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お待たせしました。今回遂に瑠璃がテテュスに変身します。
翌朝、瑠璃は自室のベッドの上で気怠い熱さを感じながら目覚めた。
「ん、うぅ……」
起き上がると言いようのない気分の悪さと重い頭に顔を顰める。昨夜は思っていたよりも疲れていたらしい。疲れた体がアルコールを分解しきれず、二日酔いになってしまったようだ。
時計を見ると時刻は6時前。アルコールが残っていた割には、思いの外早くに目覚めた。店は夕方近くにならないと開かないので、体調を整える時間はしっかりある。
瑠璃はベッドから出ると、着替えを持って浴室へ向かう。
浴室の扉を開けると、鉄平が沸かしてくれていたのか湯舟には湯が張られている。
洗面所で衣服を脱ぎ、洗濯籠に入れると浴室へと入り熱いシャワーを浴びる。頭から熱いシャワーを浴び、湯が瑠璃の肢体を伝い落ちていく。もしその姿を見る者がいれば、美しさに目を奪われた事だろう。張りのある肌と豊満な胸、くびれのある腰、そしてスラリとした肢体、全てのバランスが完璧な彼女を見れば、同性であっても見惚れずにはいられない。
事実海羽は時々瑠璃と共に風呂に入るのだが、自分に比べて完璧と言ってもいいスタイルを持つ瑠璃の裸を前にしたら目のやり場に困ってしまっていた。
そんな体の汗を流し、湯船に浸かる瑠璃。湯の温かさが体の芯まで染み渡り、思わず声が漏れる。
「ん~~!……はぁ~」
湯船の中で体を伸ばすと、押さえるものが無くなった乳房が湯船に浮かぶ。1人朝風呂の気持ち良さを堪能していた瑠璃だったが、その顔には直ぐに影が差す。それもこれも、昨夜酔いつぶれて寝落ちした際に見た夢が原因だった。
あまりにも鮮明過ぎる夢。何よりも夢の中で聞こえてきた声は、瑠璃が海に入った時度々聞いた声だった。その声が逆にあの夢を見させたという見方もできなくはないが、しかし瑠璃には事はそう単純な話には思えなかった。
「私…………一体何なんだろう?」
瑠璃は自分の事を知りたかったが、同時に知る事がとても怖かった。矛盾しているかもしれないが、瑠璃にとって自分の過去はそういうものなのだ。
過去を知って自分と言う存在をハッキリさせたい。しかし、過去に自分が何をしてきたのかが分からず知る事が怖い。もし過去に、何かとんでもない事をしていたら…………
温かい風呂の中にいるというのに、瑠璃の体は極寒の海の中にいるかのように震えた。その震えを押さえるように、瑠璃は自分の肩を抱き足を縮こませ、湯船の中に沈んだ。
風呂にブクブクと泡を立てながら沈むと、不思議と心が落ち着く。息苦しい筈なのに、呼吸出来ないことが怖くないのだ。
海に入る時もそうだ。海に入ると、例え夜の海でも不思議と怖くないのである。まるで海こそが自分のいるべき場所であるかのように。
「――――ぷあっ! ふぅ~……」
どれほど沈んでいたか。流石に呼吸の必要性に瑠璃は湯の中から顔を上げた。前髪から滴り落ちる湯を手で払いながら、肩で息をする。湯の水面に映る瑠璃の顔が、滴り落ちた雫で起きた波紋で揺らぐ。
「……上がろっと」
そろそろ逆上せると、瑠璃は湯から上がり洗面所で体を拭き服を着る。ドライヤーで髪を乾かすと、髪形を何時ものポニーテールにして居間へと向かった。
「あ、瑠璃姉ぇおはよう!」
「おはよう瑠璃。昨日は随分と深酒してたみたいだな?」
「おはよう、海羽ちゃん。言うほどそんなに飲んではなかったよマスター」
居間では高校の制服に着替えた海羽がトーストにバターを塗って齧り付き、鉄平がコーヒーを淹れている。瑠璃も2人に挨拶を返すと、トーストを1枚手に取りジャムを塗って一口齧るとそれを鉄平が淹れてくれたコーヒーで流し込んだ。
「んく、んく……はぁ~」
「瑠璃、悪いんだが今日は朝に海羽を学校まで送ってあげてくれないか?」
「ん? 良いけど何で?」
瑠璃が海羽を学校に送ること自体は別に珍しい事ではない。海羽が寝坊して遅刻しそうな時なんかは、瑠璃が個人的に持っているバイクで海羽を送る事もあった。
だが今日は別に海羽は寝坊した訳でもない。時計を見ればまだ時間はある。今からなら距離的にも余裕で間に合う。
だと言うのに何故?
「今日は店を休みにするからな。折角だ、海羽を学校に送ってそのまま好きに過ごすと良い」
「好きに過ごして良いなら、別に家に居ても良いんじゃない?」
「家に居たらお前の事だ。片っ端から酒飲み漁るだろ?」
「失礼ね、そんな事しないわよ!」
「いや~、どうかな瑠璃姉ぇの場合……」
どうやらこの2年の間に、2人には瑠璃は飲んだくれと言うイメージが定着してしまったらしい。
彼女の名誉の為に言っておくが、瑠璃は酒は好きだが日がな一日飲んだくれた事はない。休みの日は大抵、趣味のダイビングに出かける事の方が多い……筈だ。
いや、ダイビングから帰ったら酒を飲んでいる事が多いから、強ち間違った印象でもないのかもしれない。
「――んん! まぁ、そう言う事なら今日は好きに過ごさせてもらうわ」
「そうしろそうしろ。お前もうら若き乙女、楽しく生きて恋の一つもするべきだ。恋はいいぞ? 誰かを心から愛せば世界が広がる」
「出たよ、お父さんの愛談義」
「海羽ちゃんのお母さんとは情熱的な恋をしたんだっけ?」
「らしいよ。少なくとも私が知る限りだとお父さん、お母さんの尻に敷かれてたけど」
愛について熱く語る鉄平を横目で見つつ、瑠璃と海羽は朝食を済ませる。
「そう言えば、海羽ちゃんのお母さんって……」
「ん? うん、まだ本州に残ってる。お仕事まだまだ片付かないんだって」
鉄平と彼の妻は現在別居しているが、それは別に夫婦仲が悪いという訳ではない。元々は鉄平も本州で店を構えつつビジネスウーマンとして働く妻に代わり海羽を育てていたのだが、海都に安く店を構えられると知り移転を決意。海羽の母親もそれには賛成したが、如何せんあちらは仕事が忙しく海都に渡る事が出来ず結果別居せざるを得なくなっていた。
今は残りの仕事を全て片付けて、愛する夫と娘の待つ海都へ渡れるように準備をしているとの事だ。
また家族3人が揃える時を、海羽は楽しみに待っていた。
「早くこっちに来れると良いね。私も会ってみたいわ」
「私も。早くお母さんに瑠璃姉ぇを紹介したくて仕方ないよ」
2人は互いに笑い合うと、サラダやスープを飲み干しコーヒーで口の中を洗い流すと席を立った。時計を見れば大分いい時間だ。今から出れば始業時間前のちょうどいいタイミングで着く。
「それじゃお父さん、いってきま~す!」
「いってきま~す」
「それで……え? あ、いってらっしゃい」
鉄平はまだ話してる途中だったが、2人が支度を整え出ていくとそれを手を振って見送った。
店兼自宅を出た2人は、店の駐車スペースに止めてある1台のバイクに向かった。瑠璃が個人的に乗り回す為に用意したバイクだ。
記憶喪失の瑠璃だが、鉄平が身元引受人になる事で身分証は出来たしそれで免許証を作る事も出来た。なので瑠璃がバイクに乗る事は何の問題もない。
瑠璃は手早く海羽の荷物を収納スペースに入れ、自分のヘルメットを被ると同時に海羽にもヘルメットを手渡す。受け取ったヘルメットを被り、海羽は瑠璃の後ろに跨り彼女に掴まる。
…………その豊満な胸に。
「んん! ちょっと海羽ちゃん、そこ掴むところじゃないわよ?」
「ご、ゴメン瑠璃姉ぇ! 態とじゃないんだよ態とじゃ?」
そうは言うが、手の中に残る柔らかさは何とも心地よく、また触ってみたい衝動に駆られそうになる。
しかしそこで欲望に負けては、馬鹿な男連中と同じになってしまう。海羽は知っているのだ。時々瑠璃が学校に送ったり迎えに来てくれた時、学校の男子が瑠璃を見てだらしなく鼻の下を伸ばしているのを。
大切な家族であり、自分にとって女性としての目標でもある瑠璃をそんな目で見られることが海羽には気に入らなかった。
だから正直に言うと、瑠璃にはあまり学校への送り迎えをしてほしくは無かったりする。決して嫌な訳ではないのだが。
「こんな明るい外じゃ駄目よ~。そんなに触りたいなら、お風呂でいくらでも触らせてあげるから」
「え、ホントに?……じゃなくって! 本当にそんなんじゃないんだって!!」
「ウフフフッ。さ、そろそろ行くわよ。しっかり掴まっててね」
瑠璃がエンジンを噴かすと、海羽は慌てて今度は腰にしっかりと抱き着いた。海羽が抱き着いたのを見て、瑠璃はバイクを発進させて海羽が通う高校へと向かった。
***
数分ほどで2人は海都にある唯一にして最大の小中高大一貫校の高等部に到着した。周りを見渡せば他にも登校する高等部の学生の姿が見られる。
瑠璃は校門から少し離れた所にバイクを止め海羽を下ろした。校門のすぐ前だと他の学生の邪魔になってしまう。
「よっ、と。瑠璃姉ぇありがとう!」
「いいっていいって。はいこれ、荷物忘れないでね」
「分かってるよ。それじゃ、いってきま~す!」
「いってらっしゃい!」
手を振って登校する学生の列に加わる海羽を、瑠璃は手を振って見送る。途中友人を見つけたのか、海羽は後ろから他の女子生徒に話し掛けながら校門に入っていった。
海羽を見送り、さぁ自分も休日を満喫しようとヘルメットを被り直そうとする瑠璃だったが、何かに気付きふと周りをチラリと見渡した。すると何人かの男子生徒が、自分の事を見ていることに気付く。彼らに共通しているのは、僅かに頬を上気させてぼーっと瑠璃の事を見ている事だった。滅多に見れない彼女の美しさに見惚れているのだろう。まだ若い彼らに、瑠璃の美しさはある意味毒だ。
瑠璃は少し何かを考えると、胸を強調する様に自分の体を抱きしめつつ彼らに向けて笑みを浮かべ軽くウィンクをしてみせた。ちょっとしたサービスだ。
それは彼らには十分すぎるほどの威力があったのか、何人かの生徒――中には女子生徒も含む――は仰け反り、うち何人かは股間を押さえていた。
ちょっと刺激が強かったかと、瑠璃は反省しながら改めてヘルメットを被りバイクを走らせた。
さて今日は休日という事だが、彼女が休みの日に向かうところは一つしかなかった。
海だ。酒も好きだが、海に潜る事は彼女にとって何よりも素晴らしい。
一度家に帰り水着一式を取ると、港に向かい小さなボートをレンタルして海に出る。
ここ海都は太平洋のど真ん中に造られた海上都市。なので基本的に海に出れば直ぐに底のない大海原となる。だが瑠璃は敢えて街から離れた所までボートを走らせた。1人落ち着いて海に潜る為だ。
沖に向けてボートを走らせる瑠璃だったが、途中彼女の目に別の船が映った。海都に近付く大型クルーザー。200フィートクラスとはなかなかに豪勢だ。
どこの富豪の物だろうかと考えていた瑠璃だが、ふとある事に気付いた。このままだと衝突コースだ。
恐らく向こうも気付いてはいるだろうが、念の為自分の存在をアピールする為瑠璃は発煙筒を上げた。煙を上げる発煙筒を頭上に掲げ左右に振る。
するとクルーザーはギリギリで彼女の存在に気付いたように、大きく舵を切って船体を傾斜させながら彼女を避けた。その際に起きた波がボートを大きく揺らし、瑠璃は危うく海に投げ出されそうになった。
「わっ!? っとと、ふぅ。危ない危ない。乱暴な運転ねぇ」
幸い衝突事故なんて事にはならずに済んだが、一歩間違えれば事故に繋がっていた。しかもあのクルーザーの動きから察するに、操舵手はギリギリまで瑠璃に気付いてはいなかった。
一体どんなボンクラが船を動かしてるんだと文句の一つも言いたくなったが、何事もなかったんだしまあいいかと思い直すと瑠璃はボートの上で裸になり水着に着替えるとそのまま海に入った。
普通ダイビングの際はウェットスーツを身に付け酸素ボンベを背負うものだが、彼女はそんなもの使わない。水着一つで海に潜るのが彼女のダイビングだ。
海底の見えない海に水着だけで飛び込む。生命の気配のない海の中を、瑠璃は沈むように潜っていった。
(あぁ…………いいな、海は)
海の中は静かだ。特に海岸から遠く離れた沖の海の中は、喧騒もなく只管に穏やかだった。その静かな海に囲まれ、瑠璃は言いようのない安らぎに包まれる。
静けさに身を委ね、深くまで潜っていきながら目を閉じる。
――目を開けて! あれを見て!――
「ッ!」
その時突然、耳に声が届いた。驚き目を開けると、瑠璃の目に海の中に漂う何かが映った。
「?」
目を凝らしながら泳いで近付くと、それは金色の羅針盤だった。片側にコインか何かを入れるようなスロットが開き、もう片方にはスロットを回す際のレバーの様な物がついている。
(何、これ?)
見た感じ決して安っぽい造りではない。見た感じ変わった羅針盤と言う印象しかないが……
「ごぼっ!?」
ここで流石に限界が来た。常人に比べれば異常なほど水中で息が持つ瑠璃も、エラ呼吸が出来る訳ではないのでどこかで呼吸のため浮上する必要がある。
瑠璃は急いで浮上し、海面に顔を出し大きく息を吸い込んだ。
「ぶはっ! はぁ、はぁ……」
海面に出て周囲を見渡せば、乗って来たボートはすぐ見つかった。そこまで泳ぎ、よじ登るように乗り込み船の上で仰向けに横になる。遮るものがない日光が海水で濡れた体を乾かし温めてくれる。
日光浴を楽しみながら、瑠璃は先程拾った羅針盤を陽光に翳しながら眺めた。
「何だろ、これ……」
羅針盤にしてはスロットとレバーの存在が謎過ぎる。何と言うか、スロットマシンと羅針盤が合体したような見た目だ。一体何に使うものなのか分からない。
分からないのだが……何と言えばいいのだろう? 初めて見る気がしないのだ。何時か何処かで、自分はこれを見た事がある……そんな気がする。
「私は……これを知ってる?」
もしやこれは自分の過去に係わるものなのだろうか? 期待と緊張を胸に起き上がった瑠璃は、とりあえず街に戻る事にした。もう潜る気になれない。今は兎に角、これの事を少しでも調べたかった。
手早く水着から着替えると、ボートを反転させて海都へと戻る。
瑠璃の乗るボートが港に戻ると、先程のクルーザーも入港していた。まぁ行き先的に海都だろうから入港していてもおかしなことはないだろう。
そこでふと思う。この羅針盤、もしやこのクルーザーから落ちた物なのではないだろうか?
あの時クルーザーの方も乱暴な操舵をして少し傾いていた。もしかすると、その時にクルーザーから滑り落ちた物を瑠璃が拾ったのかもしれない。
だとすれば、このクルーザーの持ち主がこの羅針盤の事……そして運が良ければ、瑠璃自身の事も何か知っているかもしれない。
そうと決まれば早速話を聞こうと、ボートを港に返した。すると馴染みの港を管理する係員の1人が首を傾げた。何時もはこの倍は海に出ているのだ。あまりにも長く海に潜りに行っていたので、最初の頃は遭難したのではないかと騒がれた。お陰で何も知らず普通に戻った時、瑠璃は心配のあまり鉄平達に説教されたくらいだ。
流石に今は大分慣れたもので、瑠璃が長く海に出ていても騒がれる事は無くなった。
「あれ? 瑠璃ちゃん今日は随分と早いね?」
「ちょっとね。それよりさ、このクルーザーの持ち主ってまだ中に居る?」
「あぁ、このクルーザー? いや、乗員は全員降りたはずだけど」
係員は手元のタブレットを眺めながら首を横に振った。その答えに瑠璃は残念そうに肩を落とした。
「そうなの……」
「瑠璃ちゃん知り合い?」
「知り合いって訳じゃないんだけどね。ただこの落とし物の事で、ちょっと話を聞きたくて」
居ないのであれば仕方ない。とりあえず街に入ったのは確実なのだし、会う事もできるだろう。
「落とし物? こっちで預かろうか?」
「いいわ、自分で渡すから。どんな人達だったかだけ教えてくれる?」
街であった時に話し掛けられるようにと、クルーザーの乗員の特徴を訊ねると係員は快く教えてくれた。
くれたのだが――――
「筋骨隆々の眼帯男に背の高い細マッチョ、それに日焼け気味の逞しい男の子に他にも荒っぽそうな男数人、包帯だらけの女みたいな人と白衣の女の人…………最後2人はともかく、他の人はなんだか海賊みたいね?」
「やっぱりそう思う?」
「大丈夫なのその人達?」
「う~ん……」
何だか話し掛けるのが躊躇われる連中だ。もし会えて話し掛ける機会があるとすれば、白衣の女性とやらにすべきだろう。
瑠璃は色々と教えてくれた係員に礼を言って、港を後にして街へと向かった。
***
その頃、そのクルーザーに乗っていた男達は街中の横道に集まっていた。人通りの少ないそこにいかつい男達が集まっている様子は、それだけで何か危険なものを感じさせる。
その男達の中心では、フランシスと呼ばれた筋骨隆々の眼帯男が頭を抱えて蹲っていた。
「うぉあぁぁぁぁぁぁ……何て事だ。よりによってあれを落としちまうなんて……」
「兄貴、どこで落としたのか心当たりはないのか?」
「今朝までは確かにあったんだ。って事は、落としたタイミングはあの時しかないぜエド兄貴」
「バーツ……あの時ってのは、お前が見つけたボートを避けた時の事か?」
「あぁ。あの時フランシス兄貴、甲板の上で寝てたろ? 大方その時に船が傾いて、滑って落ちちまったんだ」
3人はそれぞれフランシス、エド、バーツと呼び合う。その中で一番若いバーツは、溜め息と共に頭を抱えるフランシスを見た。
「どうすんだよ? 今頃お宝は海の底だぞ? 陸地が近いならともかく、太平洋のど真ん中の海の底なんてそう簡単に取りにいけねえぜ?」
「分かってるよ……くそ、ついてねぇ」
「全く……」
己のミスと不運を悔やむフランシスに、それまで黙っていた白衣の女性が声を掛けた。
「まぁ痛手ではあるけれど、ここまで来れば何とかなるわ。あれは間違いなくここを指していた。となれば――――」
白衣の女性がフランシスを弁護する中、包帯を巻いた女性は暇そうに表通りを眺めていた。包帯の隙間から、深い青い瞳が胡乱な目で表通りを見ている。
その視線に、1人の人物が映った。青い髪と瞳の女性、瑠璃だ。
「ッ!?」
「ん? ちょっとどこに行くの?」
瑠璃の姿を見た瞬間、包帯の隙間から覗く目に光が宿る。慌てた様子で表通りに出ると、瑠璃がさて行った方を見た。その後に遅れて白衣の女性が横道から出てくる。
「どうしたのよ?」
「…………生き残り?」
「は?」
「何故ここに……私以外もう居ない筈なのに――――!」
包帯の女性は白衣の女性の言葉に答えず、瑠璃の後を追うように走り出した。とは言え瑠璃はバイクだったのに対し、包帯の女性は徒歩。瑠璃の姿はとっくに見えなくなっており、どこに行ったのかも分からない。
にも拘らず、包帯の女性は瑠璃の後を追って白衣の女性の声も聞かずにその場を駆け出すのだった。
***
時は遡り、港を後にした瑠璃は体に着いた海水を洗い流すのも兼ねて家に戻ってきていた。家に帰るなり浴室に直行し、シャワーを浴びて海水を落とすと台所に向かい適当に食べ物を物色し簡単に昼食を済ませる。
その際、拾った羅針盤はずっとテーブルの上に置かれ、瑠璃はそれを眺めながら適当な物を挟んで作ったサンドイッチを食べた。
食べ終えてからも瑠璃は、羅針盤を色々な角度から眺める。
「う~ん……」
1人羅針盤を眺めながらうんうん唸る瑠璃。するとそこに鉄平がやって来た。
「お? お帰り瑠璃。今日は海に行かなかったのか? 戻るのが随分と早いみたいだけど」
「ん~、海に入って潜ったんだけどね? こんなの拾っちゃって」
言いながら瑠璃が羅針盤を鉄平に手渡す。渡された鉄平も、瑠璃の様に羅針盤を不思議そうに色々な角度から眺め、更にはレバーを引いたり羅針盤を回したりしてみた。
「…………何これ?」
「さあ? 海の中に落ちてたの。多分さっき入港したクルーザーから落ちたんだと思うんだけど……」
「落とし物か? それなら港の入港管理局に預けておいた方が良いんじゃないか?」
鉄平の言葉は尤もだが、そうもいかない理由が瑠璃にはあった。瑠璃はその理由を鉄平に告げた。
「これ……私、何処かで見た覚えがある気がするのよ」
「何? つまりこれは瑠璃の過去に関係あるって事か?」
「分からないけど、もしかしたら……。だから、出来ればこれは私が直接持ち主に渡して、これの事に話を聞きたくって」
瑠璃の言葉に、鉄平は改めて羅針盤をまじまじと眺めた。試しにスロットに手持ちの硬貨を入れてみたが、特に反応はない。レバーを引いても同様だ。
考えても分からないと、鉄平は羅針盤を瑠璃に返した。羅針盤を瑠璃が受け取った、次の瞬間――――
「――えっ!?」
突然触れてもいないのに羅針盤が動き出した。傾いたから動いたとかそんな感じではない。まるで誰かが回しているかのように激しく回り出したのだ。
「こ、これは一体?」
鉄平も目の前で起きた現象が信じられず目を丸くしている。
普通に考えればありえない現象、ともすれば心霊現象かと気味悪がるところだが、瑠璃は気味悪がる素振りを見せず羅針盤の動きをジッと見つめていた。
そして羅針盤が唐突に止まり、ある一点を指し示す。羅針盤の向きを変えても、指す方向は変わらない。
この羅針盤は何かを導いている、そう感じた瑠璃は立ち上がると急いで家を出た。
「る、瑠璃!」
後ろから鉄平の呼び止める声が聞こえてくるが、瑠璃は構わず家を飛び出すとヘルメットを被りバイクに跨ると急いで発進させた。
そして羅針盤が導くままに、瑠璃がバイクを走らせて辿り着いたのは海羽が通う高校だった。何かの間違いではないかと高校の周りをぐるりと回ってみたが、羅針盤は間違いなく高校を示している。
校庭では午後の授業の体育だろう、学生が体操着を着て走り回っていた。その中には海羽の姿も見える。
一体ここで何があるのか? そもそも羅針盤が何を指しているのか分からなかった瑠璃は、暫く様子を見守る事にした。
校門のところで佇んでいると、不意に海羽が瑠璃に気付いた。
「あっ、瑠璃姉ぇ!」
ちょうど授業が終わったからか、海羽が体操服姿のまま近付いてきた。今日はそれなりに暑いので、近付いてきた海羽の顔には汗が浮かんでいる。
近付いてきた海羽に、瑠璃は何時もの笑みを浮かべた。
「お疲れ、海羽ちゃん」
「瑠璃姉ぇどうしたの? 学校まだ終わらないのに」
「うん、ちょっと……ね」
勝手に動いた羅針盤に従って来たなんて言っても信じてはもらえないだろうから、瑠璃は言葉を適当に濁した。
その答えに、何だか何時もの瑠璃らしくないと首を傾げる海羽。
その時校庭の方から何かが弾ける音と共に悲鳴が響いた。2人が弾かれるように校庭の方を見ると、水道管が破裂したのか校庭の一部が裂けそこから水が噴き出している。
何故いきなり水道管が破裂したのかとその光景を唖然と見つめていると、裂けた部分から怪人が姿を現した。
一言で言えば半魚人。鱗の生えた緑色の体に、魚と人間が融合した顔の口にはピラニアの様に鋭い牙が生えている。
明らかに危険そうな半魚人が何人も校庭の裂け目から這い出てきた事に、生徒たちは一瞬にしてパニックになり四方八方に逃げ惑う。半魚人たちは逃げ惑う生徒を追いかけ、何人かの生徒は追い詰められた。
それを異変に気付いた警備員が駆け付け助けに入る。半魚人を後ろから取り押さえ、生徒から引き剥がそうとする。
だが半魚人は見た目細いのにパワーが凄まじく、警備員を簡単に振り払うと逆にその鋭い爪や牙で引き裂き警備員を次々と殺してしまった。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ?!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
映画でしか見る事が出来ないようなスプラッタな光景に、生徒たちは悲鳴を上げて校舎の中や学校の敷地外へと逃げる。
半魚人の何体かは殺した警備員を貪る事に夢中になっていたが、残りは他の獲物を探して校舎へと向かっていった。
「な、何あれ!? 何であんなのがッ!?」
「海羽ちゃん、考えるのは後! 私達も逃げるわよ!」
「きゃぁっ!?」
ここは危ないと海羽を連れて逃げようと瑠璃が行ったとき、校舎内に逃げていく女子生徒の1人が入口の所で転んだ。女子生徒は転んだ拍子に足を挫いたのか、立つことが出来ない様子だった。
「
「あ、海羽ちゃん!」
女子生徒は友達なのか、海羽が瑠璃の制止の声も聞かず転んだ友達の元へと向かう。
「あ、あぁっ!? いや、止めて! 来ないで、誰か!?」
近付いてくる半魚人に、知佳が悲鳴を上げながら体を引きずって必死に距離を取る。それを嘲笑うように半魚人は知佳に近付き、その手を伸ばした次の瞬間、間一髪間に合った海羽が知佳の体を掴んで引っ張り校舎内に逃げた。
勿論その後を追おうとする半魚人。
その半魚人を瑠璃が横から蹴り飛ばした。
「フンッ!」
「瑠璃姉ぇ!?」
「早く逃げて!」
蹴り飛ばされた半魚人は標的を瑠璃に変えたのか彼女に迫る。これ幸いと、瑠璃は今の内に海羽達に避難を促し自分は別の方向へと逃げて行った。
するとどうした事か、他の半魚人達も次々と瑠璃の後を追いかけて行ったではないか。まるで彼女に引き寄せられるかのように、警備員の死体を貪っていた奴も瑠璃の後を追いかける。
明らかに連中は瑠璃を狙っている。その事に疑問を抱きながら、瑠璃は上手く半魚人達を誘導しながら逃げた。
が、突然目の前の道路が裂けるとそこから別の半魚人が這い出てきた。
「なっ!?」
「瑠璃姉ぇ、逃げて!?」
瑠璃が半魚人に取り囲まれた。その光景を心配になって後を追いかけた海羽が目撃し悲鳴のような声を上げる。
その間にも半魚人達はじりじりと瑠璃に迫る。絶体絶命と言う状況で、瑠璃の頭に声が響いた。
――それを使って!――
「え?」
――リールドライバー。使い方は分かるでしょ?――
頭に響く声に従って、瑠璃は手の中にある羅針盤――リールドライバーを見た。
リールドライバー見た瞬間、瑠璃の脳裏に動画を早送りにしたような光景が過る。
目の前の無数の半魚人を前にする瑠璃の姿――
瑠璃は腰にリールドライバーを腰に装着し、青いコインをスロットに入れレバーを下ろした――
「ッ!!」
脳裏に光景が過ったのは一瞬の事。だがそれだけで瑠璃は自分がどうすべきかを知り、今見た光景に従ってドライバーを腰に装着し、ここに漂着した時ただ一つ持っていた青いコインをスロットに入れた。
〈Bet your life〉
コインを入れた瞬間、リールドライバーから音声が響く。それを聞き瑠璃が右側のレバーを下ろすと、目の前に巨大なルーレットが現れ回転すると同時にボールが転がった。
そして――――
「変身」
瑠璃がルーレットを指差しながらその言葉を自然に口にすると、ボールがルーレットの「0」のポケットに入った。
〈Fever!〉
高らかに宣言される音声と共に、ルーレットが回転しながら瑠璃の頭上に移動した。何だどうなるんだとルーレットの行方を目で追っていた瑠璃は、頭上に移動したルーレットがそのまま下りてきた事に顔を引き攣らせた。
「わ、わっ!?」
「え、ちょっ!?」
逃げるのは間に合わないと、思わず両手を頭上に挙げる。海羽も瑠璃が潰されると飛び出そうとしたが、次に起こった事は2人の予想を超えた出来事だった。
ルーレットは瑠璃を潰すことなく、その体を通過していった。その際彼女には大海原の様な青い水の流れが纏わりつき、その身を変化させていく。
「え? えぇ?」
変わっていく自分の姿に、瑠璃が困惑していると変身が完了した。
その姿は正しく足のある人魚。青い仮面に黄色い複眼。変身しても尚大きさを主張する胸元は申し訳程度の面積の銀色の鎧に覆われ、腰から下は白い前開きのスカートで覆われている。
変身した瑠璃の姿に、海羽は口をポカンと開けて見惚れていた。
「何、あれ?」
突然の出来事に困惑する瑠璃と海羽だったが、半魚人達はそうではなかった。奴らは瑠璃の姿が変わったのを見ると、先程よりも更に興奮した様子で牙を剥き一斉に飛び掛かった。
「瑠璃姉ぇ、危ないッ!?」
「あ!」
ワンテンポ遅れて反応した瑠璃に半魚人達の爪や牙が襲い掛かる。このまま彼女がズタズタに食い殺されるかと思わず顔を手で覆った海羽だったが、現実は彼女の予想と真逆の展開になった。
何と瑠璃が半魚人達を次々と薙ぎ倒し始めたのだ。
「はっ! くっ! たぁっ!」
振り下ろされる爪や迫る牙を、瑠璃は手で受け流し裏拳や蹴りで反撃していく。その動きはまるで流れる水の様で、瑠璃は半魚人達の間を縫うように動き回り叩き伏せて行った。
しかし対抗出来ていても、数では半魚人達の方が圧倒的に多い。足りない技量を半魚人達は数で補う。
1体が瑠璃の腰に抱き着き彼女の動きを封じると、他の奴が動けなくなった彼女に群がり爪で次々と切りつけた。
「うあ、あぁぁぁぁぁぁっ?!」
「瑠璃姉ぇッ!?」
全身を切り裂かれる痛みに悲鳴を上げる瑠璃。死を覚悟した瑠璃だったが、その時脳裏に再び声が響く。
――そいつを殴って、早く!――
「う、えぇ? くっ!?」
全身を切り裂かれながらも、頭に響いた声に従い瑠璃は自分にしがみついている半魚人を思いっきり殴った。するとそいつは体力が限界だったのか、苦し紛れの一撃を喰らっただけで倒れて動かなくなった。自分を拘束していた奴が居なくなった事で自由を取り戻し、瑠璃は転がるようにしてその場を離れる。
瑠璃がその場を離れると、先程倒した半魚人の体が崩れて溶け落ちた。するとその残骸から数枚の白いチップが飛び出し、瑠璃の右腰にあるケースに勝手に入っていった。
「え? 何?」
一瞬何が何だか分からなかった瑠璃だが、直ぐに何かを思い出したかのようにケースから『ドロップチップ』を1枚取り出しドライバーに装填しレバーを下ろした。
《Good luck》
レバーを下ろすと再び瑠璃の目の前にルーレットが現れ、今正に彼女に襲い掛かろうとしていた半魚人達を弾き飛ばす。
回転を始めボールが転がるルーレットを見て、瑠璃は咄嗟に入るポケットを予想して宣言した。
「赤の23!」
咄嗟の判断だったが、予想は辺りのボールはポケットに入った。
〈BINGO! Ability activation! Deep diving.〉
予想が当たるとルーレットが光り、ドライバーにルーレットが吸い込まれていく。障害がなくなったことで、半魚人達が再び瑠璃に襲い掛かって来た。瑠璃はそれを前方に向けて飛び込むようにして避けた。
次の瞬間、海羽は我が目を疑った。何と瑠璃の体が水飛沫を上げてコンクリートの道路に潜っていったからだ。
「えっ!?」
驚いたのは半魚人達も同様で、瑠璃が飛び込んだところに集まり彼女が潜った場所を注目し触っている。
その時、半魚人の集団の外側に瑠璃が飛び出した。飛び出した彼女は無防備な半魚人の背中を蹴り飛ばし次々と倒し、倒れた半魚人の体は崩れてチップを出した。
そこで漸く彼女に気付いた半魚人達が再び彼女に飛び掛かるが、今度は壁に向けて飛び込み潜って攻撃をやり過ごし別の場所に飛び出て攻撃してと半魚人達を翻弄した。
(何でだろう? 初めて戦う筈なのに、どうすればいいのか分かる)
地面や壁に潜る能力を駆使し、半魚人を次々と倒す瑠璃は自分が戦えている事に内心で驚きつつ拳と蹴りで数を減らしていく。
そうして気付けば半魚人の数は当初の半数以下にまで減っていた。
瑠璃はケースから今度は5枚のチップを取り出し、それを次々スロットに装填しレバーを下ろし、回るルーレットを見て次に入るポケットを宣言する。
「黒の10!」
ボールが入ったのはやはり彼女の宣言通り、黒の10のポケットに入った。
〈BINGO! Skill activation! WAVE SMASH.〉
ベルトから音声が響くと、瑠璃の右足に波が纏わりつく。彼女が何かすると踏んだ半魚人達はそれを阻止しようと一斉に彼女に飛び掛かるが、それは悪手だった。
次の瞬間瑠璃は飛び掛かる半魚人達にカウンターで回し蹴りを放った。彼女が足を振るうと、それに合わせて波が広がり足が届かない範囲に居た半魚人も纏めて薙ぎ倒されチップへと変わる。
そうして半魚人は全て倒されてしまった。
「や、やったの?」
――お疲れ様――
これを自分がやったという事に信じられないと声を上げる瑠璃の頭の中に、またも声が響いた。
そう言えば戦っている最中は気にならなかったが、落ち着いた今になってよく聞くとこの声にはどこか聞き覚えがある。だが何処だったか?
「あ、ありがとう。ところで、あなたは誰?」
試しにコンタクトを取ってみた瑠璃だが、それからと言うもの声は全く聞こえてこない。
しばらく待ってみたが何の返答もなかったので、瑠璃は返答を諦めドライバーを外し変身を解除した。
〈Drop out〉
「――あれ?」
そして気付く。解除の仕方を知らない筈なのに今自分は自然と元の姿に戻る事が出来た。
一体何故?
「瑠璃姉ぇ!」
瑠璃が一人悩んでいると、海羽が興奮した様子で駆け寄ってきた。
「凄い、凄いよ瑠璃姉ぇ! あれ何? 何時の間にあんなこと出来るようになったの?」
「う~ん、って言われても。私にも何がなんだか……」
何がどうなっているのか知りたいのは瑠璃の方だ。あれよあれよと言う間に変身した上に戦えてしまった。何で自分にこんなことが出来たのか、そもそもあれは何なのか。
それを誰よりも知りたいのは瑠璃自身なのである。
(本当、あれ一体何だったんだろ?)
──テテュス──
不意に脳裏に響く声。こっちからは質問しても答えてくれないクセに、いきなり口を開いては言いたい事だけ告げて黙る。
その身勝手さに瑠璃は文句の一つも言ってやりたかったが、海羽の手前それは何とか堪えた。
寧ろここは、あれの名前が分かっただけで良しとしよう。
「テテュス……か」
「え?」
「さっきの奴の名前。テテュスって言うんだって」
徐に名前を告げる瑠璃に、海羽はその名が何処から出たのかを訊ねる前にある単語を頭に思い浮かべた。
「仮面……ライダー」
「仮面ライダー? 何それ?」
「瑠璃姉ぇがさっき変身したやつ! 何かに似てると思ってたけど漸く思い出せた!」
仮面ライダーとは、二年前に東京を中心に広がった都市伝説である。仮面を着けて、怪人と戦う正義のヒーロー。
「それが仮面ライダー! 瑠璃姉ぇがさっき変身したやつ、その仮面ライダーにそっくりなんだよ! ほら、S.B.C.T.って瑠璃姉ぇも知ってるでしょ? あの人達の装備も仮面ライダーをモデルにしてるんだって」
後半は殆ど聞き流していた瑠璃だが、仮面ライダーと言う単語だけは頭に刻み付けていた。
仮面ライダーテテュス……なかなか悪くないかもしれない。
「…………フフッ」
なんて子供っぽい事を考えるのだろうか。これでは本当に実年齢が低いみたいではないか。瑠璃はそんな事を考え、笑みを浮かべると海羽の頭を撫でた。
その様子を、白衣の女性と包帯の女性が見ていた。
「へぇ? まさかこんな所に生き残りが居たなんてね」
「フゥ、フゥ、フゥ――――!」
何やら楽しそうに瑠璃の事を見つめる女性に対して、包帯の女性は血走った目で瑠璃の事を見ている。今にも飛び掛かりそうな雰囲気だったが、幸いと言うか白衣の女性が肩を掴んで押さえているので大人しくはしていた。
「これは楽しい事になりそうだわ。さ、戻るわよ『8号』。そろそろあいつらに怪しまれるわ」
白衣の女性は8号と呼んだ女性を引っ張るようにしてその場を離れて行った。
離れる白衣の女性の顔には、口元に三日月のような笑みが浮かんでいるのだった。
という訳で第2話でした。
瑠璃は魔性の女です。男子高校生や、一部の性癖を持つ女性には刺激が強すぎます。
今回テテュスの戦闘シーンをお披露目出来ましたが、瑠璃は戦いの知識はあっても実戦経験に乏しい為、戦闘ではピンチになる事が多くなるかと思います。
前作の仁が割と序盤からホイホイ戦えてたので、それとの対比ですね。
それとテテュスの能力ですが、想像つくかと思いますが予想を外すと能力は不発に終わります。賭けたチップに応じて強力な能力を使えるようになりますが、外すとかなりの痛手となる感じですね。
執筆の糧となりますので、感想や評価その他よろしくお願いします!
次回の更新もお楽しみに!それでは。