『G』の日記   作:アゴン

134 / 266
長くなってすみません。

ボッチの戦い、もう少し続きます。


その112

 

 

 

 

強すぎる。重力を操る魔神を前にZ-BLUEはそんな思いを抱いていた。慢心などしていなかった。覚悟はしていたし、必ず勝つという意気込みもあった。

 

絶対に負けない。負けるわけにはいかない。嘗て無い強敵を前にZ-BLUEはその全てを賭けて蒼き魔神、グランゾンへ挑んだ。

 

絶対に負けてはいけなかった。この敗北だけは許されなかった。…………だというのに彼等は現在敗北という名の泥沼に嵌まりつつあった。

 

有利だった戦況は瞬く間に覆り、主戦力であるスーパーロボット軍団は全滅寸前まで追い込まれ、機動力を誇るガンダムやYFシリーズ等も魔神の操る超重力によって落とされてしまった。

 

絶対絶命……いや、もはや打つ手がない状況。作戦も策略も圧倒的な力の前に成す術はなく、ただ蹂躙されるだけとなった。

 

誰もが絶望に沈んだ───その時だった。ヒビキに迫る魔神の凶刃を瞬く金色に輝く一振りの剣が防いだのは。

 

それは旧ZEXIS達にとって馴染みのある機体、嘗て同じ戦場で共に戦った頼りになる戦友達が乗っていた機体、一万と二千年の時を越えて甦った太陽の翼。

 

『神話型……アクエリオン』

 

光輝くその機体を見て、アマタはその名を口にする。金色に煌めく太陽の翼が蒼き魔神の一撃を防いでいる。その光景に驚くZ-BLUEは、同時に己の内から沸き上がる力の衝動を感じた。

 

『まさか、貴方まで表舞台に出てくるとは……流石に予想外でしたよ。不動ZEN、貴方も私の前に立ちはだかるおつもりですか?』

 

機械天使、太陽の翼、嘗て同じ戦場に立ち、その力を目の当たりにして来たシュウジはその口振りに僅かな警戒心を含ませる。目の前の敵は危険、されど脅威にはなり得ない。何故なら目の前の神話の使徒からは欠片ほどの敵意も感じられないからだ。

 

『………シュウジ=シラカワ、一つ訊ねたい。進化という在り方に間違いがあると思うか?』

 

漸く目の前の存在が口を開いたと思えば、分かりきった質問にシュウジは鼻で嗤う。下らないと、そう吐き捨てる様にシュウジは不動の問いに応えた。

 

『では、逆にお聞きしましょう。貴方は全ての動植物にお前の進化は間違っていると訊ねるつもりですか? それはもはや傲慢を通り越して……滑稽というものではないのですか?』

 

進化とはその生命体が生きる為に、種を存続させる為に環境に適応する遺伝子の変化。生きる為に変わる事を論じるのは前提からして間違っている。生命は変わるために生きるのではない。生きるからこそ変わっていくのだとシュウジは語る。

 

『ふっ、確かに生きる事に対し善悪、正過を問うのもおかしな話だ。……ならばもう一つ問いたい。お前のそのシンカはお前自身が望んだ事なのか?』

 

『…………』

 

不動のその問いかけにシュウジは言葉を詰まらせる。シンカ、進化とは違う生命の次なる極致、その至り方と在り方を今回の戦いで知る事となったシュウジは、彼の問いに応えられずにいた。

 

『───ふっ、それは愚問というものですよ。シンカとは成るべくして至るもの、そこに議論の挟む余地などありはしません』

 

『…………そうか』

 

シュウジの答えに納得したのか、不動は笑みを浮かべたまま目を伏せる。そんな彼に対してシュウジが訝しげに思った時───それは起こった。

 

『────これは、オリジン・ローだと?』

 

アクエリオンから……いや、神話型アクエリオンから通して流れてくる力の波動にシュウジの目が開く。光輝く暖かな光、それは先のネオ・ジオンとの決戦の時、落下するアクシズを止めようとした時に見せた───人の、心の光。

 

『そうか、そういう事か!』

 

背後にある───穿たれた隔絶宇宙の先にある蒼い星、地球を見てシュウジは初めて己の過信に気付いた。彼が、不動ZENがここに来たのは戦う為ではない。彼がこの地に駆け付けたのは地球から希望という光を届ける為にあったのだ。

 

『シュウジ=シラカワ、確かにお前の言う通り、進化の形というのは誰かに定められるモノではない。不確かで不安定、そしてそれ故に命に可能性が芽生えてくる。───シンカもまた然り』

 

『…………』

 

神話型アクエリオンから溢れでる光を前に、シュウジは語る事なくその光景を眺めている。本来ならここで何らかの行動を起こすはずの彼に、不動は笑みを浮かべる。

 

軈て光はZ-BLUEを包み込み、吸い込まれるように消えていく。消滅した訳ではない。吸収された光はZ-BLUEの機体から溢れる様に再び輝きを放ち始めた。

 

『これで、私に出来る最後の応援(エール)は終わった。鋼の勇者達よ、ここから先の創星は……君達次第だ』

 

そういって神話型アクエリオンはその姿を消していく。光に包まれながら消えていく最中、不動ZENは最後に蒼き魔神へと向き直り……。

 

(シュウジ=シラカワ、君の本当の戦いもここから始まる。……負けるなよ)

 

シュウジの、彼の者の本当の状態を察している不動はZ-BLUEだけでなく、魔人にまで応援(エール)を送り、隔絶宇宙から消えていった。

 

残されたのは満身創痍のZ-BLUEと殆ど無傷のグランゾン、静まり返る隔絶宇宙、最初に聞こえてきたのは熱気バサラの歌だった。

 

『さぁ、サドンデスステージの幕開けだ。寝てる場合じゃねーぞ、お前ら!』

 

『あぁ、俺達はまだやれる!』

 

『戦っているのは……俺達だけじゃない!』

 

『地球にいる皆が、頑張れって言ってくれている。皆も、諦めずに戦っているんだ!』

 

『だから、私達もっ!!』

 

『諦める訳にいくもんかぁぁぁっ!!』

 

光に包まれた事により地球の──人の暖かさを知る事となったZ-BLUE、その暖かさに後押しされ、彼等は最後の力を振り絞り、遂にその段階へ踏み込む。

 

ユニコーンとダブルオークアンタから放たれる翠の光、真ゲッターもその輝きに感化され、進化のエネルギーを溢れさせ、それに触れたジェニオンが破壊された機体を一時的に再生させていく。

 

EVAもダンクーガもASも、無機物有機物問わずその力を示していく。隔絶宇宙を覆う程の光の波動、それらを前にシュウジは凶悪な笑みを浮かべる。

 

『成る程、擬似的にとは言えこれで貴方達もシンカ……つまり、私と同じ土俵に立てた訳だ。良いだろう、地球全人類が見せたシンカの輝き、この私に示してみろ!』

 

『シュウジさん!』

 

『『『いくぞぉぉぉぉぉっ!!』』』

 

『さぁ来い! これが正真正銘の……ファイナルラウンドだ!』

 

全人類の願いを託されたZ-BLUEと独り戦い続けた男の───最終局面が始まった。

 

『いけ、フィンファンネル!』

 

『奴を足止めしろ!』

 

切り込んできたのは赤と白、宇宙世紀の時代にその名を轟かせる二人のエース。互いの死角を補い宇宙を駆けるその様はまさに彗星と流星、勢いを付けた二機はネオ・グランゾンをファンネルで牽制しながら、魔神の両脇を通り抜けていく。

 

『うぉぉぉぉっ!!』

 

『あたれぇっ!』

 

『乱れ打つぜぇっ!』

 

赤い彗星と白い悪魔に翻弄され、僅かに動きが乱れた魔神の頭上にビームのシャワーが降り注がれる。歪曲フィールドの展開装置が破壊され、未だ修復されていない今の状態のグランゾンでは降り注がれる弾幕を防ぐ手立てはない。

 

故に後ろに下がるしかない。舌打ちをしながらネオ・グランゾンを後ろに下がらせ、Z-BLUEと距離を開ける。まずは背後にいるエース二人から葬ろうと転進させた時、足下から一隻の船が浮上してくる。

 

『ダナン、急速浮上。後にグランゾン(チート野郎)にトマホークをぶち込んでください!』

 

『アイアイマム!』

 

唐突な足場の崩壊。銀河を海として認識し、これまでグランゾンに気取られなかったダナンの強襲に、ネオ・グランゾンのバランスが崩れる。そこへ大型のミサイルがネオ・グランゾン目掛けて放たれるが、ネオ・グランゾンはバーニアを噴かせ、体幹を横に回転させる事でこれを回避する。

 

しかし、そのネオ・グランゾンの行動も予期していたのか、回避地点の所に複数の機影が既に迫っていた。

 

『合わせるぞ、バナージ!』

 

『了解です。刹那さん!』

 

翠に輝く二つの機体、共にガンダムの名を冠する機体がグランゾンに肉薄する。それぞれが託された願いと力を掛け合わせ、蒼き魔神に接近戦を挑む。

 

可能性の獣と革新された人類、いずれも人としての枠組みから外れつつある二人が、その力で以て魔神に挑む。その機動性と加速で魔神を翻弄しようと試みる二人、しかし魔神はその体格に似合わず俊敏な動きで二人を迎え撃つ。

 

『……遅いな。私の知ってる剣の使い手は君達よりも遥かに速く動いていたぞ』

 

『くっ』

 

『これでも……届かないのか』

 

『人類の革新者、そして可能性の獣、貴方達を生かしておいたら後に大きな禍根となる。故に、二人にはここで終わってもらいます』

 

二機の攻撃を軽々とはね除け、魔神は反撃の剣を腰だめに構える。高まる威圧感、体勢が崩され、迫る魔神の一撃にバナージが背筋を凍らせた時、頭上から巨大な光がグランゾンを呑み込んだ。

 

『目標ネオ・グランゾン、直撃を確認』

 

『ヒイロさん!』

 

光が放たれた所へ視線を向ければ翼の生えたガンダム、ウイングゼロがその大火力でネオ・グランゾンを狙い撃ちしていた。

 

『ぐっ、むぅ……っ!』

 

ここへ来て直撃するヒイロの一撃、流石に堪えているのか魔人の口からくぐもった声が漏れる。軈てグランゾンを包んでいた光がなくなり、身動きが出来るようになると、グランゾンは頭上にいるガンダムに向けて光の槍を叩き込む。

 

翼を射抜き銀河の地へ叩き落とす。その事に気が逸らされた彼等が次に目にしたのは……周囲を囲む無数のワームホールだった。

 

『本物のマルチロックというものを見せてやろう』

 

瞬間、魔神に肉薄していたガンダム等が光の槍によって撃ち抜かれる。しかし、シンカの戸際に立ち、その力を一時的にとはいえ得られた彼等は、攻撃こそ受けても致命傷にならないよう回避していく。

 

流石に通じないかと舌打ちするシュウジ、そんな時降り注がれる閃光を回避しながら近付いてくる機影があった。

 

真ゲッター。その手に凶悪な獲物を握り締めた進化の化身が、無数の光の槍を避けながら近付いてくる。

 

『おぉぉぉりゃぁぁぁぁっ!!』

 

『ッチィィッ!』

 

グランゾンの剣と真ゲッターの斧、ぶつかり合う剣戟が隔絶宇宙に轟く。宇宙全体を揺さぶると錯覚する衝撃に耐えきれなくなったネオ・グランゾンが初めて後退する。

 

ここだ。ネオ・グランゾンが僅かに見せた隙、Z-BLUEの全員が掴み取った最初で最後の瞬間。

 

刹那にも満たないその一瞬、Z-BLUEは最後の力を振り絞り、総出でネオ・グランゾンに攻撃を加える。これがラストチャンス、ここを逃せばZ-BLUEに後はない。託された想いと願いが一心に込められたZ-BLUE最後の攻撃が、蒼き魔神ネオ・グランゾンに降り注がれる。

 

『ぐっ、ぬぅぅぅ…………』

 

効いている。あの絶対無敗の魔神が自分達の攻撃に怯んでいる。ここで終わらせる。今度こそ終わらせる。シュウジと戦うことになった戸惑いと疑問を横に置いてZ-BLUE全員が総攻撃を加える。

 

これで終わりだと、彼等の一撃がネオ・グランゾンに届いた───瞬間。

 

『相転移出力───最大限』

 

超弩級の重力波が隔絶宇宙を埋め尽くした。

 

 

 




次回、神々の黄昏(ラグナロク) 決着。

君はボッチの涙を見る。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。