『G』の日記   作:アゴン

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今回、主人公のオリジナル技とアレがでます。



その11

 

大気が震えた。

 

魔神の一撃とそれを破界の王が防いだ衝撃によりサンクキングダムの上空に浮かんでいた雲は消し飛び、炸裂した破裂音が建物の窓を破壊していく。

 

『良い一撃だ。殺意は込められ、敵意に満ちている。まさに相手を殺す為の攻撃だ』

 

『…………』

 

自身の機体(?)である“ゲールティラン”玉座を模した次元獣に座り、グランゾンの一撃を受けたガイオウは相手を讃えながらほくそ笑む。

 

確かにグランゾンの攻撃は当たった。が、それはガイオウの座す玉座の部分のみ、制御の中枢と思われる中央の人型こそが奴の本体と見た魔神の操者は、仮面の奥で舌を打つ。

 

『気迫も充実しているみたいだな。そうだ、その気でなければ俺を殺る事なんざ出来はしないぜ?』

 

『……前から思ってたが』

 

『あ?』

 

『意外と、お喋りなんだな』

 

『…………くはっ!』

 

言葉の奥から滲み出る怒り、魔神を駆る者の内側はマグマの如く煮え滾っている事だろう。

 

だが、それ以上に冷静を保っている。それは全て目の前にいる自分を倒す為、殺す為にしているモノ。

 

ガイオウは嬉しくなった。それはもう腹の奥底から嬉しくなった。

 

『そうだ。戦士というものはそうでなければつまらん! 良いぞ魔神! その調子で俺をもっと熱くさせろ! お前との闘争が俺の記憶の糧となる!』

 

『………フッ!』

 

斬撃が再びゲールティランに向けて振り下ろされる。だが、今度は当たらず、巨体でありながらゲールティランは俊敏に機体を横に捻り、グランゾンの横に移動する。

 

『そら、今度はこっちの番だぁっ!』

 

人型の怪物の一撃がグランゾンを襲う。直撃する瞬間、剣を盾に直撃を防いだグランゾンは機体を大きく後退させてしまう。

 

(……流石に、重いな)

 

伊達に破界の王は名乗っていない。これまで受けた事のない重い一撃に、蒼のカリスマと名乗る青年の頬からは冷たい汗が流れる。

 

確かに直撃すれば如何にグランゾンだろうと危機に陥るだろう。

 

(なら、当たらなければどうと言うことはないと言うわけだ)

 

内心は冷や汗ダラダラものだというのに、口元だけは不敵に歪む。バーニアを噴かせ、紫炎の火を灯したかと思われた瞬間、信じられない加速でグランゾンはゲールティランへと肉薄する。

 

『ははははっ! 良いなその負けん気の強さは! だが………っ!』

 

正面からでは先程の二の舞だぞ。そう続けようとしたガイオウの前から、突如としてグランゾンの姿が消えた。

 

『奴め、どこに消え……ぬぐっ!?』

 

突然襲いかかってくる背後からの衝撃、見ればそこには消えた筈のグランゾンが自分の横を通り過ぎていく姿が垣間見えた。

 

奴の背中が見えた。攻撃を仕掛けようとするガイオウだが、ゲールティランが反応する前にグランゾンは突然開いた穴の様なモノに吸い込まれ、再び姿を消す。

 

そして次の瞬間──。

 

『ぐぅっ!? バカな、次は左からだと!?』

 

前から来たと思えば後ろ、今度は左、突発的に現れては攻撃をしてくるグランゾンの見えない動きにガイオウは翻弄されつつあった。

 

それからもグランゾンの攻撃は続く。左から下から、右から上から、右斜め上から左斜め下へと、出てきては現れて出てきては現れるグランゾンの猛攻に、ゲールティランの玉座の部分は瞬く間に削られていく。

 

動揺を隠せないガイオウ。そんな彼の耳にグランゾンからの講義の声が聞こえてきた。

 

『ワームホールとはそれ自体は異空間に過ぎず、此方からも、そして其方からも干渉する事は叶わない。だが、重力による干渉を制する事で異空間を自在に開閉し、移動と攻撃の合間を省く事が可能。……そしてそれはこのグランゾンの力を以てすれば───造作もない事なのだよ』

 

耳元で笑みを囁かれているような不快感。良いようになぶってくれるグランゾンに極大な怒りを吐き出しながら、ガイオウは吼える。

 

『この野郎がぁぁぁぁっ!!』

 

人型と玉座の怪物が吼える。先程よりも巨大な雄叫びに遠巻きに見ていたZEXIS達もビリビリと痛いほどの迫力を受ける。

 

『これ見よがしに説教垂れてんじゃ、ねぇぇぇっ!!』

 

ガイオウはゲールティランに命じて背後にある空間に向けて殴りつける。何もない空間、だがそこには今まで何度も目撃してきた空間の穴が顔を出していた。

 

これまでに一方的に攻撃を受けたガイオウだが、その最中、彼は本能でグランゾンの攻撃のタイミングを覚え始めていた。奴の姿が消え、そして攻撃してくるまでのタイムラグ。そこに狙いを定めたガイオウは直感と本能に従い、後ろへと攻撃するという選択をした。

 

そしてそれは見事的中……したかに、思えたが。

 

『なん……だと?』

 

腕を突き出したゲールティランに待っていたのは───光。眩いほどの光の槍がゲールティランを、ガイオウを撃ち抜こうと全方向から襲いかかってきた。

 

バカな、そう思ったガイオウの視界にある機体の姿が映る。先程まで彼を攻撃していたグランゾンが何事もなく宙に浮かんでいるのだ。

 

『……ワームスマッシャー』

 

魔神の腕が横に凪ぐ。それが一斉攻撃の合図となり、ゲールティランに無数の光の槍が突き刺さる。

 

『ヌグァァァァァァッ!!』

 

破界の王の断末魔に次元獣達も動揺したのか、それぞれ身を震わせる様に後ずさる。

 

そして、今まで戦っていた筈のZEXIS、そしてアークセイバーの一人にしてパールネイルのパイロットであるマルグリット=ピステールも、呆然とその光景を目の当たりにしていた。

 

ガイオウが圧されている。自分達の攻撃をモノともしなかったあのガイオウが、たった一機によって圧倒されてしまっている。

 

(あの魔神は……一体なんなのだ!)

 

リモネシアで一度交戦したが、それでもあれほど凄まじくはなかった。嘗て自分達の世界にいた騎士達で相手をすればどうにか抑え込める程度、だが今はその程度では収まらない。

 

あのグランゾンという機体には一体どれだけの力と技術が内封されているのか、疑問に思考を沈めたマルグリットが我に返ったのは、海面に身を落とすゲールティランを見た時だ。

 

『……流石にタフだな。あれだけの攻撃を叩き込んだのに、まだ動けるか』

 

『……フンッ、確かに今のは効いた。お前の力は俺の予想を遙かに上回る。しかし!』

 

 ガイオウがゲールティランに力を注ぎ込むと同時にゲールティランの損傷箇所が瞬く間に癒えていく。

 

グランゾンの猛攻によって傷ついた筈の機体が癒えていくのを見て、グランゾンの操者は仮面の奥で大量の汗を流していた。

 

(……マジかよ。あれだけぶち込んだのにそんな早く回復されちゃ俺の立つ瀬ねぇよ!)

 

このままでは攻守交代で今度は此方が危ない、奴の猛攻を防ぐだけの技量は今の自分にはまだないのだ。今ので決めたかっただけに悔しい。操縦桿を握る手に力が込められる……と、その時だった。

 

(…………え?)

 

モニターに映るお知らせの文字。何かと思い開いて見れば、そこには“あの”武装の使用制限が解除されていた。

 

そして、同時に被った仮面の奥で蒼のカリスマと名乗る男は口を歪める。

 

『さぁて、それじゃ第二ラウンドを始めるかぁ』

 

『……いや、もうこれでお終りにしよう』

 

『……何だと?』

 

魔神からの唐突な申し出に眉を潜めるガイオウ。ここまで盛り上げておいて切り上げるのか? そう思ったとき、グランゾンから想像を絶する程のエネルギーが溢れ出した。

 

両腕に集まる六つの珠。魔神の胸部が展開した時、紫と黒が混じった禍々しい球体が出現する。

 

やがて六つの珠が一つに集まったとき、破界の王は言いし難い悪寒に襲われる。

 

『収束されたマイクロブラックホールには、特殊な解が存在する』

 

『剥き出しの特異点は、時空そのものを蝕むのだ』

 

まるで呪文。これまでの戦闘を記録しているクォーターのオペレーターは、グランゾンの異常な重力変動を前にふとそう思う。

 

やがて時空を蝕み始める黒い球体は地面を食い破る様に広がり、近くにいたダモン級の次元獣を喰らい尽くしていく。

 

『────総員、後退せよ!』

 

ジェフリーの直感任せの指示が戦場にいる全員に行き渡る。そこに反論の余地などありはせず、各々が各々のやり方で離脱していく。

 

グレートアクシオンの姿はもうない。既にガイオウが出撃した時点で彼らは戦域から離脱していたのだ。

 

黒い球体が肥大していく。蒼のカリスマ自らがマイクロブラックホールと呼ぶそれは、彼が掲げたと同時に膨張し……。

 

『何人も、重力崩壊からは逃れられん!』

 

遂に、重力崩壊の臨界点に突入した時。

 

『さぁ、事象の地平に消え失せるがいい』

 

 

 

 

 

 

 

 

『ブラックホールクラスター、発射!』

 

魔神はブラックホールとなった球体を破界の王目掛けて発射する。

 

海水ごと地面を抉り、突き進んでくる球体。迫り来るソレを前にしたとき。

 

『う、うぉぉおおおおおおっ!!』

 

ガイオウは玉座を捨て離脱。人型だけとなったゲールティランは直前に回避に成功するが……。

 

玉座であるゲールティランの一部だったものは黒い球体に呑み込まれ、空高く打ち上げられていく。

 

そして、僅かな停滞と重力の圧縮が行われた次の瞬間、周辺地域一帯を呑み込み───光が、溢れた。

 

衝撃と轟音。地球が揺さぶられていると錯覚するほどの衝撃に……。

 

『…………少し、やりすぎたかな?』

 

一人、誰もいなくなった王国で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×月@日

 

いやー、まさかブラックホールクラスター(略してBHC)があそこまで威力があるとは思わなかった。自分なりに撃った後の事を考えて撃つ間際に威力調整を施したんだけど……それでもあそこまでとは思わなかったんだテヘペロ★

 

……うん、ホントすまないと思ってます。反省もしてます。もう地球上では絶対撃たない事を誓います。

 

あれからあの辺一体の環境観察は続けているけど、重力干渉による変動は起きていないし、周辺の隣国からは特に重力異常などは観測されていない。

 

津波も起きる様子もないし、どうやらBHCによる弊害は今の所はないようだ。

 

うん、だからといって二度と撃つつもりはないけどね。あれはもう宇宙とか周りに影響が出ない場所で撃つ代物だよ。

 

 ただ一つだけ言い訳させて貰うが、あの武装しかガイオウを倒す手段が無かったというのは本当だ。アレほど攻撃を受けておいてまさか回復するとは、流石に予想外だった。

 

しかも結局ガイオウには逃げられるし……今後はもっとちゃんと当てられるよう腕を磨くしかないか。

 

今はグランゾンの整備もしなくちゃいけないし、少し短めだが今日の所はこれで終わろうと思う。

 

………あ、そうそう、今自分はZEXISのマクロス・クォーターの居住区にいます! 暫くここでZEXISのメンバーとして頑張りたいと思います。詳しいことはまた後ほど……。

 

いやー、最初仮面付けてたからどうなる事かと思ったけど、意外となんとかなるもんだね。

 

そんじゃ、明日も早いので今度こそこれで終わり。

 

……友達、出来るかなぁ。

 

 

 




主人公、身柄を拘束されている事に気付かず……。

因みに、仮面は被ったままです。

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