『G』の日記   作:アゴン

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今回は長くなりそうでしたので前編後編に分けたいと思います。


その104 前編

 

 

 

『ゲッタァァァァ────』

 

『バスタァァァ─────』

 

『光子力────』

 

『『『ビィィィィーーームッ!!』』』

 

無限に広がる宇宙で、三つの閃光がそれぞれ巨大な槍となり、眼前に広がる群を駆逐していく。

 

アンチスパイラルとの決戦の舞台としてZ-BLUEが訪れた彼等の本拠地、隔絶宇宙。そこで待ち受けていた無量大数に匹敵する敵の数を前に、Z-BLUEは臆する事なく真っ正面から迎え撃つ。

 

既に退路はなく、進む事でしか活路を見いだせないと悟る彼等は、それぞれ搭乗する愛機に全ての力と信頼を注ぎ込み、目の前の破壊魔達を殲滅していく。

 

『ガンバスターとゲッターチームはそのまま前進、敵を薙払え! マジンガー、一旦後退してゼウスと行動を共にしろ』

 

『アムロ大尉とシャア大佐はカミーユ君、シン君と一緒に左翼に展開、ロジャー達の援護に回って!』

 

『了解した!』

 

『マイスター達は右翼、連携を駆使しつつ宇宙怪獣達を殲滅せよ!』

 

『了解!』

 

『この状況だ。狙い撃つ必要はねぇ、ハロ! 片っ端から乱れ撃つぞ!』

 

『ミダレウツゼ! ミダレウツゼ!』

 

戦力差は歴然、倒しても倒しても津波の如く押し寄せてくる敵の数。武装は磨耗し、弾薬も消耗していく中、それでも諦める事なく、鋼の勇者達は絶望を押し退けていく。

 

そして各艦の艦長及び戦術予報士達が圧倒的不利な状況を覆そうと思考を加速させ、各チームの戦力を十二分に発揮させていた。

 

『敵陣営からの攻撃、来ます!』

 

『アル、ラムダドライバはまだいけるな!?』

 

『無論、軍曹がへばらない限り継続可能です』

 

『それだけ言えれば十分だ。行くぞ!』

 

『僕も行きます! ATフィールド、全開!』

 

横から来るムガンの群の攻撃をアーバレストとEVAが防ぐ。ATフィールドとラムダドライバ、それぞれの機体が持つ特殊技能により防げたのはほんの一瞬の出来事だった。

 

次の瞬間にはムガンとインベーダー、宇宙怪獣の総攻撃が加わる。しかし、その頃には背後に控えていたZ-BLUEの旗艦“超銀河ダイグレン”の艦砲射撃が連中の陣に風穴を空ける。

 

『うりゃりゃりゃりゃ! まだまだ行くぜぇ!』

 

『おいダヤッカ、アーテンボローの奴また悪い癖が……』

 

『味方に当たらなければ構わん、撃って撃って撃ちまくれぇ!』

 

超弩級の戦艦から放たれる艦砲射撃に一斉掃射、これにより目の前の敵勢力の八割を消滅させる事に成功するが、しかしそれでも敵の勢いは減る事はなく、それどころか更なる軍勢を以て彼等に押し寄せてくる。

 

正に総力戦。ここまでくれば後は気力の勝負になってくる。相手が此方を物量でねじ伏せるのが先か、それとも此方がアンチスパイラルの母星を見つけるのが先か、一時も気が休まらない状況が続く中───。

 

『グラビトロンカノン────発射!』

 

隔絶宇宙に敷き詰められた敵勢力の中心に、突如として大きな穴が穿たれる。超重力により圧壊された敵の残骸の中心に佇むのは、日輪を背負いし蒼き魔神、ネオ・グランゾンである。

 

単騎にて敵の中心部に突っ込み、その力で暴れ回るその姿は、魔神というより鬼神の類に見える。手にした剣を振るえば周囲ごと両断し、物量で攻められても降り注がれる閃光と超重力によって全て粉砕されていく。

 

本来なら単騎で突っ込むのはアンチスパイラルに挑む上では自殺と呼べる行為だ。相手は無尽蔵の戦力を有している怪物、しかしそんな存在を相手に単騎で挑み、そして互角以上に渡り合っているネオ・グランゾンとその搭乗者である蒼のカリスマ────いや、シュウジ=シラカワも、アンチスパイラルに匹敵する怪物だった。

 

圧倒的物量に対して圧倒的な力で対抗するシュウジとグランゾン。マハーカーラを解放したことにより真なる力を呼び覚ました彼等の力に、初めて目撃したヒビキは戦慄を覚えた。

 

『ヒビキ君、気を抜かないで!』

 

『っ!?』

 

相方であるスズネ先生の一言によりヒビキは我に返る。見れば、目の前に巨大ワーム型のインベーダーがその口を開いて迫ってきている。幾らスフィアの力を手に入れたといっても、ヒビキはまだその力を十全に扱えていない。

 

このままでは呑み込まれる。ヒビキの全身が強張った時、ワーム型インベーダーの内側から無数の光の槍が突き出てくる。

 

“ワームスマッシャー”グランゾンの放つ光の槍が内側からインベーダーを破壊し、消滅させていく。

 

『ヒビキ君、今この状況の中で他の事に気を取られていると一瞬で死ぬぞ。疲れているのなら大人しく下がっていろ』

 

グランゾンから聞こえてくるシュウジの言葉にヒビキは震える。通信越しから聞こえてくるシュウジの声がいつもより低く、それでいて冷たかったからだ。

 

今、自分達が置かれている状況は決して楽観視できるモノではない。少しでも気を抜けば破壊魔達により戦線は食い破られ、戦況は一気に瓦解する。一瞬でも気を抜けない状況の中でやらかした自分の失態に気付いたヒビキは、余計な負担を掛けたシュウジに簡単な謝罪をし、戦闘に集中する。

 

『すみませんシュウジさん!』

 

『─────』

 

しかし、シュウジにはヒビキの声が届いていないのか、返事は返される事はなかった。この戦況だ、流石のシュウジでもそんな余裕はないのだろうと結論付けたヒビキは、相方であるスズネにも謝罪し、他の面々のフォローに回っていく。

 

いつもより余裕のないシュウジ、しかし、それはヒビキのミスを庇った事による苛立ちではなかった。操縦桿を握る手が震え、全身に底冷えする悪寒が襲い、頭に例の呪縛が染み込んでくる感覚がシュウジから余裕を奪っているのだ。

 

『くそ、こんな時にまでコレが来るのかよ』

 

脳髄にまで響いてくる呪いの旋律。以前体感した時以上の強さで自分を蝕んでくる呪いに、シュウジは抗うだけで精一杯となっていた。

 

呪いに蝕まれた所為で碌に操縦に集中出来ず、愛機の性能も半分以下しか引き出せていない。切り札であるネオを出した上でのこの体たらく、情けない自分にシュウジは更に苛立ちを募らせた。

 

『グランゾン前方に敵超弩級大型艦が接近中!』

 

『シュウジ!!』

 

眼前にアンチスパイラルの戦力であるアシュタンガ級が迫ってきている。触れただけで星すら塵とさせるその巨大さに圧倒されるも、Z-BLUE同様シュウジも退路は存在しない。

 

故に真っ向から潰すしかないと判断したシュウジはグランゾンの胸部装甲を展開し、マイクロブラックホールを創造させる。

 

『───収束されたマイクロブラックホールには特殊な解が存在する。剥き出しの特異点は空間そのものを蝕むのだ』

 

生み出すのは何人たりとも逃げる事など叶わない重力崩壊の臨界点。収束されるマイクロブラックホールを圧縮させ、凝縮させた事により周囲の空間を蝕んでいく。

 

『ブラックホールクラスター、発射!』

 

打ち出すのは、嘗て宇宙魔王に放った一撃とは比べ物にならない程の力を秘めた黒い太陽。光や空間、時間すらも呑み込むブラックホールを受けたアシュタンガ級は、声を出す間もなく穿たれた空間に呑まれていった。

 

一撃で星をも超えるアシュタンガ級を屠った事により、Z-BLUEの士気は上がる。けれど一部の者達はそんなシュウジを疑問に思い、またある者───今のシュウジの状態をよく知る者、特にC.C.は悲痛な面持ちでグランゾンの背中を見つめていた。

 

『────あっ、が、うぐぅぅぅぅ』

 

掠れた小さい声がグランゾンのコックピットに響き渡る。ブラックホールクラスターという神経を使う武装を遣ったシュウジは、彼の者から付けられた呪縛により悶え、苦しんでいた。

 

せめて声だけは漏らしてはならないとシュウジは必死に耐えているが、それでも呪縛の力は弱まる事はなく、寧ろこのまま人格を塗り潰そうと更にその力を増していく。

 

しかも呪いの所為で操縦に専念出来ていない。本来なら他の巨大ワーム型インベーダーや大型の敵を消滅させていた所をアシュタンガ級しか破壊出来ていない。

 

BHCだけではない。他の全武装───いや、グランゾンそのものがシュウジの状態に連動するように全ての性能を落としている。早いところこの状況を打破しなければ押し切られてしまう。

 

そして危機的状況はZ-BLUEにも刻一刻と迫っていた。倒しても倒しても途切れる事のないアンチスパイラルの軍勢、気力と体力が続く限り戦えるが彼等の力は無限ではない。

 

有限と無限、その差は最早天と地どころの話ではない。確たるとした差が自分達には存在していた。追い詰められた自分達に出来る事は一刻も早くアンチスパイラルの母星を見つける事、それこそがZ-BLUEとシュウジが狙う唯一の突破口である。

 

しかし、それすらも無駄と言う様に事態は更なる展開を迎える。

 

『な、何だ? 機体の動きが急に鈍く───』

 

『う、海だぁ! 黒い海に吸い込まれていくゥゥゥッ!!』

 

『バカな、宇宙に海があるわけ───』

 

Z-BLUEの足下に突如現れたのは底の見えない真っ黒な海、宇宙に海という有り得ない状況に誰もが驚愕する中、グランゾンの重力計数が異常数値を示した。

 

そして、足下の海が何なのかシュウジが理解した瞬間、凄まじい怖気と寒気が彼を襲った。

 

『これは、ただの海じゃない。コイツは視覚化出来る程に超高密度に覆われた』

 

 

重力の────海だ。

 

 

 

 

 

無限の軍勢に引き続き、此方を呑み込もうと現れる重力の海。徐々に追い込まれる状況の最中、Z-BLUEのパイロット達の脳裏にある感情が浮かぶ。

 

その名は───絶望。静かに忍び寄る巨大な黒い壁を前に彼等は重力の海に呑み込まれた。

 

 

 

 

 




当時グレンラガンを見ていた自分はアンチスパイラルの戦力に軽く引いていました。

星を投げ飛ばすとか、ポカンと見ていた自分が懐かしい(笑)


次回もまた見てボッチ

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