『G』の日記   作:アゴン

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主人公が死んだことに対する皆様の反応

「ボッチが死んだ!」
「この人でなし!」
「そんな事よりおうどん食べたい」
「何、おうどんは既に売り切れだと!?」
「これもドン・サウザントって奴の仕業なのさ」
「なんだって、それは本当かい!?」
「絶対に許さねぇ、ドン・サウザントォォォッ!!」
「ハイハイ我のせい我のせい」
「ハルトォォォォっ!」
「彼はハルトではない!(無言の腹パン)」


大体こんな感じでしたね(笑)


その114

 

 

 

Z-BLUEの艦隊の一つマクロスクォーターにある医務室、先の戦闘で負傷した各部隊の隊員達が埋め尽くしていたここも今は静かとなり、現在はベッドに横たわる一人の少女が眠っているだけだった。

 

「……う、うん?」

 

「カレン、大丈夫?」

 

「ヨー……コ?」

 

隣から聞こえてくる聞き慣れた声により、意識を取り戻したカレンが首だけ横に向ける。声のした方へ視線を向ければ、そこには安堵した様子で笑みを浮かべるヨーコが、ベッドの横に置かれた椅子に腰掛けていた。混乱し、僅かに痛む頭を抑えながら上体を起き上がらせるカレン。

 

「傷自体はそんなに深くはないから痕にはならないみたいだけど、今の今まで気を失っていたのよ。もう少し安静にしなさい」

 

宥める様にカレンの肩に手を起き、再び寝かせようとするヨーコ、しかし自分が気を失っていた経緯を思い出したカレンは掴み掛かる様にヨーコにしがみつく。

 

「シュウジは、アイツは…………あの後何があったの!?」

 

懇願するように、すがり付く様に訊ねてくるカレン、その痛々しい姿にヨーコは一瞬口を開くことを躊躇うが、いずれは彼女も事実を知ることになる。なら早い方がいいかもしれないと、ヨーコはカレンにその後に起きた出来事全てを包み隠さず語る事にした。

 

両手を強く握り締め、ポツリポツリと真実を語るヨーコ、全てを語り終える頃にはカレンの目には大粒の涙が溢れて……。

 

「…………バカ野郎」

 

啜り泣く声が人気のない医務室に鳴り響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ヒビキの様子はどうだ?」

 

「酷いものです。此方から幾ら語りかけても全くの無反応…………今も部屋に篭りっきりです」

 

戦いを終え、元の宇宙……自分達の住む地球へ帰ってこれたと言うのに格納庫の様子は暗かった。聞こえてくるのは先程の戦いで傷付いた機体を直す整備士達の作業音と声、その誰もが先の戦いに触れようとしなかった。

 

「無理もないさ、ヒビキにとってシュウジ=シラカワという男は家族にも等しい存在だったんだ。それなのに、あんな事になって…………」

 

「ワッ太もあの男に結構なついていましたから、立ち直るのにもう暫く掛かりそうですね」

 

「…………そうか」

 

「くそ、何でだ。何であの人はあんな事を」

 

「………………」

 

自分達と敵対し、自分達を裏切ったシュウジ。その衝撃はヒビキだけに留まらず、ワッ太や赤木、そしてシモンといった彼に信頼を寄せていた者達も、その事実に打ちのめされていた。

 

その事に対して、シンは悔しそうに悪態を溢す。それはZ-BLUEの誰もが抱いている思いであり、同時に彼等の胸中で痼となっていく。

 

特にヒビキの様子は酷かった。状況で仕方がなかったとはいえ、自らの家族に等しい存在を手にかけてしまったのだ。彼の今の胸中は計り知れない事になっているだろう。今は彼の友人達と、担任教師でありパートナーでもあるスズネに任せるしかない。

 

誰もが現在の状況で燻っている中、アムロとカミーユは他の面々と心境の様子は違っていた。その内容は当然、シュウジの事である。

 

確かにシュウジの裏切り行為は衝撃的だったし、自分達にも少なからずショックを与えた。けれど、だからこそ疑問に思う事がある。

 

何故、あのタイミングで自分達と敵対したのか。結果的には流される形で彼と戦う事になって有耶無耶になってしまったが、彼の言動には些か疑問に思う点が数多く見受けられている。

 

シュウジという男は慎重な人間だ。グランゾンという絶対的な力を持っていながら、蒼のカリスマと名乗り正体を隠していた事からも程度の深さが伺える。

 

同時に博識で、知恵と知識を持っている。不十分な情報でグレイス=オコナーの野望を看破し、そしてその事を自分達に教えてくれたりと、彼には頼りになる事が多くある。無論、それらがブラフという可能性もある。自分達の信用を得るための演技だと断じられればそれで終わってしまう程度の根拠、しかしアムロはあの頃のシュウジが自分達を騙す演技をしていたとは…………とても思えなかった。

 

隣にいるカミーユを横目で見ると、彼も同じ気持ちなのか力強く頷いてくれた。ニュータイプとしての直感が強い彼がそう感じているのなら、恐らく自分の考えは間違っていないのだろう。

 

だが、決定的な確信がある訳じゃない。このまま自分の考えを皆に話しても部隊を困惑させるだけだ。皆を納得させるには、それに伴う確たる根拠が必要になってくる。

 

と、そんな時だ。アムロの視界に緑色の髪が入ってくる。その人物を目の当たりにした時、アムロの足は反射的に彼女の所へ向かわせた。

 

「C.C.、少しいいか」

 

「話がある」

 

「…………珍しいな。お前達が私に話し掛けてくるなんて」

 

自分と同じC.C.に用件のあるルルーシュ……いや、ゼロにアムロは一瞬驚くと、向こうも自分が来ることは想像していなかったのか、少しばかり動揺していた。しかし互いに自分と同じ思いを抱いている事を察したのか、直ぐに落ち着きを取り戻してC.C.へ向き直る。

 

「まどろっこしいのは抜きにしよう。C.C.君に一つ聞きたい事がある」

 

「ほう、ガンダムチームの纏め役たるアムロ=レイが私にか?」

 

「惚けるな。お前は知っているんだろ? あの男に……シュウジ=シラカワの身に何があったのかを」

 

惚ける仕草をするC.C.をゼロがバッサリと切り捨てる。余裕のない男だとC.C.は笑うが、仮面越しからでも伝わるゼロの本気にC.C.も笑うのを止める。

 

「…………何故、私が知っていると?」

 

「お前はある意味で一番奴を理解していた。そして私もある程度奴の事は理解している。アイツは慎重だが時には大胆で、ふざけている様で物事の裏まで考えている男だ。そこへ来てあの裏切り行為、何か訳があると考えた方が自然だろう」

 

「随分奴を信頼してるんだなボーヤ。伊達に再世戦争で一緒に女装した訳ではないか」

 

「女装?」

 

「茶化すな。それで……どうなんだC.C.?」

 

C.C.から出てきた女装という単語にアムロは目を丸くする。一体どういう事なのだろうかと考えようとする前にゼロがC.C.に詰め寄った。

 

一瞬だけ真実を話すべきか悩むC.C.、けれどこの分なら話してしまっても構わないなと思い、彼女が口を開こうとした……その時、艦内に緊急出撃命令のサイレンが鳴り響いた。

 

急を要するその事態に、アムロ達は後ろ髪を引かれる思いで機体に乗り込んでいく。そして、出撃した彼等が待ち構えていたモノにZ-BLUEは戦慄する事になる。

 

自分達の本当の戦いはまだ始まったばかりなのだと……。

 

時の牢獄を撃ち破り、彼等を待ち受けていたのは────果てなき天の獄炎、神話の果てだった。

 

 

 

 

 

 

『宜しかったのですか、隊長』

 

『なんの事だ。尸刻』

 

『シュウジ=シラカワ、奴に我らの名を騙らせる事です』

 

『別に、構わん。奴の思惑はどうあれ、既に奴は滅んでいる。我等が構う道理はない』

 

『では、アンナロッタの件はどうするおつもりで?』

 

『アンナロッタ=ストールスは既に死している。それは先にも説明した筈だが?』

 

『しかし』

 

『俺が受けた命令はアンナロッタ=ストールスの抹殺だ。死んでいる人間のその後(・・・)など、俺の知る所ではない』

 

『…………申し訳ありませんでした』

 

『気にするな、俺も気にはしない』

 

『…………はい』

 

 

 

 

 

 

『やった! やったぞ!』

 

『あの男が、シュウジ=シラカワが死んだ!』

 

『あの男が滅んだ今、最早我々を阻むものはいない! 今度こそバジュラを支配し、全宇宙を我等の支配下に置いてやる!』

 

『今度こそ成し遂げてやる。この宇宙の……神話の果てで生き残るのは……僕達だ!』

 

『…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………シュウジ殿」

 

時の牢獄が破壊された地球、そこにある小さな島国であるリモネシアで、ブロッケンは一人黄昏ていた。

 

エタニティ・フラットは破壊され、世界は……人は、時の針が進むことを選んだ。今後訪れるだろう根源的災厄が待っているとしても、それでも人類は未来を歩くことを選択した。

 

全ての戦いは終局に向かおうとしている。それなのにブロッケンは自身が置かれている状況に納得出来かねている。

 

自分がシュウジにここで島の住民を守るよう言い伝えられてから数日、時の牢獄が破壊された今でも彼から連絡が来ることはなかった。

 

もしかしたら自分は捨てられたのだろうか。やるせない思いと切なさがブロッケンの胸中から込み上げてきた時───。

 

「そんなに、彼の事が気になるのかしら?」

 

「っ!」

 

背後から聞こえてきた声にブロッケンは跳び跳ねる。振り返り、何者かと訊ねた彼の視界に、血の様な紅い髪をした女性が妖艶な笑みを浮かべて、ブロッケンを見下ろしていた。

 

「ブロッケン伯爵、貴方に一つ選択権を与えてあげる。私と共に来るか、それともここで待っているかを……ね」

 

「何を……言って」

 

「もし私と来る気があるのなら……彼に、シュウジ=シラカワに会わせてあげる」

 

「っ!?」

 

唐突に突き付けられる選択肢、その内容に驚き、戸惑うブロッケン。どういう事なのかと混乱する彼の意識に入ってきたのは、自分でも目の前の女でもない第三の声だった。

 

「その話、私も混ぜてもらうわよ」

 

その声の主、シオの一言にブロッケンの意思も固まる。彼の与えられた命令は島の住民の全ての護衛、その彼女が関わると言った以上、自分も引き下がる訳にはいかない。

 

決意が固まった二人を見て女───ツィーネ=エスピオは笑みを浮かべる。

 

「歓迎するわ。二人とも、さぁ、行きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翠。青空の下で波打つ翠の海は何処までも穏やかで静かなものだった。鳥が鳴き、風が凪ぎ、空は廻る。天気も良好でこの日は正に昼寝日和とも言えた。

 

「ふぁーあっ、あー、眠ぃ」

 

「こーら、シャキッとしろよ。そんな眠そうにしていると溺れても助けてやらないぞ」

 

「けどよぉベローズ、こう風が気持ちいいと眠気が……せめてエイミー達みたいに空を飛べたらなぁ」

 

「つべこべ言わずさっさと仕事に集中する。私らの稼ぎで船団は潤うんだ。ガロードもそろそろ帰ってくる頃だし、アンタもしっかりしな」

 

ヘーイと返事する若い男にベローズは尻を叩いて叱咤する。思ってた以上に強烈な一打に男は悲鳴を上げてベローズを睨むが、既にベローズは次の場所へ移動していた。

 

船団“ガルガンティア”そこでサルベージを生業としているベローズ達は、今日も今日とて自分達の仕事をこなしていく。時空振動とやらで別世界に訪れた当時は慌てたものだが、今では既に慣れたもの、異なる文化の存在を認識しながらも無闇に干渉せず、彼等はこれまで通りの生活を続けていた。

 

今日も日課の仕事をこなしていく。若い衆の人間達を纏めあげるベローズが友人であるリジットに定期的な報告をしにいこうとした時、頭上から聞き慣れた声が聞こえてくる。

 

「ベローズっ!」

 

「エイミーか、どうした? 仕事の方はもう終わったのか?」

 

空から降りてくる少女、エイミーにベローズは笑みを浮かべる。しかし、少女のいつもと違う切羽詰まった様子に、ベローズはそれが尋常ではない事だと長い付き合い故の察し方で理解する。

 

「お、男の人が、血だらけの男の人が、ひ、漂流して……」

 

「何だって!?」

 

エイミーは人に対して嘘を吐くような人間ではない。何より顔を真っ青にしながらも必死に訴えてくるその様子が、紛れもない事実の証拠である。何処だと訊ねるベローズにエイミーは震える体でその方向を指差し、ベローズは持っていたその双眼鏡でエイミーの指差す方角に目を向け───そして、驚愕する。

 

ユラユラと波打つ場所、そこに浮かぶ一人の男性。木材に身を乗せて微動だにしない血塗れの男を見てベローズは即座に行動に移し、男の人命救助に尽力する。

 

─────時獄の終わりに待つ天の獄、果たして人類はこの戦いを生き残る事が出来るのか。

 

そして…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ドクン”

 

 

 

 

 

 

孤高の魔人が往くこの旅路は一体どこへ続いていくのだろうか?

 

 

 

 

 

────第三次スーパーロボット大戦Z“時獄篇”

 

完結。

 

 

 

 

 




と、言うわけで今回で時獄篇は終了となります。

次回からは幕章を挟みつつ、連獄篇に繋いでいこうとおまいます。

また、連獄篇でのメインは主人公ではなくなりそうなので予めご了承下さい。

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