『G』の日記   作:アゴン

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今年のアニメも色々面白そうで嬉しいです。
個人的には幼女戦記と正宗君のリベンジ辺りがツボ(笑)


その133

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………向こうは、そろそろ脱出する頃合いか」

 

ヤクト・ドーガのコックピット、己の愛機の中で基地に潜入したメンバーからの連絡を待ち続けているギュネイは、時間的に作戦の第二段階………即ち基地から脱出する頃かと予想し、操縦悍を握り締める。

 

『しかし、意外と静かだな。連中が潜入して既に半刻は経とうとしているのに、警報の一つも鳴らないとは』

 

『中には攪乱担当の二人もいるのだろう? なのにこの静けさ…………一周回って寧ろ不気味に思える。本当に潜入しているのだろうな、連中は』

 

通信で聞こえてくるのは自身と同じ遊撃組に組まれた元ナイトオブラウンズ、ノネット=エニアグラムとドロテア=エルンストの声だった。

 

彼女達が怪しむのも無理はない。潜入工作、特に今回の施設への潜入というのは潜入から敵施設に捕捉、発見されるまで長くて三十分とされている。そしてその時間は潜入する人数が多い程に短縮され、危険性も増していく。最初にシュウジとジェレミアが潜入してから既に一時間が経過している。

 

しかも攪乱担当であるレディ=アンとブロッケンも既に基地に潜入している筈なのに、だ。とっくに警報が鳴り、内部も外部も敵で溢れてもおかしくないのに、今の所その様子は微塵も感じられていない。

 

「アンタ等がそう思うのも無理もない。奴が潜入して最初に行うのは基地内部の通信設備と管制室の沈黙だ」

 

『なに? 沈黙……だと? その言い方だと破壊による無力化という訳では無さそうだが?』

 

「あぁ、奴は敢えて通信室と管制室を破壊せず、そこを守る兵士だけを無力化させるんだ」

 

通信室を破壊せず、そこを陣取る形で基地の内部と外部の連携を敵に知られる事無く遮断し、偽装する事で基地内部の情報を掌握する事で他の潜入メンバーの誘導に成功出来ている。恐らく通信室はジェレミア辺りが担当しているのだろう。

 

そして外部との連絡手段である通信室を抑えられた事により異変を感じた管制室、しかし気付いた時には既に遅く、管制室もまた奴によって制圧、無力化させられてしまっている。

 

気付くという事は既に次の行動が約束されているという事、異変に気付き、動き出した管制室の兵士達が次に目撃するのはいつの間にか部屋内部に侵入していた蒼のカリスマの静かな蹂躙だった。

 

基地の心臓部、それも二つも掌握された事により今の敵基地は既に陥落寸前、未だ自分達がこうして落ち着いて静観していられるのは偏に奴の────蒼のカリスマの常識外れな行動力のお陰だろう。

 

ギュネイの言葉に信じられない様子で呆けている元ナイトオブラウンズ達、そんな彼女達を見て、まるで少し前の自分を見ているようだとギュネイは苦笑いを浮かべる。

 

当然だ。何せ今言葉にしている自分ですらあまり信じられていないのだから。でも実際その通りだから仕方がない。通信室を占拠し、ほぼ同じ時間で管制室も制圧、先程元ラウンズ達に話したそのままの内容の報告が蒼のカリスマの通信端末から送られてきているのだから。

 

しかも丁寧に画像付きで。此方に状況を分りやすく伝える為の配慮なのだろうが、それはギュネイにとって、奴の化け物染みた行動力を突き付けられる悪夢の様な一場面を見せ付けられている様だった。

 

だって、映像に映る通信室と管制室の制圧時間が殆んど同じものなんだもの、なんだよ誤差一分弱って、そんな短時間で制圧できるものなのかよ。そもそもあの二つの部屋って普通距離を置いて作られるものだよな? そこに行くまで誰にも気付かれずに行けるものなのか? それも一分そこらで…………。

 

色々疑問は尽きないが、ギュネイはその事に言及するつもりはなかった。…………だって聞いても理解出来ないんだもの。蒼のカリスマ────いや、シュウジ=シラカワに対して突っ込む事を止めたギュネイは、光の消えた眼でアハハと笑う。

 

その様を通信画面越しで見ていた三人のラウンズはウワァと内心で声を洩らす。ネオ・ジオンのエースパイロットである彼があそこまで精神が摩耗している事に同情を感じざるを得なかった。これが魔人に関わった者の末路か。三人がギュネイの事を思いやり、この話はここで終わりにしようとした時、それぞれのコックピットに通信が入ってくる。

 

出撃準備の合図、レディ=アンから通信が送られてきたと同時に、ギュネイのヤクト・ドーガが敵の接近を感知する。

 

恐らくは異変を感じたサイデリアルの部隊が様子見に来たのだろう。それに合わせて基地の外部が少しずつだが騒がしくなってきている。

 

「さて、そろそろこっちも出番だ。お三方、期待してるぜ」

 

『応ともさ、元とはいえ我々はナイトオブラウンズ』

 

『伊達にブリタニア帝国の騎士達の頂点にいたわけではないと、この戦場で示して見せよう』

 

『では…………行きますよ!』

 

大軍を相手に飛び出す四機、突然出てきた彼等に反応出来なかった新地球皇国の兵士達は奇襲を掛けられた事でパニックに陥る。

 

これで先手は取れた。後は奴等の脱出まで時間を稼ぐだけ。

 

早くしろよ。そう思いながら基地を一瞥したギュネイはノネット達と共に戦場を駆けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────数分前。

 

「ふは、ふふははは。これが蒼のカリスマの実力か。機動兵器だけでなく生身の実力でもこれ程とは…………成る程、魔人と呼ばれるのも納得だ」

 

玉座の間に呆れにも似たルキアーノの声が響く。手にしていたナイフは殆んど粉砕され、その身は壁に叩き付けられている。満身創痍、しかし彼の者の瞳には以前として強い光が宿っている。諦めている訳ではない、そう感じ取った蒼のカリスマは未だ構えを解かずにいた。

 

辺りに毒薬の染み込んだナイフの残骸が散乱していて、落ちたその場所では今もナイフに仕込まれた毒が音を立てて玉座の間の床を溶かしていく。それでも蒼のカリスマを中心にナイフはただの一欠片も落ちてはおらず、後ろに控えているマリーメイアとカリーヌには傷一つ無いのは流石と言えた。

 

護衛対象、そして己にも傷一つ追うこと無く、嘗てのナイトオブラウンズの一人を撃破、単独で、しかも圧倒的不利な状況の中、それでも蒼のカリスマ─────シュウジはやり遂げてみせた。

 

だが、全てが上手くいっている訳ではない。元ラウンズであるルキアーノとの戦いを初めて早5分、一見有利となっているこの状況、しかし事実は異なり、今のシュウジは少しずつだが追い詰められようとしていた。

 

シュウジを追い詰めているモノの正体、それはこれまで防いできた毒ナイフ…………その残骸から漏れ出てくる毒薬だった。大理石で作られた床すらも溶かす毒薬、その毒は床に触れ、気化する事で玉座の間を満たしつつあった。猛毒のガス、それは一呼吸で動物の呼吸器官を強制的に停止させる神経ガスの類である。蒼のカリスマであるシュウジなら耐えられるだろうが、マリーメイアの様な幼子が一度でも吸い込んでしまえばたちどころに神経は麻痺し、一分もしない内に死へ誘われる事だろう。

 

これは…………少し不味いかもしれない。徐々に迫りつつある毒ガスに仮面の奥で舌打ちをした時、玉座の間に続く扉が開かれた。

 

「蒼のカリスマ! マリーメイア様はご無事か!」

 

「レディさんか、その様子だとそっちは無事に目的を達成出来たみたいですね」

 

「シュナイゼル殿とその兄上殿は既にジェレミア卿と共に脱出させたである! シュウジ殿も早く此方へ……!」

 

扉を開けて入ってきたのはシュウジと同じく基地に潜入した攪乱組のレディ=アンとブロッケンの二人、時間も既に一時間近くが経過しており、異変を感じた外の別基地から様子見として部隊を派遣してくる頃だ。

 

時間が差し迫ってきている。だが、玉座の間へ突入した二人が目の当たりにした光景はそれ以上に緊迫していた。充満した毒ガス、一息でも吸い込めば絶命は免れない。隅に避難しているシュウジとマリーメイアが脱出するには玉座の間の扉からは離れすぎていた。

 

これでは手出しできない。いや、サイボーグであるブロッケンならば息を止めれば或いは…………だが、それも向こうで笑みを浮かべるルキアーノによって阻まれてしまうだろう。

 

壁から這い出て、残った最後のナイフを手にしているルキアーノ。その瞳は赤く充血し、何をしでかすか分からない危険性を孕んでいた。

 

どうすれば良い。時間も迫り、毒ガスも同時に広まり、レディ=アンの表情に焦りが浮かぶ。このままでは共倒れになると危惧した時だ。

 

「ったく、仕方ないな。本当はこんなことしたくなかったんだが」

 

「…………おじ様?」

 

「ごめん、マリーメイアちゃん。先に謝っとくね」

 

「へ?」

 

唐突に振り返り謝罪するシュウジに呆けてしまうマリーメイア、何をと尋ねるよりも先に彼女の体はフワリと浮かび、シュウジに担がれていた。

 

「お、おじ様!? 一体何を…………」

 

「息を止めて目を閉じろ!」

 

いきなり触れられた事に動揺してしまうが、それも次の瞬間聞こえてくるシュウジの声に萎縮してしまう。言われるがまま目と口を閉じたマリーメイアが次に待っていたのは…………。

 

「ブロッケン、受け…………取れぇぇっ!!」

 

「どっこいしょぉぉっ!?」

 

シュウジによって投げ飛ばされる浮遊感と疾走感だった。突然の事態を前に驚愕しながらも受け止めたブロッケン、彼の腕の中に抱かれているマリーメイアは、目を回して気を失っていながらも無傷で済んでいる。

 

「蒼のカリスマ、貴様何をっ!」

 

「そぉれもう一丁!」

 

トレーズの忘れ形見であるマリーメイアに対する蛮行に沸点が降りきれそうになるレディ、しかし彼女が抗議の声を上げるよりも早く、第二投が投げ渡された。

 

「ごふぅっ!?」

 

鳩尾に入る重みと衝撃に女性にあるまじき声が漏れる。一体なんだと視線を下ろしてみれば、そこには目を回した元皇女がいた。

 

「二人とも、彼女を連れて先に脱出を、俺も後から追い付きますので」

 

「……言いたいことは色々あるが、それも後回しか。行くぞブロッケン、我々も脱出だ」

 

「り、了解したのであーる! シュウジ殿、此方は任せてそちらも脱出を!」

 

不平不満はあるが、今はこの基地から脱出するのが最優先、レディ=アンはブロッケンを引き連れ玉座の間を後にする。

 

今この場所に残っているのは魔人と吸血鬼の二人だけ、互いに目の前の標的だけを見据えてその挙動を観察しあっている。

 

「…………しかし意外だな。アンタの事だからブロッケン達を最初に狙いそうなモノなのに、アッサリと見逃すんだな」

 

「当然だ。私の目的は最初からお前唯一人、サイデリアルに与したのも元皇女様達に従ったのも、こちら側にいた方が目的を達しやすいと判断したからに過ぎない」

 

「成る程、俺はどうやらよっぽど怨みをアンタから買ったみたいだな。…………だが、生憎此方はそちらの怨みに付き合うつもりはない。悪いが、ここで失礼させて貰うよ」

 

「はっ、この状況でどうやって逃げるつもり───」

 

言い掛けた瞬間、ブリタニアの吸血鬼はその双眼を大きく見開かせる。その時彼が見たのは体を回転させて背後の壁に向かって蹴りを放つ魔人の姿、爆発したかに思える音と衝撃が玉座の間から外に貫いた次の瞬間、外の景色が二人の眼前に広がっていった。

 

魔人の放つ蹴りによって開けられた穴、それは基地の外壁の一部をもろとも吹き飛ばし、外へ繋がる脱出口となっていた。人並み外れた膂力を見せる蒼のカリスマに流石のルキアーノも言葉を失う。そんな奴の隙を見逃す筈もなく、シュウジは穴の空いた玉座の間から身を翻して飛び出した。

 

玉座の間は基地の最上階に位置していた場所、そこから飛び降りた所で待っているのは死だけ。毒ガスよりも、吸血鬼よりも明確な死が秒単位で迫ってきている。

 

地面に叩きつけられれば即死は免れない。しかしシュウジには絶望に染まってはおらず、その表情は不敵な笑みを浮かべていた。

 

『やれやれ、相変わらず無茶をするな君は、付き合う此方の事も少しは考えて欲しい所だ』

 

通信端末から聞こえてくる音声、その声を耳にした瞬間、魔人の自信は確信へと変わる。

 

「良いだろ。こっちもお前の無茶ぶりに散々付き合わせてやったんだ。多少は多目に見ろよ」

 

『ふっ、それもそうだ』

 

「……で、そちらの首尾は?」

 

『既に目の前に届けているよ』

 

目の前に目を向けると、そこには射出された己の機体、A.(アメイジング)トールギスがそこにあった。相変わらずの手際の良さに感心しながら、蒼のカリスマはコックピットを開き、中へと入る。

 

操縦席に背中を預け、トールギスに火を灯す。地面に激突する直前に起動を完了したトールギスはスラスターを全開にして体勢を整え、地面へと着地する。

 

見渡せば既に戦いは始まっている様子、少し離れた所でギュネイ達が戦っているのを確認したシュウジは彼等に合流しようとトールギスを動かす。だが次の瞬間巨大な熱源反応が四つ、トールギスの周囲を囲むように現れた。

 

降り立ってきたのは巨大な赤、それはアマルガムなる組織が開発したベヘモスと呼ばれる巨大AS、そして彼等を従うように現れる────ベヘモスと同じ色をした一機のコダールだった。

 

『何でこんな辺鄙な所まで来てごみ掃除紛いな事をやらされる羽目になるのよ。モミアゲのセットだってしなくちゃいけないのに…………あーあ、嫌だ嫌だ。ボクチン早くおうちに帰りたい』

 

「ベヘモス…………そうか、そういえばアマルガムなんて組織もあったんだったな。奴等もサイデリアルと結託したのか」

 

状況的に、自分の推測は間違っては無さそうだ。そこまで考えた所でシュウジの思考は切り替わる。

 

目の前にいるのは四機の巨大ASと指揮官機、何れもラムダドライバなるシステムを搭載された特別な機体だ。グランゾンに乗っていた時とは違い、勝手が異なる相手。

 

しかしやることは変わらない。目の前に敵が立ち塞がるのなら全てを斬り伏せて押し通るまで。状況的に圧倒的不利な状況で、それでもシュウジは仮面の奥で笑みを崩さない。

 

『逃がしはしないぞ、蒼のカリスマ。お前は今日ここで私に倒されろ』

 

背後に降り立つ紫のKMF、ルキアーノ=ブラッドリーの駆るパーシヴァルによって状況はさらに悪化。それでも、やはり魔人は動揺する事無く。

 

「良いぜ、シュナイゼルに俺達の今の強さを見せ付けるチャンスだ。精々暴れてやろうぜ、なぁ! トールギス!!」

 

シュウジの叫びに応える様にトールギスの眼が輝きを放つ。スラスターを全開にして彼等は目の前の敵陣に斬り込んでいった。

 

『蒼のカリスマ…………嘘ォッ!? 生きてたの!?』

 

一機のベヘモスが真っ二つに両断される。その光景を目の当たりにしたモミアゲは、一人悲痛な叫び声を上げた。

 

 




最近はマブラヴ見ながら執筆してます。
トータルイクリプスにうちのボッチを介入させたいww

…………政治的やり取りとか陰謀とか全部台無しにしそうでダメか(笑)


それでは次回もまた見てボッチノシ

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