『G』の日記   作:アゴン

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中々の難産だった為、もしかしたらちぐはぐに感じるかもしれません。

後日、修正するかも。


その109

 

 

 

『カレン!』

 

ルルーシュのその悲痛な叫びにZ-BLUEの時が漸く動き出す。グランゾンの手に持った剣によってカレンは愛機である紅蓮と共に切り裂かれ、彼等の所まで吹き飛んでいく。

 

ルルーシュとスザク、蜃気楼とランスロットが吹き飛ぶ紅蓮を抱き抱えると、機体の凄惨な状態に二人は息を飲んだ。

 

左肩から右脇腹にかけて一刀両断された紅蓮、自慢の輻射波動も両断され、胴体も綺麗に裂かれている。ひび割れたコックピットからは、頭部から血を流しながら気を失っているカレンがグッタリと倒れ伏している。

 

呼吸が確認している事から命に別状はないようだか……一歩間違えればカレンは死んでいた。その事実を前に、ルルーシュの思考は一気に冷めていく。

 

『……どういうつもりだ?』

 

『…………』

 

『どういうつもりだと聞いている。答えろ! シュウジ=シラカワ!』

 

声を張り上げて目の前の魔神に向けて問いを投げ付けるルルーシュ、その瞳には戸惑いと怒りが滲み出ており、そしてそれはZ-BLUE全体の感情の現れだった。

 

スザクに目配りさせて紅蓮の回収を求めるルルーシュ、スザクもシュウジに対して問い質したい事はあるが、今はカレンに応急措置を施す方が先だと判断し、紅蓮を抱えて離れていく。

 

その場から離れるランスロットとすれ違う様に、他のZ-BLUEメンバーが前に出る。皆、彼の者に対して聞きたい事があるのだろう。パイロットの面々は皆、怒りと戸惑いの表情に染まっていた。

 

剣呑とした空気が隔絶宇宙に広がっていく。そんな中、グランゾンのパイロット───シュウジ=シラカワは不敵に笑みを浮かべ、次いで口を開いた。

 

『どういうつもり……か、ククク、君らしくないな。ゼロ、いや、ルルーシュ=ヴィ=ブリタニア。答えは既に結果としてここに出ているじゃあないか。分かりきっている問いを投げ掛けるなんて、君らしくない』

 

『お前……っ!』

 

彼の者の口から紡がれるその口振りに、一人を除いたZ-BLUE全員が理解する。信じたくない、嘘だ。シュウジという人間に少なからず信頼を置いていた者は、突然の出来事に未だ状況を認識出来ないでいる。

 

しかし、そんな彼等を嘲笑うかの様に彼の者の口から笑みが零れる。まさかここまで効果覿面だとは思わなかったという風に、彼の者は堪えきれない様に嗤う。

 

そんなシュウジの態度に全て悟ったのか、兜甲児は爆発しそうな感情を必死に堪えながら低い声色で一言訊ねた。

 

『……いつから、俺達を騙していた?』

 

『いつから? それは一体どこからの話なのでしょう? 月落下阻止の時? リモネシアでの戦いの時? インペリウムやインサラウムが侵攻してきた時? それとも……初めて貴殿方と接触した時ですか?』

 

『そんな、初めから俺達を騙していたのか!?』

 

『人聞きの悪い。私はこれまでただの一度も貴方達の仲間になった覚えはありませんよ』

 

赤木の必死の訴えを、シュウジは冷ややかな視線と共に返す。

 

『私が貴方達に近付いたのは力を得る為、シンカへの道に至る為利用させて貰ったに過ぎません』

 

『力を得る為だと?』

 

『そう。貴方達Z-BLUEは常に強者との戦いを強いられてきた。危機的状況に陥るほどその力を爆発させ、如何なる困難をも突破していく。特に大グレン団の皆さんは思い当たる節があるのではないですか?』

 

他にもゲッター線や光子力といった超エネルギー、GNドライヴやゼロシステム等の人類の叡智が詰まった超システムと様々な動力、機能を有しているZ-BLUEは、自分から見れば巨大な力の塊だとシュウジは語る。

 

『故に、私は貴殿方に近付いたのです。最も可能性に満ち、最も混沌としていた貴殿方の部隊は非常に優秀で、尚且つ興味深かったですよ』

 

Z-BLUEは自身の期待を良い方向に大きく裏切ってくれたとシュウジは語る。事実、ほんの数年前までは戦う事すら出来なかった者達が、今では地球最強の部隊の一角を担っている。

 

Z-BLUEの成長速度は異常で、尚且つ今も成長を続けている。だからこそシュウジはZ-BLUEを利用することを決めたと、シュウジは語る。

 

『貴殿方には良くも悪くも力が渦巻いている。ならば私はそれに乗っかり身を任すだけ、お陰で私自身シンカへ至り、厄介だったアンチスパイラルも打ち倒す事が出来ました』

 

敵対組織の中でも特にアンチスパイラルは厄介な存在だった。あれだけ強大な力を有していても、本陣である奴等の母星を特定する事が出来なかった。ニアの指に嵌められた指輪がアンチスパイラルの居場所に通じる唯一の存在だと気付いた時は運命を感じた。

 

『お前は……力を得て、一体何をするつもりなんだ』

 

力、力と語るシュウジにアムロが疑問の声を投げ掛けて同時に彼の者に意識を集中する。目の前にいる魔人は本当にシュウジなのか、彼の背後にいるシュウの存在を確める様に意識を集めるが……。

 

(どういう事だ。シュウ=シラカワの……奴の存在が感じられない)

 

そして気付く、シュウジの背後にいつもは見守る様に在ったシュウの存在が消えている事に、そして疑問が浮かぶ。今自分達と相対している男は、本当にシュウジ=シラカワなのだろうか、と。

 

しかし、今は事実を確認している余裕はない。何故なら……。

 

『───ワームスマッシャー』

 

頭上から無数の光の槍がアムロを含めたZ-BLUEに降り注いできたのだ。突然の奇襲に動揺するZ-BLUEだが、その一撃は警告代わりだったのか、Z-BLUEの誰にも当たる事なく暗闇の宇宙に消えていく。

 

いきなりの攻撃でZ-BLUEの敵対心を煽っていく。端から見れば敵対行動にしか見えない魔人の行動だが、アムロには何故か別の意図があるように思えた。

 

『私の目的、その事を語るのならまず私の本来の姿を名乗る必要がありますね』

 

『本来の姿……だと?』

 

『蒼のカリスマ、私はこの世界に来たときはそんな風に名乗っていましたが、本当は違います。────サイデリアルの幹部が一人、シュウジ=シラカワ。それが私の本当の名であり、本来の私の姿です』

 

『サイデリアルだって!?』

 

これまでの戦いで時折耳にしていたその単語にZ-BLUEは揺れ動く。

 

『サイデリアルの中でも私は特殊な立場にいましてね。ある程度の自由は許されているのですよ。尤も、特殊過ぎるが故に組織の中でも私の事を知る者は一部しかいませんがね』

 

『そんな私が課せられた任務、それはこの星の戦力の増強とある程度の繁栄。……そうですね、分かりやすく言うならば来る収穫の為の飼育、といった方が良いでしょうか?』

 

『飼育、だと!?』

 

『先程も言いましたが、貴殿方は強くなった。破界事変の頃とは比べられない程に……様々な逆境を乗り越えてきた貴殿方はまさに熟れに熟れた果実と言ってもいい。中でもスフィアリアクター、クロウ=ブルースト、セツコ=オハラ、ランド=トラビスは目覚ましい成長を遂げてくれた』

 

『……まるでアサキムみたいな事を言うんだな』

 

『否定はしませんよ。尤も、彼は折角育てた果実を横取りする盗っ人の様なものですがね』

 

あまり一緒にして欲しくはない。そう嘆息しながら語るシュウジに対し、Z-BLUEの……彼と親しかった者達の多くは怒りによって震えていた。

 

信じていた信頼を裏切られ、仲間だと思っていたのに裏切られた。その怒りは彼等の力へと変わり、握り締めた操縦幹から己の機体へ浸透させていく。

 

そんな中、ヒビキだけは未だ混乱の只中にいた。自分が慕っていた兄貴分が仲間を攻撃し、瀕死の状態に追い込んでいる。その事実が彼にとって受け入れ難い現実として押し寄せてくる。

 

『嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。シュウジさんが敵だなんて嘘だ。だって、だってシュウジさんは俺にとって目標なんだ。頼もしくて優しくて、誰よりも強くて……そんな人が俺達の敵だなんて───嘘に、決まってる』

 

『ヒビキ君っ!』

 

動揺を通り越して混乱しているヒビキを正気に戻そうと声を掛けるが、彼の様子を見て言葉が出なくなった。操縦幹を握り締めた手は震え、瞳は視点が定まらず泳いでおり、荒くなった呼吸は軈て過呼吸の状態へと症状が重くなっていく。

 

徐々に状態が酷くなっていくヒビキ、そんな彼を落ち着かせようと必死に呼び掛けるスズネだが、彼女の言葉はヒビキに届く事はなかった。

 

『嘘……ですよね、シュウジさんが俺達を騙していただなんて、そんなの嘘ですよね』

 

───見ていられなかった。嘘だと現実を認めず、藁にも縋る思いでシュウジに助けを求めるヒビキの姿がとても辛く見えた。

 

どれほど彼を信頼していたのだろう。どれほど彼の者の事を信じていたのだろう。見ていて辛すぎるヒビキをそれでもシュウジは……。

 

『貴方が私の事をどう思おうが勝手ですが……押し付けるのは止めて頂けますか? 正直────鬱陶しいですよ』

 

心底ウンザリした様子で突き放した。

 

『っ!!!!!!』

 

瞬間、ヒビキ達の乗る機体ジェニオンの内部にあるスフィアが稼働し、エネルギーを発した。放出する莫大なエネルギーを推進材として、ジェニオンは一瞬の内にグランゾンの所へ肉薄する。

 

そして爆発する感情をそのままにヒビキはジェニオンの拳を見舞う。一瞬の合間に繰り出されたその一撃は、速さだけ見れば過去最高の一撃だった。

 

しかし───。

 

『なんだ、この拳は? こんなモノがお前の出せる限界なのか?』

 

グランゾン……シュウジ=シラカワはさも当然の様に片手で受け止め。

 

『なまっちょろいぞォぉぉっ!!』

 

もう片方の手を拳に変えてジェニオンの胴体に叩き込んだ。吹き飛び、足場と化した銀河に何度も激突していく中、悲鳴にならないスズネの叫びがコックピットに鳴り響く。

 

急いで機体を建て直さねばとヒビキに声を掛けるが、ヒビキは気絶しているらしくスズネの言葉に反応しない。

 

そして倒れたジェニオンにグランゾンが迫る。その手には紅蓮を破壊した大剣が握り締められており、この後自分達に訪れる瞬間を想像したスズネはその顔を真っ青に青褪める。

 

『そう言えば、この機体にもスフィアが積まれていたな。元はガドライトのモノらしいが……まぁいい。引きずり出して組織への手土産にしよう』

 

そう言って魔神が剣を振り上げた瞬間、Z-BLUEの艦隊から砲撃が放たれ、グランゾンの行く手を遮っていく。

 

『総員、グランゾンに攻撃。奴をヒビキに絶対に近付けるな!』

 

Z-BLUEのまとめ役、ブライトのその一言によりZ-BLUEは一斉に動き出す。最早言葉は不要と押し寄せてくる鋼の勇者達を前に……。

 

『そうか、それが君達の選択か────いいだろう』

 

シュウジは向かってくるZ-BLUEに向き直り。

 

『ならば、ここで君達の旅は終わる。新世界の開闢に散る───華となれ!!』

 

押し寄せてくる軍勢を前に真っ正面から受けて立った。

 

 




遂に始まりました。主人公対スパロボ軍団。
果たしてボッチはこの苦境を乗り越えられるのか、次回もお楽しみに!


次回、神々の黄昏(ラグナロク) 決戦編その一

次回もまた見てボッチノシ

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