仮面ライダーテテュス   作:黒井福

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どうも、黒井です。

今回でテテュスも本当の最終回。どうぞお楽しみください。


特別編・第4話:ダブルストリート、めでたき事めでたき事

 戦い終わって、海都は平和を取り戻した。

 

 突然のディーパーとヌーベルファッジ・パドルの襲撃に街の住人達は色めき立ったが、騒動に反して犠牲となった者は意外と少ない。その理由は襲撃初期にバーツ達が暴れた事もそうだが、何よりもコガラシの存在が大きいだろう。

 颯爽と現れた仮面ライダーコガラシ。今は失われたと思われていた忍者が現れ、街中に散った怪物達を始末してくれたのである。

 

 ディープラビニとの戦いを終え、騒動が納まった事を確認したテテュスは一言彼に礼を言いたかったのだが、肝心の彼は戦いが終わると現れた時同様颯爽と去っていったと海羽から聞いた。その事を残念に思いつつ、やはり忍者は居るのだと確信し再び会えることを夢想する。

 

 それはそれとして、戦いを終えた瑠璃達は4年ぶりの再会を祝う事も兼ねてBAR・FUJIOで宴会を開いていた。これには瑠璃と藤野一家だけでなく、カリビアンダイナーの面々も加わっていた。

 

「改めて、瑠璃姉ぇお帰り~!」

「ただいま海羽ちゃん! しばらく見ない間にすっかり大人になっちゃったわね」

 

 実際海羽と再会した瑠璃は驚いた。今の海羽からは嘗て感じた僅かな幼さが微塵も見られず、誰がどう見ても大人の女性と言えるほどに成長していた。その原動力は瑠璃の様な女性になりたいと言う海羽の理想であり、海羽はその理想を叶えたことになる。

 男子三日合わざれば刮目して見よと言うが、海羽は4年で刮目するまでもない程に成長したのだ。

 

「おかげで海羽に言い寄る男が客にも増えて困ってるよ」

「でもその度にバーツが割って入るんでしょ?」

「たりめーだ」

 

 最近は客の中にも海羽を口説こうとする輩が少なくなくなってきたが、時折出てくる不逞の輩は大抵バーツにより一蹴されている。それでも食い下がる様な奴は、瑠璃に勝らずとも劣らない海羽のギャンブルの腕によりぐうの音も出ないほど叩きのめされ、絞り粕になるまで絞られる事になった。

 

 瑠璃と並べる女性になれたことに、海羽は彼女に負けない豊かな胸を張りつつ酒を口にした。

 

「ふふ~ん! 私も瑠璃姉ぇに負けない女になれたんだよ! こうして一緒にお酒も飲めるようになったし……あれ?」

 

 胸を張りつつ、よくよく瑠璃を見て海羽は気付いた。今瑠璃が持っているグラスに入っているのはただのジュースだ。酒ではない。

 こんな席で彼女が酒を口にしないとは珍しい。何かあったのかと首を傾げた。

 

「瑠璃姉ぇ、お酒飲まないの?」

「ちょっとね。今は飲めないんだ」

「どこか悪いの?」

「そう言う訳じゃないんだけどね」

 

 何やら意味深な笑みを浮かべる瑠璃に海羽が首を傾げる。

 

 そしてある疑問を抱いた。そもそも何故瑠璃はこんな唐突に帰って来たのだろうか。

 この4年間、瑠璃とは何度も手紙によるやり取りをしてきた。だがその中で、今回の帰還に関する話は無かった筈だ。直近の手紙でも帰ってくる事を匂わせるような内容は無かったと記憶している。

 あともう一つ気になる事と言えば、何時の間にか姿を消していたネイトである。この場にネイトが居ない。本来であれば彼もこの場で再会を祝う筈だったのだが……

 

「瑠璃姉ぇ何で急に帰って来たの? 勿論帰ってきてくれたことは嬉しいんだけど。それとネイトさんは?」

「それはね……」

 

 海羽の疑問に瑠璃が答えようとしたその時、店のドアが開く音が聞こえる。ドアベルの音に瑠璃達が反応してそちらを見れば、そこには遅れてやってきたネイトが海羽の知らぬ女性と共に入って来たのが見えた。

 

「悪い、遅れた」

「ネイトさん! あれ? そっちの人は?」

 

 一見若々しいが、身に纏う雰囲気が美代子達に近い。見知らぬ人物がネイトに続いてやってきた事に誰もが首を傾げていると、その女性は向けられた視線に苦笑しつつ自己紹介した。

 

「何だか場違い感が否めないが……初めまして。私は門守 香苗と言う。ここのネイトに色々と冒険のイロハを教えた者と言えば分かってもらえるかな?」

 

 ネイトに続いて店に入って来たのは、仁の母でもある香苗であった。一見この街とは何の関係も無さそうな香苗の登場に海羽達は目を丸くしたが、彼女達が何よりも注目したのはその腕の中。香苗の腕の中には1人の赤ん坊が抱かれている。

 別にそれだけであればそこまで気にするような事は無い。以前に仁と亜矢も赤ん坊を店に連れてきた事がある。

 

 問題なのはその赤ん坊、髪の色などが何処となく瑠璃と似ているのだ。

 

「る、瑠璃姉ぇ? その、香苗さん? が抱いてる赤ん坊って、もしかして…………」

 

 海羽が震える声で赤ん坊を指差すと、瑠璃は頬を赤くしてはにかみながら答えた。

 

「えっと……うん。私とネイトの、赤ちゃん♪」

 

 

 

 

「「「「え、えぇ~~~~ッ!?!?」」」」

 

 

 

 

 まさかの爆弾発言に、酒を飲んでいた者も一気に酔いが醒めた。今の告白にはそれだけのインパクトがあった。

 

「うっそ!? 瑠璃姉ぇに赤ちゃん!? 何時の間にッ!!」

「まぁ、ちょっと前にね」

 

 つまるところこれが瑠璃が突然帰ってきた理由であった。

 

 赤ん坊を連れながら危険と隣り合わせの冒険など出来ない。今回は偶然香苗と合流できた為、騒動の間彼女に子供を任せる事が出来た。だが香苗には香苗の生活がある。何時までも頼ってはいられない。

 

 そこで考えたのが海都に戻る事であった。

 

「やっぱり私が安心して子育て出来る所って言えば、ここしかないからさ」

「瑠璃姉ぇ……」

 

 瑠璃の海都と何より藤野一家への信頼と愛情がその言葉から伺えて、海羽の目に感激の涙が浮かぶ。その間に瑠璃は香苗から赤ん坊を受け取り腕に抱いた。母親に抱かれたからか、赤ん坊は無邪気な笑みを瑠璃に向ける。

 海羽はその無邪気な笑みに早くも虜になった。

 

「あぅ~、だぁ~!」

「うわぁ~! 可愛い!」

「抱っこしてみる?」

「いいの!」

「もう首も据わってるから大丈夫よ」

 

 海羽が瑠璃から赤ん坊を受け取り、あやす様に軽く揺すりながら抱っこする。赤ん坊は初めて見る海羽に、特に警戒をしないどころか興味を持った様に見つめ手を伸ばしてきた。誘われるように海羽が顔を近付けると、赤ん坊は彼女の顔をペタペタと触る。

 

「もう名前は決まってるのか瑠璃?」

 

 赤ん坊と戯れる海羽を微笑ましく眺めながら、鉄平は気になる赤ん坊の名前を訊ねた。首が据わるほど生まれてから時間が経っているのなら、名前くらい決まっているだろう。

 そして事実、瑠璃とネイトは既に赤ん坊の名前を決めていた。

 

「うん。ネイトと2人で考えて……ね?」

「あぁ。この子の名前は……」

 

 

 

 

「「瑠奈(ルナ)」」

 

 

 

 

 2人が同時に口にした、赤ん坊の名前は瑠奈。それは月を意味する名であり、2人の願いが込められた名前でもあった。

 

「女の子だから、最初はセラにしようかなって考えてたんだけど……」

「この子はセラの生まれ変わりじゃない。セラとは違う子だ。そんなこの子には、例え暗い夜の海でも人を優しく照らしてくれるような子になってもらいたい」

「そんな私達の願いをこの子の名前には込めてるんだ」

 

 そう言って我が子を見る瑠璃の目は、最早完全に母親のそれだ。我が子の成長を楽しみにしつつ、健やかに育ってくれることを願っているのが見ていて分かった。

 

 今まで憧れと共に姉として見てきた彼女の新たな一面。それは彼女が人として幸せを手にしたことを示す何よりの証拠だった。

 幸せそうにしている瑠璃の姿を見ていると、海羽は自分の事の様に嬉しくなる。

 

「そっか……良かった」

「ん? 海羽、何か言ったか?」

「ううん、何でもない! ん~! 瑠奈、君は瑠璃姉ぇに似てとっても美人さんになるかもね~!…………う゛っ!?」

 

 瑠奈をあやしていた海羽だが、突然その顔色が悪くなった。海羽の突然の変化に瑠璃にバーツが心配そうに彼女を見る。

 

「海羽? どうした?」

「海羽ちゃん?」

「~~~~ッ、バーツ、ゴメンッ!?」

「うぉっ!?」

 

 突如顔色を悪くした海羽は、心配したバーツに瑠奈を預け店の奥へと駆け込んでいった。何やらただならぬ様子の海羽にバーツは瑠奈の負担にならない程度に慌ててその後に続き、瑠璃とネイト、鉄平達も急いでその後に続いた。

 

 どうやら海羽が向かったのはトイレらしい。余程急いでいたのか、ドアを開けっぱなしにしたトイレの中からは嘔吐(えず)く海羽の声が響く。

 

「ゲホッ!? ゲホッ、ゲホッ!?」

「お、おい海羽、どうした!? 気分悪いのか!?」

「海羽ちゃん、大丈夫?」

 

 心配するバーツ達の前で、瑠璃が海羽の背中を優しく擦る。暫くして落ち着いたのか顔を上げた海羽は、顔色は悪いが何やら嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

「えへ、えへへ……バーツ」

「どうした?」

「出来ちゃったみたい……私も」

「……え?」

 

 最初海羽の言葉の意味が分からなかったバーツだが、潤んだ目で自分のお腹を愛おしそうに撫でるその姿から、バーツだけでなくその場の全員が何を意味しているのかを察した。

 

「「「「えぇ~~~~ッ!!!!」」」」

 

 店中どころか、街中に轟くのではと言う程の絶叫が響き渡る。それは新たな幸せが芽吹いた事の証でもあった。

 

 

 

 

 

 戦いを終えた戦士は、人に戻り平和な世で生きて行く。今ここに、1人の女性が戦士から人に戻り、幸せを手にして人生を生きようとしていた。

 

 だがその一方で、世にはまだ多くの悪が潜んでいる。

 

 しかし、心配する事は無い。何故なら、世を乱す者が居れば世を正す者も必ずいるのだから。

 

 夜の街の中、複数人の人影が人目につかぬように動いていた。その姿は、一言で言えば忍者と言うしかない。

 

 複数人の忍者達は、人々の寝静まった街の世闇の中を誰にも気付かれる事無く屋根から屋根に飛び移っていた。

 

 そんな彼らの前に立ち塞がる人影があった。月明りが照らすその人影の正体は、恐らく高校生位だろう1人の少年だ。

 その少年の姿を見た瞬間、黒衣の忍者達が手に武器を持ち身構えた。こんな時間にこんな所に居る少年など普通ではない。

 

卍妖衆(まんようしゅう)……これ以上のお前らの狼藉、見過ごす訳にはいかないな」

 

 少年は掛けている眼鏡を中指で直しながら忍者達を見据え、右手に筆を持ち左手に巻物を持った。少年が巻物を片手で開くと、そこには何も書かれていない。

 そんな巻物に少年は一瞬で文字を書く。

 

「執筆忍法、変身の術ッ!!」

 

 巻物に”変身”の文字が書かれる。書かれた文字は形を変え、それと同時に巻物自体も形を変えると少年の腰に巻き付いた。

 少年の腰に巻き付く頃には、巻物は完全に形を変えベルトになっていた。中央には水晶で出来た核の様な物が埋め込まれた、銀色の重厚なベルトだ。

 

 腰にベルトが巻かれると、少年は更に新たな文字を眼前に描く。

 

「コガラシ、変身ッ!!」

【忍法、変身の術ッ! 夜の声、しのぎ削りし、忍ぶ者……コガラシッ! 達筆ッ!!】

 

 少年の眼前に描かれた”(コガラシ)”と言う文字がベルトの水晶に吸い込まれると、風が少年の全身に纏わりつく。少年を包んだ風は周囲にも影響を及ぼし、砂埃を巻き上げ黒衣の忍者達も顔を手で覆う。

 

 数秒ほどで風は鎮まり、そこに居たのは先程まで佇んでいた少年……南城(なんじょう) 千里(せんり)ではなかった。

 

 そこに居たのは緑の装束に身を包んだ1人の忍者……仮面ライダーコガラシ。

 

 世の影に生き、人知れず世を正す忍者。

 

 瑠璃達も知らぬところで、彼が彼女に代わり世を正す為に今宵も戦いに身を投じる。

 

「一筆書きより、簡単に終わらせてやる!」

 

 それは、新たな仮面ライダーの物語。

 

 人知れず世を正す忍び達の物語が、今描かれようとしていた。




という訳で特別編最終話でした。

瑠璃が海都に戻って来たのは子供が生まれたからでした。名前は瑠奈。最初はセラとか8号を思わせる名前にしようかとも思ったのですが、何かしっくりこなかったのでこうなりました。
そして瑠璃が帰って来たのと時を同じくして海羽もおめでたです。瑠奈とはいい幼馴染になってくれるでしょう。

さて、瑠璃を主人公としたテテュスの物語も今回で本当に終了です。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

来週からは新作、仮面ライダーコガラシをお送りしますのでどうかお楽しみに!
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