事で瑠璃の膝枕の上で眠ってしまっていたのだった。




と言うことで第12話でした。

はい、今回の事で海賊三人組がどういう立ち位置なのかは大体理解してもらえたことと思います。基本コイツら(と言うかフランシス)はお間抜けです。一応悪いこともしますけど、精々アニポケのロケット団みたいな連中ですね。

執筆の糧となりますので、感想評価その他宜しくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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