仮面ライダーテテュス   作:黒井福

58 / 59
どうも、黒井です。

特別編第3話、今回はお待ちかねの次回作の仮面ライダーコガラシの活躍となります。

あ、それとあまり印象には残ってないかもしれませんが、前回のコガラシの描写で複眼が緑だったのを赤に変更しました。


特別編・第3話:マンシュリアン、広がるのは青空で

 突如出現した、コガラシと名乗る忍者。

 

 その姿を見て真っ先に反応を示したのは、テテュスの後ろでフランシス達の手助けをしている海羽だった。

 

「あっ! あの時の忍者さん!」

「えっ!? それってもしかして4年前に合宿で本州に行った時に見たって言う?」

 

 そう言えばそんな事を海羽が言っていた事を思い出した。瑠璃も街を去った後は暫しネイトと共に探し回ったが、結局瑠璃達は忍者らしき者を見つけることは叶わず最終的に海羽の見間違いか何かだろうと言う結論に達した。

 だが信じていなかった忍者が今目の前に居る。その事にテテュスは眼前に居るコガラシをまじまじと眺めた。

 

「あ~、4年前は俺まだ見習いだったから、それは別の忍びだったかもね」

 

 コガラシは4年前に海羽が見たのは自分ではないと言う。その話から察するに、彼と似た格好をした忍者は複数人、最低でも1人は居るという事になる。

 だがそれ以上にテテュスには気になる事があった。それは忍者の容姿だ。

 

 コガラシの容姿は忍者然りとしているが、それ以上にテテュスには自分と同じ仮面ライダーに見えて仕方なかった。

 それ故テテュスは、思わず口走ってしまったのだ。

 

「忍者って言うか……仮面、ライダー?」

 

 複眼や全体的な印象が似ていた為思わず口を突いて出てしまった言葉だが、その言葉を聞いたコガラシと名乗る忍者は耳聡く反応した。

 

「お、見える? 俺、仮面ライダーに見えちゃう?」

「え? う、うん……」

「いや~、そっかそっか。仮面ライダーに見えちゃうか~。なら、俺もこれからは仮面ライダーコガラシって名乗ろうかな?」

 

 軽いノリで機嫌を良くするコガラシに、テテュスも思わず仮面の奥で笑みを浮かべた。何と言うか、彼は若い。4年前の海羽やバーツの様な少年少女が持つ若々しさを感じる。恐らくだが、変身前の彼は高校生くらいの少年なのではないかとテテュスは予想した。

 

 突然のコガラシの乱入で場の空気が緩んでいたが、忘れてはならないのは今この街は戦場になっているという事。奇襲により体勢を崩していたグレーファントム達だったが、流石にこれだけ長い時間話されていれば余裕で体勢を立て直せる。

 

「くそっ!? ふざけやがって……!」

 

 立ち上がったグレーファントムがコガラシに向けベクターリーダーを向け引き金を引いた。放たれた銃弾は、しかしコガラシの体を穿つ事は無く彼が素早く腰の後ろから抜いた忍者刀で弾き落とした。ろくに見もせず刃で銃弾を弾く腕だけで、彼の技量が伺い知れた。

 

「よっと! へへっ……お前の事は知ってるぜ、仮面ライダーテテュス。ここや他の所は俺に任せて、お前はこいつらのボスっぽいのが居そうな港のタンカーに行きな」

「タンカーね、分かった!……って、こいつら以外にも街には沢山――」

 

 今この街はあちこちでディーパーやヌーベルファッジ・パドルが暴れ回っている。それを1人で何とかするなど出来る訳がない。いや、仮にテテュスと共に挑んでもどれだけの人が助けられるか。

 

「心配すんなって。見ての通り、俺忍者だからさ……」

 

 コガラシは忍者刀を鞘に納めると、右腰から筆の様な物を取り出した。

 そして…………

 

「執筆忍法、分身の術ッ!!」

【忍法、分身の術ッ! 達筆ッ!】

 

 コガラシが筆を振るうと、空中に達筆な文字で「分身」と言う文字が書かれる。空中に文字を書くと言うだけでも驚くべき光景だが、さらに驚くべきはその数。数えるのも億劫になるほどの数の「分身」と言う文字が一瞬で書かれたかと思うと、それらが街のあちこちへ向けて飛んでいく。そしてその途中でそれぞれの文字がコガラシに変化し、あっと言う間にコガラシの人数が増え大勢のコガラシが街中に散ったディーパー達と戦闘を開始した。

 正に忍者、漫画でしか見る事が無いような光景にテテュス達は圧倒された。

 

「うっそぉ……」

「うぉぉぉぉっ! エド、忍者だッ! マジで忍者が居るぞッ!」

「マジかよ……」

「すごっ……」

 

 視界のあちこちでディーパーと戦い次々と倒していく無数のコガラシに圧倒されていると、恐らく本体だろうコガラシがテテュスの肩をポンと叩いた。

 

「ほら、露払いは俺がやっとくからさ。メインはアンタが決めてきな」

「うん! ありがとう!」

 

 この場は任せて大丈夫だと、テテュスは港へ向けて駆けていった。それを見送り、コガラシは改めてグレーファントム達と対峙した。

 

 グレーファントム達も予想外の増援に圧倒され、テテュスを止めると言う発想も頭から抜け落ちた様にその場で周囲を見渡すだけであった。

 

「こ、こんな事が……!?」

「クソッ! おい、呆けてるんじゃねぇッ! 兎に角あの忍者野郎をさっさと潰すぞッ!」

「あ、あぁっ!」

「お、まだやる気? いいよ」

 

 コガラシは腰から忍者刀を抜き、右手に刀を持ち左手で印を結びながら2人の前に立った。

 

「来いよ。一筆書きより簡単に終わらせてやる」

「こいつ……!」

「甘く見るなッ!」

 

 明らかに下に見たようなコガラシの物言いに、激昂したグレーファントム達が一斉に飛び掛かる。多少のダメージはあるだろうに、それを感じさせない素早い動きで接近するその動きは海羽達には捉える事が出来ない。

 だがコガラシはその動きを捉える事が出来た。彼は素早く接近してきたグレーファントム達を、手にした忍者刀ですれ違いざまに切り裂いた。

 

「がっ?!」

「速いッ!?」

 

 自分達の動き以上の素早い斬撃に目を剥くグレーファントム達に、コガラシは手裏剣を投擲し2人をその場に足止めした。2人の動きが完全に止まったのを見ると、刀を左手に持ち替え筆を取り出し文字を書いた。

 

「執筆忍法、火遁の術ッ!」

【忍法、火遁の術ッ! 達筆ッ!】

 

 コガラシが空中に火遁と言う文字を書くと、その文字が燃え上がり炎となってグレーファントムに襲い掛かる。グレーファントムはあっという間に全身を炎に巻かれ、悲鳴を上げて転げ回った。

 

「うわ、うわぁぁぁぁっ!?」

「くそッ!」

〈Full blust〉

 

 相方が炎に巻かれる様子に、ブラウフェザーは半狂乱になりながらジェネリック・ブレイカーでコガラシを撃とうとした。だがコガラシはブラウンフェザーの動きを見ると、一足先に筆で忍法を書いた。

 

「執筆忍法、空蝉の術ッ!」

【忍法、空蝉の術ッ! 達筆ッ!】

「死ねぇッ!」

 

 コガラシの忍法が発動すると同時、強化された銃弾がコガラシの体を貫いた。その光景に海羽達は思わず息を呑んだが、次の瞬間コガラシの体が木の葉となって散った。あの一瞬で回避したのだ。仕損じたことにブラウフェザーは信じられないと呆然となる。

 

「な、馬鹿な……」

「ハッ!」

「がぁっ?!」

 

 呆然としているブラウフェザーに、現実を教えるようにコガラシが蹴りをお見舞いする。蹴り飛ばされたブラウフェザーは漸く火が消えたグレーファントムにぶつかり、2人はもんどりうって倒れた。

 

「ぐぅぅぅっ……」

「こんな……こんな……」

 

 もう2人からは戦意が感じられない。コガラシ1人に状況をひっくり返され、心を折られてしまったのだ。

 だが彼らは悪意を持ってこの街に来た。そんな悪党にコガラシは容赦しない。

 

「書かせてもらうぜ、俺の勝利を。執筆忍法、疾風激烈脚ッ!!」

【必殺忍法ッ! 疾風激烈脚ッ! 達筆ッ!】

 

 空中に書かれた文字が、コガラシの体に吸い込まれるように吸収される。すると彼の右足に風が纏わりつき、あっと言う間に小さな竜巻に包まれたようになる。

 その状態で彼は駆け出すと、前転をするように飛びそのまま蹴りを放った。

 

「たぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 グレーファントム達に放たれたコガラシの疾風激烈脚。まるでコガラシ自身が小さな竜巻になったかのような一撃に、消耗していたグレーファントムもブラウフェザーも耐える事など出来る筈もなく、一撃を喰らった2人は爆散し元の姿に戻った。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁっ?!」

「うわぁぁぁぁぁぁっ?!」

 

 爆炎から吐き出されるように飛び出してきた、元の姿に戻った2人は地面に叩き付けられそのまま意識を失った。

 2人を倒したのを確認したコガラシは小さく溜め息を一つ吐き、そして周囲を見渡した。見ればコガラシの分身達により、ディーパー達も軒並み倒されていた。

 

「よし……取り合えずこんなとこかな?」

「あのッ!」

「ん?」

 

 一仕事終えたと言わんばかりのコガラシに、海羽が走って駆け寄った。近付いてくる海羽にコガラシが首を傾げていると、海羽は勢い良く頭を下げた。

 

「ありがとう! この街を……瑠璃姉ぇの帰る場所を守ってくれて」

「あぁ、いいのいいの。これも俺の仕事って奴だから。それじゃ!」

【忍法、隠れ身の術ッ! 達筆ッ!】

「ぁ……」

 

 コガラシの姿が霞の様に消えていった。それを合図に、周囲の分身のコガラシ達も姿を消していく。正に忍者の所業に、フランシスは殊更に興奮した様子だった。それをエドワードが傷に響くと宥めている。

 

「ありがとう……仮面ライダーコガラシ」

 

 海羽は聞く者の居ない感謝の言葉を小さくもう一度呟くと、怪我をしたフランシス達を引き摺って店へと向かう。

 店では鉄平達が周囲の住人達と共にバリケードを張って立て籠もっており、互いに無事を確認し安堵するのであった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 コガラシの活躍により、街のあちこちに散らばっていたディーパーやヌーベルファッジ・パドルは軒並み倒された。その事に船で指揮を執っていたペレズ船長は愕然としていた。

 

「な、何だ奴はッ!?」

 

 思わずそう叫ぶが、それで状況が何か変わる訳ではない。街に放った手勢は全滅し、テテュスが船に向かってきている。このままでは街を手に入れるどころか、逆に自分達が捕縛されてしまう。

 

 この状況、覆せるとしたらアレしかない。

 

「ディープラビニの方はどうなっているッ!?」

「再生、完了しています。直ぐにでも出せます」

「では出せッ! それとディーパーらの追加増産を直ぐに進めるんだッ!」

 

 折角逃げ延びたのにこんな所で捕まる訳にはいかない。ペレズ船長はしぶとく足掻くつもりで、まずはテテュスをどうにかすべく指示を出した。

 

 そんなやり取りが行われているとは知らないテテュスは、ブルーホライズンに乗って港へと向かった。海都に帰ってきた際、気になるタンカーがあるのを彼女も見ていた。最初見た時はただ変わった船だとしか思っていなかったが、今見ればなるほど確かに怪しい。

 

 あっという間に港に到着し、テテュスはそのままバイクに乗って船に飛び乗ろうとした。だが彼女がバイクに乗ったままジャンプしようとした瞬間、バイクが下から何かに突き上げられバランスを崩し地面に倒れてしまった。

 

「うわぁぁっ!? くぅっ!?」

 

 突然の事にバイクから投げ出されたテテュスだが、何とか受け身を取り事なきを得た。その代わり下から突き上げを喰らったバイクはスクラップと化し、破損が原因で変化が解け元の普通のバイクに戻った。

 

「うわちゃぁ、あれ借り物なのに……」

 

 一刻も早く港に向かう為、テテュスは手近にあった乗り捨てられたバイクをブルーホライズンに変化させてここに急行していた。本当は事が終わったら返すつもりだったのだが、これで返す当てが無くなってしまった。

 まぁこの状況、バイクが1台壊れていてもバレる事は無いだろう。そもそもバイクの持ち主が誰なのかも知らないし、これは緊急事態故仕方の無い事だ。テテュスは自分の中でそう納得しつつ、同時に顔も知らぬバイクの持ち主に心の中で謝った。

 

 それに今はそれどころではない。今、テテュスは下から攻撃を受けた。だが地面には何かが飛び出した痕跡は無い。それはつまり、地面を崩すことなく地面の下を動き回れる何かが居るという事。

 

 そんな事が出来るのは、テテュス達ムー大陸産の仮面ライダー以外だと数が限られる。

 

 俄然テテュスは強く警戒し、その場を迂闊に動かないようにして周囲の動きを探りつつゆっくりとホワイトライフコインを取り出しスピアーレイズにレイズアップした。この状況、短時間であろうと未来を読めるスピアーレイズの方が良い。

 

「黒の20」

〈Raise up〉

 

 不気味な沈黙の中、テテュスはスピアーレイズにレイズアップすると早速未来を読んだ。

 その結果彼女が見たのは、真下から何者かが自分を突き上げる未来だった。

 

「ッ!」

 

 テテュスは咄嗟にその場を飛び退くと、足元から鋭い銛が飛び出し一瞬前まで彼女が居た場所を刺し貫く光景を目の当たりにした。もしあと少し判断が遅れていれば、彼女は丸焼きにされる豚や魚の様に串刺しにされていたところだ。

 

 彼女が危機一髪と言うところで危険を回避した事に冷や汗をかいていると、下手人が攻撃を外した事で姿を現した。水から上がる様に、地面の下から水を滴らせながら出てくる。

 その姿を見てテテュスは息を呑み、一瞬思考が停止した。

 

「あ、え……?」

 

 そこに居たのはディープラビニ。4年前、テテュスが自らの手で命を絶った、自身の姉妹とも言える存在が変異した姿だった。ただあの時と違い、顔には傷が無い。

 

 何故彼女がここに居るのかと言う疑問が頭に浮かび、それ以外の事が考えられなくなる。それは大きな隙となり、ディープラビニからの攻撃を許す事となった。

 振るわれた銛が、テテュスの右肩から左腰に掛けて斜めに切り裂いた。

 

「あぐぁっ?! うぅ……!?」

 

 あまりにも予想外だった事態に、呆けて痛い一撃を貰ってしまった。だがその一撃が気付けとなり、彼女に気を取り直させるきっかけとなってくれた。

 テテュスは即座に一旦距離を取り、状況を整理しつつゴールドライフコインを取り出した。

 

(どういう事? 何であの子がここに居るの? 確かにあの時……)

 

 4年前の戦いでディープラビニこと8号は、生命の核であったライフコインを砕かれ息絶えた。その証であるブラックライフコインは今もテテュスが肌身離さず持っている。

 

 だが実は、それは全てではなかったのだ。彼女はあの戦いの後ブラックライフコインの欠片を回収したのだが、ごく僅かに欠片がその場に残されていた。その残されていた欠片を、傘木社残党が回収しそれまでに得られたデータから復元したのである。

 

 

 

 

「我々は既にライフコインとドロップチップに関する技術も手にしている。同じ性能の物を作り出す事など造作もない」

 

「さぁ、お前が新たなラハブとなり、その力で仮面ライダーを抹殺するのだッ!」

 

 タンカーの中からペレズ船長がそう叫んでいる事など知らず、テテュスはゴールドライフコインをベルトに投入した。

 

〈Bet. Good luck.〉

「ストレート0、ネクストゲーム!」

〈Raise up〉

 

 ディープラビニを相手に他のフォームでは分が悪い。あれに対抗できるのは唯一、テテュス最強のフォームであるノーブルレイズのみだ。

 テテュスがノーブルレイズにレイズアップすると、ディープラビニは意思を感じさせない目でテテュスの事をジッと見つめつつ銛を構えた。対するテテュスもアビストライデントを構え、何時でも動けるように備えた。

 

 構えたまま、どちらも動き出さない。先に隙を見せた方がやられると理解しているからだ。迂闊な動きは隙に繋がる。隙を作らない為に、互いに動かないと言う選択肢に行きつくのはどちらも同じ人間から作り出されたクローンだからだろうか。

 

 同じ人間をベースにしているから、思考も同じものになる。果たして、戦いの始まりは唐突だった。

 

「「ッ!!」」

 

 特に何か合図があった訳でもなく、両者同時に動き出す。飛び出した2人は、同じタイミングで手にした銛を突き出した。

 

「ハッ!」

 

 テテュスの銛とディープラビニの銛がぶつかり合う。火花を上げながら穂先同士がぶつかり合い、そして次の攻撃に移ろうと銛を引こうとした。

 

 が、ここで両者の武器の形状の違いが影響してくる。ディープラビニの銛が穂先一つなのに対し、テテュスの銛は穂先が三つに分かれている。つまり、テテュスの銛は穂先の間に何かを引っ掛けるという事が出来た。

 それが齎す結果は、テテュスの銛にディープラビニの銛が引っ張られ奪われるというものであった。

 

「!?」

「フッ!」

 

 手にしていた武器が奪われ、ディープラビニが僅かに目を見開く。その動揺を突く様にテテュスは奪った銛を投げ捨てながら、その勢いを利用して次の攻撃を放った。

 

 振るわれるテテュスの銛。弧を描く様に振るわれた銛の穂先が、ディープラビニを切り裂こうと迫る。

 それをディープラビニは、咄嗟に作り出した大型のカトラスで防いだ。嘗ての戦いでラハブも使用していた剣だ。

 

 銛と剣で打ち合う2人。その戦いの中で、テテュスはディープラビニをつぶさに観察しそして確信した。こいつは嘗ての8号ではない。

 

 8号にはどんな形であれ、燃え上がる様な熱い心があった。それは自身の生存の為の、他者を押し退ける執念からくるものであったが、それでもそのハートは触れれば火傷するのではと言う程熱かった。

 だがいまテテュスの前に居るディープラビニからは熱いハートなど微塵も感じない。あるのは冷たい、黙々と作業するだけの使命感のようなもの。とどのつまりは人形やロボットと変わらない。

 

「こいつはあの子じゃないッ! あの子の執念の残り滓を利用してるだけッ! そんなの、許せないッ!!」

〈Deep diving〉

 

 テテュスは叫びながら地面の下に潜る。先程はディープラビニから奇襲されたので、今度は自分が地面の下に潜り奇襲を仕掛けるのだ。

 

 地面の下を泳ぎ、ディープラビニの真下に来ると銛を下から突き出す。下からの刺突を、ディープラビニはギリギリのところで回避した。

 そして自身も地面の中に潜り、下で待ち受けているテテュスに攻撃を仕掛ける。高速で泳ぎながら、手にしたカトラスで斬りかかった。

 

「いらっしゃい!」

〈SPEAR Raise〉

 

 テテュスは連結状態のクロックスピアーを召喚し、時間操作能力でディープラビニの動きを遅くさせた。こうなるとディープラビニには手も足も出ない。テテュスはこの状態を狙っていたのだ。

 

 両手に銛と槍を持ち、地面の下を縦横無尽に動き回りながらテテュスはディープラビニを攻撃する。上下左右、様々な方向からの攻撃にディープラビニは対応できず見る見るうちにボロボロになっていく。

 そしてトドメとばかりにテテュスが頭上に蹴り上げると同時に時間の流れが元に戻った。ディープラビニは何が何だか分からぬ内にボロボロにされた挙句、地面から蹴り出され空中に放り出される。テテュスがその後を追う様にして地面から飛び出すと、次の瞬間あっという間に傷を回復させたディープラビニが蛇腹剣で斬りかかってきた。

 

「うわっ!?」

 

 そう言えばディープラビニはラハブ同様、高い再生力を持っているのをすっかり忘れていた。この4年で戦いに関しての勘も少し鈍ったか。テテュスは己が弛んでいる事を、攻撃を受けながら反省した。

 

「ぐぅぅぅぅぅっ!?」

 

 鞭のように振るわれる蛇腹剣により全身を切り裂かれる。そしてそのままディープラビニは蛇腹剣でテテュスを拘束すると、巻き付けた連結刃を引っ張った。繋がれた刃が全身に食い込み、テテュスの口から思わず悲鳴が上がる。

 

「うあ、あぁぁぁぁぁっ?!」

 

 悲鳴を上げるテテュスを前に、ディープラビニは片方の手に再び銛を作り出した。引き寄せたテテュスをあれで串刺しにするつもりだ。テテュスを引っ張る手に力が籠る。

 

「くっ!」

 

 ここでテテュスは誰もが思わぬ行動を取った。何とディープラビニの引っ張る力に抗うのではなく、逆に身を委ねたのだ。

 抗えば締め付けが強くなって刃が食い込み、その痛みに足から力が抜けて逆に引き寄せられる。この場で抗うのは悪手だ。ならば、逆に相手の力に身を委ねてしまえばいい。

 

 テテュスはディープラビニが蛇腹剣を引っ張った瞬間、自身も前に飛び相手に向かって飛んだ。その行動と引っ張る剣から抵抗が無くなった事にディープラビニは一瞬剣を引く力が緩む。

 その瞬間をテテュスは待っていた。連結刃の締め付けが緩んだのを見て、テテュスは内側から拘束を破った。その際に刃で全身を切り裂かれる事になったが、このまま引き寄せられながら全身を削がれるのに比べればマシだ。

 

「はぁぁぁぁっ!」

「ッ!?」

 

 まさか自分から向かってくるとは思っていなかったのか、拘束されたまま迫るテテュスを前にディープラビニが驚き動きを止める。その隙にテテュスは連結刃を体を傷付けながら解き、体の自由を取り戻すとそのまま勢いを利用して銛を突き刺そうとした。テテュスが銛を突き出してきたのを見て、ディープラビニは回避しようと身を引き…………しかし突如足が動かなくなり逃げる事が出来なくなる。

 

「!?」

 

 またテテュスの能力か何かかと足元を見るが、何かをされた形跡はない。何が何だか分からぬ内にテテュスの銛がディープラビニに突き刺さった。

 

「はぁっ!」

「がっ?!」

 

 体を銛で刺し貫かれ、ディープラビニの口から苦悶の声が漏れる。その声と苦痛に歪む顔に、テテュスが仮面の奥で辛そうに顔を顰めた。

 

「が、ぁ…………ふふっ」

「えっ!?」

 

 そのまま暫くジッとしていると、突如ディープラビニが笑みを浮かべた。今までと違い感情を感じさせる笑み。テテュスが思わずまじまじと見ていると、ディープラビニは彼女に向けて言葉を紡いだ。

 

「お疲れさま……」

「あなた、もしかして……!?」

「ホント、どこぞの馬鹿に余計な事をされたわ」

 

 間違いない、これは8号だ。致命的なダメージを受けたからか、それとも別の要因があるのかは分からないが兎に角再生されたディープラビニは嘗ての8号としての意識を取り戻したのである。

 先程、ディープラビニがテテュスの一撃を一瞬回避しようとして動きを止めたのも、ディープラビニの中に蘇った8号の意識が一時的に体の主導権を取り戻したからであった。

 

「~~~~ッ、ゴメン。私、またあなたを……」

「何言ってんのよ。あんたは何も間違ってない。それよりほら、早くトドメを刺しなさい。また再生が始まるわ」

 

 今は8号としての意識を取り戻しているが、この状態も長続きはしない。そう間を置かず再びただの兵器としてのディープラビニに戻ってしまう。そうなる前に、テテュスにはトドメを刺してもらわなければならなかった。

 また8号の最期を看取らねばならないのか。その事にテテュスが思わず渋っていると、8号は力を振り絞り自分に突き刺さった銛を引き抜いた。

 

「ぐ、あ……ッ!?」

「あっ!?」

「かはっ!?…………そんな顔しないの。これがアンタの役目でしょ、仮面ライダー?」

「私は……そんな……」

 

 こんな事が、姉妹と言える存在を消し去りたい為に仮面ライダーになった訳ではない。テテュスは逡巡し、砕けたブラックライフコインを取り出した。

 それを見て、ディープラビニはそのライフコインに手を翳す。すると砕けたライフコインが一つに集まり、再び一つのコインに戻った。ただし、そのコインは1部が欠けている。

 

「ぁ……」

「これを直して、私だと思いなさい。ほら、残りがここにあるからさ」

 

 そう言ってディープラビニは両手を広げた。己の身を捧げる彼女の姿に、テテュスは迷いを抱えながら銛を構えた。

 

「本当に、それでいいの?」

「いいわ。私には、この世界は居心地が悪すぎる。どうせなら生まれ変わって、もっと良い世界に生まれたいわ」

「……分かった」

 

 それが彼女なりのジョークの類だと理解しつつ、テテュスは彼女の意を汲んでトドメを刺すべくチップケースをドライバーに装着してウィールを回しレバーを下ろした。

 

〈JACKPOT FEVER!〉

「ハァァァァァァッ!!」

 

 動かないディープラビニに向けて、テテュスのジャックポットフィーバーが突き刺さる。必殺の一撃を喰らったディープラビニは大きく蹴り飛ばされ、地面に仰向けに落下した。

 

「がはっ?!」

 

 倒れたディープラビニが、薄れゆく意識の中で目を空けるとそこにはあの時見たのと同じ何処までも大きく広がる空が見えた。

 その光景にディープラビニ……否8号は笑みを浮かべた。

 

「あぁ……いい天気……」

 

 その言葉を最期に、ディープラビニが爆散した。後には彼女を構成していた核と思われるブラックライフコインの欠片が残される。

 テテュスはその欠片を拾い上げると、一部が欠けたライフコインの上に落とした。そして意識を集中させると、砕けたライフコインを完全に元の形に戻した。

 

 これでブラックライフコインは元通りになった。もう誰にも利用される事は無い。否、自分がそれをさせない。

 

 決意を新たにしていると、タンカーが港から離れて海の向こうへと向かって行った。街に解き放ったディーパーらが全滅し、更にはディープラビニも倒された事で不利と察したのだろう。今頃ブリッジは大慌てになっているだろう事が容易に想像できた。

 

 それを眺めつつ、テテュスは腰のウィールを何回も回した。

 

「悪いけど……私、今回ばかりは我慢できそうも無いわ」

 

 テテュスは能力を最大限に使って海を操る。突然海面がうねりを上げ、タンカーが大きく揺さぶられた。そして最終的には街には影響を及ぼさない高波によって、タンカーは横転し腹を上に向けて海面を漂っていた。あれでもう逃げる事は出来まい。

 

 後の事は警察とS.B.C.T.に任せればいい。そう考えつつテテュスは変身を解くと、改めて手の中にあるブラックライフコインを太陽に翳すと両手で包み祈りを捧げるように目を瞑るのだった。




という訳で特別編第3話でした。

コガラシの戦法はこんな感じです。忍術を使う際には術の名前を書いて発動します。自由度はかなり高い戦い方が出来ますが、書いた字のクオリティで術の効果が上下するので素早く綺麗な字を書く必要があったりします。ここら辺は本格的な連載が始まると何かしら言及される予定です。

瑠璃と8号の戦いも本当に決着。コアとなるブラックライフコインが完全な形で瑠璃の手元にあるので、今後悪用される事は無いでしょう。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!
次回の更新もお楽しみに!それでは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。