『G』の日記   作:アゴン

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今回、久し振りにあの方が登場。


その82

 

 

 

デキム=バートンが起こした今回の争乱、本人の自害によって幕を引く事になったこの事件は、表向きは国連が鎮圧したという事になる。Z-BULEの決死の行動が世間の皆さんに知られないという事を考えるとなんとも言い難い気持ちになるが、当人達が納得しているので自分からは何も言う事はない。

 

既にマリーメイア軍の兵士達の多くは散り散りに逃げている。この分だと、再びマリーメイア軍が決起するという事態は二度と起こらない事だろう。

 

ナナリーちゃんもリリーナちゃんも駆けつけた国連の人達に保護された事から、彼女達の事も安心してもいいだろう。ルルーシュ君も安堵した様に溜息を吐き出していたし……。

 

というか、そんなに心配だったのならちゃんと顔合わせて話をすればいいのに、相変わらず融通の利かない子である。まぁ、本人にそんな事言ったら確実に怒られるから口には出さないけどね。

 

「それではレディ=アンさん、彼女の事を宜しくお願いします」

 

「……貴様に言われるまでもない」

 

今回の戦いが幕を引き、マリーメイア軍が解散された事によりブリュッセルも解放され、自分達は今、地下施設からどうにか抜け出して地上へと戻っていた。

 

気絶し、今も眠るマリーメイアを抱きかかえるアンさんに彼女の事を頼むと、アンさんは当然だと言うように返してくる。

 

今回の争乱が終わった事をいち早く駆けつけたアンさん、彼女も国連に身を置いていて多忙な身の筈なのに、こうして誰よりも早く事態の把握に努めている所を目にすると、彼女のトレーズさんに対する忠義の深さが伺える。その忠義に徹底する姿はジェレミアさんを思わせる。

 

これ以上自分と話すことはないのか、アンさんはマリーメイアさんと共にその場から去ろうとする。が、何か思う所があるのか、数歩歩いた所でアンさんは一度だけ振り返る。

 

「蒼のカリスマ、貴様に聞きたい事がある」

 

「トレーズさんの墓所の座標は此方に。目を通した後は速やかに処分する事をお願いします」

 

「───スマン」

 

渡した紙を受け取るとアンさんはそれだけを口にして、今度こそ振り返る事なく去っていった。彼女の気質からどうして自分がトレーズさんの墓を知ってるのかと厳しい追求を受けるのを覚悟していたが、アッサリ引き下がるアンさんに内心はちょっと拍子抜けしていた。

 

多分、そこら辺はシュナイゼルから話をある程度聞かされていたのだろう。奴もアンさんと同じ国連に身を置いている人間な訳なのだし、立場は異なってもレディ=アンさんと繋げるパイプは幾つも持っていそうだ。

 

アイツもトレーズさんとは友達だったみたいだし、アイツの手際の良さと用意周到さを考えると、既にトレーズさんの墓所を把握していると考えてもいいかもしれない。そこまで知っていながら何故自分に訊かせるという回りくどい事をしたのか。あるいは再世戦争の時に自分が殴った事に対する事への意趣返しなのかは定かではないが……まぁ、自分もレディ=アンさんには教えるつもりだったし、これはこれで良かったと思う。

 

「彼女、トレーズさんの娘さんなのでしょう? 友達の娘に一言声を掛けなくてもいいんですか?」

 

「構わないさ、蒼のカリスマである自分は未だ世界の敵として認識されている。そんな男が彼女に近付いているなんて知られれば、忽ち彼女の立場は危うくなる。こうした方がベストなのさ」

 

「貴方のそう言う所、ルルーシュにそっくりですね」

 

そうかな? と、背後にいるスザク君に返す。本音を言えば彼女に一言くらい挨拶をしておきたかったが、今言った様に蒼のカリスマは世界の共通する脅威として知られている存在だ。そんなモノが彼女に近しい人間だと知られれば今度こそマリーメイアは世界から居場所を無くしてしまう。

 

それに、彼も……ルルーシュ君も妹であるナナリーちゃんとは一度も言葉を交わす事はしなかったのだ。年下の彼が我慢している以上、年長者である自分が堪えない訳にも行かないだろう。

 

まぁ、それも地球至上主義やらクロノやらサイデリアルやらを片付けた後はどうにでもなりそうなのでそれほど深く考えていないが……取り敢えず、今は彼女の無事を喜ぶ事にしよう。

 

(しっかし、見れば見るほどトレーズさんの面影がある娘だっなぁ、目元とかそっくりだった。二股眉毛でなかった所は残念に思うべきか安堵するべきか……)

 

今回の争乱もひとまず幕を下ろし、マリーメイアの無事を確認できた事からそんな事を考えていると……。

 

「さて、俺もそろそろ行くとするかな」

 

「あら? どこへ行こうと言うのかしら?」

 

ゾクリ。背後から聞こえてくる聞き慣れた女性の声に、背筋から言い表し難い悪寒に襲われる。声の正体に心当たりのある俺は、己の心にそんな筈はないと必死に呼び掛けながら、ゆっくりと後ろに振り返ると……。

 

「はぁい。久しぶりね蒼のカリスマさん。再世戦争の火星での決戦以来かしら?」

 

───紅い夜叉がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

/月γ日

 

ハロー、エブリワン。皆元気してたかな? 蒼のカリスマことシュウジ=シラカワお兄さんだよー。

 

のっけからテンション高めな自分、ウザいとは思うがどうせこの日記は自分以外読む者などいないので気にしないでおく。

 

さて、先のデキム=バートンの起こした争乱から一夜明け、カレンちゃんの手によって強制的にZ-BULEに連行される事になった自分は、現在ネェル・アーガマにお邪魔させて貰っております。

 

いやー、まさか大の男をアイアンクローで持ち上げるなんて、カレンちゃんも成長したね。乙女としての成長は欠片も感じられなかったよ。本人を前にこんな事を言ったら確実にチンッされるから言わないけど。

 

今回の騒動の一件で自分に色々聞きたい事があるだろうZ-BULEの面々には、今の自分の機体であるトールギスⅡの修復と補給を条件に、ある程度答える事にした。オットー艦長からは勿体ぶるなと言われたけれど、今自分が持っている情報の殆どは、憶測と推測によるモノが多い不確かなモノだ。デキムが自害した所為で情報を確実なモノに出来なかった以上、不必要な情報は却って彼等を混乱させる事になる。

 

取り敢えず自分が教えたのはアマルガムを始めとした裏組織の連中の事、並びにネオ・ジオンの動きについてだ。尤も、ネオ・ジオンに関してはシャア=アズナブルの件以外Z-BULEの持つ情報と似たり寄ったりなので、あまり意味はなさそうだったけど。

 

取り敢えずシャアとの対談については、アムロさんとカミーユ君にそっと話すだけに留めておいた。こちらも自分個人に関する話だったのであまり意味のあるモノだとは思えないから他の人達には話さなかったけど、アムロさんとカミーユ君はシャア……もといクワトロ大尉とはUCWの頃から戦場を共にしていた仲間であった為、自分とシャアの間で話した大体の会話の内容を二人に伝える事にした。

 

自分の話を聞いて最初は戸惑っている様子のアムロさんだったが、次第に何か納得した様に頷くと自分に礼を言って、カミーユ君と一緒に去っていった。

 

カミーユ君の方は何だか悩んでいる様に見えたが……アムロさんも一緒にいるんだ。余計な心配は程々にしておこう。

 

そうそう、自分がトールギスⅡに乗っていた件なんだけど、どうやらZ-BULEの中には既に乗り手がトレーズさんではないという事に気付いていた人がいたらしいのだ。

 

ゼクスさんとヒイロ君、特にこの二人はヤシマ作戦の時からトレーズさんではない事に気付いていた様で、自分がトールギスⅡから降りると納得した様に頷いていた。流石トレーズさんが好敵手と認めた人達、その眼力は大したモノである。

 

この分だと五飛君と遭遇した際一発で見抜かれそうだ。そうなったときの彼の対応が非常に怖いが……まぁ、なるようにしかならないだろう。

 

それでトールギスⅡの修復作業なのだが、どうやらシュナイゼルは自分がこうなる事を見越していたらしく、直ぐにZ-BULEに向けて物資を送るという通信を送ってきたのだ。

 

相変わらず手際の良い友人に半分呆れつつも、トールギスⅡの部品が届く合間、新顔の面々と顔を合わせる事にしたのだが……なんと、ここであの青いロボットのパイロットが判明したのだ。

 

ヒビキ君。彼があの青いロボット───ジェニオンのパイロットだと知った時は、仮面越しでも驚いてしまった。成り行きでジェニオンに乗ることになったと語る彼だが、そういう割には戦う事には積極的で、ジェニオンから降りるという意志はなかった。

 

一体彼に何があったのだろうか? 思い切って訊ねたい所だが、生憎今の自分は蒼のカリスマだ。切羽詰まっている今の彼に素性を明かしても混乱させてしまうだけだろう。幸い彼には実習生の西条先生が付いているし、彼が落ち着いた所でそれとなく話をしてみようと思う。

 

あとはインダストリアル7にいた学生のバナージ君とか、聖天使学園のエレメント達とかと顔合わせをしたのだけれど、一体自分のどんな噂を聞いたのか、新顔の子達は殆ど自分を見るなり警戒心を露わにしていた。

 

カイエン君に至っては後ろに立っていただけで敵意剥き出しにされてしまった。まるで不動さんみたいとか言われたりしたけれど、彼等には自分が人外か何かに見えるのだろうか? 軽くショックである。

 

相良君にもなんかメッチャ警戒されているし……俺、何かしたかなぁ? けれどシンジ君は以前ヤシマ作戦の時に出会ったからか割と普通に話してくれた。挙動不審になっていたのは彼に人見知りな所があるからだろう。

 

で、その後は歓迎という意味を込めてヒビキ君とシミュレーターで軽く模擬戦をしたのだけれど、少しやりすぎてしまったのか凹んでしまったヒビキ君を前に、自分はチョッピリ罪悪感に苛まされてしまった。

 

いやだってさ、この世界に来てからこうした模擬戦というのは初めてだったんだもの。破界事変や再世戦争の頃は遠巻きから見ている事しかできなかったんだもの、仕方ないよね。

 

その後はバナージ君やリディ少尉、シン君の相手をしたりと、久し振りに楽しい時間を過ごさせて貰った。しかも全勝、バナージ君はまだ自分の機体に慣れてないから仕方ないとして、まさか軍人であるリディ少尉やシン君にまで勝てるとは思わなかった。

 

まぁ二人とも最初の模擬戦で華を持たせてくれたのだろう。次は実力で勝てるように頑張ろう。未だトールギスⅡの機体を制御しきれていない部分があるから、今後はそこら辺を重点的に鍛えていこうと思う。

 

……それと最後に、Z-BULEに一時的に参加する事になり、新顔の子達ともある程度話はしたのだが、何故かAGさんとは上手く会話が出来ないでいる。

 

次元商人を名乗るAGさん。ジェニオンを生み出した会社の下請けみたいな人(?)だと言われているけれど、何故か自分と遭遇する度に慌てて逃げていくのだ。

 

人見知り、という訳ではなさそうだが、何故自分にだけああもよそよそしいのか。初めて彼のお店に伺った際は普通に対応して貰えたのに……何故だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやはや、まさかかの有名な蒼のカリスマ様とこうしてお近づきになれるとは、このAG感激の極みです!」

 

「買い被りですよ。所詮私はテロリスト、褒められる様な事はしていません」

 

「世界の半分の戦力を瞬殺しておいてこの慎ましさ! 流石は世界最強のボッチ! そこに痺れる憧れるぅ!」

 

「……なにやら聞き捨てならない台詞がでてきましたが、まぁいいでしょう。で、この台詞を口にすればいいのですね?」

 

「はい! あの蒼のカリスマに宣伝してもらえれば売れ行きも鰻登りというものです! それでは今日も張り切って────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────クククク」

 

「っ!?」

 

「AGさん、と言いましたか。今回は我が半身の不手際の為見逃しますが……もし、今後同じ事をすれば」

 

「あ、アババババババ………」

 

「分かってますね?」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

「アナタの目的も、正体も彼等には伏せておきます。今は同じ部隊に所属する仲間なのです。仲良くとはいいませんが、ある程度協力していきましょう。……ねぇ?」

 

「ひ、ひぃぃぃっ!!」

 

「クククク……」

 

 

 

 




シュウジ「あ、新しい子達だ。やっはろー♪」
エレメント「カイエンの背後を容易くとった!?」
新メンバー「これが、蒼のカリスマ……」
AG「あの人にはノータッチでいこう」


大体こんな温度差。

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