『G』の日記   作:アゴン

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最近漸く過ごしやすい気温、何事も捗りますね。




その98

 

 

 

 

※月@日

 

喜び野郎の呪いを受けて数日、グランゾンのコックピットにいるお陰で呪いの侵蝕はある程度抑えられ、今の所日記を書く余裕も失われていない。

 

常日頃から旅を続けていただけあって携帯トイレを常に買い置きしておいたから無意味に外に出ることも無く済んでいる。携帯トイレの後始末も袋に包んで纏めて捨てているからコックピット内は一応清潔を保てている。とは言え、汚物をまき散らしているのは事実だから、その内シュウ博士に怒られそうである。

 

けど、それもこの呪縛を打ち破らない事には始まらない。今自分がこうしている間にも博士はシラカワシステムを通して自分の呪いの侵攻を抑えてくれている。が、それがいつまでも続くとは思えない。この呪いが完全に自分の心を染める前にやるべき事を迅速に行うべきだろう。

 

自分が動けない代わりに世界各地を回って貰う事にしたブロッケン、彼は現在第三新東京都市付近に潜伏し、今分かっている情報を集めて貰っている。

 

そして今、その情報を纏めている所なのだが……どうやら状況は自分が思っていた以上に混沌としている様だ。

 

二手に分かれたZ-BLUE。ネオ・ジオンに対して牽制行動を行った彼らは、ダカールにてネオ・ジオンの軍と対立、戦闘を行った。

 

何でもダカールの議事堂では大統領やリリーナちゃん、マリナ=イスマイールさんもいたらしく、ジオンはそこを狙って襲ってきたのだと思われる。

 

というか、これもしかしなくても地球至上主義────いや、クロノの仕業だよね? 大統領の命が関わって非常に危険な事態だというのに連邦軍が動かないとか、そんなの自分達にとって不都合だと言っているようなものじゃないか。

 

しかも、当時地球至上主義のトップであるサイガスは大統領諸共ネオ・ジオン軍をN2爆雷で殲滅しようなんて考えていたみたいだし、ホントアレな人間だなサイガスってのは。

 

けれど先に記したZ-BLUEが戦ったお陰で事態は沈静化、ネオ・ジオン軍の中で猛威を揮っていた赤い巨大モビルアーマーもバナージ君とユニコーンの頑張りのお陰で無力化させる事に成功、大統領達も後からやってきた連邦軍に保護され、無事救助された。

 

しかし、本当地球至上主義────いや、サイガスの奴は手段を選ばなくなってきたな。クロノという後ろ盾が出来た為か妙に態度もデカくなってきているし……やっぱ以前顔合わせた時に消しとけば良かったかな。

 

その場にいられなかった事が非常に悔やまれるが……その分分かった事も大きかった為、取り敢えず今はこれで納得しておく事にする。

 

ブロッケンから聞かされる話から察するに、自分はネオ・ジオンとクロノに明確な繋がりがあるのではないのかと考える。つーか、それしか考えられなかった。

 

大統領の行動は連邦政府が厳重に管理、情報の規制を設けられている。それは現地に余計な混乱を抑える為と、敵対組織に攻撃を仕掛けられる事を防ぐ為だ。

 

けれど今回それはなかった。ネオ・ジオンが的確にダカールを襲ってきたのを鑑みるに、随分前からネオ・ジオンとクロノには繋がりが出来ていると自分は考えている。

 

時期的にはシャア=アズナブルが地球連邦に停戦協定を結んだ頃……いや、もっと前か? そのぐらい前には既にクロノとネオ・ジオンの間に何かしらの密約を交わしたのではないだろうか。

 

尤もシャア総帥……いや、クワトロさんが進んで奴等と組むとは考えにくい。確かに彼の目的の一つにクロノを表舞台に引きずり出す事にあるが、流石に直接奴等と手を組む真似は彼の人間性を考えても無いと思う。

 

それにもし地球側、それも連邦政府の中枢に根付く秘密結社と協力関係にあるなどとコロニーの人々に知られれば、それだけで大騒ぎになる。道徳論や損得の話を含めても、クワトロさんが連中と手を組む事はないと思う。

 

では一体誰か? ハマーンさん……も、ないな。あの人そういうの毛嫌いしそうだし、何よりサイガスの様な人間を俗物と蔑んでいそう。そんな人がクロノと秘密裏に接触しているなんてちょっと想像出来ない。

 

だとすると、消去法的にも可能性的にもあと残されたのは例のもう一人の赤い彗星かな。直接面と向かって会った事はないけれど、仮にも赤い彗星と呼ばれる位だから相当頭が切れるんだろうし、誰にも悟られずクロノと接触するなんて事も出来そうだ。

 

そしてその事に気付いているのもクワトロさんっぽいな。あの人もトレーズさんの所で色々学んだとか言ってたし、敢えて内側の敵を泳がせておくというのも考えていそうだ。……もしかしたらクワトロさんは自分が思っている以上にぶっつけ本番な事を考えているかもしれない。

 

さて、対ネオ・ジオン軍に向かったZ-BLUEに対する考察はこの位にして、次は今度はもう片方の部隊の事について纏めよう。

 

……というか、こちらの方はかなり複雑化している。向かわせたブロッケンも不用意に近づけない事から状況は詳しく把握出来ていないが、どうやらEVAのパイロットであるアスカちゃんが意識不明の重体らしいのだ。

 

何でも、新しく導入する予定だったEVA3号機のテスト中に侵蝕型の使徒に襲われ試験場は爆発、遠巻きに見ていたブロッケンも爆発による衝撃により吹き飛ばされ、事態の終始を見届ける事が出来なかったらしいのだ。

 

恐らく侵蝕型による暴走、それにより3号機は使徒となり、Z-BLUEはこれに対処する事になったのだろう。そしてその際に────。

 

……自分がいれば状況が変わっていた。なんて傲慢な事は言わないが、それでも当時その場に居合わせられなかった事を悔やまずにはいられなかった。

 

アスカちゃんとは自分がZ-BLUEと合流していた頃に結構な話をしたりする間柄だった。その内容が全部自分に対する挑戦状というのがアレな話だったが、それでも相手にしてくれる分だけ自分にとってはとても嬉しい事だったのだ。

 

やたらと自分がNo.1パイロットという事に強い拘りをもっていたり、周りに良く反発したりシンジ君やレイちゃんと衝突してたりしていたけど、彼女には他人を思いやる優しさがあった。

 

それが今回裏目に出てしまった。ブロッケンから話を聞かされた後、グランゾンの力を使ってNERVのネットワークにハッキングをしたのだが、どうやら本来なら3号機にはレイちゃんが乗る予定だったらしく、アスカちゃんは自ら志願したらしいのだ。

 

多分、彼女なりに思う所があったのだろう。自分以外のEVAパイロットに対し、対抗意識以外の気持ちが芽生え、シンジ君達を想っての行動の果てにあんな事が起きるなんて……間が悪いと言うには剰りにも残酷な結果だ。

 

幸い最悪の事態にはならなかったが、それでもアスカちゃんは面会謝絶の絶対安静、今もNERVの医療設備にて治療中の様子。

 

……早く元気になって欲しい所だ。彼女には自分も謝らなければならない事があるから。

 

“惣流”本当なら式波である筈の彼女の名字を間違えてしまった事、些細な事かもしれないが、今後彼女が目を覚ました時、コレを機会に話を弾ませてみようと思う。

 

最後に彼女が元気になることを祈って今日は終わりにしようと思う。

 

アスカちゃん、早く良くなってね。

 

 

 

※月*日

 

今日、久し振りに奴と遭遇した。

 

“ジェミニス”そしてアルテア軍、ジオフロントに襲撃してきた奴等に対し、Z-BLUEは窮地に陥りながらも、ダブルオークアンタとシェリルさんとランカちゃんの歌の力によって逆転、見事勝利を飾る事が出来た。

 

この時自分も参戦したのだが、どうやら戦うだけでも呪縛による侵蝕が速まるらしく、抵抗するだけで精一杯な自分は終始彼等の足を引っ張るだけとなってしまった。

 

しかもこの時にガドライトに悟られてしまったのか、随分と余裕そうな態度を見せていた。まぁそれでも普段から手を抜いている輩に負ける事はなく、この時は奴との一騎打ちでも押し勝つ事が出来たのだが、恐らく次に戦う際は呪縛の侵蝕の度合い的に勝つことは難しいだろう。

 

それに不味いことはそれだけでない。時の牢獄を打ち破る為に不動さんに連れてこられたランカちゃんとシェリルさんが、ミカゲの奴によって攫われてしまったのだ。しかもその時にジオフロントの地下深くに眠っていた神話型アクエリオン───アポロ君達のアクエリオンまでもが奴に奪われてしまった。

 

今後Z-BLUEはランカちゃんとシェリルさん奪還の為に動くと思われる。自分も乗りかけた船という事で一緒に行動する事になった。自分も二人の救出の為に力を貸したいと思うし、アルテア軍の捕虜となったMIXちゃんも助けたいと思う。

 

だけど、彼等と行動するにはグランゾンから出てくる必要がある。グランゾンに籠もりっぱなしでは要らぬ心配をヒビキ君達に負わせる事になるし、最悪自分の計画が悟られてしまうからだ。Z-BLUEにはアムロさんを始めとした勘の鋭い人が多いし、それだけは防がなくてはならない。

 

……何とか、歯を食いしばって耐えるしかないだろう。幸い自分が蒼のカリスマを名乗っているだけあって普段は仮面を付けてても誰も文句は言わないし(ルルーシュ君も仮面付けてるしね)、 表情を読まれる心配はない。後は自分がどれだけ“その時”まで自分を保てるかだ。

 

ブロッケンは今、自分に代わって世界のあちこちを探索して貰っている。下手をすればアマルガムといった裏組織に狙われる事も有り得るが……何とか頑張って貰うしかない。

 

ここからが自分にとっての正念場だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マクロス・クォーター格納庫、そこではミカゲによって攫われた二人の歌姫を取り戻すべく、Z-BLUEの面々が作戦会議を開いていた。

 

作戦の内容はフォールド波によるアルテア軍の本拠地の探索と、歌い手であるバサラ達の力で以てその道程を切り開くというモノ。しかし、それは言うほど簡単なものではなく、決して成功率の高い内容ではなかった。

 

これまでの次元科学とは一線を画す難易度、下手をすれば次元の狭間に落ちて永遠にさまよい続けるという大きなリスクを前に皆が決意を固めようとした時───彼の者が現れた。

 

「久し振りだねヒビキ、その様子だとこれからの戦いに迷いを抱いているようだね」

 

「アドヴェント!? どうしてここに?」

 

「なに、ちょっとした野暮用だよ。本当ならガドライトとの戦いに手助けしようと思ったのだけれどその必要もなくなったしね。艦長に頼み込んでここに来れるよう誘導して貰ったのさ」

 

いきなり現れる黒を引き連れた白き衣を纏う青年、その微笑みから不安を和らいで貰ったヒビキは戸惑いながらも嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「それで、野暮用とは何だ? お前がなにも目的もなしにここに来るとは思えないのだが」

 

「……確かに、時の牢獄が完成するまでもうそんなに時間は残されていない。済まないなゼロ、すぐに目的を済ませて我々は退散する事にしよう」

 

本当に申し訳ない。そう思わせる彼の態度にゼロは言葉をどもらせる。得体の知れないのは確か、しかしこれまで何度も窮地を救って貰って来た彼からすれば今の自分の態度は恩を仇で返すモノ、流石にそんな真似は出来ないと判断したゼロはそれ以上彼に何も言うことなく、大人しく引き下がる。

 

そんなゼロを見渡すと、アドヴェントと呼ばれる青年は辺りを見渡し、ある人物を射止めると微笑みを浮かべ────。

 

「やぁ、初めまして(・・・・・)蒼のカリスマ、君にこうして会えた事に私は喜びを感じているよ」

 

そう、心から喜び手を差し出してくる彼に対し────。

 

「────初めまして(・・・・・)、アドヴェント、私も貴方に会えてとても嬉しいですよ」

 

仮面を被る蒼の魔人も、応える様に出された手を握り返した。

 

まるで気安い友人同士の様に握手を交わす二人、周囲の人間が気安い二人にそれぞれの反応を示す中……。

 

仮面の奥、心の芯根で魔人は最大限の怒りと殺意を滲ませていた。

 

 

 

 

 




Qなぜここで彼が出てきたの?

Aここでは奴がヒビキ君に運命に抗うか従うか選択を迫られるから。

次回から一気に物語は進む予定です。

それではこの次もまた見てボッチノシ

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