『G』の日記   作:アゴン

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時獄篇最終局面、開始。


その110

 

 

 

 

───最初の頃、俺はあの人に対してあまり良い印象を持っていなかった。それは再世戦争と呼ばれた頃、世界が動乱の真っ只中にあった時の話。

 

父に引き取られ、姉と共に生活を始めたばかりの頃の俺は酷く閉鎖的で、肉親以外に心を開かず、誰かと触れ合う事すらしてこなかった。

 

そんな自分だったが、父からジークンドーを学び、姉と共に技の研鑽に励み、狩りを始めとしたアウトドアな日々を過ごす内に徐々に変わっていった。しかし、そんなある日あの人が現れた。

 

 

シュウジ=シラカワ。旅人を自称するその人は父と意気投合するや否や、暫くウチにいろと父に誘われたのだ。──父の誘いを受け、シュウジさんは暫くの間我が家の居候になるのだが────正直、この時の自分はシュウジさんの事を快く思ってはいなかった。

 

父と姉と過ごし、少しずつあの日の悲劇を忘れる事ができ始めたというのに、シュウジさんの存在は当時の俺には、自分の居場所を害する侵略者の様に思えてならなかった。

 

父と意気投合し、姉とも仲良くなるシュウジさんを見て……俺は怖くなった。自分の居場所がなくなりそうで、自分の大切な人が奪われそうで、それが怖くて堪らなくて、そんな思いを誤魔化す為に……時々俺は酷い暴言をシュウジさんに吐いてしまった。

 

悪いと思っても昂った感情が素直にシュウジさんに謝る事を赦さなかった。幾ら頭で理解していても、胸から沸き上がってくる自分のドス黒い感情を抑えるので精一杯で、自分ではどうしようもなかった。

 

シュウジさんとの組手に敗北した事でより高まる不快感、このままではどうにかなりそうだと思った時、それは起こった。

 

巨大な熊、時空振動により変異した突然変異の個体、近隣の集落を荒らし、当時自分達が住んでいた山の生態系に深刻な被害をもたらしていた害獣。

 

見上げるほどに巨大な熊、その巨体に似合わず俊敏な動きで徐々に追い詰められた自分は、足を挫いてしまい身動きを取れずにいた。

 

いや、本当なら逃げ切れた筈だった。けれど眼前に迫る死という恐怖があの日の母の光景を思い出してしまい、俺は動く事が出来なかったんだ。

 

もうダメかと思った。恐怖で全身が竦み上がり、体が震えて動けない自分を前にあの人が───シュウジさんが助けてくれたんだ。

 

動けない俺を庇って、必死に戦うシュウジさん。俺が幾ら逃げろと叫んでも聞き入れず、あの巨大な熊と正面から向かいあって殴りあった。

 

腕の一振りで大木をへし折る巨熊、受ければ致死確定の一撃を流し、捌き、反す彼の体捌きは当時の俺には……いや、今でも眩しく見えた。

 

そして最後に見た抜き手を最後に熊を見事倒したシュウジさん。動けない自分を背負い、父と姉に合流しようと歩く彼に俺は訊ねた。何故逃げなかったと。

 

『いやいや、ヒビキ君を置いて逃げられる訳ないでしょ、そんな事をすれば俺、姐さんとオジさんに殺されちまうよ』

 

『本当にそれが理由なのかよ』

 

『…………』

 

『あんたは、怖くないのかよ。死ぬのが、目の前で誰かが死ぬことが……怖くないのかよ』

 

『怖くないわけないだろ』

 

その時初めて聞いた真剣な口振りのシュウジさんに、俺は言葉を詰まらせた。

 

『死ぬのが怖くない。そんな事が言えるのはそんな経験をした事の無い奴か本物の狂人かどちらかだ。本気で死ぬのが怖くないなんて言える奴は殆んどいないさ』

 

『じゃあ、なんで……』

 

『理由なんて必要か?』

 

『え?』

 

『俺が君を助けたいと思った。あの時は俺しかあのグリズリーと闘える人はいなかったし、何よりヒビキ君を置いて逃げる訳にもいかないって思ったからだ。だから、多分この事に理由とか求めるのは……ちょっと違う気がするんだよ』

 

助けたいと思ったから、だから見捨てなかったし戦えた。そんな滅茶苦茶な持論を持ち出すシュウジさんが……俺は、眩しくて仕方がなかった。

 

『まぁ、結局はそんなもんだよ。理由とか理屈とか後から考えれば幾つでも思い浮かぶんだ。だったら、今できる事を全力でやりきった方がいいと思わないか?』

 

そう笑顔を向けてくるシュウジさんに、俺は今度こそ何も言えなくなった。この人を見ていると、何だか今までこの人に対して抱いていた感情が……何だか酷く幼稚なものだと思えたから。

 

俺はこの後シュウジさんに謝る事になる。貴方に対してどんな感情を抱いていたのか、どんな風に思っていたか、それらを含めて謝ってみたら……。

 

『うん、知ってた』

 

と、笑顔でそう返された。

 

同時に俺は思った。この人みたいに強く、優しい人間になれるだろうかと。

 

この時俺は願った。この人の様にいつか誰かを救える様な人間になりたいと……この日救われた俺の様に。

 

───そんな、懐かしい夢を見ていた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒビキ君、ヒビキ君!」

 

「……あ、う」

 

聞こえてくるパートナーのスズネの声を耳にして、ヒビキの意識が徐々に回復していく。歪んだ視界が正常に戻り、彼が最初に見たのは此方を心配そうに覗き込んでいる、涙を目尻に浮かべたスズネの顔だった。

 

意識を取り戻した自分を見て安堵の表情を浮かべるスズネ、一体自分はどうしたのかと気を失う寸前の出来事を思い出した瞬間、ヒビキの目は大きく見開き、上体を起こしてモニターに映る眼前の光景を目にし───絶句する。

 

彼の視界の先には、蹂躙されていくZ-BLUE(仲間達)と、その奥で佇む魔神の姿が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうしました? もうおしまいですか? 仮にも貴殿方は地球を代表する最強の部隊なのでしょう? ならば、もう少し抗ってみせてください』

 

膝を尽き、倒れ、屈するスーパーロボット軍団を前に、シュウジは嘲笑の笑みを浮かべる。その一方で、後方に控えるネェル・アーガマの艦長オットー=ミタスは、目を剥く程に驚愕していた。

 

オットーはこれまで数多くの修羅場を潜り抜けてきた経験により、多少の度胸を付けたつもりでいた。アマルガムやマーティアルを始めとした組織的テロリスト、ミケーネやインベーダーという人外の侵略者、そしてネオ・ジオンとの決戦を経てここ、アンチスパイラルの本拠地に乗り込むまで自分は強く成長できたと思っている。

 

無論、それはZ-BLUE全員に言えることだ。バナージやシンジといった子供達も厳しい現実に直面しながらも必死に抗い、それに見合った強さを得ている。時に挫き、時に折れそうになりながら、それでも立ち上がる彼等の姿は大人として、同じ男として誇りに思う。

 

だから、今回も乗り越えられると思っていた。どんな怪物が相手でも自分達なら大丈夫と、そう信じて疑わなかった。─────だというのに。

 

『こんなにも……差があるというのか』

 

目の前に広がる倒れた鋼の勇者達を前に、オットーはポツリと口にする。それは、目の前の魔神に挑んだZ-BLUEの誰もが抱いた感想だった。

 

世界を相手に一人で戦ってきた男“蒼のカリスマ”改めシュウジ=シラカワ、そして彼の者の手足であり、従僕であり、刃であり楯である蒼き魔神の真の姿“ネオ・グランゾン”。

 

破界事変から知られているその存在が、現在自分達の敵として立ちはだかっている。未だ敵対する理由やシュウジの真意を図りかねているが、彼の向けてくる敵意は本物。故にZ-BLUEは全力で彼の魔神に挑む決意をしたのだが……結果はご覧の有り様だった。

 

機動力のあるガンダムやヴァルキリー部隊は魔神の発する重力によりその機動性を奪われ、特機戦力であるスーパーロボット達も常時降り注いでくる光の槍に足止めを受け、身動きが取れない内に魔神の攻撃を受けてしまった。

 

唯一無傷なのは装甲の薄いAT、それ故に危機能力が他と比べて段違いに高いキリコとそのATだけだった。

 

彼の異常なまでに高い危機回避能力は事前にネオ・グランゾンの間合いから外れ、重力の雨に囚われずに済んだ。しかし、火力の低いATではネオ・グランゾンの張るバリアを突破するには至らないでいる。

 

開戦直後に行われた僅かな攻防、それだけで大部分の戦力が削られてしまった事に、オットーは自身が絶望の淵に立たされている錯覚を覚えた。

 

そんな時、重力の雨に抗いながら立ち上がる者がいた。それは光の神、ゼウスの姿を模した鉄の巨人、マジンガーZだった。

 

『やっと立ち上がりましたか。遅いですよ、あのまま返事がなかったらそのまま圧壊していた所ですよ』

 

『そうかい。そりゃ悪かった……な!』

 

のし掛かる重力を振り払い、勢いを載せたままマジンガーを走らせる甲児、額から流れる血を拭いもせず、単身ネオ・グランゾンに殴りかかる。

 

ネオ・グランゾンの張る不可視のバリアを突破し、マジンガーの拳が迫る。しかし、それを許す魔神ではなく、即座に反応し先程のヒビキの様に片手で防ぐ。

 

『ほぅ、ネオ・グランゾンの歪曲フィールドを強引に突破するとは、流石兜十蔵氏の最高傑作。超合金Zの強度は伊達ではありせんね……しかし』

 

ゼウスの力と姿を模したマジンガーZに素直な称賛を贈るシュウジ、しかし次の瞬間ミシミシと金属の軋む音がマジンガーを通して甲児の耳を通す。まさか、甲児が驚愕に目を見開いた瞬間、マジンガーの拳はグランゾンの手によって粉々に握り潰されてしまった。

 

『たかがミケーネの神に手子摺る様な貴方では、このネオ・グランゾンの相手にはなり得ません』

 

『っ!』

 

拳が握り潰され後退るマジンガー、それを逃さないとグランゾンが剣を片手に迫る。眼前にまで迫る巨大な剣を前に甲児が覚悟を決めて口を結んだ瞬間、金色の巨人が間に入り、マジンガーに迫る凶刃を防いでみせた。

 

『ゼウス!』

 

『甲児、一旦下がるのだ。私が時間を稼ぐ!』

 

光の巨神、マジンガーの基となったゼウスがグランゾンに肉薄する。サイズ差にモノを言わせて力付くで押し込もうとするゼウス。

 

『光の巨神、ミケーネの神よ。如何に貴方の力があっても私の前では意味を成しませんよ』

 

全力で押し込もうとしているのに微動だにしない魔神にゼウスの表情が曇る。そして彼が口にする言葉の意味を理解したゼウスはシュウジから発する殺気に反応し、即座に距離を取る。

 

『私の殺気に反応しましたか、その察知能力は高く評価しますが……残念ながら、その選択は間違いです』

 

魔神の胸部装甲が展開し、強大な重力場が隔絶宇宙で荒れ狂う。暴れる重力の渦が一点に収束していくと黒い太陽がグランゾンの腕の中に顕現する。

 

『例え光であろうともこの一撃から逃れる事は叶わない。───ブラックホールクラスター……発射ッ!』

 

肥大化する黒い太陽、光すら呑み込む重力の塊が放たれ、ゼウスへと迫る。幾らシンカを果たしたゼウスでもこの一撃を受けるのは不味い。しかし避けてしまえば背後にいるZ-BLUEが巻き込まれてしまう。

 

受けるか避けるかの選択肢が迫った瞬間、ゼウスは即座に受ける事を選び覚悟を決めた───瞬間。

 

『ゼウス、そこをどけぇっ!』

 

『っ!?』

 

背後の声に一瞬振り返るとゼウスは納得した様に跳躍し、黒い太陽を回避する。その先にはゲッターの力を高めている真ゲッターと真ドラゴンの姿があった。

 

『ストナァァァァサァァァァンシャインッ!!』

 

『ゲッタァァァビィィィィムッ!!』

 

ぶつかり合うゲッター線と重力の渦は互いに貪る様に喰らい合い、光となって轟音と共に散っていく。

 

軈て満たされた光が晴れると、シュウジの視界には多くのスーパーロボットが立ち上がっていた。その中には、気を失って戦闘不能な状態にあったジェニオンの姿が確認できている。

 

『ふむ、どうやら先程の一撃でグラビトロンカノンの力が弱まった様ですね。シンカを果たしたとは言え、まだ私も未熟という訳ですか』

 

不敵に、そして挑発的に嗤うシュウジにZ-BLUEの怒りのボルテージは静かに上がっていく。しかし、そんな彼等を前にしてもシュウジは余裕の態度を崩さずにいる。

 

彼にとってこの程度はまだ序の口、故にまだまだ戦いは終わらない。

 

『さぁ、続きを始めよう。この戦いの勝者こそ新世界の導き手に相応しい。来るがいい、ここがその分岐点、天下分け目の決戦だ』

 

その言葉を皮切りに再び突っ込んでくるZ-BLUE、今の攻防で既に容赦を捨てたZ-BLUEは今度こそ自分を殺しに来る。そんな彼等を前に……シュウジはどこか寂しそうに笑っていた。

 

 

 




ボッチ念願の(?)ラスボスに昇格!
ヤッタネ♪

Qボッチと戦うにはまずどうしたらいいの?

Aまずシナリオを最低でも五週し、全ルートを解放してください。
その後各シナリオポイントを全て獲得し、(分岐ルートは除く)ボッチの好感度を最大にして下さい。
最後に部隊でのボッチの撃破数をカンストさせ、最後の選択肢で“このボッチ!”を選択すると裏ステージラグナロクが解放されます。

クリアをするとボッチ主人公ことシュウジがプレイアブルキャラとして選択可能、シュウジの章が解放されます。
皆さん是非チャレンジして下さいね♪









嘘だけどね!


次回神々の黄昏(ラグナロク) 決戦篇その二

次回もまた見てボッチノシ

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