完全に後付けな話ですが、深く考えず読んでくださると嬉しいです。
「我輩の……新しい身体、でありますか」
地球上にある無人諸島、その中でも人の手が加わっていない人気の無い島で、現在自分はむさ苦しい生首と森の中で相対する様に座っていた。
目の前にいる生首、コイツは嘗て世界征服を目論んだDr.ヘルの側近の一人であるブロッケン伯爵。とある理由でコイツの身…………いや、首を預かる事になっている。
「あぁ、アンタもいつまでも生首状態のままでいるのは色々不憫だろ。以前シュナイゼルの奴にトールギスⅡの返却の際に一緒に幾つかパーツを譲って貰ったんだが、生憎グランゾンには不要な代物でな。このまま腐らせるのも勿体無いし、かといって返すのも気が引ける。そこで選ばれたのが───」
「我輩、でありますか?」
何やら呆然としているブロッケンだが、自分は構う事なく頷いて見せる。さて、先程口にしたパーツ云々の話だが…………勿論嘘である。
そもそも、グランゾンに合う予備パーツなどこの世界には存在しない。仮に用意出来たとしても、それを扱えるのはグランゾンの生みの親であるシュウ博士位だ。受け取ったとしても邪魔になるだけだし、精々資金源の足しになる程度だ。
本来なら自分はブロッケンに対して其処までしてやる義理は無いのだが、拾った時の経緯がアレだった訳だし、何より…………キモいのだ。
むさ苦しい顔をした生首がピョンピョン跳び跳ねる様は割と本気でホラーだと思う。グランゾンのコックピットに乗っている際も、このむさ苦しい顔が近くにあるのだから堪ったものではない。そのせいかここ最近グランゾンの調子が心なしか悪い気がするし、この問題に対し自分は結構本気で頭を悩ませている。
そんな訳で思い付いたブロッケンの新しい身体製作、シュナイゼルに事細かく事情を説明し、頭を下げながら懇願した自分は、シュナイゼルに呆れられながらも機動兵器のパーツを幾つか分けてもらう事に成功した。軍事パーツの横流しとか普通にヤバい話だというのに快く引き受けたシュナイゼルに、暫く自分は頭が上がらない気がする。
シュナイゼルにだけ任せるのもアレだし、引け目を感じた自分は空いた時間を狙ってテロリストの拠点を襲撃、ASやらスコープドックの残骸を回収したりとパーツ集めに勤しんでいた。
そうして一通り集まったパーツはMS一機分程で、現在この無人島に置かれている。準備は万端、後はブロッケンの気持ち次第だが……ぶっちゃけそこは無視してもいいと思っている。
つーか断らせねぇ。散々苦労して集めたパーツを無下にさせてたまるものか。ていうか、仮に断ったとしても無理矢理にでも作った身体に縫い合わせてやる。何故にタダでさえ広くないコックピットにむさ苦しいオッサンの生首を置いとかなきゃならんのか。喩え自業自得であってもいい加減ブチギレそうである。
「で、どうする?」
「も、勿論お願いするであります うぅ、遂にこの肩身の狭い境地から脱出できるのであるな。……ありがとうシュウジ殿! この大恩、いつか必ずやお返しさせていただきますのである!」
「あぁ、期待しないで待ってるよ」
涙と鼻水を垂れ流しながら礼を言ってくるブロッケンに気付かれないよう隠れて小さくガッツポーズを取る。ともあれ、これでお膳立ては完了した。後はブロッケンの身体をどう作るかだけだ。
シュナイゼルに無理言って手に入れた貴重な機動兵器のパーツ、これらを無駄にしない様、しっかりと計画を立てながら作っていこうと思う。
こら、ブロッケン。うれしいのは分かったから泣きながら跳び跳ねるの止めろ。なんかネバネバした液体が飛んでくるんだけど!?
そんなこんなでブロッケン魔改造計画が開始され、あっという間に数日が経過した。
「こ、これが我輩の新しい身体」
無人島の波打ち際に立つブロッケン、今の彼はただの生首ではなく、自分ことシュウジ=シラカワが造り上げたニューボデー(誤字に非ず)を装着している。
赤い軍服を主体に製作したスタイリッシュ且つガッシリとした体格、腰には一振りのサーベルを差しており、切れ味も並の機動兵器ならバターの様に切断出来る鋭さを誇っている。
他にも左腕には小型のガトリングガンを、右腕には男の夢であるロケットパンチと付け替え用のドリルアームが備わっている。
両足にも跳躍力を何倍にも引き上げるギミックを施しているし、おまけに防弾や耐水といった、環境に合わせての防護作用も備えてある。ありとあらゆる状況、環境に対応出来るよう、今の自分が持てる限りの力を使って造り上げた傑作である。
新しい身体を手に入れて舞い上がるブロッケン、外見に似合わず子供の様にはしゃぐ彼を見て、俺は笑みを浮かべて思った。
(ヤベェ、やり過ぎた)
どうやら自分は物造りに嵌まるタイプの様で、気が付いたらあんな代物を造り上げてしまっていた。何だよ小型のガトリングガンって、何だよドリルって、何だよロケットパンチって!
本来なら胴体手足のある普通の身体にするつもりだったのに、造る事に夢中になりすぎてしまった。ちょっとした機動兵器と化してしまったブロッケンの身体、唯一救いがあるとすれば機動性能がサイズダウンしたAS位な所と、装甲がやや薄い所だろうか。
それでも其処らのスコープドックより耐久力があるのがアレなのだが…………我ながらなんちゅうものを造ってしまったのだろうか。
(…………けど、まぁいっか。本人は喜んでいるみたいだし、これはこれで悪くない。同じ側近だったあしゅら男爵もマジンガー相手に殴りかかったって聞くし、これくらい許容範囲だろ)
一体何に対しての許容範囲なのだろうか。自身のやっちまった事に対して現実逃避しながら自分は休みに入るのだった。
────後に、新しい身体を手に入れたブロッケンがとある船団にて大立ち回りをし、大活躍をするらしいのだが、この時の俺は知る由もなかった。
と、言うわけで今回はブロッケンが身体を手に入れるまでのちょっとした話を書かせてもらいました。
このブロッケンが活躍の話はもう少しお待ちください。