『G』の日記   作:アゴン

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今回は原作とは違った流れになります。



その89

○月▼日

 

ジェミニスと呼ばれる組織のトップ、ガドライトなる男を取り逃して数日、現在自分は不動さんから預かったジン君と共に各国の様子を見て回っている。

 

当時はガドライトをぶちのめした後にZ-BLUEと合流し、諸々の事情を話そうとしていたのだが、いきなり自分を光が包み込み、ヒビキ君と再会の言葉を交わす間もなくパラダイムシティから弾き出されてしまった。

 

アレは明らかに何者かの干渉を受けたモノ、当初はその事に結構腹も立てたが、状況が状況なのでそうも言ってられなくなった。現在、この地球に大量のインベーダーが押し寄せてきており、今奴等に対抗出来るのは自分しかいないらしいのだ。

 

というのも、Z-BLUEは未だこちらの世界に戻ってきていないらしく、どうやら以前の黄昏の間の時みたいに彼らはまだパラダイムシティに取り残されているようなのだ。現在の日付は自分がパラダイムシティに跳ばされて約一週間程経過し、黄昏の間の時の事を鑑みれば恐らくもう一週間、Z-BLUEの皆はあの街から帰ってこれないだろう。

 

この事を教えてくれたZENさんは、現在自分と同じ安いビジネスホテルに滞在している。というか隣の部屋にいる。もうすぐ地球の危機だというのにあの落ち着きぶりは一体なんなのだろうか? 不動という名字の人はやっぱり皆あんな感じなのだろうか。

 

と、まぁそんな訳で帰ってきて早々侵略者の相手をする事になったのだが、人間を相手にするよりずっと気が楽なのでそこら辺は別にいいんだけどね。それに、連中が相手ならグランゾンの力を十分に発揮できる。

 

それに連中を叩いた帰り道、ジオンの様子を観察してもいいだろう。アムロさんやカミーユ君辺りは気掛かりにしている事だろうし、Z-BLUEが戻ってきた際に新しい情報を仕入れておくのも悪くないだろう。

 

明日にはここを後にしなくてはならないし、少し早いが今回はこれで終わりにしようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───朝、太陽が水平線の向こうから昇り始めた頃、シュウジはこれから出撃する為に砂浜へと足を運び、不動ZENとジンはそんな彼を見送る為に彼の背後に佇んでいた。

 

潮風が彼等の髪を撫でる。これからの戦いに備え、準備運動をしているシュウジはそれらを終えた後、よし、と声を出してジン達の方へ振り返る。

 

「ではZENさん。ジン君の事はもう良いのですね」

 

「あぁ、既にこの者の傷は癒えている。後は己の力を最大限に高められるよう仕込むのみ。蒼き魔人よ、ここまで付き合ってくれた事に感謝する」

 

「いえ、此方こそマトモに面倒を看て上げられず申し訳なかったです。先のジェミニスがオーブに侵攻してきた時も危なかったみたいですし……」

 

「いや、それはそれで逆に助かったけどね。お陰で女装とかされずに済んだし……もう二度とあんな思いはごめんだし」

 

「アレ? ジン君、なにか言った?」

 

「……いや、なにも」

 

首を傾げて訊ねてくるシュウジに、ジンはげんなりと疲れた様子でありながら何でもないと返す。思えばシュウジと過ごした日々は、彼にとって精神的にとても過酷な環境だったと言えた。

 

何せ、彼と共にいる殆どの時間を女装でいたのだ。幾らミカゲの目を誤魔化す為とは言え、ジンは最初コレばかりは冗談だろうと思った。

 

けれど、女装の案を真剣な表情で語るシュウジに、ジンは意見を言う間もなく女装で過ごす事を義務付けられてしまう事になる。本人曰く、自分が殺し損ねた相手がまさか女として過ごしているとは思わないだろうと語るが、ジンは当時シュウジがどこまで本気か計りかねないでいた。

 

世界最悪のテロリスト蒼のカリスマ。実は只のバカなんじゃないかと思っていたジンだが、ミカゲの介入は以前の聖天使学園以来来ることはなく、ここ暫くのジンの生活はオーブでの戦闘に巻き込まれた事以外、特に何もなく平穏無事に過ごしていた。

 

(まさか、本当にあの女装が効いた? いやまさか、単にミカゲの奴が僕を放置していても構わないと判断したに過ぎないだけ、そうだきっとそうだ)

 

間違っても“男女逆転の計”などというふざけた策に引っかかった訳ではない。ジンがミカゲに対する奇妙な信頼を願っている一方、ZENとシュウジは互いに話を進めていた。

 

「じゃあ、そろそろ俺も行きます。ZENさんも余計なお世話かもしれませんが、どうかお気をつけて」

 

「うむ、そちらも無用かもしれないが充分に気を付けよ」

 

「いや、俺普通に戦場に行くんで、普通に危ない所ですから、普通に心配して下さい。最近忘れがちですけど、俺フツーに人間ですから、下手すれば死にますから、そこら辺心配して下さいね?」

 

「あぁ、そんな話もあったな」

 

「何で過去形!? ……まぁいいや。取り敢えず俺はこれから宇宙に行きます。ネオ・ジオンの動きも活発になり始めているし、そこら辺の調査もしてくるつもりです。それではZENさん、不動さんに宜しく伝えておいて下さい。ジン君も、怪我治ったからといってあまり無理しないでね。いざとなったら俺が再世戦争に使ってた女装用の服、使っていいから」

 

「なにその気遣い、聞いた事ないんだけど? つか気遣い? 嫌がらせの間違いじゃないの?」

 

二人に別れを告げ、シュウジは背後から己の愛機であるグランゾンを呼び出す。空間を歪ませて現れる魔神、その迫力にジンは後退り、ZENは不敵に笑みを浮かべる。

 

太陽が水平線の向こうから顔を出し始めた頃、中立地帯として知られるオーブから最強の魔神が宇宙に向けて出撃した。

 

「かの破壊魔には蒼き魔神が相手をする、か。少々予定とは異なるが……これもまた因果、私は喜びを以て彼等を見守るとしよう」

 

遙か彼方で“    ”がいるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────パラダイムシティ。霧に覆われ、記憶を失った街から未だ抜け出せないでいたZ-BLUEの面々は、これまでの経緯を改めて考察する為、それぞれの母艦にて考えを纏めていた。

 

ジェフリーやスメラギ、ブライトといった艦長等がブリッジの通信設備を通して話を纏め、パイロット達はそれぞれの割り当てられた部屋で待機している中、ヒビキ=カミシロは複雑な面持ちで格納庫の隅で座り込んでいた。

 

「………シュウジさん」

 

鬱屈とした表情から吐き出されるのは、自身の兄貴分であるシュウジの名だった。その強さに尊敬し、憧れ、目標としていた彼、しかしその正体は世界を脅かす最悪にして最強(最凶)のテロリスト、蒼のカリスマだった。

 

その名は当時田舎暮らしだった自分にも届いてくる程に有名で、たった一機で世界の半分の戦力を壊滅させたという話は、その土地では逸話として語り継がれている。

 

そんな色んな意味で凄い蒼のカリスマの正体が、自分が敬っていた人だった。その事実にヒビキは少なからずショックを受けていた。

 

「ヒビキ君、みーつけた」

 

「スズネ先生」

 

「もう、ダメじゃない。艦長さん達からは自室待機だって言われてたのに……」

 

「……すみません」

 

「……やっぱり、あの人の事考えてたの?」

 

「分かります?」

 

「そりゃあね。それに、それくらい察せないとパートナーとして失格じゃないかしら?」

 

隣に座って微笑むパートナーのスズネに、ヒビキも釣られて笑みを浮かべる。彼女との遣り取りで幾分か気分が晴れたヒビキは鬱憤を吐き出す様に溜息を吐き出すと、鋼鉄で出来た格納庫の天井を見上げた。

 

「まさか、ヒビキ君の兄貴分の人が蒼のカリスマだっただなんて……ビックリしちゃったね」

 

「えぇ、驚きました。……というか、今も少しその事実を受け止められていない自分がいます」

 

「世界を敵に回した最強のテロリスト、だっけ? 私も最初見た時驚いちゃった。映画の奴とは全然別人なんだもの」

 

「映画って……ZEXISの奴ですか?」

 

「うぅん。私が観たのはその派生作品、たまたまチケットを持ってたから時間の空いた時にマオさんと一緒に観に行ったんだけど、色々凄い作品だったよ。主人公の蒼のカリスマが石で出来た仮面を被って吸血鬼になる所から始まるんだけど、ダークヒーローって言うのかな? 無駄無駄ァって叫びながら相手役を殴り飛ばしたり、気合いで時を止めたりして大暴れする様は中々痛快だったよ」

 

「そ、それはまた……」

 

スズネの口から語られる映画の内容にヒビキは少し身を引く。しかし、自分の兄貴分がフィクションとはいえ化け物扱いにされている事に同情するも、あまり否定出来ない自分がいるのもまた事実だった。

 

 

「悪党を潰す大悪党、その作品内では終始その呼び名で呼ばれていた主人公だけど、そんな彼にもプライドがあった。決して自分より弱い相手には手を出さず、群れず、己の法則(ルール)に従って戦う。その一本筋の通った生き方は共感こそされなくても拒絶される事はなかった。……ねぇヒビキ君、もしかしたら彼───シュウジさんもそんな人じゃなかったのかな?」

 

「……え?」

 

言われて、ヒビキの脳裏にシュウジと過ごした日々の時を思い出す。当時、出会ったばかりの頃は彼を自分の世界にやってきた異物と認識し、酷く毛嫌いしていた時期があった。

 

けれど、そんな自分にシュウジは拒絶する事も否定する事もなく、いつも対等に接してくれていた。……そして、凶暴化したグリズリーに襲われた時も自分を見捨てる事なく、たった一人でグリズリーと対峙し、そして打ち勝ってみせた。自分を、守る為に……。

 

今思い返せばあの頃が一番楽しかったかもしれない。彼と過ごしていた間はあの悪夢を見る事もなかったのだから。

 

ガドライトと対峙した時も、彼はあの時と同じ怒りに満ちた表情で戦っていた。───そう、蒼のカリスマと恐れられていた男と自分が慕う兄貴分のシュウジは同じ、自分が良く知る人間なのだ。

 

その事に気付いたヒビキの表情には先程の様な憂いのある顔はしておらず、一つの悩みを払拭した男の顔をしていた。

 

「スズネ先生、面倒を掛けてしまってすみません」

 

「謝る必要なんてないわ。私達はパートナー、助け合うのが当然よ。それに、こういうときはもっと別の台詞があるんじゃない?」

 

「……ありがとう、ございます」

 

ヒビキの感謝の言葉に満足したのか、スズネは笑顔で宜しいと返すと、一足先に格納庫を後にする。去り行く彼女の背中を見送りながら、ヒビキは背後に立つ己の愛機を見上げた。

 

「……シュウジさん、いつかアナタと肩を並べて戦えるよう、頑張ります。だから───待っていて下さい」

 

新たに強い決意を抱きながらヒビキもまた格納庫を後にする。いつか彼の隣に立てる様に、そんな想いを抱く彼を背後で見つめるのは……次元商人を名乗るAGだった。

 

「はてさて、ヒビキさんはあの方の様に強くなると仰いましたが果たしてソレは叶いますかねぇ? 何せ相手はあの魔人、追い付くどころか普通なら突き放される所なのですが……まぁ、そこら辺は本人の頑張り次第ですので野暮な事は無しにしておきましょう。───けれどヒビキさん、もし本気で彼の様になるのであれば、私はあまりオススメしませんよ」

 

何故ならそれは、人であることを捨てるのと同じ意味なのだから。

 

格納庫を去るヒビキの後ろ姿を見送るAGの呟きは誰かに聞かれる事なく、誰もいない格納庫に四散していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────一方その頃、当の本人たるシュウジはと言うと。

 

 

「ヨーコちゃん、ちょっと落ち着こう。流石に零距離で電磁ライフル(ソレ)は洒落にならないよ?」

 

「大丈夫よ、本気だから♪ ちゃんとその脳天ぶち抜ける様特訓したから安心して♪」

 

「何一つ安心出来る要素が見当たらないんだけど!? 楽しい意味を表す筈の“♪”が全然楽しさを表していないんだけど!? 恐怖しか抱けないんだけど!? ちょ、待って、お願いだから話聞いて!? キタンさん、リーロンさん、ヘループ!! インベーダーと戦う前に俺の命が終わっちゃうゥゥゥゥゥっ!!」

 

 

とある宇宙宙域、アークグレンと合流した所で絶賛絶体絶命を味わっている最中だった。

 

 




今回の話は○○バスターを回収する所の話を少し弄くって見ました。
その為真ゲッターはまだZ-BLUEと合流しておらず、ここでのインベーダー戦は主人公達が請け負う事になりました。

さて、この流れが今後原作にどう影響を及ぼすのか楽しみにしていただけると嬉しいです。

それでは次回もまた見てボッチノシ

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