そして、少しですが他者視点(?)もあります。
γ月V日
大変だった。早乙女研究所に向かったらインベーダーが大量に現れるわ、真ドラゴンとかいうゲッターロボの集合体が現れたり大量のゲッターロボが現れたり、それに釣られて暗黒大陸の獣人達が押し掛けてきたり、ホント色々あって大変だった。
しかもZEXISもやってくるし、一人旅をしている身としてはあの時は場違い感が半端なくて居心地が悪かったなぁ。
まぁシモン君の活躍や竜馬さん達が真ゲッターに乗れたり、ZEXISの皆が真ドラゴンと戦った事でどうにか事態は収束し、その場はそれで終わりとなった。
危機的状況を脱せた事からそれ自体はいいんだけど、その後早乙女博士の行方は不明となり、自分はシュウ博士について話を聞くことは叶わなかった。
踏んだり蹴ったりな日だったが、一つ良いことがある。それは螺旋四天王の一人、シトマンドラと決着を付けられた事だ。尤も、トドメをさしてはいないが……。
暗黒大陸で自分とやり合って以来、向こうも自分の事を探していたらしく、自分を見かけると奴は自身が乗る機体の機動力を最大限に生かして襲いかかってきた。
向こうも形振り構っていられないのか、部下達と一緒に押し寄せてくる。ちょっと面倒だなと思った時、意外な人物が援護してくれた。
シモン君とキタンさん、そしてキヤルちゃんとヨーコちゃんである。相手側のガンメンを吸収して飛行移動が可能となったグレンラガンと、キヤルちゃんのガンメンと合体して武装を施したキタンさんのキングキタン。
ダヤッカさんが乗っていたダヤッカイザーをヨーコちゃんが乗った事で改修されたヨーコMタンク、それぞれが自分とシトマンドラを一対一で戦えるよう援護してくれた。
何でもシモン君は自分を励ましてくれた礼を返したいのと、キタンさんは妹を助けて貰った借りがあるからとか、ヨーコちゃんは何も言わなかったけどそれでも自分は嬉しかった。
……ホント、嬉しかったなぁ。マトモに共闘してくれたのはゼクスさんやグラハムさん、そしてコーラサワーさんくらいしかいなかったからあの時は本当に嬉しかった。ちょっと涙ぐんでしまったのは内緒だ。
そして、そんな彼等のおかげで自分はシトマンドラとの戦いに集中できた為、これを撃破。敵機を撃破しただけでシトマンドラはしぶとく逃げていったが、今はこれで十分だろう。
そして自分がシトマンドラを倒す頃には向こうも片付いたようで、そのまま自分は離脱。一体何しに来たんだと自問しながらその場を離脱した。
あ、一応シモン君達にはちゃんとお礼も言ったからそこら辺は安心して欲しい。もし彼等が来てくれなかったら面倒臭くなって“グラビトロンカノン”で諸共押しつぶしてしまったと思うから。
取り敢えず自分にとって因縁めいた相手だったから倒せて良かった。……けど、少しばかり気になる事がある。
シトマンドラってあんなに弱かったっけ? 前戦った時はもっと速くて周りと連携が取れててもっと厄介な印象があったのだけれど……。
あ、そうか。シモン君達が周りの敵を片付けてくれたから上手く立ち回れたんだ。成る程、そう思えば納得だ。
ガイオウとエメラルダンとか、アイムのアリエティスとか色々戦ったから自分もそれなりに上手くなれたのだろうけど、それだけでは螺旋四天王の一人を圧倒するなんて出来た話だと思ったんだ。
シトマンドラも自身が強いだけじゃなく、周囲の機体と連携を取れたからこそ、薄い装甲の癖にあそこまで大胆に動けたのだろう。
やはり戦いにおいて連携というのは必要だな。今回の戦いでよりそれを実感出来た自分でした。
……連携、かぁ。
◇
────日本・熱海。くろがね屋前。
「女将、皆、そろそろここは戦場になる。早い所避難してくれ」
ギシン星人の司令官であるマーグの最後の決闘を挑まれたZEXISは彼の場所の指定もあり、ここ熱海を決戦の場を選んだ。
もうじきここも戦場に変わる。被害は出ないよう最大限に努力するZEXISだが、現実はどうなるか分からない。既に避難命令を出している為住民達は避難先へ移動を開始している。
そんな中、兜甲児は唯一避難する意志を見せないくろがね屋の面々に早く逃げろと警告しに来たのだが……。
「何言ってるのさ、私らがここを離れたら誰がくろがね屋を守るんだい」
「坊ちゃん。ここはアタシ等の城なんだ。誰かに言われた程度でおいそれと手放す訳には行かないんだよ」
「け、けど!」
自分の警告など意にも介さない女将であるつばさとお菊の物言いに、甲児はそれでも危険だと食い下がる。
尤も、彼等にはそのような心配はするだけ無駄な理由があるのだが、彼等の正体と実力をまだお菊しか知らない甲児には無理もない話である。
クロスも安も先生も動こうとしない。そろそろマクロスへの帰投時間が迫っているのにどうしたモノかと思われた時、何か思い出したのか安が手を叩いて語り出す。
「避難といえば女将、以前この旅館に泊まった珍客の事、覚えてますかい?」
「珍客?」
「あぁ、覚えているさ。何せアイツはお菊さんから一本取った男だからね。思わず私も驚いてしまったよ」
「…………はぁ!?」
つばさからの発言に甲児は信じられないと叫ぶ。何せこのお菊はくろがね屋のくせ者の中でも屈指の実力者とされる猛者だ。剣の達人とされる先生ですらその素早く且つトリッキーな動きに付いてこれないのだから。
それなのに何処の誰とも知らない奴がお菊から一本取った? 未だに自分は触れる事すら出来ないと言うのに、つばさのその一言が原因で避難勧告の事など頭から吹き飛ばされてしまった。
「そ、そいつは? どんな奴だったんだ?」
「そうさねぇ、確かシュウジとかいう旅人だったか……」
「し、シュウジだって!?」
「何だ甲児、あの珍客の事知ってるのか?」
「し、知ってるというかなんと言うか……カレンがエリア11───旧日本で少し一緒だったみたいな事言ってたし。ヨーコやキタン、黒の兄妹の話だと暗黒大陸にいたとか……」
ポツリポツリとシュウジなる人物について語る甲児、彼も人から聞いた話である為にイマイチ要領の得ない話となったが、話を聞いたクロスと安は成る程なと頷きながら納得していた。
「エリア11に暗黒大陸、今はそのどちらもが危険地帯として知られる場所だ」
「そんな危険地帯を一人で生き抜くたぁ、成る程、あの珍客のヘタレた姿からは信じられねぇ猛者の臭いがしたのはそういう事かい」
「え? え? ど、どういう事?」
「いいかい坊ちゃん。人というのは今でこそ地球の生命体の頂点と言われているけど、その根っこは動物となんら変わらない本能が眠っているんだよ」
「本能……」
「危険地帯にいればそれだけで五感が鋭くなる。命の危機に瀕したらそれだけで人間の底力が解放される。恐らくシュウジとやらはそう言った環境に自らを追い詰めて己の力を高めたのだろうよ」
お菊が得意げに話すシュウジという人物像。本当ならここで違うと否定したりするのだが、生憎甲児にはそれを否定するだけの材料が無かった。
“チームD”ダンクーガを駆る葵達は、自身の内に秘めた野生という本能を目覚めさせて戦っている。
元レッドショルダーのキリコだって多くの修羅場を潜り抜けた猛者だ。命懸けの戦場で生き抜いた彼だからこそ、あそこまで見事に戦えるのだろう。
なら、そのシュウジもそうなのか? 自ら危険地帯に飛び込む事で力を高めているのなら……一体、何の為に。
「しっかし、聞けば聞くほどおっそろしい奴だなぁ。あんな人畜無害な顔しておいて中身は命の遣り取りが大好きなイカレヤローとはよ」
「そんでもって気配を隠す時は俺たちでも悟られない凄腕ときたもんだ。俺も時々アイツに後ろを取られた事がある」
「…………」
「あれま、先生もですかい? いよいよきな臭くなってきたなそのシュウジって奴は」
「ま、あくまで今までのは俺達の憶測に過ぎない。が、一応気には止めておいてもいいんじゃねぇか?」
「あ、あぁ……」
くろがね屋の五人衆からシュウジに関する思いがけない情報を得た甲児だが、あまりにも自分の想像とはかけ離れた人物像に戸惑いが隠せなかった。
結局くろがね屋の皆を避難させる事も出来ず、決戦の時刻となってしまう。慌ててマクロスへ帰投する甲児の後ろ姿を見て、安は悪戯が成功した子供の様に笑みを漏らす。
「いやー、相変わらず甲児の奴は面白いなぁ、俺達の話を真面目に受け取るもんだから歯止めがきかねぇや」
「あんまし苛めるなよ? もしアイツ等がシュウジって奴を見つけたとき騒ぎになったら俺らも巻き込まれるぞ」
「へへ、そん時はそん時でまた楽しめばいいさ」
「お喋りもそこまでにしな。そろそろ戦闘の始まりだ。アタシ等は後ろに下がって事の顛末を見守るよ」
「「へいっ!」」
つばさに言われ、素直にその場から去っていく安とクロス。そんな彼等をヤレヤレと肩を竦めながら自分も下がろうとした時、つばさはある違和感に気付く。
(……しかし妙だね。暗黒大陸といえば次元震の影響で今まで誰も踏み入れられなかった未踏の地。そこが開かれたと知られたのはまだつい最近だ。そんな所をただの旅人が直後に踏み入れられるものかい)
恐らくはこの事は他の面々も怪しんでいる事だろう。何の支援も無く単独で暗黒大陸に踏み入れる事といい、エリア11から単独で抜け出せた事といい、そしてあのお菊から気配を悟られずに後ろに回り込められる技術、どれもこれもただの旅人には過ぎたスキルだ。
(……もし、またウチに来た時は何かしら探りを入れた方がいいのかもねぇ?)
“シュウジ”この男に何かがあると直感で感じ取った女将、錦織つばさは心の内でその人物に対する警戒レベルを上げた。
「────いっきし! な、何だ今の悪寒は? 風邪かな?」
◇
γ月×日
シュウ博士の情報も取れなくなって数日、インペリウムの存在も中々掴めなくなっている今日この頃。そろそろ自分は視点を一度地球から外すべきなのではないかと本気で考え中である。
どこへ行っても次元獣やインベーダー、イマージュばかりで、インペリウムの存在は尻尾どころか影すら捕まえていない。
もしかして連中は自分がワームホールにグランゾンを隠している様に、もっと別の場所に姿を眩ましているのかもしれない。例えば……次元の狭間とか?
破界の王だし、それくらいは出来るだろうし……というか、自分は奴らに付いて何一つ知らないんだよな。そもそも次元獣は何なのかさえ知らないし。
アイムの奴はスフィアとか持ってるとか言ってるし、本当訳の分からない事ばかりである。
だがそんな事を言っている場合ではない、この間ニュースでやってたが、先日ZEXISとギシン星人が熱海で戦闘を繰り広げたようなのだ。
結果はZEXISの勝利で終わったが、ギシン星人の親玉であるズール皇帝は未だ健在。まだまだ気を抜くには許されない状況だ。
三大国家の同盟軍もどうやら新型機を開発したらしく、次元獣等の外敵からの被害は段々小さくなりつつある。
そう言えば例のスローネの連中はどうなったのだろう? あれ以来姿を見せていないが……また良からぬ事を考えているのではないだろうか?
とまぁ、話が大分逸れてきたのでいい加減戻そうと思う。次に自分が向かうべき所……ずばり“宇宙”である。
この世界に来てから宇宙にだけは向かっていない。もしインペリウムの連中がいるのなら地球に留まったままでは手が出せない。
グランゾンなら単騎でも大気圏離脱が出来そうだからそこら辺は心配していない。
心配なのは何を隠そう、自分自身の事だ。
だって宇宙だよ? 俺の居た世界では宇宙飛行士が何年もの適正試験や訓練を積み重ねて漸く行けるかどうかって所だよ? それに比べて俺はパンピーよ? ちょっと前までグランゾンどころか車すら運転しなかった男よ? 自転車オンリーな一般人ですよ?
それがいきなり宇宙とか、色んなモノをバカにしている気がしてしょうがない。まぁぶっちゃけ怖いしね、宇宙。
だから行くならせめて宇宙服とか宇宙に合わせた特殊スーツとか欲しかったんだけど……露店に売ってる訳がないからどうしようもないね!
あるのは蒼のカリスマ時に被る仮面くらい。おいおい、こんなんで一体どうしろと?
シュウ博士は特に宇宙服とか着ないで大気圏離脱したっぽいけど、よくあんな軽装で宇宙上がれるよね?
けど、もし本当に連中が宇宙にいるのならそろそろ覚悟を決めねばなるまい。
ひとまず明日までに覚悟を決める事にして今日は眠らせて貰う。
あ、因みに今自分は日本のお台場にあるビジネスホテルにいます。
……うん、どうでもいい話だったわ。
◇
「うーん、今日はこんなものかぁ。さて、明日も早いし、そろそろ寝るかな」
時刻は既に夜中を回り、空も暗闇に閉ざされた時間帯。明日には生身で宇宙に出る怖さを克服せねばならないので、早い所就寝しようと部屋の電気を消そうとするが……。
コンコンと、ノックの音が聞こえた。こんな時間に誰だろう? そう思いながらドアに付いている覗き穴を見てみると……。
「夜分遅く申し訳ない。私はサンドマン。友人の頼みで君に必要なモノを持ってきた。ここを開けて貰えないだろうか?」
…………なんか、やたらダンディなおじさんがドアの前で突っ立ってた。
………え? 本気で誰?
ひとまず、チェーンロックを掛けて警察に通報を入れる準備だけはしとくかな。
そろそろ破界篇を終わらせたい所。