『G』の日記   作:アゴン

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今回は比較的地味回。
少々物足りないかもしれません。


その92

 

 

 

△月×日

 

地球連邦軍との小競り合いから数日、今日も今日とて自分は世界各地を巡り、地球に掛けられた時の牢獄を破る為の方法を探していた。

 

あれから地球連邦……いや、地球至上主義のトップであるサイガス准将は自分の事を目の敵にするようになり、彼の一存で蒼のカリスマは世界の敵として認識されるようになった。

 

とは言っても、奴がやったのは蒼のカリスマの賞金額を上げたり、情報ネットに自分が悪者だと流す程度のモノで、直接的な被害は実質存在しない。それどころかそれが基となり、例の自分を題材にした映画は更なる希少価値となり、裏では既に映像ディスクとして世に少なからず流れ、その手のマニアの間ではかなりの末端価格となっているらしいのだ。

 

個人的には何とも言えないが、別に誰が被害を被った訳でもないのでこの件は別に良い。リモネシアの皆も連邦政府からの余計な干渉を受けた様子も無い事から、どうやら地球至上主義の連中はそこまでの決定権はないようだ。

 

リモネシアが無事という事で安堵した自分は、上記にも述べた様に再び世界各地を転々とし、様々な情報を集める事にした。途中に立ち寄ったマーティアル教団とアマルガムの区域で連中とイザコザがあったが、その頃には別に奴等に用と呼べるモノも無かった為に圧殺、グランゾンの力で退けてみせた。

 

その最中に見かけた赤いAS、以前の銀色とは色違いだったが、その戦闘技術はかなりのモノで、例の奇妙な力場を生み出すシステムも、前よりずっと強力なモノになっていた。

 

増援で出て来た巨大な赤い機体───恐らくはASだと思われる機体も複数出て来たりと、割と大盤振舞な戦力だったが、グランゾンのグラビトロンカノンで圧壊させ、続いてワームスマッシャーで串刺しにして全滅させた。

 

教団の楯と呼ばれるマーティアルの主力部隊も同じ様に対処してその場を切り抜けたのだが、例のシステムを搭載した赤いASだけは自分と少しだけ戦闘した後に撤退し、すぐさま戦域から離脱していった。

 

パイロットの奴はモミアゲがどうのとか言っていたが雑音が酷くて聞き取れなかったけど、……まぁ、そんな重要そうな話ではないのでこの話は止めておく。

 

と、戦闘面に関しては結構濃厚な日々だったが、時の牢獄に関する話は殆ど手に入らなかった。こうしている今も時の牢獄の進行は進んでいる。早急に手立てを見つけなければならない。

 

……リモネシアの皆、どうかもう少しだけ待っていて欲しい。皆を元に戻す方法は必ず見つけるから。

 

 

 

△月α日

 

今日はエタニティ・フラットに対する有力な情報を得ることが出来た。因みにエタニティ・フラットとは自分が呼んでいた時の牢獄の事で、今回の件で情報を多く提供してくれたトライア博士が付けた正式名称でもある。

 

彼女と出会う事が出来たのは本当に幸運だった。エタニティ・フラットの影響を強く受けてしまっている地域を調べている最中に彼女と出くわしたのだが、どうやら向こうも自分に用があったらしく、情報を交換するという意味合いも込めて彼女と話をする事になったのだ。

 

ロボット工学、エネルギー工学、並びに超時空物理学の第一人者である彼女が言うには、どうやらこのエタニティ・フラットを解除をするには複数の条件が必要となっているらしく、今はその前準備として各地に話をつけているらしいのだ。

 

エタニティ・フラットを止めるにはその世界の基盤……中心となっている特異点と大特異点を重ね、人の意志を集めてそれを打ち破る。トライア博士の語る対エタニティ・フラットの計画の概要は大体こんな所で、他にも人の意志を集めるのに必要な処置や細工、また様々な情報を提供して貰った。その情報量は結構な数でちょっとここでは書ききれないので、次の機会に持ち越す事にする。

 

その後も自分がこれまでの体験から得た情報を彼女に話すと、トライア博士は興味深そうに頷き、礼を言われてその場から解散する事になった。

 

ただ、去り際にトライア博士は自分の今の身体能力を知りたいと言ってきたので軽く計る事になったのだが、あれは一体何の為なのだろう? 以前ジェレミアさんもロイド伯爵が自分の身体能力を知りたいと言っていたが、何故トライア博士も同じ事を訊ねて来るのだろう?

 

聞き返してもはぐらかすばかり、しつこく訊ねても相手の機嫌を損ねるだけなので深く聞くことは出来なかったが……まぁ、別にいいだろう。

 

ロイドさんもトライア博士も根は悪い人ではないし、気にする必要もないだろう。エタニティ・フラットに対する具体的な対策も聞いた事だし、当分の間自分は宇宙魔王を始めとした侵略者とアマルガムといった裏組織に対する遊撃として動いていこうと思う。

 

……因みにこれはトライア博士に後から言われたのだが、絶対にグランゾンの力で無理に時の牢獄を壊すなと釘を刺されてしまった。

 

グランゾンの重力を操る力で無理にエタニティ・フラットを破ろうとすると、かなりの高確率で地球は破壊され、その後に起きる時空振動と高重力の所為で、人の住める環境では無くなるらしい。

 

シュウ博士にも後で訊いてみたのだが、どうやらこの話はマジっぽく、グランゾンのまま……というか、今の自分では六割以上の確率で失敗するらしいのだ。

 

60%の確率で地球は滅ぶ。そう言われれば流石に躊躇してしまい、自分は以前から考えていたグランゾンでエタニティ・フラットを破る作戦は控えざるをえなかった。恐らくシャア=アズナブルもそうなる事を予測していた為に、自分にグランゾンを控えるよう言ってきたのだろう。

 

だが、エタニティ・フラットが完成するまでもうそんなに時間はない。トライア博士を信用していないという訳ではないが、もし本当にどうしようもなかった時、その時はグランゾンの力でエタニティ・フラットの破壊を試みようと思う。

 

最後に、これはどうでもいい話だけど、自分が蒼のカリスマだという事がトライア博士にバレていたようだ。恐らくこれはクロウさんを通して耳にしたのだと思われる。

 

更に驚くべき事にトライア博士も自分の……蒼のカリスマの映画を観ていたらしく、しかも映像ディスクまで持っているようなのだ。

 

更にはサインを強請られてしまい蒼のカリスマの姿で握手をする事になってしまった。お付きの助手の人にもサインを求められてしまったし、その時は何とも言えない空気だった。

 

まぁ、個人的には満更でもなかったし別に良いんだけどね。

 

さて、取り敢えずエタニティ・フラットに対する情報は一通り集まったので、明日は各敵組織に対する牽制の意味も兼ねて、あちこち回ってみようと思う。

 

手始めに最初は日本から行こうかな。ここからだと近いし、久し振りに陣代高校の皆の顔を見ていこうと思う。

 

小野D君やかなめちゃん、大貫さんに生徒会長さん、皆元気にしてるかなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕が思うに世界には二種類の人間がいると思うんだ」

 

雨が似合う人とそうでない人。そう抽象的に笑う青年は銀色に煌めく長い髪を揺らしながら、陣代高校の女子生徒、千鳥かなめへと歩み寄る。

 

側に人型の機械を侍らせる彼の背後には先程まで自分を殺そうとしていた人間が、事切れた様子でアスファルトの上で横になっている。

 

目の当たりにする人の死。自然のモノではなく人為的に引き起こされた殺人を前に、少女の顔は恐怖に歪む。

 

「い、いや! 来ないで!」

 

「どうして? あぁ、もしかして彼女の事を気にしているのかな? けど、それは仕方がない事だよ。何せこの結末は彼女自身が望んだ事なのだから」

 

「けど、だからって……殺すこと!」

 

「やけに僕を非難するんだ。彼も───相良宗介も人を殺したこともあるというのにね」

 

「っ!?」

 

「いや、純粋に人を殺したというのなら彼の方が数段上だ。何せ彼は幼い頃よりその手に銃を持ち、戦場の中にいたのだから」

 

「けど、それは、アイツが、あいつ自身が望んだ事じゃない! 仕方が無かったのよ! アイツにはそういう生き方しか……」

 

「まさか、そんな言い訳が本当に通るとでも思っているのかい?」

 

「っ!?」

 

必死なって紡いだ返しの言葉、それすらもあっさりと破られた事に、千鳥かなめの表情は追い詰められたモノへ変わる。否、事実彼女は追い詰められていた。

 

すぐそこまで迫る銀髪の青年、その面影がどこか友人である女艦長と重なった時────そいつは現れた。

 

「成る程、確かに貴方の言うとおり人殺しは所詮人殺し、喩えどんな理由があれどそこに差違はないのでしょうね」

 

「「っ!?」」

 

「ですが、今この場に於いてはそれは通らぬ理屈です。貴方がどれだけ屁理屈を口にしようが、貴方が一人の女の子を脅えさせ、追い詰めている事実は変わりようがありません」

 

蒼のカリスマ。自分の所属する組織でさえ、その正体は明らかにされていない。破界事変、再世戦争を通して最強の存在である彼が背後に立っていた事実に、銀髪の青年はその瞳を大きく見開かせる。

 

「さて、一度しか言わないので良く聞いてください。────今すぐ、その娘から離れろ」

 

そして奴から途方も無い怒気を感じた瞬間、側に控えていた二体の人型は蒼のカリスマの敵意を瞬時に察知し、その剛腕を生身の人間に向けて振り下ろすのだった。

 

 

 

 

 




銀髪「僕はね、この世界には二種類の人間がいると思うんだ。友達がいる人とそうでない人」

ボッチ「おい、なんでそれ言いながらこっち見たんだコラァ」

次回、スーパーロボット大戦Z~時獄篇~

おい、スパロボしろよ。

ボッチスタンバイ!ノシ


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