瑠璃は海都に戻るなり、船のレンタルショップに平謝りする事になった。本来返さなければならない船を、沈めて帰って来てしまったのだ。いや、もしかすると沈まずに済んでいたかもしれないが、操舵する者も居らず海の上を漂っているのであれば同じ事。この広い大海原で、たった一艘の船を探すなど簡単な事ではない。
とは言え本当の事を言ったって信じてもらえるはずがないので、ショップには時化で横転し漂流しかけたところをフランシス達に助けられたという事で納得してもらい弁償等に関しては改めて後日話す事になった。
世界を救ったと言うのに真っ先にこんな事になってしまい、何とも言えない気持ちで街に入った瑠璃をネイトと久し振りに海都の地を踏む海羽が慰めていると、思わぬ人物が彼女らに声を掛けてきた。
「や、久し振り」
「え、仁さん? 何で海都に?」
そこに居たのはアメリカに戻った筈の仁であった。後ろには彼の家族の姿もある。
こんな短い期間の間に何度もアメリカと海都を行き来するのは子供への負担も大きいだろうに、一体どうしたというのか?
「そりゃあんな事があれば、来ない訳にはいかないからさ」
「あんな事って?」
「知らないの? たった一日で大陸が浮上したかと思ったらあっという間に沈んだじゃないか。今海都だけじゃなく、世界はあの一日と経たずに姿を現して消えた大陸の話題で持ちきりなんだよ?」
言われて瑠璃達は納得した。当事者ではあったが、色々と起こりすぎて大変だった為すっかり失念していた。今のこの時代に、突如太平洋に巨大な大陸が浮上してまた沈没したとなれば、騒ぎにならない筈がない。人々は天変地異と騒ぐだろうし、学者たちは存在しないと思っていたムー大陸の手掛かりになるとこぞって調査しようとしている筈だ。
瑠璃は思わずあちゃー、と額に手を当てた。すると仁はそこに何かを感じたのか、目の端をキラリと光らせた。
「大梅さん達、何か知ってるね?」
「ん゛ッ!? え、えっとねぇ……」
「ここじゃ話し辛いだろうから、好きな所で聞くよ。どこが良い?」
もう話す事は確定事項となっている事に、まぁ仁が相手なら良いかと瑠璃は彼らを店へと連れていくことにした、鉄平もまだ帰ってきてはいないだろうから、関係者だけで秘密の話をするならあそこが都合がいい。
「って訳で、私達は店に行くけど……皆はどうする?」
皆とはフランシス達の事だ。成り行きで海都まで来てしまった彼らだが、無関係とは言い切れないが別にいなくても問題は無い。縛り付ける理由も無いのだし、何か用事があるのなら引き留めるのは申し訳ないと思っていた。
するとフランシスは、一瞬海羽とバーツを交互に見てから口を開いた。
「あ~、俺達も少しこの街でゆっくりさせてもらうさ」
「あんな事があって、何だかんだ船にガタが来てるかもしれないからな。整備と点検に少し時間を使いたい」
「んじゃぁ、乾ドック手配しないとな。俺ちょっくら行ってくる」
一足先に船舶の整備施設を手配しようとその場を離れようとするバーツであったが、フランシスが慌ててそれを引き留めた。
「だぁぁぁっ、待て待て待てッ! お前は嬢ちゃんについて行きな」
「えっ……」
兄貴分からの言葉にバーツの視線が海羽に向く。すると彼女からも、何処か縋る様な懇願するような視線が向けられていた。その視線を受けて、バーツは言葉に詰まる。
そんな弟分に、フランシスとエドワードは左右から肩に手を置いて耳元で囁いた。
「な? お前が居た方が、嬢ちゃんも安心できるってもんだ」
「少しでも長くあの子と一緒に居たいだろ? ここは俺らに任せて、お前はあの子の傍に居てやりな」
兄貴分2人の言葉に言い返したいバーツではあったが、実際問題海羽との別れの時が迫っている今、少しでも彼女との時間を作りたいと言うのも事実。喉元まで出掛かった言葉を飲み込んだバーツは、何度か頷いて海羽の傍へと向かった。
「じゃあ……そっちは任せた」
「おぅッ! んじゃ、行くとするかエド?」
「あぁ。ほれ、お前らも行くぞ」
「「「ウッス!」」」
バーツが海羽の方に向かったのを見て、フランシス達は船の方へと引き返していく。瑠璃はそれを見送ると、残った者達を連れて店へと戻っていった。
「あぁ~、久し振りの海都! お父さん元気にしてるかな?」
バーツとの別れが近付いてきているのは寂しいが、それはそれこれはこれ。やはり我が家たる海都の血を再び踏めたことへの感慨は大きく、また父との再会は待ち遠しかった。
が、ここで瑠璃は鉄平が妻・美代子を迎えに本州に向かっている事を海羽に伝え忘れていた事を思い出し、店に向かう道中で鉄平が不在である事を話した。
「あ、そうそう言い忘れてた。マスターなら今海都には居ないわよ」
「え、何でッ?」
「奥さん……海羽ちゃんのお母さんを迎えに本州に行ってるの」
「多分そのままもう暫くは夫婦水入らずで旅行を楽しんでから返って来るんじゃないか?」
何て事を言ってみたネイトだが、実際問題子煩悩の鉄平が我が子を忘れて遊んで帰ってくる事は無いだろう。バーツに拾われて安全が保障されているとは言え、いやだからこそ準備が整えばさっさと帰って来る筈だ。瑠璃とネイトが海都を発ってから時間も経っているし、もしかすると鉄平の方が先に帰ってきているかもしれない。
バーツと門守一家を伴って数日振りにBAR・FUJINOの扉を潜る瑠璃達。海羽にとっては数週間振り、瑠璃とネイトに至っては数日振りだと言うのに、とても久し振りに見えて思わず目頭が熱くなる。
「~~~~ッ、ただいま!」
「さ、入って」
店に入ると、店内はシンと静まり返っていた。どうやら鉄平はまだ帰ってきていないらしい。それでも海羽は激動の体験を経ての帰宅に返事が返ってこない事を理解しつつも帰宅の挨拶を口にした。
瑠璃に促されてバーツと門守一家が店に入ると、ネイトが扉を閉めた。その際念の為、周囲に聞き耳を立てるような人が居ない事を確認しておく。そんな物好きな奴など居ないと分かってはいるが、念の為だ。
客人を招き入れると、瑠璃が赤ん坊2人分を除いた全員にコーヒーを用意する。店を長時間空ける事を考えてコーヒーメーカーの中も空っぽだったのでインスタントだが、世界の危機を救うと言う大仕事を終えた後だとインスタントであっても十分に美味しい。
コーヒーで一息ついた仁は、改めて瑠璃に事の詳細を訊ねた。
「で? 君らは何をどこまで知ってるの?」
「ん~っとねぇ……何処から話したもんか……」
取り合えず瑠璃は、仁が海都を去った後に起こった事から順番に話していった。
恭子による海都庁舎と地下施設の占拠。
ラハブの襲撃による恭子の死。
恭子が使用していた潜水艦から回収した資料から、ムー大陸が大きく関係している事を知り、そこからさらにセラの故郷である孤島が何かの鍵を握っているのではないかと考えた事。
真相を確かめる為、海都を発ちセラの故郷である孤島へと向かった事。
そこで知ったテテュスの真実とムー大陸の過去。
蘇ったラハブと浮上したムー大陸。
そしてラハブとの決戦。
それらの話を仁と亜矢は腕に我が子を抱きながら静かに聞いていた。
話の途中、瑠璃がセラのクローンである事を初めて知った海羽が慌てたりしたが、概ね話すべき内容を全て伝える事は出来た。
一通り話を聞いた仁は、話の内容を噛みしめるように大きく息を吐いた。
「はぁ~……なるほど、なるほどね」
「大変でしたね、皆さん」
「まぁ大変は大変だったけど、色々な事に決着がついて良かったと思ってるわ。これで、安心して前に進めるから」
瑠璃が心から安堵の表情を浮かべる。もう彼女の中には、今まで不明瞭だった過去への憂いは無い。見ず知らずの血の繫がりの因縁も断ち切ったし、不安に思う様な事は何もなかった。
…………いや、一つだけ憂いるべきことがあった。
「あ、待て瑠璃。一つだけ決着がついてねぇ」
「え?」
「あの杖持った気取ったディーパー、アイツが倒せてねぇ」
「あ、そっか……でも親玉は倒せた訳だし、大丈夫なんじゃ……」
ディーパーを統率していたラハブは瑠璃により倒され、EXクラムは謂わば敗残兵。手勢も少ないだろうし、大きな動きに出てこられるとは思えなかった。
「いや、確かに危ないかもしれない」
「え?」
「蜂の中には、女王蜂が死ぬと今いる幼虫を女王蜂に育て上げる奴が居る。もし、ディーパーにも似たような生態があるとすれば……」
「新しいラハブが生まれるかもしれないって事か!?」
「でもラハブは普通のディーパーと違って、ライフコインで体を作ってるのよ? ライフコインが作れるのは、私みたいな技術を知ってるムー大陸人の生き残りだけ。今の時代にそんな人いる?」
話していて瑠璃は、だから自分が狙われたのだと実感した。ラハブが本当に求めていたのは、無限にライフコインを生み出す事が出来る瑠璃の能力だったのだ。だからじっくりと吸収するような事をしたのである。
現代に最早自分の代わりとなる人物はいない。そう思っていた瑠璃だが、その考えを仁が否定した。
「残念ながら、必ずしもそうとは限らないんだよ」
「どういう事だ?」
「そもそも奴らが狙ってたのは、超万能細胞やその因子を持つ人達だったんだ」
仁の口からその単語が出てきた時、瑠璃は首を傾げた。先程の話ではどうでもいい事だから端折っていた筈の超万能細胞、それを何故ここで彼が口にしたのか? と言うか、因子とは何だ?
「どういう事?」
「実は、個人的に傘木社がこれまでにやってきた事に関していろいろと調べててね。そしたら、気になる事が分かったんだ」
「それは?」
仁はそこで直ぐに言葉を口にはせず、冷めたコーヒーを一口飲んでからゆっくりと口を開いた。
「……傘木社は、と言うか雄成さんは……2年前よりももっと昔に超万能細胞を世界中にばら撒いてたみたいなんだよね」
「何だそりゃ?」
「……ん?」
今一反応が悪い事に首を傾げた仁だが、そう言えば2年前の詳しい戦いを知る者はこの場では仁と亜矢の2人だけである事に気付いた。であれば、あの最後の戦いで雄成がやろうとしていた事も知る訳が無いので、反応が悪いのも当たり前か。
「あぁ、まぁいいか。君ら、何年も前に世界規模で新型ウィルスの感染拡大が起こったのは知ってる?」
「そりゃ知ってるさ」
「ゴメン、私知らない」
「そっか、そうだったね。ゴメン。まぁその時なんだけど、当時まだ小さな会社だった傘木社が新型のワクチンを開発してそれを世界中に配ったんだ。そのワクチンで多くの人が助かって、感染も収束に向かった」
言われて海羽も当時の事を思い出した。あの頃は外出制限も掛かるほどの大騒ぎだった。
だがその騒ぎも、傘木社製新型ワクチンが出回ってから収束する事になる。海羽自身、その時ワクチンを打っていたので感染する事は無かった。
「……え、もしかして……?」
「そう、そのワクチンに超万能細胞の因子が入ってたんだ。と言っても因子は所詮因子、体が変化する事は無いし、何も問題はなかったんだ」
「だがディーパーにとってはそうじゃなかった?」
仁は静かに頷く。
ホテルが襲撃された時、ラフィは仁の家族に強い関心を示していた。それは亜矢と子供達が純度の高い超万能細胞の遺伝子を持っていたから。
そして今までディーパーに襲われた人の中で、苗床にされたのも細胞やその因子を持っている人達だったのだ。
「あの博士も生前言ってたわね。ディーパーが狙ってるのは超万能細胞を持つ人だって。強靭な遺伝子が欲しいって言ってたけど……」
「あぁ、そう言えばあの博士、亡くなったんだっけ?」
「ラハブに苗床にされてね」
散々に引っ掻き回してくれた上に、セラの身も心も好き放題に弄んでくれた。あの博士に対して哀れに思う様な事も無いが、さりとて瑠璃も仁も彼女の死を喜ぶことはしない。ただ自業自得とだけ思っていた。
「とにかく、奴らは超万能細胞を持つ人を狙ってた。それは恐らく、強靭さもそうだけど何よりも超万能細胞が持つ高い適応能力を欲しがってたんだと思う」
「適応能力?」
超万能細胞は何よりも適応能力に優れた細胞だ。周囲からの刺激に適応し、最適な形質へと変異できる。もしその超万能細胞が、ライフコインのエネルギーに触れ続けたらどうなるだろう?
恐らく完璧ではなかったとしても、古代ムー大陸人と同じように海のエネルギーを感知し利用する事も出来るようになるだろう。どこでどう超万能細胞の情報を手に入れたのかは分からないが、情報を掴んだラハブは失われた古代ムー大陸人の代わりを超万能細胞やその因子を持つ者に求めたのだ。
「そう言えば前に海羽がシーラカンス野郎に目を付けられてた事あったけど、もしかして?」
「うん、私もワクチン打った事ある。そっか、私の中にも、因子あるんだ……」
「別に因子があるからって体が変異する訳じゃないから安心して。君はただの人間だよ、間違いない」
自分がただの人間とちょっと違うのではないかと不安を感じた海羽だが、即座に仁がフォローして安心させた。
そんなこんなで、これまで漠然とした疑問の数々が解消された。まだ完全に気を抜くには早過ぎるが、それでも肩から力を抜く程度なら許されるだろう。瑠璃は話が終わると、肩を解す様に両手を上げて背筋を思いっ切り伸ばした。
「んん~~ッ! はぁ……ともあれ疲れたわ……」
「お疲れさま。今回は本当に大変だったね。もっと早い段階で何が起こってるのか知れてれば、俺も手伝えたんだけどね」
「とか何とか云いつつ、本当はムー大陸の遺跡とかに興味あっただけなんじゃないの仁君?」
「否定はしないよ。ただそっちは俺以上に母さんの方が興味持つかもね」
「あぁ……確かに師匠なら今頃物凄い悔しそうにしてるかもな」
仁とネイトは香苗がムー大陸浮上の情報を手に入れた瞬間、大急ぎで海に出る準備に入る様子を思い浮かべた。そして大陸が再び沈没したと聞き、悔しさに地団太を踏む姿も。
もし弟子のネイトがムー大陸に上陸し冒険したと聞けば、物凄い勢いで質問すると同時にドン引きするくらい悔しがってくるに違いない。ネイトは香苗と再会した際には今回の件を話題に出さないようにする事を心に誓った。
「じゃ、そろそろお暇するよ」
「失礼しました」
「もう行っちゃうの? ちょっとはゆっくりしていけばいいのに?」
「そうもいかないよ。まだ研究の途中だし、ついこの間研究に穴を空けちゃったばかりだしね」
仁と亜矢はいそいそと席を立ち、扉へと歩いていく。2人の腕にはそれぞれ赤ん坊が抱かれているのを見て、海羽が急いで追いかけ2人を追い越し2人が外に出やすいように扉を開けてやった。
「はい、どうぞ!」
「ありがと」
「それじゃあ、また」
仁と亜矢はそう言って店を出て行った。海羽は2人を見送り、姿が見えなくなると扉を閉めた。
「行っちゃった」
「ありがとう、海羽ちゃん」
「あ~、にしても今回は本当に疲れたぜ」
「んじゃ、俺もそろそろ……」
「え~!? バーツはもうちょっと居ようよ」
仁達に続いて店を出ようとしたバーツを海羽が引き留める。腕を引かれ、上目遣いに滞在を懇願されたバーツは、言葉に詰まり逡巡した。
このままもう暫く彼女の家に滞在する、なんならお泊りすると言うのには確かに強く惹かれるものもあるが、フランシス達に断りもなく勝手に一晩外泊するなど…………
「あ、フランシス達からは今日は好きにしろって言われてたぞ」
「は? 俺何も聞いてないんだけど?」
「お前が海羽ちゃんに引っ張られてった後の事だからな」
何時の間にと言う気持ちと、自分の与り知らぬところで物事が決まっていた事への気持ち悪さで顔を顰めるバーツだったが、それはそれこれはこれ。海羽の家で一晩過ごせるのであれば、悪いと言う気はしなかった。
バーツが満更でもないと言う顔になり、海羽が嬉しそうな顔をすると瑠璃は笑みを浮かべ立ち上がった。
「よし。じゃ、行こっかネイト?」
「あぁ」
「あれ? 瑠璃姉ぇ達はどこ行くの?」
「久し振りに海都を満喫するのよ」
つまりはデートか。まぁ大きな戦いを終えた後だし、気分転換にそれも良いだろう。
「あ、今日は外に泊まってくるから、海羽ちゃん達は伸び伸びしてていいからね」
瑠璃はそう言ってそそくさとネイトと共に出て行った。残された海羽とバーツは、ほんのり顔を赤くしながらどちらからともなく顔を見合わせる。
今日はこのまま、家に二人きり。両親はまだ帰らず、瑠璃とネイトも外泊する。となれば、遠慮するべき相手も居ない訳で。
海羽はそっとバーツにすり寄り、バーツは優しく彼女の肩を抱く。そして2人は互いに見つめ合うと、周りに誰も居ないのを確認してから静かに顔を近付けていった。
「まさかあの2人が付き合うとはな」
「あら、私は前からそんな気はしてたわよ?」
店を出た2人は、肩越しに店を振り返りながら海羽とバーツが付き合っている事への感想を語り合った。
「しかし、マスターが黙ってないんじゃないか?」
「そりゃ最初はゴネるかもしれないけどね。まぁ心配する事は無いんじゃないの? バーツは確かにちょっと乱暴だけど、海羽ちゃんを大事にする気持ちは本当だろうし。マスターならきっとバーツのそう言うところにも直ぐに気付いて気に入るわよ」
それはそれとして、これからどうしようか。まだ太陽は出ている。今からホテルに行く訳にもいかないし、何をして過ごそうか。
「瑠璃は何処か行きたいところとかあるか?」
「ん~……カジノ!」
「言うと思ったよ」
「他に行けるところある?」
「確かに」
2人は顔を見合わせて笑い合うと、カジノ街へと向けて歩き出していった。
この日の瑠璃は絶好調。この後、街の数あるカジノが軒並み瑠璃1人に揃って叩きのめされ、オーナー達は涙を流して膝をつく事になるのだった。
***
海都の直ぐ下、海中施設の外壁。構造上所々入り組んでいるそこに、EXクラムの姿はあった。
『我が君……貴方の悲願は私が必ず……』
EXクラムの周囲にはラハブの肉腫を人間台の大きさにしたようなものがいくつかある。以前彼が海都に来る祭、ラハブから分け与えられて持って来たものである。どれも心臓の様に脈動し、今にも中から何かが生まれそうな様子だ。
『まずは、この街から……その為には……』
彼が視線を向けた先には、人影の様な物がある。海の底と言うくらい環境故、識別が難しいが女性の様に見える。
髪が長く、スタイルは良い。纏められていない青い髪が海中に好き放題に浮いたその姿を、もし見る者が居ればこう思っただろう。
人魚、と…………
『とんだ拾い物だったが、これはこれで悪くない。精々利用させてもらおう』
肉腫の一つに埋め込まれるようにしている女性が薄っすらと目を開く。
その顔には、美しさに水を差す様に顔に斜めに傷が入っていた。
という訳で第52話でした。
ちょっとした衝撃の事実。雄成による世界中の人間に対する人体実験は既に行われていました。と言っても、作中で仁が言っていたように特に異常が起こる様な物ではありませんでした。だから仁も詳しく調べるまで気付く事が出来ませんでした。
これまでディーパーが狙っていたのは、そのワクチン接種で因子を持ってしまった人だった訳です。
それはそれとして、前回姿を途中で消したクラムが遂に動き出します。ここから本当の意味で最後の戦いです。
執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!
次回の更新もお楽しみに!それでは。