特別編第2話をお送りします。
今回は皆さんお待ちかねの展開が来ます。
ディーパーの脅威と言う危機を乗り越えてから4年、平和を謳歌していた海都の住人を再び脅威が襲った。
突然街のあちこちが爆発したかと思うと、そこかしこからディーパーにヌーベルファッジ・パドル、そしてファッジが出現し人々を襲い始めたのだ。民衆はパニックを起こし、恐怖に右往左往して逃げ惑う。
「はっはっはっはっはっ! やれやれ、ぶっ壊せ!」
「殺し過ぎるなよ! 生き残りは実験に使うんだからな!」
無差別に人々を襲っているように見える異形達の中を、2人の人間が指示を出しながら歩いている。この2人は言うまでもなく傘木社の残党、船から乗り移ったペレズ船長の部下だ。
彼ら傘木社の残党が海都を襲う理由、それは概ね4年前に恭子が海都の庁舎を制圧した時と大体同じだ。この海都を、傘木社残党の新たな拠点にするつもりなのだ。あれから4年、規模を広げ更には自給自足能力を上げた海都は、拠点とするには丁度良かった。
しかも今は4年前と違い、仮面ライダーもS.B.C.T.も居ない。攻撃を仕掛けるには絶好のタイミングであった。
ただし、抵抗する戦力が全く無い訳ではなかった。
「何してんだ?」
「ん?」
出し抜けに銃声が響き、傘木社の2人が振り返る。そこに居たのはフランシスとエドワード。カリビアン・ダイナーを開いている、嘗ては海賊を生業としていた2人である。その手には既にベクターリーダーが握られている。
「お前ら、ベクターリーダーを……」
「そうか、お前らが情報にあった連中か。3人と言う話だったが……?」
「そんな事はどうだっていい。それより答えろ。俺達の街で何してやがる?」
「ま、別に答える必要はない。どの道お前らをただで帰す気は無いからな」
フランシスとエドワードはベクターカートリッジを起動状態にしてベクターリーダーに装填する。それを見て、傘木社残党の2人もベクターリーダーとカートリッジを取り出した。
「げっ!? お前らもそれ持ってるのかよ……」
「当たり前だ。元はと言えば俺らの物だぞ」
「お前らみたいなのが持ってる横流し品とは違うのさ」
「まぁ何が違うって訳でもないだろ。なら物を言うのは互いの実力だ。そうだろ兄貴?」
「あぁ、その通りだエド!」
睨み合う4人。周囲ではまだディーパーらが暴れているが、今この瞬間はフランシス達もそれに頓着している余裕は無かった。肌で分かる。この2人は厄介だと。
「「進生!」」
〈〈Transcription〉〉
〈COELACANTH leading〉
〈FRILL SHARK leading〉
「「進生!」」
〈〈Transcription〉〉
フランシスとエドワードの進生したインディゴサイクロンにターコイズスウィール。
対峙するのはシーラカンスの遺伝子から生まれたグレーファントムとラブカの遺伝子から生まれたブラウフェザー。
嘗てのアウトローと、現在進行形の悪党。その4人が今ぶつかり合った。
***
一方大学でもコバルトウェーブが海羽や学友達を守る為1人奮闘していた。
「オラァッ!」
彼は手にしたホルスター剣で近くに居たディーパーを切り裂き、倒れたディーパーを足で踏み付けて押さえながら別の学生に襲い掛かろうとしているヌーベルファッジ・パドルを銃撃で黙らせた。
戦闘が始まってから早数分。彼は1人でも多くの学友を守る為、海羽を絶対に守る為に戦い続けていた。その奮闘が怪物たちの注意を引いているのか、襲われる学生の数は減り逃げる事が出来るようになっていた。
だがその分敵はコバルトウェーブに集まっていく。1人で相手をするには明らかに多すぎる敵を相手に、彼は次第に劣勢に立たされていった。
「はぁ、はぁ……がっ!?」
「バーツッ!?」
「来るな海羽ッ!? 俺の事は良いから、早く逃げろッ!?」
「でも……!?」
この数、流石に心配するなと言う方が無理であった。明らかなオーバーワークだ。4年前とは違い、海都で奴らの様なものを相手にする事が出来るのがバーツ達だけと言うこの状況は絶望的と言う他ない。
海羽の心配を感じてか、バーツはディーパーらを押さえ付けつつ努めて明るい声で海羽を諭した。
「心配すんな。こんな奴ら、俺1人で片付けてやる。だから海羽は早く逃げろ。親父さん達に顔見せて安心させてやれ」
この街でバーツ達に並んで荒事に慣れているのは間違いなく海羽だ。だが彼女に戦う力は無い。彼女に出来る事は、生き残り知人を逃がしたり家族に顔を見せて安心させる事だけ。
海羽自身それは分かっていた。自分がここに居ても邪魔になるだけ。寧ろここに居るとバーツが気を遣って全力が出せない事も分かっていた。その事を口惜しく感じながらも、海羽は涙を呑んで彼の意を汲んだ。
「分かった。絶対……絶対帰ってきてねッ!」
海羽はそれだけ告げて踵を返し大学を離れた。目指すは両親が待っているBAR・FUJINO。そこに居なければカリビアン・ダイナーだ。
海羽が離れていくのを見送ったコバルトウェーブは、安堵に小さく笑みを浮かべると押さえつけているディーパーらにトドメを刺した。
トドメを刺した直後、ふと顔を上げれば離れていく海羽を追おうとするヌーベルファッジ・パドルの姿があった。コバルトウェーブはさせじとそいつの前に躍り出る。
「おっとぉ、ここから先には行かせないぜ」
コバルトウェーブが敵の注意を引き付けてくれている。海羽はその間に必死に足を動かして店へと向かっていた。
その道中、周りを見れば平和だった街は阿鼻叫喚の様相を呈していた。次々と人が異形に襲われる様は、4年前の悪夢の再来を思わせる。だが今回は4年前とは違い、瑠璃とネイトが居ない。そう思うと途端に心細くなった。
(ダメダメッ!? そんなこと考えてちゃ……)
こんな時、瑠璃が助けに来てくれたら~……なんて都合の良い事を考えてしまった頭を振り、海羽は店に向けて懸命に走る。
だがその彼女の行く手を遮る様に、眼前のマンホールからディーパーが飛び出してきた。
「キャッ!?」
突然の事に驚き急ブレーキをかけ仰け反り距離を取ろうとする。が、下手な動きをしてバランスを崩したのかその場に尻餅をついてしまった。
「あうっ!? いたた……あッ!?」
地面と盛大にキスをし、痛みを訴える尻を擦る海羽。だが直ぐにそれどころではないと立ち上がろうとして、既に周囲をディーパーやヌーベルファッジ・パドルに囲まれていることに気付いた。視線をぐるりと見渡せば、もう逃げる隙間もない程囲まれている。
「あ……あぁ……!?」
逃げ場がない。そして前述した通り、瑠璃も居ない。バーツは大学で戦っていて、こちらには来れない。
詰み……その言葉が海羽の脳裏に浮かんだ。立ち上がる気力は無く、絶望に目尻に涙が浮かぶ。
「助けて……バーツ……お父さん、お母さん……」
思わずこの場に居ない者達に助けを求める。怪物たちはそんな海羽を嘲笑う様ににじり寄った。怪物が近付く際に踏んだ砂利が音を立てる。
「ッ、瑠璃姉ぇぇぇぇぇぇっ!?」
この場に居ない、最も信頼する女性の名を叫ぶ。それを合図にしたように怪物たちが一斉に海羽に飛び掛かり――――
何者かがその怪物たちを殴り飛ばし蹴り飛ばした。
「…………え?」
海を割る様に海羽の目の前で怪物の壁が割れた。その先には、4年ぶりに見る2人の姿がある。それを見て海羽は安堵に笑みと涙を浮かべた。
「あ、あぁぁ……! 瑠璃姉ぇッ!!」
そこに居たのは大梅 瑠璃とネイサン・ジョーンズ。嘗てこの街を守る為に戦ってきた仮面ライダーで、海羽にとって血の繫がりは無くとも掛け替えのない家族であった。
4年ぶりに再会した瑠璃は、4年前と変わらぬ笑顔を海羽に向けた。
「ただいま、海羽ちゃん!」
「元気してたか?」
「うん……うん!」
4年ぶりの再会を喜ぶ海羽と瑠璃達。一方ディーパーやヌーベルファッジ・パドルは突然乱入してきた瑠璃とネイトに警戒心を露にした。本能で分かるのか、無暗に襲い掛かるようなことはしなかった。
その間に海羽は瑠璃に抱き着き安堵の涙を流す。
「瑠璃姉ぇ、瑠璃姉ぇ……!」
「あ~、よしよし。久し振りね、海羽ちゃん。大きくなって」
「それより、何だこの有様? ディーパーだけじゃなくあの怪物まで居るじゃねえか」
海羽を安心させるように瑠璃が彼女を抱きしめ撫でている隣で、ネイトが周囲の怪物たちを警戒しながらドライバーを取り出す。すると海羽が今の状況を思い出し、現時点の状況を2人に伝えた。
「そうだッ! 2人とも、今バーツが1人で大学に……!」
「バーツが?」
「ならそっちは俺が行く。瑠璃はここを任せるぜ」
「オーケー!」
簡単に方針を纏めると、瑠璃は海羽を放しネイトと並び立った。その手にはリールドライバーが握られており、腰に当てるとベルトが巻かれる。
海羽はそれを一歩引いて見ていた。4年前の、嘗ての日々の様に…………
「
〈Bet your life〉
〈Catch your fate〉
瑠璃はドライバーにブルーライフコインを、ネイトはドライバーにドロップチップを投入する。そしてレバーを下ろせば、瑠璃の前にはルーレット、ネイトの前にはスロットマシンが現れ回転を始めた。
回転するルーレットを瑠璃は指差し、ボールがどのポケットに入るのかを言い当てた。
「ストレート0……変身!」
「変身!」
〈〈Fever!〉〉
瑠璃がポケットを言い当てると同時に、ネイトは7を3つ揃える。見事大当たりをした2人は、ファンファーレに祝福されながら景品の力を得た。
瑠璃は仮面ライダーテテュス、ネイトは仮面ライダーオケアノスに変身した。今ここに、海都の守護者たる仮面の戦士が再び降り立ったのだ。
「チップ1枚で、大逆転よ!」
「ほんじゃ、俺はバーツの方に行ってくる」
「じゃ、露払いはやってあげるわ!」
2人が変身すると流石に大人しくしてはいられないのか、ディーパー達が襲い掛かろうとしてきた。テテュスはそれよりも先にチップを5枚ベルトに投入した。
〈Bet. Good luck.〉
「赤の18!」
〈BINGO! Skill activation! WAVE SMASH.〉
「ハァァッ!」
テテュスのウェーブスマッシュが、前方の敵を一掃する。水の波動が広がり、直撃した敵は爆発して道が開けた。
「ネイト、今よ!」
「あぁ!」
〈BINGO! Vehicle summon! TORNADORIDE.〉
今が好機と、オケアノスはトルネードライドを取り出し突き進む。陸上でありながらサーフィンの様に進むオケアノスはバランスを取る様に蛇行して進み、その際に撒き散らされる飛沫が接近しようとしたディーパーらを寄せ付けない。そして速度が出れば追いつける奴は居らず、オケアノスが去っていくのを見送るしかなかった。
1人逃がしてしまったが、獲物はまだここに居る。残されたディーパーやヌーベルファッジ・パドルは標的をテテュスと海羽に定め牙を剥き出しにして襲い掛かろうとした。
「あらあら、まだまだ元気ねお客さん?」
「そんな事言ってる場合じゃないよ!? 急がないとお父さんとお母さんが!?」
「はいはい。大丈夫よ、安心して」
〈Bet. Goodluck.〉
まだ街から怪物が姿を消した訳ではない。このままでは鉄平達が襲われないとも限らないと、焦りを露にする海羽をテテュスは宥めつつイエローライフコインを投入する。
「黒の8、ネクストゲーム」
〈Raise up〉
アローレイズにレイズアップしたテテュスは、頭上に向けて弓を引くと矢を放つ。放たれた矢は上空で分裂し地上に矢の雨となって降り注ぐ。その矢は一本たりとも外れる事無く全てがディーパーやヌーベルファッジ・パドルに命中し、脳天から刺し貫き絶命させた。
「……この街を荒す不届き者は、私が許さないから!」
***
その頃大学では、コバルトウェーブが1人海羽と学友達からディーパー達の目を逸らす為派手に奮闘していた。
「オラッ! この、だぁぁっ!」
絶え間なく襲ってくるディーパーをホルスター剣で切り裂き、不意を打って背後から襲い掛かって来たヌーベルファッジ・パドルをベクターリーダーで撃ち抜く。そしてある程度数が減り攻勢が弱まったのを見ると、銃剣モードにしてジェネリック・ブレイカーで一掃する。このやり取りを何度も繰り返した。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
目に見える範囲で敵の姿がなくなった。これで終わりかと、コバルトウェーブは一息つこうとした。
だが次の瞬間には増援がやって来て、目の前を埋め尽くす勢いで姿を現す。その光景にコバルトウェーブは苛立ち舌打ちをせずにはいられなかった。
「チッ!? あぁ、くそ……いい加減にしろよお前ら……!」
苛立ちながらも、ここで倒れる訳にはいかないとコバルトウェーブは武器を構える。だがここまでの戦いでダメージと疲労が溜まっているのか、足に上手く力が入らず真っ直ぐ立つ事が出来ない。
己に限界が近い事を感じ、苦虫を噛み潰したような顔になる。が、敵にとっては絶好のチャンス。今が攻め時とディーパーとヌーベルファッジ・パドルが襲い掛かった。
「チクショウ……!?」
今の自分にこれを捌き切るだけの体力は無い。ここが年貢の納め時かと僅かに諦めかけた。
その時、鞭が振るわれコバルトウェーブに襲い掛かろうとした怪物達が叩き落された。
「……え?」
突然の出来事に目を瞬かさせるコバルトウェーブ。すると次は何処からか飛んできた光球が彼に当たり、光に包まれたかと思うとここまでの戦いで蓄積されたダメージと疲労が瞬く間に抜けていった。
こんな事が出来る者を、彼は1人しか知らない。
「ネイトッ!」
「よぉ、待たせたな?」
ディーパー達の間を突き抜けるようにしてオケアノスがコバルトウェーブと合流する。オケアノスはコバルトウェーブの隣に並び立つと、手にした鞭でまだ体勢を崩していない怪物をぶっ飛ばした。
「おら、よ!」
オケアノスが振り回した鞭に、まだ立っているディーパーやヌーベルファッジ・パドルがひっくり返される。一時的にとは言え状況が落ち着いた事に、コバルトウェーブは大きく息を吐いた。
「はぁぁぁ~……」
「1人で頑張ったじゃないか。増援なんて期待できなかっただろうに」
「はっ、関係ねえ。海羽とこの街を守る為だ」
「……へっ」
飽く迄強がるコバルトウェーブだったが、彼の覚悟が本物である事はよく分かった。彼は本気で命を賭してこの街を、この街に暮らす海羽を守ろうとしている。仮面に隠れて見えないが、感じる眼光はオケアノスのそれと同じだった。愛する者の為に命を賭ける事が出来る者の目だ。
彼になら、”これ”を渡せる。
「おいバーツ、土産だ」
「あ? っと!」
突然オケアノスがコバルトウェーブに何かを放り投げる。突然投げられたそれを、コバルトウェーブは咄嗟にキャッチした。
「おま、いきなり投げるな……て!?」
投げ渡されたのは、今オケアノスが装着しているのと同じスピンドライバーであった。寸分違わぬデザインのそれを受け取り、コバルトウェーブは彼と手の中のドライバーを交互に見比べた。
「え!? は!? 何で2個?」
「瑠璃と冒険してる時に見つけたんだよ」
4年前、ムー大陸で彼らはオケアノスがテテュスを援護する為の兵士である事を知った。そして思った。もしかするとこの世界の何処かに、ネイトが持っているのと同様ムー大陸の沈没から逃れたオケアノスの遺物であるスピンドライバーが残っているのではないか?
2人は世界を旅する中で、それっぽいところを探し……遂にこれを見つけたのだ。
「見つけたって……」
「ついでだ。コイツも使いな」
2個目のスピンドライバーが遺されていた場所には、”これ”もあった。ネイトはついでに回収しておいたそれを、必要になるだろうからとバーツに弾いて渡した。
「だから投げんなッ!? って、コイツは……?」
ネイトがバーツに渡したのは灰色のライフコインだった。裏の絵柄は海賊がよく使うカトラスと言う曲刀だ。
「そいつ使って変身しな。チップが勝手に入る」
「いきなり変身しろったって……」
「お前なら出来るだろ」
実際、ネイトの見立ては間違いではなかった。バーツの戦闘力は一級品だ、間違いない。戦闘訓練など微塵も積んでいないだろうから、恐らくは天性の才能によるものだろう。
そんな彼であれば、スピンドライバーも扱いこなせるに違いない。
ネイトから期待と信頼を向けられ、バーツは大きく溜め息を吐くとコバルトウェーブへの変身を解除。元の姿に戻ると腰にスピンドライバーを巻き、グレーライフコインを投入してレバーを下ろした。
〈Catch your fate〉
バーツの眼前に出現するスロットマシン。高速回転するドラムを前に、彼は狼狽える事無く静かに回転する絵柄を見つめていた。目にも留まらぬ速度で回転しているが、彼の目には余裕で絵柄が見えていた。
「最初に変身する時は7の絵柄を揃えろ」
「はいよっと!」
言われた通り、7の絵柄を苦も無く揃えた。ネイトの予想通り、バーツならスピンドライバーを使いこなせる。
絵柄が揃うと、ドライバーからファンファーレが鳴り響いた。
〈Fever!〉
ファンファーレと共にスロットマシンが分解し、四方に散ったパーツの中で3つのドラムだけはバーツの周りを飛び上と左右から挟むように迫り、バーツに触れると彼の姿をもう1人のオケアノスに変身させた。
外見はネイトの変身するオケアノスと大差ない。だが仮面は海賊帽と合体したような見た目になっており、背中にはマントのように引っ掛けたコートが靡いている。そして右手には幅広のカトラスが握られている。
これがバーツの変身するオケアノス。その名もオケアノス・ブレイドレイズだった。
ブレイドレイズは変身が完了すると、自分の体と手の中の剣をまじまじと眺めた。
「へ~、ほ~……なるほど、こりゃいい。良い着心地じゃねえか」
「当たり前だ。さ、コイツ等を蹴散らすぞ!」
「あぁ!」
新たな力を手に、ブレイドレイズがオケアノスと共に湧き出るディーパーやヌーベルファッジ・パドルに挑みかかる。
2人が向かってくることにディーパー達も牙を剥き出しにして攻撃を再開するが、そいつらは次々とブレイドレイズの振るうカトラスにより膾切りにされていった。
「オラオラァッ! 陸に上がった魚風情が、この俺に楯突いてタダで済むと思うんじゃねぇ!!」
本来のカトラスは片手剣サイズの武器だが、ブレイドレイズのカトラスは二回り以上の大きさがある。本来であれば両手で持ってやっと使い物になるだろうサイズだが、彼はそんなの知った事かと言わんばかりに縦横無尽に振り回す。
彼が剣を一振りするごとに敵が次々と切り倒されていく。中には彼の攻撃を掻い潜り組み付き押し倒そうとする奴も居たが、彼は組み付いて来た奴を剣の柄頭で殴り怯んだ瞬間に引き剥がし至近距離で斬撃を喰らわせ下してしまった。
さらに彼が持つ武器はこれだけではない。コバルトウェーブの時に使用していたベクターリーダーもそのまま使えるので、右手で剣を振るう傍ら左手に持った銃で離れた所に居る奴も逃さず仕留めていた。
その暴れっぷりに、オケアノスは鞭を振るいながら感心して口笛を吹いた。
「ヒュ~! やるねアイツ。思ってた以上だ」
言いながらオケアノスも迫ろうとしてくる怪物を鞭で叩き落す。彼が鞭を振るうと、蛇のように動いた鞭がディーパーの1体の首に巻き付いた。
彼はディーパーを巻き付けた鞭をハンマーの様に振り回し、ディーパー自体を武器の様にして他のディーパーを攻撃。振り回されたディーパーは仲間のディーパーやヌーベルファッジ・パドルを巻き込んで爆発した。
2人の活躍により、ディーパーとヌーベルファッジ・パドルはあっという間にその数を減らしていった。正に飛ぶ鳥を落とす勢いで2人は次々と敵を倒していく。
特にブレイドレイズの活躍が凄まじかった。まるで水を得た魚の様に、戦場を縦横無尽に動き回り反撃の隙を与えない。
〈BINGO! Ability activation! Deep diving.〉
「よっと!」
しかも彼は能力に慣れるのが早い。早くもチップを1枚ベットし、ディープダイビングで敵の目を欺き翻弄している。最早ディーパー達は、ブレイドレイズが何処から出てくるのかも分からず右往左往している間に1体また1体と数を減らしている状態だった。
その様子を傍から眺めつつ自分もヌーベルファッジ・パドルを倒しているオケアノスは、何だかモンスターパニック物の映画を見ている気分になった。
「……お前が敵じゃなくて良かったよ、本当に」
関心半分、呆れ半分にそう呟きながらオケアノスはチップケースをドライバーに装着した。
〈All in!〉
「先輩として、負けてられねぇな!」
〈Fever!〉
「オォォォォォッ!!」
ビッグウィンフィニッシュを放ち飛び蹴りで周囲の敵をオケアノスが一掃する。するとブレイドレイズがそれを見て、同じようにチップケースをドライバーに装着した。
〈All in!〉
「へへっ、一度やってみたかったんだよな!」
〈Fever!〉
苦も無く絵柄を揃え、彼もビッグウィンフィニッシュを発動。オケアノスと同様、飛び蹴りで敵を蹴散らしていく。
「オラァァァァァッ!!」
2人の活躍により大学に出現した敵は全て倒された。もう増援も来ない。起こった混乱に比べ格段に少ない被害で済んだ事に、大学に通うブレイドレイズも安堵の溜め息を吐いた。
「ふぅ~……。おっと、のんびりしてる場合じゃねえ。海羽!」
「あ、おい待てバーツ!?」
オケアノスの制止も聞かずブレイドレイズが駆けていく。引き留めても無駄だと悟ったオケアノスは、溜め息と共に自分もテテュスと合流すべく走り出した。
***
オケアノスがブレイドレイズと共に大学に出現したディーパーとヌーベルファッジ・パドルを倒した頃、インディゴサイクロンとターコイズスウィールは傘木社残党のベクターリーダーユーザーを相手に苦戦を強いられていた。
「ハァッ!」
「ぐぉっ?!」
「フンッ!」
「がはっ!?」
グレーファントムの剣技がインディゴサイクロンのガントレットを切り裂き、ブラウフェザーの銃撃がターコイズスウィールの装甲を穿った。
この4人、スペック上はどれも大差無い。インディゴサイクロンとターコイズスウィールが使用しているのは古生物の遺伝子だが、対するグレーファントムとブラウフェザーの使用しているベクターカートリッジの遺伝子は生きた化石と言われる2種の生物の遺伝子だ。秘められた能力は既に絶滅した2種の古生物に劣らない。
この2人がインディゴサイクロン達に優位に立っているのは、純粋に戦闘者として2人を上回っているからに他ならなかった。
「くそぉ、ここは俺らがこいつらをギャフンと言わせてカッコ良く活躍する場面だろうがよ」
「言ってる場合か。コイツ等、口先だけじゃないぞ」
最初の内はまだ対抗出来ていた。だが時間が経つにつれて次第に圧倒されていき、今はこうして劣勢に立たされていた。
「口ほどにもない」
「これで決めるか」
〈〈Full blust〉〉
「「ッ!?」」
2人が弱ったと見て傘木社残党のリーダーユーザー2人が同時にジェネリック・ブレイカーを発動。グレーファントムは斬撃、ブラウフェザーは銃撃で放たれた一撃が2人を吹き飛ばした。
「「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」」
強烈な攻撃を喰らった2人は吹き飛ばされ、地面に叩き付けられ変身が解除された。傷だらけで横たわる2人に、グレーファントム達が悠々と近付いていく。まだフランシス達が生きているから、トドメを刺すつもりなのだろう。2人は今のダメージで逃げるだけの体力も無い。
「くそぉ……」
「ここまでかよ、チクショウ……」
今2人に出来る事は、敵に対する恨み言を呟く事だけであった。
だが天は彼ら2人を見捨てなかった。グレーファントム達が近付き銃口を2人に向けたその時、2人の足元から人魚……否、テテュスが飛び出しグレーファントム達を蹴散らした。
「ハッ!」
「ぐあっ!?」
「なにッ!?」
「え?」
「仮面ライダー、テテュス? って事は……!」
突然の奇襲に不意を突かれたグレーファントム達に対し、フランシス達は状況の移り変わりに目を丸くした。
だが誰が助けに来てくれたのかに気付くと、2人の顔に喜色が浮かんだ。何故なら来てくれたのは、2人が知る中で誰よりも頼もしい人物だったのだから。
「ふぅ……あ! ただいま、2人とも!」
「最高のタイミングで来てくれたな、姉ちゃんよ?」
「助かったぜ」
「フランシスさん! エドワードさん!」
テテュスとの再会に2人が安堵の溜め息を吐くと、彼女についてやって来た海羽が2人を助け起こした。
一方、テテュスを挟んだ向こう側ではグレーファントムとブラウフェザーが立ち上がっていた。
「くそ、仮面ライダーテテュスだと!?」
「海都を去ったと聞いていたのに……」
「お生憎様。海都は私の故郷よ。アンタ達みたいな連中に好き勝手させないわ」
実際にはある理由により帰って来ただけなのだが、そんな事は関係ない。重要なのは、海都の危機に再びテテュスがこの地に立った事だ。
だがテテュスがやって来たと言うのに、グレーファントム達は直ぐに余裕を取り戻した。
「だが、お前達だけでこの街を守れるのか?」
「今この街には大量のディーパーとヌーベルファッジ・パドルを放っている。今こうしている間にも、街の住人は数を減らしているだろう」
その言葉にテテュスは仮面の奥で顔を顰めた。そうだ、何時までもこんな所で油を売っている訳にはいかない。
「だったら! アンタ達をさっさと倒して皆も助けるわ!」
1人でも多く街の住人を、故郷の人々を助ける為にテテュスは全力で戦いに臨もうとした。
しかし、彼女が行動するよりも先に悪に天誅を下す者が居た。
突如吹きすさぶ突風。舞い上がる砂埃から目を守る為、海羽達が顔を手で覆う。仮面があるので問題無い筈のテテュスも、その風の勢いと砂埃に思わず目を伏せた。
「ぐわっ!?」
「なぁっ?!」
「?」
視界が塞がれている間に、何が起こったのかグレーファントム達の悲鳴が聞こえてきた。何が起こったのか分からず困惑するテテュスだったが、迂闊に動けば海羽達が危ないとその場を動けずにいた。
すると吹き始めた時と同じく唐突に風が止み、砂埃も落ち着いた。
「な、何? って……え?」
砂埃が晴れた時、目の前に広がっていたのは思いもよらぬ光景だった。
倒れているグレーファントム達。そしてその前に、濃い緑色の衣装を身に纏った人物がいた。その姿は後ろから見ただけで、ある単語が脳裏に浮かぶ。
「忍者?」
思わずテテュスが呟くと、緑の服装の人物はゆっくり振り返った。
振り返った人物の姿は正しく忍者のそれ。頭のてっぺんから足のつま先まで緑の衣装で覆われ、顔には赤色の複眼に額当てから2本の角が生えている。胴体、両肩、両腕、両足には黒い鎧を身に付けたその忍者は、テテュス達の事を見て名乗りを上げた。
「俺はコガラシ。影に生き、影から世を守る忍びさ」
という訳で特別編第2話でした。
瑠璃とネイト、海都に帰還です。帰って来たタイミングがこのくそ忙しい時なのは、運が良いのか悪いのかと言った感じですが。
旅の途中で2人は新たにスピンドライバーを見つけました。それは悪党に利用される事を防ぐ為でもあり、同時に過去のムー大陸人の足跡を辿る為でもありました。
そんなスピンドライバーでバーツが新たなオケアノスに変身。ネイトの変身するオケアノスが潜水服と冒険家をモチーフにしてるのに対して、こちらは露骨に海賊をモチーフにしてみました。元々の実力がずば抜けているので、仮面ライダーになってしまえばその強さは半端じゃないでしょう。平成ライダーで例えるなら、ライドプレイヤーニコみたいな立ち位置でしょうか。
そして遂に、今回顔見せする事が出来ました。次回作の仮面ライダー、その名もコガラシ!今回は顔見せだけという事で、次回がっつり活躍していただきます。
執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!
次回の更新もお楽しみに!それでは。