『G』の日記   作:アゴン

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今回はコードギアスキャラがオオメニ出てきます。
これもスパロボの醍醐味だと思い、軽く見逃して下さると嬉しいです。


その130

 

 

 

 

 

 

 

 

新地球皇国(ガイアエンパイア)南米支部。数多く点在する皇国拠点の一つ、その基地の奥深くにある独房エリアにて、鞭打の音が響き渡る。

 

一度や二度では済まない鞭の音が鳴る度に、くぐもった声が漏れる。やがて鞭打は収まり、奴隷の如く見窄らしい格好をした男が全身に鞭で打たれた傷を晒していた。屈辱に満ちた仕打ち、しかし男の眼から光は失われておらず、その目は真っ直ぐに目の前の鞭を持つ女性を見据えて離さない。

 

「…………これだけ痛め付けられてもまだ抵抗する意思があるとは、流石元ブリタニアの宰相閣下ですわね。シュナイゼル」

 

「………………」

 

声を出す余裕も無いのか、シュナイゼルは女性の言葉に反する事はしなかった。尤も、ここへ連れてこられて既に一週間近くもの間、今のような拷問の仕打ちを受け続けてきた彼にとって、声は出したくても出せないというのが正しい表現なのかもしれない。

 

「けど、その強情さもここまでよ。次にいい返事を返して来なければ次はあの小娘を痛め付ける。これは脅しではなくってよ」

 

僅かに開かれた胸元、左側に刻まれたバラのタトゥー。自分よりも優れている者を甚振(いたぶ)る快感に、女性は愉悦に表情を歪めていた。

 

「…………それは、ダメだ。彼女に手を出すことは、私が許さない」

 

掠れた声でそう口にするシュナイゼル、死に体でありながら尚も反抗の言葉を洩らしながら、一歩ずつ近付いてくる彼に女性は愉悦の表情から一変、逆鱗に触れた竜の如くその怒りを露にする。

 

「お前に口答えをする権利などっ!!」

 

「がはッ………」

 

繰り出される蹴り、腹部に深々と突き刺さり、吐瀉物を吐き出しながら壁に叩き付けられたシュナイゼルは痛みに耐えられず地べたに沈む。地に額を着けて苦悶の声を出すシュナイゼル、その彼の頭を女性は土足で踏みにじった。

 

「止めるんだギネヴィア! それ以上はシュナイゼルが死んでしまう!」

 

その時、横からギネヴィアと呼ばれる女性を呼び止めながらその脚に抱き付く者がいた。シュナイゼルと同じ奴隷の格好をした男性、温厚な性格で争い事が苦手とする彼は、曾てのブリタニアの第一皇子オデュッセウス=ウ=ブリタニア、数多くいるブリタニア皇族の中でも長兄として知られる人物だった。

 

「私達は母違いとはいえ実の兄妹だろ! どうして自分の弟にこんな事が出来る!」

 

「あらぁ? その曾ての弟は兄であるクロヴィスを殺したではありませんか? 私だってこんな事はしたくありません。そこの愚弟が素直に頷いてくれれば今すぐここから解放しましょう。無論、貴方も」

 

「それは…………でも、だからってこんなやり方じゃあ、サイデリアルの力を借りてまで貴族制度を復活させようなんて───」

 

「その男が!」

 

「っ!?」

 

「その男が、蒼のカリスマに敗北した所為でこんな事になったのでしょう!? 新政府確立の為? 悪しき風習の撤廃? そこの愚弟が勝手に決めた事の為にどうして私が巻き込まれなければならないの!」

 

「ギネヴィア…………」

 

「貴族制度が無くなり、皇族の意味も無くなった私に残されたのは僅かな財産と家だけ! メイドも去り、使用人もいなくなって母上も男と一緒に消えた! もう嫌なのよ、あの惨めな生活は! 帰りたいのよ、あの頃の輝かしい自分に!」

 

「そんな事の為に…………ギネヴィア、君は」

 

髪を毟る様に掻き乱し、凄絶な顔で二人を睨むギネヴィア。凄惨にさえ見える彼女の相貌に、オデュッセウスは呆れを通り越して哀れみすら感じた。

 

再世戦争。破界事変に次いで起きた争乱、シュナイゼルは当時の国連政府を打倒する為、大軍を率いて侵攻していた。全ては地球の人々に安寧の日々をもたらすために起こしたこの侵攻作戦はしかして一人の男の手によって潰える事になる。

 

それこそが蒼のカリスマ。魔神激昂と呼ばれる事件を境にブリタニアの評価はガタ落ちした。ナイトオブラウンズを含めた大戦力を投入したにも関わらず、たった一機を相手に大敗したその事件は、蒼のカリスマの悪評を揺るぎないものにしたと同時に、ブリタニアの世界に対する影響力を地に叩き落とした。

 

忌ま忌ましい。何故たかだかテロリスト一人にここまで自分は追い詰められなければならないのか、何故奴に敗北しただけでここまでの屈辱を味わなければならないのか。私はギネヴィアだ。ブリタニアの皇族で、偉くて、何をしても許される。生まれながらの成功者にして強者なのだ。

 

故に、ギネヴィア=ド=ブリタニアは気付かない。その驕りが、他人を厭わず、権力を自分の力当然と考えるその傲慢さが貴族制度を廃した最大の理由であり、シュナイゼルが危惧した事だというのも、ギネヴィアは理解出来ていなかった。

 

浅ましく、愚かで、自分勝手な欲望の為に、遂には自分が生まれ、育った星すら侵略者に売り渡すと宣うギネヴィア。彼女にとって価値があるのは過去の栄光であり、その眼には未来など写してはいなかった。

 

「………いいわ。そこまで強情なら次はあのマリーメイアとかいう小娘に痛い目を見てもらう事にするわ」

 

「待つんだギネヴィア!」

 

「それが嫌なら誓う事ね。この私に、ギネヴィア=ド=ブリタニアに永遠の服従を、ね。ウフフフ、アハハハハ!」

 

オデュッセウスの制止の声も聞かず、ギネヴィアは独房を後にする。変わり果てた妹の姿に思うところは当然あるが、今は傷付いたシュナイゼルを介抱するのが先だ。オデュッセウスは馴れない手付きでシュナイゼルを横に寝かせる。本当ならここで濡れた手拭いで打たれた箇所を冷やしたり傷薬を塗って介抱するのだが、生憎ここは牢屋の中、冷たい床が唯一熱くなるシュナイゼルの身体を冷やしてやる癒しとなっていた。

 

鞭で打たれた痛みと熱で魘されるシュナイゼル。このままでは弟が死んでしまうとオデュッセウスが焦り始めた時、鉄格子の向こうから声が掛けられた。

 

「おやおや、これはまた随分と悲惨な目に遭いましたねぇ」

 

「ブラッドリー卿………」

 

ブリタニアの騎士、その中でも最上級の実力を誇るブリタニア帝国最強の騎士、ナイトオブラウンズのNo.10ルキアーノ=ブラッドリー。曾てブリタニアの吸血鬼と畏怖されていた男が立っていた。

 

ギネヴィアと同じくサイデリアルに媚びを売り、地球を売り渡した者。そんな彼が何故ここに、オデュッセウスが柄にもなく警戒すると、肩を竦めたルキアーノが鉄格子の隙間から手拭いを投げ渡した。開いて見るとその中には傷薬と水が包まれており、人一人を癒すには十分な量が含まれていた。

 

「それで傷を治してやるといい。打たれた箇所は多いが、幸いショック症状には至っていない様子……水で傷を洗い、薬を塗って安静にすればすぐに落ち着く事でしょう」

 

「ブラッドリー卿、何故、貴方がこれを?」

 

「おや? 意外に思われますか? 確かに私はブリタニアの吸血鬼と呼ばれた事もある男ですが、何も悪魔ではありません。それに貴方達は大事な人質だ。人質に死なれては我々が困る。だから、これを恩と感じる必要はありませんよ」

 

ケラケラと笑うブリタニアの吸血鬼、一瞬罠かと疑うオデュッセウスだが、彼の言い分ではその可能性は低い、疑心暗鬼ながらも言われた通りの処置をシュナイゼルに施すと、暫くしない内にシュナイゼルの呼吸は緩やかになり、穏やかな表情となって寝息を立てている。

 

漸く落ち着いた弟に安堵したオデュッセウスは、濡れた手拭いを額に当てて熱冷ましを施した後、静かに此方の様子を眺めていたルキアーノに向き直る。

 

「ブラッドリー卿、何故貴方までギネヴィアの言動に賛同したのです。既にブリタニア帝国は無く、ナイトオブラウンズの地位もまた消滅した。騎士として戦う意味も無くなった今、どうして貴方がギネヴィアに…………皇族に付き従うのです」

 

「何やら勘違いをされているようで恐縮ですが、私は別にナイトオブラウンズとしてギネヴィア様に付き従っているのではないのですよ? 私はただ、彼女に付き合っていれば私の目的が達成出来ると思い、手を組んでいるに過ぎません」

 

「目的……?」

 

「私はね、奪われたのですよ。再世戦争の頃、初めて魔神と対峙したあの時から、私の大事なモノは奪われたままだ」

 

オデュッセウスの問いに己の掌を見詰めながら答えるルキアーノの顔は屈辱と怒りの色に染まり、その瞳には憎悪に似た黒い感情に濁っていた。

 

「だから、取り戻す。あの日、奴に奪われた全てを今度こそ取り返すために、私は此所に立つと決めた。…………そう言う意味では、私の目的はギネヴィア様と一致しているのでしょうね」

 

「バカな、蒼のカリスマは先の戦いで既に死んだとサイデリアルの兵士達も言ってたじゃないか! 」

 

「さて、それはどうでしょう? 私は疑り深い男でね、自分で確かめない限り信じないようにしているのです。………それに」

 

「?」

 

「先日、地球の衛星軌道上に配備されていたサイデリアルの軍勢を何者かが突破したという情報を先程聞きましてね。詳しく調べてみたところ、何でも蒼い流星がこの地球に降り立ったというではありませんか」

 

“蒼” それは魔人と恐れられる蒼のカリスマのパーソナルカラーであり、彼の愛機である魔神の色とされているもの。偶然の一致か、それとも単なる誤情報なのか、各種通信手段もサイデリアルに抑えられている現状では確める手段はない。

 

ルキアーノは一瞬だけ、横になっているシュナイゼルの方へ視線を向けるが、濡れたタオルに額から目元まで覆われており、表情から彼の反応を読み取る事は出来ない。

 

尤も、ブリタニアきっての切れ者だったシュナイゼルに探り合いで勝てるとも思えないが…………。

 

まぁいいかと、シュナイゼルから視線を外したルキアーノは独房を後にする。

 

「まぁ、私の目的とは別に今の私はサイデリアルの犬。ならば犬は犬らしく、大人しく従う他ありません。それでは生きていたらまた会いましょう」

 

それだけを言い残して去っていくルキアーノ、彼も、彼の背中を見つめ続けているオデュッセウスも、うっすらと笑みを浮かべているシュナイゼルに気付く事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Z月(´・ω・`)日

 

ジェレミアさんからマリーメイアちゃん、序でにシュナイゼルの救出作戦を依頼されてから一週間、現在自分は二人が捕まっているであろう新地球皇国の南米支部付近に来ていた。

 

早速どんなモノなのか遠巻きに観察したのだが、流石南米大陸を支配している支部の一つだけあって、連中の戦力の集中度合が凄い。特にこの星の重要参考人が捕まっているだけあって、機動兵器と同じぐらい基地防衛の為の歩兵がえらい数になっている。

 

潜入するにしてもまずは突破口を見付けなければ話にならない。…………強行突破も出来なくはないが、それだと騒ぎは大きくなるだろうし、何より中にいるマリーメイアちゃんに危害が及ぶ可能性が高い。

 

彼女はトレーズさんの忘れ形見、絶対に傷なんて付けさせたくはないし、危険な目にも合わせたくない。…………シュナイゼル? 別に良いよアイツは。腹黒男と親友の娘、どっちが大事なのかは一目瞭然。寧ろアイツは拷問の一つ位受けて酷い目に遭えばいいとさえ思う。

 

尤も、アイツがそのくらいでどうにかなるなんて思っていないし、今頃は自分が助けに来るタイミングを見計らって密かに脱出の算段を立てているのではないかとすら思える。

 

そんな訳で救出の優先順位はマリーメイアちゃん、序でシュナイゼルの順という事にすると、今回の救出作戦のメンバーには伝えている。メンバーは自分とジェレミアさんが潜入、攪乱担当で、ブロッケンとレディ=アンさんが突入担当となっている。

 

ギュネイ君は安定の強襲担当、モビルスーツで支部の連中の大部隊を相手にする事で時間稼ぎを担って貰うことにする。勿論、レジスタンスの皆さんの協力もあり、単身で戦わせるつもりはないから安心してほしい。

 

つーか、今回のレジスタンスの面々が無駄に豪華だ。レディ=アンさんはマリーメイアのお付きの人だから彼女を助けるために突入部隊に入るのは良いとして、他の面子が何気に凄い人達ばかりだ。

 

ノネット=エニアグラム、ドロテア=エルンスト、モニカ=クルシェフスキー。何れもブリタニア帝国時代にナイトオブラウンズとしてブリタニア騎士の頂点に君臨していたお三方である。

 

何でもブリタニア解体以降田舎に帰ったり実家で大人しく暮らしていたが、今回のサイデリアルの侵攻に合わせてこうしちゃいられないと立ち上がり、間に合わせの機体で今まで戦ってきたのだとか。サイデリアルの圧倒的な物量に対し、今日まで戦ってこられたのは彼女達のお陰だと他のレジスタンスの方々は口にしているし、前線から暫く離れた程度でかつての腕前が衰えることはなかったらしい。

 

実際に彼女達の腕前は拝見した事はないのでなんとも言えないが、皆が言うならば確かなのだろう。期待していますと声を掛けたら、何故か三人して微妙な顔をされた。…………なんで?

 

ともあれ、ギュネイ君一人に敵部隊を相手させることがなくなったから、その点は安心だ。地球に降り立ったここ数日で劇的に腕を上げたとはいえ、自分達が次に相手する規模は大きい。多勢に無勢、無茶な戦場に連続で突っ込むのは下策とも言える。

 

その事を思えば元ラウンズの人達の助力を得られるのはとても心強い。彼女達は既にモビルスーツにも熟練した操縦技術を会得しているようだし、きっとギュネイ君の負担も軽くしてくれる筈、後は彼等の活躍と無事を信じて自分の役割を全うするのみである。

 

…………因みに、自分こと蒼のカリスマ復活の件ですが、レディさんの「お前がそう簡単には死ぬとは思えん」の一言で片付けられました。

 

いやね、別にいいんですよ? レディさんの言うことは一種の信頼の裏返しみたいなものだし、別に軽く流されたからって凹んでないし。

 

ま、まぁ兎に角、戦力も整ってきたし、明日はマリーメイアちゃんの救出の為に今日はいつもより早めに就寝しておこうと思う。幸い頼んでおいた潜入用のスペシャルアイテムも手に入った事だし、明日はこれをフルに使ってマリーメイアちゃんを救出しようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、聞いたか? 噂の奴」

 

「あぁ、何でも蒼のカリスマと名乗る輩があっちこっちで暴れてるって話だろ?」

 

新地球皇国、南米支部基地の検問所、そこでは二人の兵士が近頃話題になっている蒼のカリスマなる者について話をしていた。

 

「死んだ奴が復活、それもこの星で暴れた魔人とか、作り話にしても笑えないな」

 

「幾ら自分達の星が支配されつつあるからって、何でそんな化け物の話を持ち出すのだろうな。地球人の考えることは俺達には理解できねぇよ」

 

「違いない」

 

蒼のカリスマの復活、それを最初から信じていない兵士は地球人の苦し紛れの作り話と断じ、嘲笑った。

 

そんな彼等の近くに一つの人影が近付いていく。ここへ近付くものには容赦なく捕まえろと厳命を受けている二人はこれに気付き、銃口を人影へ突き付ける。

 

「そこのお前、止まれ!」

 

「ここへ一体なにしに…………き…………た?」

 

突き付けた銃口の先にいる人物、それを目にした瞬間兵士の目が大きく開かれる。目を剥く程大きく見開いた彼等の視線の先には……。

 

「あの~、私ぃ~、地元の酒屋を営んでいるキャシーと言うもの何ですけどぉ~、サイデリアルの皆さんに差し入れがしたくってぇ~、テキーラ酒を持ってきましたの~、そこを通してくださらなぁ~い?」

 

やけに筋肉質な女性…………否、女装をした怪物(モンスター)がそこにいた。

 

 

 

 




ボッチ「これぞ大軍師の究極計、男女逆転の計!!」

某大軍師「これは酷い」

現在FGO第7章プレイ中、うちのボッチはきっとカルデアでも活躍してくれる筈、色んな意味で。

それでは次回もまた見てボッチノシ


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