唐突に始まった戦いは、S.B.C.T.の攻撃から始まった。
「おぉぉぉぉっ!」
「はぁっ!」
2人のライトスコープが身構えるシーラカンス・ディーパーに斬りかかった。更にそれを皮切りに他の隊員も後に続く。
複数人のライトスコープから一斉に斬りかかられ、だがシーラカンス・ディーパーはそれらに負ける事はなかった。
最初に斬りかかって来た2人を拳で迎え撃ち、同時に殴り飛ばすと続けて向かってきた隊員を蹴り飛ばした。
「がはっ!?」
「ぐっ!?」
通常のディーパーとは違うという事はS.B.C.T.側も理解していた。だがシーラカンス・ディーパーの戦闘力は彼らの想像の上を行っていた。
今、1人の隊員が持ち上げられ別の隊員に向け投げつけられる。その隙に背後から攻撃を仕掛けた隊員も居るが、ライトスコープ程度の力ではシーラカンス・ディーパーの鱗の鎧に小さく傷つけるのが精一杯であった。
背後を斬りつけられたシーラカンス・ディーパーは、煩わしいと言わんばかりに皮膚から滲み出たドロップチップで剣を作り出し背後の隊員を切り裂く。
「がぁっ?!」
数の上ではS.B.C.T.側が圧倒的に優位だが、それでも尚戦闘力の面ではシーラカンス・ディーパーの方が勝っていた。怯まず挑みかかるライトスコープ達だったが、シーラカンス・ディーパーの前では物の数ではないと言わんばかりに次々と倒れていく。
その間に海羽とバーツは、2人のS.B.C.T.隊員によりその場から退避させられていた。
「さ、こっちです。落ち着いて」
「お友達はこちらで運びます」
1人の隊員が海羽の背中に手を回して退避を促し、別の隊員が気絶したバーツを横抱きにして離れていく。
自分がここに居ても出来る事はないどころか邪魔にしかならないと理解している海羽は、大人しく従いつつまだ気絶したバーツの事も心配する。
シーラカンス・ディーパーはそれを許さなかった。海羽が離れていくのを見て、シーラカンス・ディーパーは体からドロップチップをばら撒き下級ディーパーを無数に生み出しライトスコープに襲い掛からせた。
「こ、こいつ!?」
「怯むな、迎え撃て!!」
思わず慄く隊員に喝を入れ、スコープがボルテックスブレードで下級ディーパーを切り伏せる。他の隊員達もそれに奮起されて下級ディーパーに挑むが、それによりシーラカンス・ディーパーへの攻勢が緩んだ。
その間にシーラカンス・ディーパーは海羽へと向かっていく。途中彼女を離れさせようとしていた隊員が妨害しようとするが、剣の一振りであっさりと倒され一蹴された。
「あぁっ!?」
目の前で隊員が倒された光景に、海羽が思わず悲鳴を上げる。
だが彼女に他人の心配をしている暇はない。今狙われているのは他でもない、彼女自身なのだ。
障害が無くなり、改めて海羽に手を伸ばすシーラカンス・ディーパー。バーツを運んでいた隊員が彼をその場に下ろし、彼女を守るべくガンマソードに手を伸ばすがそれよりもシーラカンス・ディーパーの手が海羽に届く方が早い。
「あ、あぁ――――!?」
自分に再び迫る危機に、海羽が腰を抜かしたようにへたり込み腕と足の力だけで距離を取ろうとする。それでもシーラカンス・ディーパーから逃げれる訳もなく、あと数センチ手を伸ばせば捕まると言うところまで近づかれた。
「瑠璃姉ぇ!?」
近付いてきたシーラカンス・ディーパーの手を前に、海羽は体を縮こませ両手で拒絶する様に体を守りながら瑠璃に助けを求めた。
直後、海羽に近付いていたシーラカンス・ディーパーを駆けよって来た瑠璃がネイトと共に蹴り飛ばした。
「このっ!」
「あっち行け、この半魚野郎!」
『ぐっ!?』
2人の行動は完全に奇襲だったのか、シーラカンス・ディーパーは蹴り飛ばされて地面に倒れる。
その間に瑠璃とネイトはへたり込んだ海羽を立ち上がらせた。
「海羽ちゃん、怪我はない?」
「安心しろ、もう大丈夫だ」
「瑠璃姉ぇ! ネイトさん!」
2人の登場、特に瑠璃の姿を見れた事は海羽に大きな勇気と安堵を与えたのか、直前までの恐怖に染まった顔が一瞬で笑みを浮かべる。
その表情にとりあえず大丈夫そうだと瑠璃達も安心すると、近くに居た隊員に海羽を預けて自分達はシーラカンス・ディーパーと対峙した。
「すみません、海羽ちゃんの事はお願いします」
「任せてください。彼の方も……」
海羽に優しく手を差し伸べた隊員が視線を向けた先には、地面に寝かされたバーツの姿がある。
それを見て瑠璃とネイトが目を丸くした。
「えっ!? あの子、何で?」
「あいつ、また――」
「私を守ってくれたの!」
ネイトが咄嗟にバーツの事をバラそうとしたが、寸でのところで海羽が言葉を被せ彼が海賊である事は伏せた。
確かに彼はこれまでに何度も瑠璃にちょっかいを掛けてきた。自分勝手な物言いで襲い掛かってきた事もあるし、海羽を誑かしてスピンドライバーを盗ませたりもした。決して善人と言える人間ではないだろうが、それでも海羽は彼に対し愛着に近いものを感じていた。
何より今回に関しては完全に彼に守られたのだ。その恩を返す意味でも、海羽はバーツの潔白をS.B.C.T.の前で証言した。
「お願い……」
スカートの裾をキュッと握り締め、伺う様に懇願する。その視線に、瑠璃は小さく溜め息を吐くとネイトを肘で小突いた。それで瑠璃が言いたい事を察し、ネイトも続いて小さな溜め息を吐き頷いた。
「そうか……分かった」
「! ありがとう!」
降参と言う言葉を隠し、納得した様子を見せるネイトに瑠璃が笑みを向ける。海羽もバーツが見逃された事に喜色を浮かべ、改めてその場を離れていった。
2人が離れていくのを見送りたかったが、そうも言ってはいられない。シーラカンス・ディーパーが体勢を立て直したのだ。お喋りをしていられる過ぎた。
立ち上がったシーラカンス・ディーパーは、最初邪魔をしに来た2人に強い敵意を向けた。だが瑠璃の姿を見た瞬間、何故か敵意が引っ込んだ。その事に瑠璃とネイトが首を傾げていると、徐にシーラカンス・ディーパーが口を開いた。
『ここにも……キャリアーの素質を持つ者が居たか』
「ッ!? 喋った!?」
「こいつら、喋れるのか!?」
2人はシーラカンス・ディーパーが喋れることを知らなかったので、口を利いた事に度肝を抜かれるほど驚いた。
だがシーラカンス・ディーパーには2人の驚愕などどうでもいいのか、喋った時と同じく唐突に動き出した。
『回収する』
「ッ! ネイト!」
「考えるのは後か!」
〈Bet your life〉
〈Catsh your fate〉
瑠璃に襲い掛かろうとするシーラカンス・ディーパーは、変身に際して出現するルーレットにより弾かれた。
その隙に2人は仮面ライダーに変身する。
「「変身!」」
〈〈Fever!〉〉
瑠璃はテテュスに変身すると、まだ弾き飛ばされた影響で体勢を立て直せていないシーラカンス・ディーパーに先制攻撃を仕掛けた。
「ハァッ!」
一気に距離を詰め放たれる蹴りを、シーラカンス・ディーパーはバランスを崩しながらも防いで見せる。あの状態でも攻撃を防いで見せた、シーラカンス・ディーパーの膂力にテテュスは小さく舌打ちをせずにはいられなかった。
だがテテュスの攻撃はオケアノスに攻撃の準備をする時間を作り出した。彼女が一足先に挑んでいる間に、オケアノスはテンペストウィップを召喚していたのだ。
「こいつでどうだ!」
オケアノスの意思に従い、複雑な軌道を描いて放たれる鞭の一撃。これは流石に効くのか、一撃喰らうごとにシーラカンス・ディーパーが後ろに下がっていく。
このまま押し返し、S.B.C.T.の数の暴力で袋叩きにしてしまえ……そうオケアノスが考えた次の瞬間、テンペストウィップがシーラカンス・ディーパーに掴まれた。
「あっ!?」
以前コバルトオーシャンに掴まれてからというもの、オケアノスも同じような事が無いようにと鞭捌きを練習してきた。チマチマとした練習ではあったが、それでも以前に比べて鞭捌きに磨きがかかって来たと言う自負はあった。実際今の攻撃も前に比べて複雑さが増しており、仮にテテュスが相手をしていた場合見切る事も出来ず一方的に打たれてばかりだっただろう。
それをシーラカンス・ディーパーは受け止めてしまった。つまりはそれだけシーラカンス・ディーパーが動体視力に優れているという事に他ならない。
「テメェ、離せこの!?」
束の間、オケアノスはシーラカンス・ディーパーと鞭で綱引きを行う。このまま武器を取られたりしてなるものかと、彼も意地になっていたのだ。
すると、唐突にテンペストウィップから抵抗が無くなった。シーラカンス・ディーパーが一瞬力を抜いたのだ。意地になって引っ張っていたオケアノスは、このフェイントによりバランスを崩し力が抜けてしまう。
「おわっ!?」
『ふん……』
「あっ!?」
力が抜けた事で、オケアノスの手がテンペストウィップから離れた。その瞬間を見逃さず、シーラカンス・ディーパーは今度は鞭を思いっきり引っ張った。それによりテンペストウィップはオケアノスの手から離れ、シーラカンス・ディーパーの手に納まる。
『ふむ……』
オケアノスから奪い取ったテンペストウィップの調子を確かめる様に、シーラカンス・ディーパーは柄を握り何度か地面に振り下ろした。
そしてそれだけで使い心地や感覚を掴んだのか、今度は鞭を使って2人に攻撃を仕掛けてきた。
『フッ!』
「「ッ!?」」
シーラカンス・ディーパーの鞭捌きはオケアノスのそれを越えていた。まるで生きているかのように動く鞭の先端が、2人の視界を翻弄し攻撃を補足させない。
そうして放たれた一撃は、防ぐことも躱す事も出来ず2人の体を打ち据えた。
「あぁぁぁっ!?」
「イテッ!? くそ、ぐぁっ?!」
軌道の全く読めない攻撃に、2人は完全に翻弄され反撃すら儘ならない。
そんな状況でも、テテュスは僅かな隙を見つけてチップをベットしレバーを下ろした。
〈Bet. Good luck〉
「黒の、26!」
〈BINGO! Ability activation! Deep diving.〉
ディープダイビングを発動したテテュスは、鞭で打たれた衝撃を利用して大きく吹き飛ばされその先にあった壁の中に潜り込む。水飛沫を上げて壁の中に潜り込んだテテュスの姿に、シーラカンス・ディーパーも驚いたのか動きを止める。
『ん!?』
テテュスが姿を消した壁の方をシーラカンス・ディーパーが凝視していると、その足元から飛び出したテテュスが不意を打って蹴りを放った。脇腹を蹴られバランスを大きく崩したシーラカンス・ディーパーは、即座にテテュスに反撃を放つがその時には既に彼女は地面の中に潜ってしまっていた。
神出鬼没、どこから出てくるか分からないテテュスに警戒して動けないシーラカンス・ディーパーに、オケアノスはチャンスと見て接近し手に持ったままの鞭を奪い返そうと飛び掛かった。
「そいつ返せ!!」
飛び掛かって来るオケアノスに、テテュスにばかり警戒している場合ではないとそちらに意識を向ける。それをテテュスは待っていた。シーラカンス・ディーパーがオケアノスに向け鞭を振るおうと構えを取った瞬間、飛び出したテテュスは鞭を持った手を蹴って叩き落した。
『はっ!?』
「おらぁっ!」
『ぐっ!?』
「それ!」
『うっ?!』
テテュスとオケアノスの息の合った攻撃に、シーラカンス・ディーパーは奪い取った鞭も奪われ一瞬追い詰められた。地面を転がり、2人から距離を取らされる。
「よし! どうだ半魚野郎」
「ネイト、はい」
「お、サンキュー!」
奪い返した鞭をテテュスがオケアノスに返す。その間にシーラカンス・ディーパーは立ち上がって体勢を立て直した。
『ふ~……ふむ』
立ち上がったシーラカンス・ディーパーは特に堪えた様子を見せていない。本当にダメージを大して喰らっていないのか、それとも表に出していないのか。
顔は出ている筈なのに表情に変化のない、正に魚人間というシーラカンス・ディーパーの様子に2人は生理的嫌悪を感じずにはいられなかった。
「やぁねぇ。もうちょっと痛そうにしてくれてもいいのに」
「強がりが出来るのも今の内だけだ。瑠璃、行くぞ!」
一気に畳み掛けようと、同時にシーラカンス・ディーパーに向けて駆けだし飛び蹴りを放つ。
息の合った2人の攻撃。それをシーラカンス・ディーパーは、あまりにも予想外な方法で回避した。
何とその場で地面に潜って回避したのだ。
「えっ!?」
「なっ!?」
それはどう見てもテテュスと同じディープダイビング。まさかディーパーにも同じ事が出来るとは思っていなかったので、回避されて2人は一瞬動きを止めてしまった。
「嘘!? 今のって、私と同じ!?」
「くそ!? 何処だ? 何処からくる!?」
決して追い詰めたとは言えないシーラカンス・ディーパー、あれで逃げたとは考えにくい。絶対にこちらの不意を打つつもりだ。
そう思って2人が周囲を警戒していると、テテュスの足元からシーラカンス・ディーパーの手がゆっくりと出てきた。背中合わせになって周囲を警戒している2人は、その事に気付いていない。
なかなか仕掛けてこないシーラカンス・ディーパーに、一瞬逃げたのかと警戒を僅かに解除しそうになったオケアノスだが、周りを見れば下級ディーパーがまだS.B.S.T.と戦闘を継続している。今逃げ出す事にメリットなどないだろうと、オケアノスが気を取り直した。
そこで彼はふと気づいた。テテュスが相手の不意を突く時、大体何処から姿を現す?
「……まさか!?」
弾かれるようにオケアノスが足元を見ると、今正にシーラカンス・ディーパーが手だけを出してテテュスの足を掴もうとしているところだった。
「瑠璃!?」
「え?」
警告と同時にオケアノスがテテュスを突き飛ばそうとしたが、その判断は遅かった。彼が気付いた時点でシーラカンス・ディーパーはテテュスの足を掴む寸前だったのだ。
オケアノスが声を上げると同時に、シーラカンス・ディーパーはテテュスの足を掴んで地面の中に引き摺り込んだ。
「わっ!?」
「瑠璃!?」
何が起こったかを理解するよりも前にテテュスは地面の中に引き摺り込まれ、オケアノス達から引き離されてしまった。
そしてシーラカンス・ディーパーは、引き摺り込んだ獲物を弱らせて運びやすくする為に、テテュスを徹底的に弱らせに掛かった。
「くっ!?」
地面の中に引き摺り込まれながらも、テテュスは反撃を放つがシーラカンス・ディーパーはひらりと躱してしまった。その動きは正に水の中の魚であり、テテュスも水中での動きは軽快だがシーラカンス・ディーパーには及ばなかった。
素早くテテュスの周囲を泳ぎ回り、すれ違いざまに何度も攻撃をして彼女の体力を削っていく。
「あぐっ?! あぁっ!? ぐ、あ?!」
シーラカンス・ディーパーの動きを全く捉える事が出来ず、テテュスは全身を啄まれていくように徐々にボロボロにされていく。
殴られ、蹴られ、食らい付かれる。攻撃を受ける度にテテュスは水中と化した地面の中で、水流に翻弄される海藻のように歪な舞を見せた。
「が……ぐ、うぁ……あぁ……」
次第にテテュスの抵抗が弱くなり、水中を漂うクラゲの様に動かなくなる。十分に弱らせることが出来たと見て、シーラカンス・ディーパーはテテュスをそのまま何処かへ連れて行こうと手を掴んだ。
その瞬間、テテュスは残された力を振り絞り掴まれていない方の手でシーラカンス・ディーパーの片目に指を突き入れた。
『うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!』
この反撃は予想外だったのか、完全に不意を撃たれテテュスから手を放し潰された片目を抑える。
手を離された瞬間、テテュスは地上に向け浮上した。シーラカンス・ディーパーに痛めつけられ、もう殆ど体力が残っていない。殆ど浮力に任せて浮上しているような状態だったが、それでも地上を目指して必死に足を動かして手を伸ばす。
下の方では痛みが引いたのか、シーラカンス・ディーパーがテテュスを再び引き摺り込もうと猛烈な勢いで浮上してきた。一方のテテュスは、あと少しで手が地上へと出そうなところ。だがタイミング的に彼女が全身を地上に出すよりもシーラカンス・ディーパーが追い付く方が早い。
それでもテテュスは懸命に手を伸ばして足を動かし、何とか右手が地上へと姿を現す。
瞬間、オケアノスが彼女の手を掴んで思いっきり引き上げた。
「おっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」
オケアノスに引っ張り上げられ地上へと再び姿を現したテテュス。その下ではあと少しでテテュスの足を掴んで引き摺り下ろせたのにと、シーラカンス・ディーパーが悔しそうに唸り声を上げた。本当にギリギリだった。オケアノスが引っ張り上げていなかったら、今頃テテュスは再び下に引きずり降ろされ二度と上がっては来なかっただろう。
テテュスを引っ張り上げた勢いでオケアノスは後ろに倒れてしまっていた。自力で立つことも儘ならないほど消耗していたテテュスは、そのまま彼に引かれるままに倒れオケアノスに覆い被さるような形になった。
「く、ぁ……はぁ、はぁ……」
「いてて、ふぅ……瑠璃、大丈夫か?」
引っ張り上げる事に夢中だったので気付かなかったが、テテュスは酷い状態だった。全身傷だらけだし、彼女の美しさを際立たせていたスカートも所々千切れている。彼女がこんなになるまで何もする事が出来なかった、オケアノスは自分の情けなさに怒りが込み上げてきた。
「……くそ」
「ネ、ネイト……ありがとう……」
「気にするな。立てるか?」
オケアノスの手を借りて立ち上がったテテュスだが、シーラカンス・ディーパーの攻撃による消耗は彼が思っているより大きく何かに掴まっていないと立っていられない様子だった。頭をフラフラさせ今にも倒れそうだ。
それでもテテュスは懸命に意識を保ち、霞む視界の中でチップをベットした。
〈Good luck〉
「赤の……ふぅ、7」
〈BINGO! Efficacy activation! Healing.〉
倒れそうになりながらも気合でヒーリングを発動させ、シーラカンス・ディーパーから受けた傷を癒す。
テテュスが傷を癒していると、遅れてシーラカンス・ディーパーが地上に姿を現した。
『おのれ――――!?』
悪足掻きで片目を潰された事は奴でも腹立たしいのか、それまでと比べて明らかに言葉に感情が乗っていた。そのまま傷を癒しているテテュスに襲い掛かろうとするシーラカンス・ディーパーだったが、今度はオケアノスがそれを許さなかった。
「させるか!」
『ぐ、邪魔だ!?』
奪い返した鞭で打ち、シーラカンス・ディーパーを牽制する。攻撃メインではなく、動きを止める事を目的とした鞭打ちは手足を主に狙って放たれ、これにはシーラカンス・ディーパーも対応に苦慮し思う様に身動きが取れずにいた。
その間にテテュスの回復が完了する。
「ふぅ、復活! ってね!」
回復したテテュスは、先程のお返しとばかりにオケアノスに足止めされているシーラカンス・ディーパーを蹴り飛ばした。
『くっ!?』
オケアノスの牽制に気を取られ、またテテュスにより片目を潰されていた事でシーラカンス・ディーパーは反応が遅れた。気が付いた時には目の前にテテュスが居り、防ぐ間もなく蹴り飛ばされ倒された。
倒れたシーラカンス・ディーパーを前に、テテュスはここで勝負を決めようとチップケースをベルトに装着した。オケアノスもそれに続く。
〈〈All in〉〉
「赤の1!」
〈SEVEN! SEVEN! SEVEN! Three of a Kind Seven!〉
〈〈Fever!〉〉
テテュスとオケアノスの必殺技が別方向から同時にシーラカンス・ディーパーに襲い掛かる。二方向からの攻撃を、シーラカンス・ディーパーは防御の体勢を取り必死に堪える。
『ぐぐ、ぎぎぎ――――!?』
「「ハァァァァァァァッ!!」」
耐えているシーラカンス・ディーパーだったが、見ると徐々に押されているように見える。
このまま一気に押し切る……そう思った時、突然シーラカンス・ディーパーの双眸が怪しく煌めき同時に全身が膨れ上がった。
『う、おぉぉぉぉぉ!!』
「な、何あれ!?」
遠くからその様子を見ていた海羽が不安を感じている前で、シーラカンス・ディーパーは驚くべき行動に出た。
何と全身を爆発させて、テテュスをオケアノスを纏めて吹き飛ばしたのだ。
『ふん!!』
「な、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ?!」
「瑠璃姉ぇ!? ネイトさん!?」
爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされた2人は地面に倒れそのまま変身が解除された。元の姿に戻った2人が苦痛で顔を顰める姿に、海羽が悲鳴を上げる。
一方のシーラカンス・ディーパーだが、こちらも当然無傷とはいかなかった。何しろ自爆したのだ。爆炎が晴れた時、そこには肉体の大半を失い首から下が殆ど骨だけのような有様となったシーラカンス・ディーパーがふら付きながらも立っていた。
『ぐぅ……が、あぁ……』
「隊長、あれを!」
「! 今だ!」
満身創痍となったシーラカンス・ディーパーの姿は当然S.B.S.T.の目にも留まる。スコープは、ボロボロとなったシーラカンス・ディーパーを見て捕獲するべく動いた。
一気に駆け出し、取り押さえようと手を伸ばす。
だがその前に、それまでS.B.S.T.と戦闘を行っていた下級ディーパー達が動いた。スコープやライトスコープ達には目もくれず、一斉にシーラカンス・ディーパーに群がりその姿を覆い隠した。
「な、何あれ? 何してるの?」
生き残っている下級ディーパーで山が出来るような光景に、瑠璃が這いずって距離を取りながら見ていると下級ディーパー達の体が徐に崩れ落ちた。砂の城が波にのまれて崩れ落ちる様に、肉体が崩壊して形を失っていく。
一体何が起こっているのかと誰もが固唾を飲んで見守る前で、形が崩れた下級ディーパーが溶け落ちる様に姿を失っていく。
そしてなんと、下級ディーパーが消えた後には先程までの姿が嘘の様に無傷となったシーラカンス・ディーパーが佇んでいた。
『ふぅ~……』
「何だと!?」
「そんな……」
「くそ……」
どうやらシーラカンス・ディーパーは、自分が生み出した下級ディーパーに使用したドロップチップを自分に還元する事で傷やダメージの回復が出来るらしい。この能力は初めて見るので、対策のしようもなかった。
慄き見ているしかできない瑠璃達の前で、シーラカンス・ディーパーは回復した体の調子を確かめる様に体を動かす。そして問題ない事を確認すると、改めて周囲を見渡し瑠璃やS.B.S.T.を眺めた。瑠璃とネイトはともかく、S.B.S.T.は未だ健在だ。彼らは瑠璃達を守る様に布陣している。
それを見てか、シーラカンス・ディーパーは疲れたように溜め息を吐くと踵を返し、能力で地面の中に潜っていく。また地面の中から奇襲で瑠璃を連れ去るつもりかと警戒するが、しかし予想に反しシーラカンス・ディーパーは何のアクションも起こさなかった。どうやら逃げたらしい。この状況では瑠璃どころか海羽も連れ去るのは難しいと察したのだろう。生み出した下級ディーパーを傷を癒す為に還元してしまった為、次に大きな負傷を受ければもう回復は出来ない。もしもと言う時の事を考え、撤退する事を選択したのだ。
それでも警戒は解かなかったスコープ達だが、シーラカンス・ディーパーによる再攻撃も無く本当に逃げたようだという事が分かると、安堵する様に溜め息を吐き徐々に警戒を解いていった。
「……逃げたようだな」
「その様です」
緊張の糸が解け、安堵の雰囲気が広がる中スコープは変身を解除し今だ倒れている瑠璃とネイトに近付いていった。
「大丈夫ですか?」
「何とかね?」
「くそ、あの野郎。次会った時は絶対ぶちのめしてやる!」
手痛くやられはしたが、2人にはあまり堪えた様子が無い。2人の精神的な強さに慎司は頼もしさを感じ笑みを浮かべずにはいられなかった。
「頼もしいですね。後は我々が処理をしておきます。皆さんは、お帰りくださって構いません」
「あの、バーツは……」
「既に救急車も手配しております。心配は――」
「……いらねぇよ」
突然、それまで意識を失っていた筈のバーツが起き上がった。額からはまだ血が出ているが、彼は気にした様子もなく立ち上がる。
意識を取り戻したバーツに、海羽が顔に喜色を浮かべた。
「バーツ! 大丈夫なの?」
「だから心配いらねぇって。もう大丈夫そうなら俺は帰るぞ」
「駄目よ!? 頭から血が出てるのよ!」
「どうって事ねぇよ。これくらい唾つけときゃ――――」
「駄目ッ!!」
意地を張って帰ろうとするバーツだったが、海羽の一喝で動きを止めた。見ると海羽の目尻には薄っすらと涙が浮かんでいる。
「ッ!?」
「病院に行きたくないって言うなら、せめて家で手当てさせて」
そう言いつつ、海羽の手はバーツの腕をがっちり掴んでいた。死んでも離さないと言いたげなその姿に、バーツが耐えきれなくなり折れた。というよりここで更に渋れば、海羽なら確実に実力行使に出る。それこそ気絶させてでも家に連れ込んで治療を施すだろう。まだ一か月も付き合っていないが、バーツにはその未来が手に取るように分かった。
「はぁ~……分かったよ」
バーツが渋々頷くと、海羽は心底嬉しそうな顔をして彼を家に引っ張っていく。
その2人の様子を、瑠璃とネイトの2人は微笑ましく見送っていたのだった。
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